ディスクトラッカーにセンタースタンドを取り付ける

はじめに

基本的にスポーツ自転車にはスタンドは付けない。重たくなるし、フレームを傷めるおそれがあるし、そもそも車種によっては取り付けできないからだ。

私の自転車はサーリーのディスクトラッカーというクロモリ製のツーリング車で、世界を旅するサイクリストに人気があるロングホールトラッカーのディスクブレーキ版だ。

 

これまでディスクトラッカーにはスタンドを付けていなかった。直接会ったツーリング系サイクリストからいい話を聞いたことがなく、ネットで検索しても「フレームを傷めただの、脚が折れただの」というようなロクな情報しか出てこない。

スタンドなしの自転車に乗っていて困るのが駐輪する時常に立て掛けるものがあるわけではなく、あちこち探し回らないといけないときがある。
そこでトレッキングポールでつっかえ棒を作ってスタンド代わりにするようにした。
つっかえ棒でどこでも停められるようになり、写真のように自転車を自立させて記念写真を撮ることもできるようになった。

 

しかし、常につっかえ棒を携帯する必要があるし、設置収納に手間が掛かる。駐輪することが多い街乗りでは特に煩わしく感じる。

幸いディスクトラッカーには、安定性の高いセンタースタンドを取り付けることができる。ものは試しに付けてみることにした。

 

センタースタンドの入手

今回はスタンドの取り付けと同時に、ハンドル交換も行った。
いや、ハンドル交換のついでにスタンドも取り付けた、と言うべきだろう。ハンドル交換の件はまた今度。

スタンドは選びは、いつもお世話になっている自転車見聞店さんに相談して行った。
サーリー専門店で店主は自転車で世界一周したことがある筋金入りのサイクリスト。豊富な知識と経験に基づいたアドバイスを貰うことができる。

 

選んだスタンドは2本脚のセンタースタンド。重たくなるが、安定性が非常に高い。
ディスクトラッカーには、メーカー純正のセンタースタンド取り付け用の補助金具があり、確実にスタンドが取り付けられる数少ない車種。
スタンドと一緒に金具も購入した。

それではこれから詳しく紹介してゆこう。

 

ギザプロダクツ アジャスタブル ダブル レッグ センタースタンド CL-KA56

スペック

素材アルミ合金
サイズアジャスト機構付き(20″~28″)
地面から取付位置までの高さ275~330mm
最大荷重30kg
重量560g
ブラック、シルバー
【注意】写真はメーカー純正LHT・DT専用キックスタンドプレート付き
ギザプロダクツのスタンドは安くて脚の長さを調節できるのがポイント。ほかに候補に挙がったエスゲはシンプルで魅力的だったが、高価なうえ脚を切って調整する必要があった。
Products Stands Ksc00900 に何も見つかりません

 

折りたたんだ状態でのスタンドの全長はおよそ30cm。
高さは7段階に調整可能。

スタンドを立てると、スプリングの力で広がるようになっている。
広がった脚2本の幅はおよそ22cm。

スタンドの接地面。硬いプラスチックにイボが付いている。

スタンドと補助金具を合わせた重量は645g。ロードバイク乗りだと激怒しそうな重量。

サーリー キックスタンドプレート

サーリーのロングホールトラッカー(LHT)とディスクトラッカー(DT)のために、専用設計されたメーカー純正の取り付け用の補助金具。
この金具を取り付けると、フレームとの接触面積が増えて、チェーンステーが傷みにくくなり、ガタツキが減って取り付けボルトが緩みにくくなる。

取り付け金具は、すでにエポキシ樹脂でスタンドにガッチリ固定されていて緩むことはなし。
もとの色はアルミ合金製のシルバーだが、目立たない黒に塗装されている。

自転車見聞店で自転車を購入した場合、タップ立て・エポキシ樹脂による固定・ブラック塗装の無料加工サービス付き。もちろん作業料を支払えば、他店購入車でもやってもらえる。

この店でディスクトラッカーを購入したこともあり、今回は無料でやって頂いた。

 

センタースタンドの取り付け

スタンドの取り付け場所は、チェーンステーの付け根付近。
自転車を倒立させた状態で作業を行った。

自転車のフレームサイズは46cm

角度を変えて撮影する。

フレームと接触する面に、保護のためのビニールテープを貼り付けた。

シフトケーブルに干渉しないように位置を微調節して、スパナでボルトを締め付けた。
作業は10分ほどで完了。

締め込んだ取り付けボルトのようす

ボルト頭の2面幅は14mm。フレームを傷めないように適度に締め付けた。
アマゾンのレビューによると、付属の取り付けボルトは車種によって短い場合があるとのこと。
このボルトは付属品かどうかは不明だが、たしかに短い気がする。

2枚の丈夫なプレートで挟んで取り付ける。
接触面が広くてチェーンステーにやさしい。

ボルトを締め込むと、ビニールテープがズレてしまった。
チューブを切って接着剤で貼り付けた方がいいだろう。

気になったのは、リヤのシフトケーブル。僅かな隙間しかない。

ケーブルとの隙間は1~2mmほど。

スタンドがズレて干渉するようなら、強度が落ちない程度に金具を削ることにしよう。
今のところは問題なし。しばらくはこれで様子を見る。

スタンドを収納した状態

2本足が平行に畳まれていてスッキリ見える。

装着しているタイヤは、26×1.75インチのシュワルベマラソンプラス。5mmの耐パンク防止帯が内蔵されてパンクしにくく、抜群の耐摩耗性と耐久性があり、ツーリング系サイクリスト定番のタイヤ。

すでに15,000km以上走ってスリックタイヤのようになっているが、まだまだ使える。
現在は20,000km超えに挑戦中だ。

マラソンプラスはパンクしづらいタイヤであって、決してパンクしないタイヤではない
備えを怠ると辛い目に遭う。

 

スタンドを立てた状態

角度を変えて撮影する。

スタンドで自転車を自立させてみる。
前輪は接地したまま、後輪が浮いた状態になる。

2本脚のセンタースタンドは抜群の安定性がある。

スタンドを立てると、スプリングの力により自動で2本の脚が開く。

前後キャリアやU字ロックを入れた総重量推定20kg。重たいクロモリの自転車でもしっかりと支えてくれる。

サイドスタンドや1本脚のセンタースタンドとは違い、2本脚のものは直立する。安定性が高いうえに駐輪スペースをとらないのが良い。

スタンドで立てた状態でクランクを回すと、脚のプラスチックの部分が僅かに当たる。
そのうち当たる部分を削ることにしよう。

クランクはMTB系のALIVIO 長さは170mm

 

センタースタンドを取り付けた感想

2本脚のセンタースタンドは、評判どおり安定性が高くて使いやすい。
出先で立て掛ける場所を探す手間が省けて短時間で駐輪できるようになった。
写真のように整備スタンドとしても使えることができて作業が捗る。ブレーキパッドやケーブルの調整がやりやすくなった。

ただ、今回は専用の補助金具を利用してスタンドをしっかりと固定できた稀なケース。すべての車種に合うわけではない。LHTやDTで通勤・通学の用途であれば、補助金具の使用前提で2本脚センタースタンドの取り付けをおすすめする。
自転車に合わないスタンドは、使い勝手が悪くてストレスが溜まるだけでなく、フレームを傷める原因となる。インターネットや自転車店、自身のネットワークで情報収集して、愛車に合うスタンドを是非とも見つけて欲しい。

唯一の不満な点は、駐輪すると前輪がブレやすいこと。前輪がブレても倒れることはないが、見た目が悪いしうっとうしい。

専用金具があっても取り付けボルトは緩んでくることがあるので、定期的に確認しておく必要がある。ネジの緩み止め剤を塗布しておく方がいい。

あとは耐久性が気になるところ。スタンドを操作すると、はっきりと分かるくらいの衝撃がある。アマゾンのレビューには脚を止めている箇所、人間でいうと腰の部分がパックリと割れた画像が出てくる。取り扱いには十分注意して、末永く大事に使いたい。

 

2本脚センタースタンドのメリット

・すばやく駐輪できる
・省スペースで停められる
・前輪固定の一般的な駐輪場に停められる
・整備スタンド代わりになる

2本脚センタースタンドのデメリット

・重たくなる
・駐輪時に前輪がブレやすい
・取り付けボルトが緩んでくることがある
・フレームを傷める可能性あり

 

その後の改良~緩衝用のゴムを取り付ける~

センタースタンド取り付けた当初は、補助金具のフレーム接触面にビニールテープを貼って保護していた。初めは良かったのだが、次第にテープの粘着力が弱まり、位置がずれて来るようになったので改良することにした。

そしてもう1点。脚の底がイボ付きのプラスチックでは、駐輪場所がコンクリートだと滑ることがあった。擦れてイボが削れてきたのも気になる。そこでこの点も改良を加えることにした。

先日、バーテープ代わりにチューブを巻いたところ、思いのほか握り心地が良くてすっかりチューブの虜になってしまった私。一度やりだすと、いつまで経っても止めない止まらない。

古チューブは自転車に乗っていればタダで手に入る代物。(自転車屋に行けばタダで貰える。)薄くて柔らかく加工しやすいので、DIYの素材にはピッタリ。今回も古チューブを使うことにした。

 

接触面に当ててボールペンで印を付ける。
締め付けるとゴムが伸びるので、少し小さめにしておく。

ゴムの貼り付けは、強力な接着力と適度な弾力性があり、水や熱や振動にも強いセメダイン スーパーXを使用。自転車には非常に相性の良い接着剤だ。以前、お試しセール中に買って試してみると、あまりの使いやすさに虜になってしまい、以後スーパーXを多用するようになる。

 

ゴムと補助金具の両方にスーパーXを塗布して10分ほど放置した後、貼り合わせる。
ゴムがはみ出て不格好だが、細かいことは気にしない。

接着剤が乾く前にスタンドを自転車に取り付けておく。

一晩経ってようすをみると、ガッチリ固定できていい感じだった。

スーパーXの実用強度が出るまでには、24~48時間が必要です。
 
ビニールテープの時より固定力が高まった。
脚の底に貼り付けたゴムはまだ時間が足りず接着不良だったが、コンクリートの上でも滑らなくなりしっかり駐輪できるようになった。
 

スタンドの注意点~最低地上高が若干低くなる~

私のディスクトラッカーはフレームサイズ46cm26インチホイール

センタースタンドを取り付けると、最低地上高が若干(約1cm)低くなる。段差を越える時などに注意が必要だ。

スタンドの脚を跳ね上げた状態。
稼働部分の付け根から右側の脚の曲がり部分が一番低い場所。

メジャーで計測してみると、約16cm

通常、BB周辺で一番低い場所はアウターリングとなるが、センタースタンドを取り付けるとスタンドの脚の曲がり部分となる。

めったに使わないアウターリングだが、時々ぶつけることがあって鬱陶しい思いをしていた。

アウターリングの下部までの高さは約17cm。わずか1cmの差だが、スタンドを付けると圧倒的にぶつけやすくなる。

センタースタンドを取り付けると最低地上高が約1cm低くなります。段差などで愛車を傷めないように十分注意してください。