スーパーカブの廃タイヤで改良版サンダルを自作する

こんにちは。からあげです。

 

改良版サンダルを作ろうと思った理由

走る民族と言われるタラウマラ族が履いている廃タイヤのサンダル。ネットの情報をもとに、見様見真似で作ってみたものの、重たくて履く気にはなれず。なんと1足で400g以上の重さがあった。

時間と労力を掛けて作ったサンダルは、つま先と踵がむき出しで足をぶつけるとケガするおそれがある。なんとか改良できないものか。

改良版のヒントになったのは、普段履いているクロックスタイプのサンダル。もうかれこれ10年以上は履いている。
つま先から甲までしっかり保護できるうえに、かかとを固定して走ることも可能。クロックスというメーカーのサンダルは、従来のサンダルにかかと固定の機能を加えたことで爆発的な人気モデルとなった。

タイヤを長めにして折り曲げれば、つま先とかかとを保護できるのではないか、そう考えた。よし、いっちょ作ってみるか。

 

サンダル作りに適したタイヤ

前回のサンダル作りで障害となったのは、タイヤに内蔵されているスチールベルト。
スチール製で硬くて丈夫なため、加工しづらかった。
できるだけ軽く、トゲでケガをしないように、3枚おろしにしてスチールベルトを取り除きたかったのだが、カッターナイフでは無理だった。

そこでやむなく、大型のワイヤーカッターでぶつ切りにしてから、電動工具のディスクグラインダーでサンダルの形にしただけで、スチールベルトはそのまま残した。

 

スチールベルトのないタイヤはないものか、いろいろ情報を探していると、バイアス構造のタイヤには、スチールベルトが内蔵されていないことが分かった。

タイヤは構造により、おおまかにラジアルタイヤバイアスタイヤの2種類に分けられる。バイアスタイヤとは、カーカスがトレッドの回転方向に対して斜め(Bias)に配置されたもので、スチールベルトが内蔵されていない。

現在、ほとんどの自動車のタイヤは性能の良いラジアルタイヤだが、バイアスタイヤは低速・悪路での乗り心地がよいため、いまだ小排気量の一部のオートバイに採用されている。製造が容易で安価というメリットもある。

スーパーカブ(以後カブと略す)の名称で知られるホンダの小型オートバイは、低燃費と高い耐久性から世界中の人々に人気がある。日本では新聞や郵便の配達でよく見られる。そのカブのタイヤに、スチールベルトのないバイアスタイヤが使われているのだ。

参考リンク

 

スーパーカブのタイヤの入手

カブは数多く出回っているので、タイヤの入手はいたって簡単だった。
オートバイや自転車を販売・修理する店に行けば、たいていタダで貰える。

まずは試しにと、家の最寄りの自転車屋さんに行ってみると、たまたま1本だけ残っていたカブの廃タイヤを貰うことができた。なんと1軒目にしての入手。

タイヤの銘柄・サイズ

BRIDGESTONE EXEDRA GS56 2.50-17 4PR

新聞配達用のカブの後輪で使われていたもの。中央部が丸坊主でサイドに溝が残っている。

 

カッターナイフでビード部分を切る

まずはワイヤーの束が入っているビード部分を取り除く。
カブのタイヤは、スチールベルトが入っていないので、比較的楽に加工することができる。

作業の安全にために必ず手袋は着用する。タイヤを切っているとすぐに切れ味が落ちてくるので、替刃式のカッターナイフが使いやすい。

 

ビード部分を切っているところ。

おや、何か手応えがあるぞ。

少しでも幅広になるようにギリギリを攻めた結果、ビードワイヤーに当たって刃がボロボロになってしまった。

今度は無理をせずに余裕のある位置を切ってゆく。

すると、サクサク気持ちよく切れる。

ビード部分を切ったところ。

ビード部分は、大型のワイヤーカッターで細かく切って処分する。

ビードの断面

左端の太いものがワイヤー。写真では6本確認できる。
ほかは柔らかい繊維状のカーカスと呼ばれるもので、タイヤの補強のために入れられている。

細かく刻んだビードは燃えないゴミで処分する。
何か使い道がないか考えてみたが、とくに何も思い浮かばず。

ビードを除いたタイヤをハサミで切る。
力を加えれば、それほど無理せずに切ることができる。

こうした使い方をしていると、すぐに切れ味が落ちてくるので、定期的に刃先を研ぐ必要がある。

タイヤの断面

トレッド面も繊維状のカーカスだけで、スチールバンドは内蔵されていない。
角張っている角は、カッターナイフで削って薄くする必要がある。

ビード部分の断面

こうして見ると、サイド部分の厚みがよく分かる。

タイヤの角をカッターナイフで切ってゆく。
この作業に多くの時間を費やした。おおよそ20時間以上。

サンダル作りには時間と根気が必要だ。無理をせずに休み休み行った方がいい。長時間続けてやると疲れる。

一気に切るのではなく、薄く少しずつ削ってゆく。

切っているうちに切れ味が落ちてくるので、その都度先を折って切れ味を保つ。
刃物は切れ味が落ちると、無駄な力を入れなければならなくなり危険。

切れない刃物ほど危険なものはない。

作業はまだまだ。

削っては横から見るの繰り返し。

タイヤは3等分にして、サンダル用の2つを削った。残りの1つは今後のためにとっておく。
数日掛けてようやくここまでできた。

角を削って薄くすると、曲げることができるようになる。

だが、これではまだまだ厚すぎる。さらに削ってゆく。

タイヤを曲げたようす。

軽量化を兼ねて、ロープを通すための穴と水抜き用の穴をドリルで空けることにした。
インパクトドライバーに木工用のドリルビットを装着した。

木工用ビットだと、カーカスをキレイに切ることができない。

そこでポンチで穴を空けることにした。
薄いアルミ板やゴム、革などに簡単に穴を空けることができる。

100均のポンチを使ってみると、2,3穴を空けただけで、すぐに刃がボロボロになってしまった。
スチールベルトが入っていないタイヤでも、厚くてそれなりに丈夫。
100均クオリティーでは、数多くの穴あけは難しい。

今度はしっかりした物を選んだ。
6mmと12mmの2種類を買ったが、主に使ったのは6mm。

 

ポンチで穴あけをしているところ。
合板を下敷きにしてハンマーでぶっ叩く。

いいポンチだとキレイに穴あけすることができる。
少しでも軽くなるように、多くの穴を空けてゆく。
穴を空けると軽くなるほか、柔らかくなって履きやすくなる。

ある程度の穴を空けたところで、ロープを通す穴を空ける。
ペイントマーカーで位置をマークする。

さっそくロープを通してみる。今回も太さ3mmのナイロンロープを使用した。

試行錯誤してロープを通す位置を決めてゆく。

つま先の方の位置決めはだいたい終了。
今度はかかとの方。

折り曲げてかかとに合わせたところで、余分な部分をハサミで切る。

履いては削って穴を空けるの繰り返しで、作業を進めていった。
調整にもかなりの時間を費やした。

さらに調整を重ねて余分な部分をカットして、ようやくサンダルの原型が出来上がった。

サンダルの原型

この時はまだコードロックは取り付けておらず。

甲と足首の2箇所をロープで縛るようにした。
前回の草履型サンダルに比べると、格段に着脱しやすくなった。

角は削って薄くしたものの、まだサイドは厚いまま。
少しずつ削って薄くしようと思ったが、あまりに時間がかかりすぎるので止めにした。
角を落として丸くするだけにした。

 

完成した改良版サンダル

その後、さらなる調整と穴あけを行いついに改良版サンダルが完成した。
所要時間はおよそ40時間。毎日クタクタになるまで作業して5日掛かった。

甲の部分はコードロックを付けて、できるだけ調整しやすくした。

サンダルを履いたところ。

前回のものに比べると、格段に履きやすい。走っても重さで垂れ下がることはなく、足と一体化している。

つま先とかかとを保護できるようになった改良版。

キャンプ地で使う場合は、このように伸ばしておくと着脱がスムーズ。
ちょっとトイレに行きたいときでも楽に使える。

従来型サンダルの欠点であった、着脱しづらいのを改善することに成功した。

上からみたようす

左右で形が微妙に違うため、間違えないようにロープの色を変えた。

横からみたようす

元がタイヤのため、丸い形になる。

つま先

完全に保護されているので、思いっきり岩にぶつけても怪我しない。

つま先部分の曲がり

角を丸くカットして曲げやすくしてある。

かかと

上部には穴を空けて軽量化と柔らかさアップを図った。

靴底

溝は全くなし。

カッターナイフでの加工のため、多少の凸凹はあり。

甲の部分は、特に穴を多く空けて、通気性と排水性をよくした。

ロープにコードロックを付けて調整しやすくしてある。

重量は左右で585g。前回のサンダルに比べて150g以上も重たくなった。
これにはガッカリ。

 

2019年オーストラリア自転車旅で使用した感想

日本出発前に大急ぎで作ったため、各部の細かい調整は行わないまま、いきなり実戦投入となった。

改良版サンダルは履き心地が良くなったものの、やはり既製品と比べるとそれほど良くない。それに重たくて嵩張るので、自転車旅ではとても邪魔だった。

暑くなってきたとき、サンダルを履いて自転車に乗ってみたものの、すぐに足が汚れてしまった。
さらに底が丸くなっているので、小石や砂が入ると外に出ていかずに底に溜まってゆく。時々隙間を空けて出してやる必要があった。

靴下を脱いで直に履いていると、かかとに当たって皮を擦りむいてしまった。

その後、使うことは絶対にないと確信したので、途中で処分することにした。
捨てるのが遅くなればなるほど、執着がわいてきて捨てるに捨てられなくなる。ナラボー平原を抜けたパースの手前、およそ4,500km走ったところで処分した。

この改良版サンダルは、まだまだ改良の余地があったので、捨てるのは本当に惜しかった。
40時間を掛けてまで作ったこともあり、なおさら惜しかった。

サンダル全体をカブタイヤで作ると重たくなるので、一部に軽い自転車タイヤを使った方がいいかもしれない。今そう閃いた。

 

また今度時間がたっぷりある時にでも、さらなる改良版サンダルを作るとしよう。次こそは耐久性があり、そこそこ軽くてコンパクトな日常生活で使えるサンダルを作りたい。

それにしても、廃タイヤでのサンダル作りは、時間が掛かるわりにはいいものができない。費やす時間をバイトに充てて、稼いだ金で既製品を買った方が遥かにいいものが手に入る。だが、果たしてそんな安易な方法を選んでいいものか。

廃品を利用したモノづくりには楽しさと充実感がある。

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