油切れで大きなラチェット音がするフリーホイールを整備する

こんにちは。からあげです。

はじめに

ある日、久しぶりに自転車に乗ってみると、リヤのフリーホイールから大きな音がするのに気がついた。一旦止まって手でホイールを回してみると、爆音と言っても過言ではない「ガチガチガチ・・・」という大きな音がする。しかもペダルが連れ回りすることがあることも分かった。この現象を見て推測から確信へと変わる。

フリーホイールが悪いに違いない。

フリーホイールとは、通常は動力を伝達するが、脚を止めると惰性でそのまま回転してくれるリヤハブに搭載されているもの。工具のラチェットハンドルに内蔵されているような爪で、一定方向しか動力が伝わらないようになっている。フリーボディー」とも呼ばれる。(当記事内ではフリーホイールで統一。)

このフリーホイールがない固定ギヤの特殊な自転車もあるが、常に脚を回す必要があって脚を止めて休むことができない。さらに急な下り坂では非常に危険。
休むことのできない自転車は、常に追い立てられて強制的に走らされているようなもの。例えるならば腹を空かせた猫に追いかけられているネズミ。
日常・ツーリング用途にはフリーホイールは絶対に欠かせない。

そんな重要なフリーホイールから異音がするようになった。このまま症状が悪化して完全にイカれると、歯飛びが頻繁に起きるようになり、終いには常にフリー状態となるかもしれない。
実は少し前から「歯飛び」と呼ばれる症状が度々起きていたのだ。スプロケットやチェーンリングが摩耗している状態で、チェーンだけを新品に交換した時に起きる症状。(逆の場合も起こりうるので、消耗が激しい場合は駆動系丸ごと交換した方が無難。)チェーンと歯がうまく噛み合わず、力が掛かるとズルっと滑る。

駆動系周りを見た限りでは、スプロケットとチェーンリングの歯先は太っていてまだまだ使える。新品同様に近いアウターリングとスプロケットの高速側(8~9速)に入れても、同様に歯飛びの症状がときどき起きる。(貧脚のおっさんは軽いギヤが好き。)
シマノ純正の計測器具(チェーン伸びチェッカー)でチェーンを計測してみると、許容範囲内で問題なしだった。

 

歯飛びの症状もフリーホイールが原因に間違いない!

ペダルに力を込めた時に歯飛びが起きると、力が抜けてバランスを崩しそうになる。(特に立ち漕ぎのとき。)センターラインの方に大きくふらつけば、車に追突される恐れがあって非常に危険だ。
原因が分かったところで直ちに整備をすることにした。

 

フリーホイールの整備

リヤハブ Deore FH-M525-A

整備スタンドを持たない私は、ホイールを外す時は自転車を引っくり返した状態で行う。
だからいつまで経っても、ディスクブレーキを機械式から油圧式に変更することができないし、する気も起きない。
油圧式はブレーキレバーから入力された力が何倍にも増幅されてキャリパーに伝わり、軽いレバー操作で効きは確実(らしい)。だが、空気を噛んでブレーキが効かなくなる恐れもあるし、オイル交換には特殊な道具と細やかな配慮が必要。

一方のワイヤーの機械式はレバーの引きが重たいが、自分で簡単に整備できる。油圧式がほとんどの今でも、機械式が細々と生き長らえているのは整備性が良いため。ツーリング用途に向く。

 

さて、おっさんの脳内独り言はこれくらいにして作業を始めるとしようか。

ホイールは丈夫で入手性がよいとされる26インチ。ブレーキローターは6本ボルト留めの160mm。ハブはDeore FH-M525-A
2019年オーストラリア北西部辺境の町「Broome」の自転車屋さんで組んでもらったもの。大量の水・食料の重荷に耐えかねてリムが割れてしまったのだ。

スポークの付け根で割れたリム。

リムが割れて歪んでも、ディスクブレーキの場合はローターがハブに付いているため影響はほとんどなし。
だがキャリパーブレーキやVブレーキなどのリムブレーキの場合、リムが歪むと走行中にブレーキシューとリム当たってしまう。そのためリムとブレーキシューの隙間を大きくせねばならないが、調整範囲は限度がある。最悪の場合ブレーキキャリパを撤去しなければならない。

リム割れに気づかなかったのは、私が鈍感だったこともあるが、走行に支障がなかったことの方が大きい。(言い訳ではなし。)雨天でもよく効くディスクブレーキは、ホイールトラブルにも強いリムの消耗がなくホイールが長持ち。ロングツーリング中にリムの交換時期に頭を悩ませることはない。

Kimberley Cyclesの店主

身長180cm以上の大男。自転車とオーストラリアを心から愛する。

辺境の地にも関わらず、航空便で取り寄せてもらい注文からたったの5日で完成。(Broomeは遠浅の砂浜が人気の観光地で国際空港あり。)急ぎで組んで貰った36本スポークのホイールは20,000km走った今でもほとんどフレがない。

Great job!

 

カセットスプロケットの取り外し

今回交換するのはカセットスプロケットが取り付けられている「フリーホイール」
メーカーのシマノは分解整備せずに交換を推奨している。つまり使い捨てにせよとのこと。

フリーホイール部の分解は、トラブルの原因となりますので行わないでください。
シマノディーラーマニュアルより

 

シマノの言うトラブルとはどのようなものか。非常に気になる。

フリーホイールを取り外すには、先にスプロケットを外す必要あり。
さらにそのあと、シャフトも抜く必要があるため、組立時にベアリングの玉当たり調整は必須。
つまりフリーホイールを取り外すと、リヤハブ周り全て整備する必要がある。
「ああ面倒くさい。」などと愚痴を言っても仕方ない。さっさと片付けることにしよう。

まずはスプロケットの取り外し。フリーホイールのため、スプロケットを押さえ工具で固定してロックナットを緩める。

使用する工具は台湾工具メーカーPWTのフリーホイールリムーバーとチューナーセット。
2000円でお釣りが来る安さが魅力。それでいて価格以上の品質で全く侮れない。素人が趣味で使うには必要十分。

 

ロックリングを緩めるところ。
お尻を乗っけてタイヤを固定した状態で、固定具を最大ローギヤに掛けて、ロックリングは通常の左回しで緩める。
何度やっても固定具の掛け方を迷う。やはり回数が少なすぎるのだ!

ロックリングが外れた。
スプロケットはCS-HG201 9S 11-36T。荷物を積載した状態でも峠の上りで立ち漕ぎしなくともよいように36Tを選択。
トリプル 40-30-22Tのチェーンリングとの組み合わせで最小ギヤ比は0.61。クランク1回転でタイヤは0.61回転する。
歯数構成は11-13-15-17-20-23-26-30-36Tで1速と2速の差が大きい。1速は激坂用。2~9速で十分事足りる。

 

スプロケットの構成部品

9速と8速のギヤが外れるようになっている。

ロックリングおもて

ロックリングうら

安いALTUSグレードのためか、回り止めの薄いワッシャーが付いていない。

 

ブレーキローター(6本ボルト留め)の取り外し

スプロケットを外すと現れるフリーホイール。
このフリーホイールを外すには先にハブシャフトを抜き出す必要あり。
その前にブレーキローターを取り外す。

真上から見たようす

6本ボルト留めローターの場合、外さなくとも作業は可能だが、作業がやりにくいし油分が付着するおそれがあるので取り外しておく。自転車はボルトが固着しないよう(雨天でも乗る場合は特に)、面倒でもときどき取り外しておいてグリスを塗布しておいた方がよい。

リヤホイールの交換でセンターロック式から6本ボルト留め式になって前後バラバラになってしまった。
安いし軽いし専用工具(ロックリング締め付け工具)の必要なしのところが気に入った。

ロングツーリングでは、途中でブレーキローターを前後入れ替えできるように、ローター径と固定方式は合わせておきたい。

固定ボルトはしっかりと締め付け力を伝達でき、穴を傷めにくいトルクス仕様になっている。
回り止めのプレートが付くはずだが、海外版のためか付いていない。

緩まないようにネジの緩み止め剤を塗布してから組み付けている。

T-25サイズのトルクスレンチはソケットレンチでも使えるビットタイプを使用。携帯性を重視した。
出先ではビットホルダー(PB 470 M)との組み合わせ、家ではビットアダプターソケットとソケットレンチ(9.5mm角)との組み合わせで使用。

 

ハブシャフトの抜き出し

ローターを外したところ

リヤハブ全体

リヤハブの右側にフリーホイールが取り付けられている。
ハブシャフトは、ブレーキローターが付いている左側の玉押しを外して抜き出す。

右側(スプロケット側)の玉押しのようす

真横から見ると、右側は玉押しが半分程度しか出ていないことが分かる。
いくら薄いハブスパナでも掛からない。

左側(ブレーキローター側)の玉押しのようす。

ダストカバー付きの玉押しに廻り止めのワッシャーを挟んでロックナットで固定している。
こちらの玉押しを外してシャフトを抜き出す。

玉押し15mm、ロックナット17mm。

17mmのハブスパナは物置にあったスパナをグラインダーで薄く削って作ったもの。

ハブシャフトを抜き出すとボールベアリングが見える。
手前のシールワッシャーが硬くて外れにくい。

先にボールベアリングを外してからシールワッシャーを取り外した。
何度か強引に外しているため、歪んでしまっている。

このシールワッシャーは密封性を高めて汚れや雨水の侵入を防ぐためのもの。外す時に歪みやすいので、新品を用意してから行った方が無難。

左シールワッシャー(おもて)

ウエスを挟んでマイナスドライバーを突っ込んでなんとか外した。

左シールワッシャー(うら)

ボールベアリング側はアルミが出ている。

左側ベアリングのワン(受け皿)のようす

右側ベアリングのワン(受け皿)のようす

右シールワッシャー(おもて)

左シールワッシャー(うら)

注意したいのはシールワッシャーは左右で形状が異ること。

抜き出したハブシャフトのようす

右玉押しのようす

 

フリーホイールの取り外し

これでようやくフリーホイールの取り外しができる。固定ボルトは通常の右ねじ。
10mm六角レンチで左回しする。

六角レンチは奥までしっかりと挿し込む。
以前外した時にグリスを塗っていたので、簡単に緩めることができた。
グリス塗布の大切さを再確認する。

フリーホイールを外したところ。

取り付け面にワッシャーがあるので注意する。
グリスの汚れは少し。

外したパーツを灯油で洗う。
繰り返し使用できてとても安上がり。
凹凸のあるスプロケットは歯ブラシで丁寧に擦って汚れを落とす。

ほどほどにキレイになったスプロケット

これだけキレイになれば十分。とは言いつつもピカピカにしたいと思っている。
今度は一晩浸け置きしておこうか。

キレイに掃除したフリーホイール一式。
見違えるほどキレイになったものの、それはおもて側だけ。
手で回して見ると、カラカラと嫌な音がする。

よこから見たようす

スプロケットで擦れた跡がいくつもある。酷使しているのがよく分かる。

ワンのようす

特に目立った傷みはなし。
4箇所ある凹部分に工具を掛けると分解できるらしいが、その工具は現在販売されていない。
互換工具を手に入れるか、ソケットレンチを削るなどして自作してみようか。

取付面のようす

大量にグリスを塗っていたためか、特に傷みは見られない。
ゴム製のインナーシールリングが取り付けられている。

取り付けボルト

ボルトの六角穴のようす

ワッシャーのようす

フリーホイールと接する側に凹みあり。

ワッシャー(ハブと接する側)

厚みは1mm。

 

新しいフリーホイール(不適合)

FH-C201用フリーホイール

FH-C201 COMPLETE
FREE WHEEL BODY&CA Y3SL98030

シマノ製品情報で確認してみると、FH-M525-Aと互換性のあるFH-M475。
Amazon商品ページによると、FH-RM40-8 FH-M475-S FH-M475-L FH-C201 FH-2200-L FH-2200は互換性があるらしい。
末尾の-Lと-Sの多少の違いはあるが、おそらく適合するはず。(結果は適合せず。)

気になっていた「右防水キャップ付き」というのは、固定式の金属製シールワッシャーだった。
Amazonレビューを見るとシールワッシャーは外せるようだが、指先に渾身の力を込めて引っ張ってもビクともせず。おそらくは簡単に外れないように圧入してあるのだろう。無理は禁物だ。

 

左 今回取り外した品 右 新品

違いはシールワッシャー。右は固定式で外れない。出っ張りが気になる。

横は全く同じ。

違いはゴム製のインナーシールリングのあるなし。
新しく購入したものはシールリングなし。全て金属になっている。
これが何を意味しているのか、後ほど分かる。

 

新しいフリーホイール(不適合)の組付け

グリスを塗って元通りに組み立てる。
まずはワッシャーを取り付ける。

ハブとフリーホイールのかみ合わせに部分にグリスをたっぷりと塗っておく。

玉押し(右側)

若干の傷みが見られるが、これくらいならまだまだ大丈夫だろう。

玉押し(左側)

左玉押しを裏返す。ダストカバーは一体もの。両側の玉押しに付いている。

歪みのある左シールリングは新品に交換する。
ハブの型式から図面を検索してパーツ番号を調べた。

MTB最高グレードのXTRのもの。2個ずつ購入した。

HB-M970
Y26D10000

 

ハブシャフトを通して左の玉押しを締め込んでゆくと、シールワッシャー(防水キャップ)に当たってしまうことに気がついた。何度やっても、玉押しはボールベアリングに当たらず。

 

元のフリーホイールの整備

仕方なく元のフリーホイールを整備して使うことにした。
フリーホイールの分解は4箇所の凹部に工具を掛けて外せるようだが、工具は持っていない。

ネットで調べてみると分解せずとも、洗浄して注油するだけでもいいらしい。
試しにやってみることにした。

裏側のインナーシールリングを取り外す。
柔らかいゴム製なので傷めないように注意。マイナスドライバーを隙間に突っ込むと簡単に外れる。

シールリングを外すと、中にたくさんの小さなボールベアリングが見える。
受け皿で受けておいてから灯油を流し込む。するとたくさんの汚れが出てきた。

およそ20,000km走ったのに一度も整備しなかった。汚れていて当然だろう。

灯油を追加して全体を浸す。
サビの赤茶色とどす黒く汚れたグリス。そしてオーストラリアのものと思われるたくさんの砂。

指で回してラチェット機構を作動させ、中の汚れをしっかりと落とす。

何度もしつこく回しておっさんの気が済んだところで掃除終了。灯油分を切って粘度の低いチェーンオイルを流し込む。

たっぷりのチェーンオイルで灯油を洗い流した。ピカピカに輝くベアリングたち。
1個分隙間が空いているように見えるのは気にしないでおこう。

そしてプレミアムグリスを詰め込む。

フリーホイールのグリスは粘度が低いサラサラのもの。プレミアムグリスだと粘度が高すぎてラチェット機構が誤作動を起こすのだとか。
粘度の低いチェーンオイルと混ざれば、ほどよい粘度になるだろう。

 

インナーシールリングは向きに注意して取り付ける。

なるほど、素人には分解は難しいから、インナーシールリングを外して定期的に注油しろということか。
そうならそうとどこかに書いておいて欲しい。「甘ったれるんじゃねー。」そんな声が堺の方から聞こえてきそう。

FH-C201用の間違えて購入したフリーホイールはシールリングなし。分解できないので使い捨てということか。調べてみるとFH-C201のハブは安物。

元通りになったフリーホイール。
指で回してみると、カラカラと静かで軽やかなラチェット音を発して回るようになった。

フリーホイールの整備はよし。
あとは元通りに組み立てるだけ。

玉当たり調整ヨシ。なんと調整が一発で決まった。

 

整備したフリーホイールのその後

こうしてフリーホイールの整備は完了!
ラチェット音が静かになったうえ、軽やかに回るようになって気持ちよく走れるようになった。
歯飛びの症状は激減してストレスフリー。

フリーホイールの整備自体は簡単だが、付帯作業が多くて手間が掛かる。
リヤハブの整備のついでに必ずやっておいた方が良い。
いくら2,000円程度で買えるフリーホイールも、ハブを開ける度に使い捨にしては勿体ない。かと言って整備しないのは後々面倒なことになる。

今までの経験によればDeoleハブの整備は5,000km毎でよし。同じくフリーホイールも5,000km毎。雨天走行が多ければ、もう少し早めにやった方がよいだろう。

お手頃価格のDeoleハブだが、整備すれば長持ちするし愛着も湧く。

インナーシールリング付きのフリーホイールであれば、分解せずに洗浄・注油が可能です。
 

パーツ購入の失敗に懲りて、正しい予備品を購入しておいた。
安かったので一式を購入。固定ボルトは予備で持っておいた方がよいと思った。

FH-M525A COMPLETE FREEWHEEL BODY
Y3SP98100

フリーホイール、固定ボルト、ワッシャーのセット。右シールワッシャーが付属する。

*フリーホイール単品はY3SP98110 FREEWHEEL BODY UNIT

 

よく確かめもせず互換品の類似品を購入してしまったことを反省した。
指で回してみると、ガタツキがなくカラカラとスムーズに回った。
やはり中古品とは大違いだ。

完全に油切れを起こしていたフリーホイール。今回の整備で復活したものの次回で交換か。分解して内部構造を確かめてみよう。

使い込まれてはいるが整備が行き届いている(かも?)自転車。
擦り傷やペンキの剥がれなど多数あって新品にはない味わいがある。これぞクロモリのツーリング車、働く自転車だ!

などと自己満足に浸ったところで今回は終わり。