ハブダイナモで自転車を常時ライト点灯する~ハブダイナモ付きホイールの入手~

こんにちは。からあげです。

ハブダイナモの必要性

2019年自転車でオーストラリアを13,000km以上走って分かったことは、自動車は凶器(狂気)以外の何物でもないということ。町中ではゆっくり走る車でも、郊外に出ると時速100km以上のスピードでかっ飛ばす。(郊外での法定時速は最高110km/h~130km/h。日本とは違いスピード違反する車は少ない。)

人気のない荒野では交通量は少ないが、十分な距離を離さずに抜いて行く車が少なからずいる。対向車がいるわけでもないのに、なぜか自転車の近くを走ってゆく。それも手を伸ばせば届きそうな距離。
走行中はミラーで頻繁に(およそ20秒~30秒毎)後方確認しているものの、疲労で注意力が散漫になっていることもあるし、時々猛スピードで迫ってくる車もいたりして、事前に察知できないこともある。

ドライバーから見えやすくするにはどうしたらいいか。私が出した答えが「ハブダイナモで日中でもライトを点灯して走る」ことだった。ほかには反射ベストの着用。

ハブダイナモとは、ハブに内蔵されたダイナモ(発電機)のこと。ハブとは車輪の中心にある回転部分で、自転車では最も重要なパーツだ。

実はハブダイナモが欲しい理由はほかにもある。夜間走行では路面がしっかりと分かる明るいライトが欲しいし、USBに出力してスマホやモバイルバッテリーを充電したい。野宿と自炊で旅を続けていると、充電できる機会は思いのほか少ない。天候不良が続いたオーストラリア前半は常に電気不足の状態だった。

ツーリング途中で出会ったニュージーランド人の自転車を見てハブダイナモが猛烈に欲しくなった。
29インチMTB。フラットバーにエンドバーとDHバーを装着し、今流行りの軽量バイクパッキングスタイルで旅をしていた。その洗練された装備品から、経験豊富なベテランのようだった。

彼は暑い日中を避けて夜明け前に夜間走行して、一日の走行距離を150kmまで伸ばしていた。走行距離を伸ばすと、携帯する水・食料を減らすことができるという大きなメリットがある。彼は水を必要最小限の6Lまでとし、食料は軽量なフリーズドライにして荷物の大幅な軽量化を行っていた。

夜間走行の安全を支える強力なヘッドライト。スマホで撮った写真を見せてもらうと、まるでオートバイのライトのように周囲を明るく照らしていた。遠くからでも標識の文字がハッキリと読めた。

ヘッドライトの手前側

日中走行するときに中央のUSBポートでモバイルバッテリーの充電を行い、夜間は充電したそのモバイルバッテリーを左の端子に繋いでライトを点灯させる。右のトグルスイッチがライトのON・OFFスイッチ。

私は、毎日のように強い向かい風に吹かれて苦しんでいた時、風が弱くなる夜間に走行して距離を稼いでいた。当初は夜間走行を想定していなかったため、電池式の暗いライトで走ることになった。路面の状態が分かりづらいし、時々やって来る超大型トラックにハイビームで照らされて目の前が真っ白になったりもした。

野宿ばかりだと、スマホやデジカメ、モバイルバッテリーなどの電子機器を充電できる機会が限られる。立ち寄り先にコンセントがあれば充電し、外で休憩するときは、ソーラーパネルを広げて充電していた。そのため休憩のたびに荷物の出し入れに結構な手間が掛かった。

「ハブダイナモが欲しい。」心の底から思ったのだった。

帰国してから彼が使っていたライトを調べてみると、Sine Waveというメーカーのcycle beaconというダイナモライトであることが分かった。値段は驚愕のおよそ4万円。
普段は野宿で宿泊費を節約しても、装備品だけはケチらない私だが、4万円もする高級なヘッドライトはさすがに買う気が起きなかった。

 

ホイールの種類

完組ホイール

自転車店で販売されているホイールは、完組ホイールと手組みホイールの2種類ある。
現在の主流は完組ホイールで、構成部品のハブ・スポーク・リムが組み立てられて完成した状態。専用設計で軽量なところが一番の利点。ついでに財布も軽量化されるというおまけ付き。

ハブダイナモはかなりの走行抵抗があって、ロードバイク乗りには敬遠されていてまるで需要がない。そのためハブダイナモ付きの完組ホイールはほとんど出回っていないのが実情だ。

手組みホイール

昔ながらのお店でパーツから組み立てたホイール。好みや用途によってパーツを選べ、スポークの組み方、テンションの調整できることが大きな利点。希少なハブダイナモ付きのホイールが欲しい場合、自分で組める人以外は、自転車店に注文して組んで貰うことになる。自転車店の腕前がホイールの仕上がりに大きく影響するので、信頼できる店で頼むようにする。

 

私が希望するハブダイナモの仕様

クイックリリース式

ホイールの固定方法にはスルーアクスル式とクイックリリース式に2種類あり。
自転車(SURLYディスクトラッカー)がクイックリリース式のため、クイックリリース一択となる。

現在は剛性のあるスルーアクスル式に移行しつつあるが、着脱が容易で輪行しやすいクイックリリース式は捨てがたい存在だ。

2020年春、ディスクトラッカーはフルモデルチェンジにより、スルーアクスル化され、ジオメトリーなどの変更もされました。

 

センターロック式

ディスクブレーキのブレーキローターの固定方法は、センターロック式と6穴式の二種類あり。
シマノのハブダイナモのディスクブレーキ用はセンターロック式のみ。

オーストラリアで後輪のリムが割れた時に、リヤホイール一式を交換して6穴式のハブとなっているので、リヤもセンターロック式に戻したい。

6穴式はセンターロック式よりも安いし、ホイールを付けたままの状態で、取り付けボルトが緩んでいるか確認でき、なかなか捨てがたい存在。

出力3W

ハブダイナモで発電される電気は交流6V。出力は3w、2.4w、1.5wなど、だいたい3種類がある。
前後ライトのほかにUSB充電器用の電源も確保したいので、最高出力の3wが欲しい。

 

以上の3つの条件を満たすハブダイナモは、SP社PL-8とシマノのDH-UR700-3Dの2つが候補に挙がった。

SP(Shutter Precision シャッタープレシジョン)PL-8

出力3W センターロック クイックリリース式

オーストラリアで出会った数名のサイクリストたちが付けていたものがSP社のハブダイナモだった。
SP(Shutter Precision)社は台湾のハブダイナモメーカーで、安価なわりに品質が良く人気がある。

シールドベアリングメンテナンスフリー。自転車屋の店主によると、ベアリングを交換する際はホイールを解体する必要があるとのことだった。スポーク穴36Hのタイプは日本では取り扱いなし。

 

shimano DH-UR700-3D

出力3W センターロック クイックリリース式

DEORE XT T8000 シリーズのハブダイナモ。ベアリングがカップアンドコーン式でメンテナンスが可能。スポーク穴36Hタイプもあるが、選べるリムの種類が少なくなり、出先でリム損傷などのトラブルに見舞われた場合には代替品の入手が難しくなる。

 

入手したハブダイナモ付きホイール

実家に来てしばらくすると、東京の自転車店から荷物が届いた。
いつもお世話になっている自転車見聞店さんにお願いして、ハブダイナモ付きのホイールを組んで貰ったのだ。

元世界一周サイクリストの店主が営むサーリー専門店。競技志向が強い業界内で、唯一と言っていいほどツーリング系にめっぽう強い。自分の好みと用途を伝えると、本人にぴったりの自転車を組んでくれる。

今回も店主のアドバイスをもとに海外でのツーリングを重視して、耐久性があり入手しやすいものを選んだ。今回の主役のハブダイナモは、shimano DH-UR700-3D。

 

ホイールのサイズは26インチ。スポークはDT Champion 2.0mmで本数は32本

フレームサイズ46cmのディスクトラッカーは、27.5インチ(650B)のホイールも装着可能だが、身長165cmの私には26インチがベスト。一度試してみたい気もするが、まだ時期尚早。ヨーロッパに行くときは考えないでもない。

リムはAlexrimsという台湾のリムメーカーのDM18。ダブルウォールでハトメ付きで十分な強度がある。
リム幅は24.4mmでバルブホールは仏式となっている。


メーカーサイトより

DM18 リム断面図 単位:mm

 

Shimano DH-UR700-3D

ベアリングの整備ができるカップアンドコーン式だったのがシマノを選んだ理由。
シールドベアリングでメンテナンスフリーのSPにもかなり惹かれた。

ハブダイナモをブレーキローター側から見る。

ローターの着脱が簡単なセンターロック式。

玉押しとロックナット用のスパナはともに17mm。

反対側のコネクタ側から見る。

コネクタはE2端子
ほかにJ1・J2端子などもあって紛らわしいので注意したい。

コネクタを外すと電極2つが見える。

こちらがコネクタのキャップ。

角度を変えてもう一枚。

バルブ穴の拡張(仏式→米式)

リムのバルブ穴は仏式タイプなので、ドリルで穴を大きく広げて米式バルブに対応させる。
2019年オーストラリアに出発する前に、前のリム(Alexrims DH-19 26″32H)も同様にバルブ穴を拡張している。

米式はバルブが太くて丈夫。海外でも換えのチューブを入手しやすくさせる。

 

前回と同じように、バルブ穴は7.5mm→8.0mm→8.3mmと3段階にドリルで少しずつ穴を広げて行った。おっさんはとても心配性なもんで。

ドリルで穴あけ直後は、こうして穴の角にバリが出ている。息を吹きかけたり、リムを逆さにして振ったりして、リム内部からアルミの金属粉を出しておく。パンクの原因になるかもしれない。

ヤスリで丁寧に磨いてバリを取る。

塗装が剥がれたところは黒のペイントマーカーを塗っておく。

早速米式バルブのチューブを付けてみる。「うむ、満足の仕上がりだ。」などといつもの自己満足に浸る。前輪は米式バルブのチューブに交換することにした。

DIYは自己満足ためだけにすると言っても過言ではない。

 

タイヤの取り付け

チューブを交換するついでにリムテープも交換する。
近所のホームセンターで買ってきた26インチのママチャリ用。

こういう時にホイールサイズが26インチで良かったと思う。

リムテープを付けてみると、幅がピッタリ。
幅広のテープでリムの内側全面を保護してくれる。バルブホールにも若干の余裕あり。

見た感じはチューブと同じゴムの素材に思える。今度、捨てるチューブを使ってリムテープを自作してみようか。

タイヤはもとのシュワルベ マラソンプラス 26×1.75”から同じメーカーのマラソン26×2”に変更する。マラソンプラスと通常のマラソンとの違いは、内蔵されたパンク防止帯が5mmか3mmと、ブロックパターンの違いのみ。

2インチ幅のマラソンはオーストラリアツーリングで予備として持ってゆくつもりだったが、発展途上国でもないのに新品タイヤ2本持ってゆくのは過剰だと判断して止めにしたのだった。

止めにして正解だった。13,000km以上走って丸坊主になったが、まだパンク防止帯5mmが残されている。

26×2.0インチの表示

タイヤ幅が1.75インチから2.0インチにサイズアップすると、約6mm太くなる。
このあとの西日本ツーリングで違いを嫌というほど体感することになる。

26×2.0インチのマラソンタイヤの感想はまた今度詳しく説明しよう。

前輪にハブダイナモ付きのホイールを付けたところ。

試しにホイールを空転させてみると、かなりの抵抗を感じる。これがハブダイナモの回転抵抗かと理解する。このあとライトを点けると、ますます重たくなることになる。

さて、どうなることやら。
このあとは前後ライトとドロヨケの装着をお届けする予定。