ハブダイナモ(DH-UR700-3D)の断線修理~内部ユニットの交換~

こんにちは。からあげです。

誤ってハブダイナモの電線を切る

自転車生活を送っていると、知らぬ間に走行距離が増えてゆく。
新型コロナの影響で世界的に自転車パーツが不足している現在、こまめに整備を行ってより一層パーツを長持ちさせたい。

今回は前輪のハブダイナモの整備を行うことにした。前回からすでに約4,500km走行していて整備する時期が近づいている。ここ最近は酷使した記憶はないが、重要なハブの整備は5,000km毎にやっておきたい。

構造が複雑なハブダイナモの整備は今回で4回目。作業にも慣れて余裕が出てきた。
「さっさと終わらせてゆっくりしよう。」そんなことを考えていた。

ハブの整備内容はベアリング周りを洗浄し新しいグリスを充填して玉当たりの調整。
右玉押しを外し終えたところで、これからキャップを緩めるところ。

このあと悲劇は起きた!

考え事をしながら作業をしていたら、コイルから出る電線を2本とも切ってしまう。
慣れた時こそ慎重に作業を進めなければならない。完全に注意散漫の状態だった。

電線の先に付いているのはE2端子。シマノのハブダイナモの端子にはいくつか種類がある。

ソケットレンチに巻き込まれてねじ切れた。なんとなく手の感触がいつもより重たく感じたが、そのままレンチを回してしまった。

使用していたソケットレンチ36mmの12角。差し込み角9.5mmのラチェットハンドルに変換アダプタ(9.5mm→12.5mm)を使って取り付けていた。

ソケットレンチは手早く安全確実に回せる便利な工具だが、ソケット部でフタをしてしまうため、当てているボルト・ナットのようすが見えないのが欠点だ。

これまで高価なシマノの専用工具ではなく、安価なソケットレンチを使用していた。ある程度緩んだら手で緩めて外していたのに、今回に限ってソケットレンチで最後まで回して外そうとしてしまった。迂闊だった。

内部ユニットは鉄片とコイルで構成された部品でハブ本体に内蔵されている。コイルの中から電線2本が出ている。

切れた箇所は先端部分の端子付け根でハンダで修理できそうな気がするが、狭い溝に通る電線のため修理には高度なハンダ技術が要求される。しかも電線は柔らかいより線ではなく硬い単線。今の私には難しい。

コイルを分解して内部で電線を付け替える方法なら難易度が低い気がする。

コイルの右側は廻り止めプレートが取り付けられている。

左側はナットを潰してあって緩めるのは難しい。
ナットは薄型の八角形で2面幅は25mm。

先に緩める方はおそらくこちら側。潰した部分をどうやって取り除くか。無理をするとナットが歪んで緩められなくなる。分解はまたの機会に行うことにした。

 

予備ホイールに交換する

やってしまったことはどうにもならない。あとは対処するのみ。
自転車が日常の足だと自転車の故障は非常に困る。パーツが届くまで家に引きこもって待っている訳にもいかない。

ダイナモ付きのハブダイナモは、壊れてしまえばただの重たいハブと化す。発電の抵抗がなくても、ハブ自体が重たくて走りも重たくなる。予備のホイールがなければ、贅沢言わずに重たいハブダイナモのホイールでも使わねばならない。

今回ほど予備ホイールの有り難さを感じたことはない。屋根裏の収納スペースで保管していたXTハブのホイールを取り出した。これは2019年オーストラリアを走ったときのもの。軽量で回転は滑らか。走行距離は17,000kmほどだがフレもほとんどなくまだまだ使える。ディスクブレーキはリムが消耗しないのが良い。

優れた整備性・シール性・耐久性。三拍子揃ったXTのハブ(HB-M8000 32H)。
前回整備してから走行距離は僅かだが、保管してから1年以上は経っている。念のため分解洗浄してグリスアップを行うことにした。

ハブを分解して灯油に漬け込む。
しばらく放置して古歯ブラシで丁寧に擦って汚れを落とす。
プレミアムグリスはやや変色していた。

ベアリングはリテーナーから外し、茶こしに入れて洗浄する。
灯油は繰り返し使える経済的な洗浄液。ウエスで濾せば何度でも使える。
引火性の高いガソリンに比べると、灯油は扱い・保管が非常に楽だ。

使用後はペットボトルに入れて日の当たらない場所で保管する。

 

交換用パーツの入手

内部ユニット


ハブダイナモ(DH-UR700-3D)展開図~シマノ公式ウェブサイトより
シマノの交換用パーツは充実しているが、やる気のないハブダイナモに関しては非常に寂しい。
左ベアリング周り(玉押し、シールリング、ベアリングなど)は単品販売しているが、右ベアリング周りは内部ユニット一式のみで、単品販売されていない。
今回欲しいのはシャフトが貫通するコイルの部分だけだが、内部ユニット丸ごと注文することになった。

ハブダイナモ(DH-UR700-3D)展開図~シマノ公式ウェブサイトより
部品番号 コード番号 名称
3 Y2DN98040 Internal Assembly(Black/Axle Length 108mm)

パーツ代は送料込みで約5,000円。痛い出費だが勉強になったと思えば安いものだ。
内部ユニットにはキャップの色別の黒と銀の2種類あり。私が注文したのは黒の方。
スポーツ自転車用のハブダイナモは需要が少ないためか、メーカーに在庫があって助かった。
注文してから10日ほどで届いた。

 

ハブダイナモ用パーツのほか、専用工具とチェーン、ブレーキ・シフトインナーケーブルを同時に購入した。
まとめて大量購入すると必要としている人に行き渡らくなるので、なにかのついでに少量ずつ買っている。

内部ユニットは簡素な無地のダンボール箱に入っていた。
製造はシンガポール。

ビニール袋に入れられた内部ユニット。説明書などは一切なし。

内部ユニットにはキャップに付いた電線、ベアリング類が付属する。

右側の端子周り。キャップを締め付けたあとで玉当たり調整を行う必要あり。

購入したものもナットが緩まないように潰されていた。
同じく反対側のナットには廻り止め金具あり。

内部ユニット一式の重さは264g。
鉄片と銅線を巻いたコイルが詰まっているため非常に重たい。

 

ハブダイナモ用専用工具

TL-DH10 CAP REMOVAL TOOL FOR DYNAMO Y12009000

ハブダイナモのキャップを外すためのシマノ専用工具。
同じ過ちを繰り返さないように高価な専用工具を購入することにした。

32mmと36mmの真っ直ぐなメガネレンチで厚さは4mm。

 

36mm側

角が立っていて食付きがよい。
普通のメガネレンチだと角が面取りされていて掛かりが浅く舐めやすい。

32mm側

 

ハブダイナモの洗浄

前回はキャップを外す際に電線を切ったところで作業を中断した。
今回は続きのベアリング部の分解洗浄を行う。

まずは左側。ハブダイナモにはシールリングとリテーナー付きのベアリングが付いたままになっている。
シールリングは前回の整備で交換してある。

左:シールリング 右:リテーナー付きボールベアリング

柔らかいプラスチックの棒(中古歯ブラシ)でこじると簡単に外れてくれた。
シールリングは傾いた状態で取り付けると、玉押しに押されて変形してしまい次回外しづらくなる。たいていは再使用できない。

雨天走行が少ないためかグリスの劣化は少し。

部品番号 コード番号 名称
5 Y26D10000 Seal Ring

 

左玉受け(ワン)のようす

右側のキャップにはベアリングと玉受けが内蔵されている。
シールリングは歪んでいるため、ラジオペンチで摘むなどして取り出す再使用不能の方法をとらねば外すことができない。

新しいキャップはまだ当たりが付いていないし、今後のために予備として取っておきたい。古いキャップを整備して使うことにした。

右側ベアリングもリテーナー付き。
分解してベアリングの当たり面を見られないのが非常に残念。こちらのグリスの劣化も少し。

しばらく灯油に浸け置きして内部のグリスを溶かす。

灯油から上げて古歯ブラシで擦る。
何度か繰り返す。

最後にカメラ用の手動ブロアで灯油分をしっかりと切る。

灯油でキレイになったベアリング。内部が気になるができないものは仕方がない。できる範囲で整備する。

工具を掛けるキャップの角がペンキが剥がれている。あとでペイントマーカーを塗っておく。

 

新しい内部ユニットの分解

新品を使用するのはコイルのみ。キャップ周りは予備でとっておく。
電線を切らないように慎重に作業をすすめる。

まずはハブスパナ20mm2本を使用してロックナットを取り外した。

カバーを外すと端子と電線が顕になる。
写真を撮りながら構造をよく観察して覚える。

防水用シリコン。金具がくっついてしまっていて外すのに手間取った。

この状態で玉押しを外すと電線が引っ張られて切れるおそれあり。
細いマイナスドライバーの先で丁寧にシリコンを取り除く。

玉押しを慎重に緩める。

ようやく玉押しが外れた。失敗は許されないと思うと余計に緊張する。ノミの心臓を持つおっさんだ。

クイックリリースシャフトが貫通するコイル。

電線には傷みはなさそう。硬い単線で弾力性に乏しい。取り扱いには非常に気を使う。

ナットの廻り止め。

予備として保管しておくキャップ周りの細かい部品。
どれも単品販売されていない貴重なもの。

キャップ内蔵の右ベアリングにはたっぷりとプレミアムグリスが盛られていた。

 

ハブダイナモの組み立て

コイルのみ新品に替えてハブダイナモを組み立ててゆく。
全て洗浄済み。

ハブに使用するグリスは高品質高耐久のシマノプレミアムグリス。
チューブ入りが残り少なくなって使いづらくなってきた。

そんな時は100円ショップの注射器に詰め替えて使用する。
手に馴染む小型で扱いやすく必要な分だけ出すことができる。入れすぎると扱いづらくなるので気をつけたい。

使い終わったあとは少し引いて空気を入れておくと、グリスが出てくることはない。

内部ユニットを挿入し、まずは左側から組み立てる。
ベアリングを入れてこれから玉押しを付けるところ。
玉押しの当たり面にもたっぷりとグリスを盛っておく。

ロックナットも軽く締め付けておいてから右側キャップを取り付ける。

キャップのネジ山には必ずグリスを塗っておく。

電線に注意しながら手で締められるところまで締めておく。

キャップの締付け

シマノ専用工具(TL-DH10)を当てたところ。
ホイールにタイヤを付けてある方が断然作業しやすい。先に付けておくべきだった。

専用工具だけあってしっかりと噛み合う。手応えは十分あり。
電線が露出しているので安心して作業を進められる。

横方向から掛かり具合を確かめる。

キャップをしっかり締め付けたあとは玉押しの取り付け。
シャフト溝にシリコンを塗って防水処理する。

シリコンを塗ったようす。

右玉押しを付けたところで左の玉押し・ロックナットを本締めしておく。
シャフトのネジ山とロックナットが面一になる程度で固定する。

このあと何を血迷ったか、誤った方法で取り付けようとしてしまう。
この金属製リングの切り欠きに電線を通してシャフトから電線を取り出す。それなのにこのリングに電線を通すのものだと勘違いする。

これまで何度もやっているので途中で気づくものなのに、なんとリング内側の出っ張りをヤスリで削るという暴挙に出てしまう。完全に冷静さを失っていた。

間違った取り付け例

これはダメな例。このようにして電線をリングに通してはダメ。
何度もやり直して危うく電線を傷めてしまうところだった。

新しいリングに交換して電線の通る切り欠きにシリコンを塗る。

正しい組み立て例

冷や汗を垂らしながらようやく正しく組み立てることができた。
あとはプラスチックカバーを嵌めてロックナットを付けてから玉当たり調整を行うだけ。

玉当たり調整中。20mmのハブスパナが右の玉押しとロックナットにジャストフィットする。

ハブダイナモの玉当たり調整は通常のハブの感覚とは異なる。若干のガタを残した状態でロックナットを締め付けると丁度よい。

ようやくハブダイナモの組み立ては完了。
ホイールを付けたあとはまず電線を繋がずに回転させて当たりを見る。

滑らかな回転だ!独り満足する。

 

E2端子のショートが原因でライトが点かない

次に端子を繋いで回転させるとまるで手応えがなく、まるで電線を繋ないでいない時のようにスルスルと回転する。

フロントライトは点灯せず。しっかりと組み立てたはずなのに何故か点かない。ひょっとして今回も電線を傷めてしまったのか。そんなことを考えながら出力端子にテスターを当てて見る。

慌てた私はレンジを直流10Vに合わせて測定してしまう。針が僅かに動き発電していることだけは分かったのだった。
自転車のハブダイナモの出力は交流6V。最上級のDH-UR700-3Dは最大出力3Wを発電する。

ライトが点灯しない原因は不明。
とりあえずハブを再度分解して組み立てる。
電線周りを見てみるが、傷んでいる箇所はなし。

キャップのペンキの剥がれにペイントマーカーを塗って心を落ち着かせる。
冷静になって原因を考える。

いくら考えても分からず。不良品と判断して購入店に連絡したのち、他店で同じ物を注文する。

しばらく経ったのち再度原因を究明する。ハブダイナモに異常なし。電圧は低いが出力している。(手回しのためそれほど電圧は上がらない。)

ほかに考えられるのはE2端子のコネクタ。しばらくはビニールテープでフォークに巻きつけて走行していた。

コネクタの内部を覗いてみると、より線が何本か切れてショートしているのが分かった。原因はコレだ!
写真はショートした状態を直したところ。

繰り返し抜き挿しするうちに切れてショートしたようだ。

端子を繋ぎ直してホイールを回すといつもの重たい抵抗が蘇り、まばゆい光を発してくれた。
ライトが点かない原因はE2端子部分のショートだった。

 

ハブダイナモ断線修理まとめ

ハブダイナモが直るまでしばらく日中点灯せずに走っていたが、高齢者ドライバーの見落としが数多くあった。横道から飛び出してくる、強引な右折などなど。目立つ蛍光ベストを着用していたのに危険な目に何度も遭った。高齢者ドライバーは悪意はないが非常に危険な存在だ。今後はより一層注意して走ろうと思う。

今回のハブダイナモの修理は失敗が失敗を呼び、最後にはもう一つ内部ユニットを購入する羽目になってしまった。(客都合によるキャンセルは不可)同じ物がいくつもあっても使い道がないが、予備ができたことで積極的に整備を行うことができる。不注意により1万円の出費。非常に痛いが失敗を繰り返すことで成長できる。もう今度こそ失敗はしまい。

ハブダイナモは故障のおそれがあり整備の手間は掛かるが、デイライト走行するとその絶大な効果を体感できる。夜間走行も明るくて走りやすくバッテリー残量を気にする必要がない。抵抗が増えて重たくなる分トレーニングにもなる。体感で3割増しの負荷が掛かり、常時ゆるやかな坂を登っている感じになる。下り坂ではスピードが出すぎることはなく、ブレーキにも優しい。

フロントライトは1,500円程度のマグボーイ。昼間でも明るく照らし、周囲に存在を伝えてくれる。一度基板のハンダが剥がれたが、修理後は絶好調になっている。

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