ブレーキ・シフトのインナーケーブルの端をはんだ付け処理する

こんにちは。からあげです。

はじめに

通常、ブレーキ・シフトのインナーケーブルの端はキャップを被せてほつれないように処理する。もっとも簡単で一般的に用いられる方法だ。

ただ、このエンドキャップを被せる方法には重大な欠点がある。それはインナーケーブルが抜けなくなること。
安全のためにインナーケーブルを定期的に抜いて点検し、グリスを塗布して滑らかに動くようにしたい。しかし、エンドキャップを外してケーブルを抜き出すと、端がほつれてくるおそれがある。ケーブルのほつれは強度の低下につながり危険。
点検もしないでケーブルをただ定期交換するのは、単なる資源のムダづかいポリマーコーティングのケーブルは非常に高価で、財布が軽量化されてしまう。
何か良い方法はないものかと探してみると、はんだ付けして処理する方法が出てきた。

私は電子工作はやらないため、はんだこてはあまり使わない。だがいつも同じことの繰り返しではつまらないし、頭がボケてくる。新しいことを始めるチャンスだと思い、はんだ付けに挑戦してみることにした。

インナーケーブルの加工、はんだ付けに必要な道具

ワイヤーカッター

PWT ワイヤーカッター 自転車用 PCT-02

アウターケーブル・インナーケールブルの切断、アウターケーブルの整形、アウターケーブル・インナーケールブルのカシメが可能なワイヤーカッター。

■切断能力:最大φ2mm
■全長:147mm
■重量:118g
■材質:SK-5(炭素工具鋼)
■開き防止ロック機能搭載

PWTウェブサイト 商品紹介ページより

 

インナーケーブルやアウターケーブルの切断には専用のワイヤーカッターが必要だ。
ペンチやニッパーで切ると、切り口が潰れてしまう。
切断能力は最大Φ2mmあり、1.6mmのステンレス製ブレーキケーブルも切ることができる。

PWTは新興の台湾工具メーカー。
価格はシマノのおよそ1/3と、非常に安価なのが嬉しい。
これまでPWT製のペダルレンチ、六角レンチ、BBツールを使った経験から、安価だが品質がとても良く、安物買いの銭失いにはならないことを知っていた。
最近ではシマノの工具を買う前にPWTのものをチェックするのが習慣になっている。

反対側

開き防止ロック機能付きで刃先を閉じたままの状態で安全に保管できる。
解除はノブを動かすだけの簡単設計。

ロックを解除した状態。スプリングの力で自然と口が広がるようになっている。
微妙な力の加減をやりやすい。

工具本体にアウター整形用ニードルが付いている。
どこに行ったか探さなくていいので助かる。作業に集中すると、すぐにものをどこかにやってしまう。

キャップは緩く、すぐに紛失してしまった。

刃先のようす

切断能力は最大Φ2mm。刃先周りの肉厚は3.2mmでしっかりとした作り。

刃先はケーブルを咥え込んで離さない形状。これでキレイに切断することができる。

はんだこて

太洋電機産業株式会社(goot) 一般電気用はんだこて KS-100R

定格電圧:100V AC 50/60Hz
消費電力:59W
温度:525℃
ヒーター:ニクロムヒーター
全長:240mm
重量75g

こて先は高品質、長寿命のレッドチップを採用。
グリップは軽くて握り易く、長時間の作業にも疲れません。


太洋電機株式会社ウェブサイト 製品情報ページより

 

インナーケーブルのはんだ付けには、板金もできる平型ヒーター搭載のBNシリーズが最適と思われたが、扱いやすさを重視して一般電気用のKSシリーズを選択した。
KSシリーズの中で一番パワーのあるKS-100Rを選んだ。定番の商品だけあって、シンプルでしっかりとした作り。
こて先のようす
高品質、長寿命のレッドチップが搭載されている。
角度を変えてもう一枚。先端はやや太め。

ステンレス用はんだ

ステンレス用はんだ

品番:SD-69
組成(Sn-Pb):63-37%
融点:183–184℃
線径:φ1.6mm
長さ:約2.2m
ヤニ:なし
太洋電機産業株式会社ウェブサイト製品情報より
 
私は自転車生活をしていて雨の日にも乗ることが多いので、ブレーキとシフトのインナーケーブルは、錆びにくく丈夫で耐久性のあるステンレス製を選ぶことにしている。
ステンレスにはステンレス用のはんだが必要。
鉛入りのはんだは、はんだの乗りがよくて初心者には扱いやすいが、人体に有害な鉛が含まれているので、できるだけ鉛フリーのはんだを選びたい。購入したあとで鉛入りだと気がついた。

またヤニ入り・ヤニなしとあるが、ヤニとは松脂(まつやに)のことで、松脂に含まれる「ロジン」を主に使用している。酸化防止、洗浄、きれいな半田付けのために、フラックスにもヤニは含まれている。
フラックスを使用するのであれば、ヤニなしはんだでも良い。
 
 

ステンレス用フラックス

ステンレス表面には強力な酸化皮膜が形成されているため、フラックス(はんだ付け促進剤)で落としてやる必要がある。はんだ付けをしたあとで、錆びないように水洗いなどをしてフラックスを完全に落としておく。
フラックスは強酸性なので取り扱いには十分注意する。

フラックスはステンレスの強力な酸化皮膜を落とすことができるステンレス用を選ぶ

今回、割安な容量100mlの方を選んでしまったが、個人の工作では使い切れないし、中身を出しにくいので、25mlの小さいボトルの方がよい。完全に失敗した。DIYではよくあること。こうして要らないものが徐々に増えてゆく。

その他

鉄工ヤスリ
パーツクリーナー
ウエス

はんだ付け作業

ドロップハンドルからマルチポジションハンドルへの交換で、プレーキとシフターのケーブルをやり直す必要に迫られていた。
単にハンドルだけ交換すればいい、というわけではないことを理解した。

シマノ claris BL-R2000

ハンドル交換の際、ブレーキレバーをドロップハンドル用からフラットバー用のものに交換することになった。
モード切替付きでキャリパーブレーキからVブレーキまで幅広く対応する安価なシマノ claris BL-R2000を選択した。
以前、センタースタンドと一緒に自転車屋さんに頼んでおいたもの。

ブレーキレバーには、スチール製ではあるがケーブルセット(エンドキャップ付き)が付いていて割安感がある。アウターケーブルのみ付属品を使用する。

 

ブレーキインナーケーブルのエンド形状 左:MTB用 右:ロード用

ブレーキのインナーケーブルは太さ1.6mm。MTB用とロード用ではエンド形状が異なるので注意する。

ブレーキレバー(claris BL-R2000)はMTB用ケーブルに対応する。

付属のスチール製インナーケーブルは使用せずに、ステンレス製のケーブルを用意した。高品質で安心安全のシマノのMTB用ブレーキインナーケーブル。長さは2050mmもあって、リヤの機械式ディスクブレーキにも十分届く。

ブレーキのインナーケーブルだけはケチらずに丈夫なステンレス製を選びたい。パッケージに「SUS」と表示されている。

SUSとはステンレス鋼を示す材料記号。Stainless Used Steelの略称で「サス」と読む。
 

子供の頃、自転車のブレーキケーブルに中古のスチール製を付けて乗っていた時期がある。(家が貧乏だったので自転車も中古)
ある日片方が切れたので親父に交換を頼んだが、忙しいからとすぐには交換してくれず。仕方なしに片方が切れたまま乗っていた。

その後まもなくもう片方のケーブルも切れて、崖下に転落することになった。下り坂の途中、崖手前のテクニカルな狭い直角カーブ、十分減速してアウト・イン・アウトで抜ける必要があった。
崖は2mも満たない高さで下が柔らかい畑だったので、私と自転車は無事。自転車を押して家に戻ると親父を叱り付けてすぐに交換してもらった。いきなりプツンと切れて、レバーがスカスカ。なす術なく崖に突っ込んでいった。

ブレーキケーブルが切れたあの時の恐怖は今でも忘れない。

 

中身を出したところ。エンドキャップが1個付属する。

まずはブレーキケーブルから処理を行う。
作業前にケーブルをチェックする。

アウターケーブルの末端にはエンドキャップが取り付けられている。
ただ付けてあるだけなので、かるく引っ張るだけで外れる。

ブレーキのアウターケーブルは短くカットするだけで、元のケーブルを再利用することができた。ワイヤーカッターで切ったあとヤスリで平らに削り、カッター付属のニードルで穴の形を整える。

インナーケーブルを固定したあと、出代20mm程度にしてワイヤーカッターで切る。
カッターの刃先が咥えたケーブルを離さない。

このようにキレイに切ることができた。
ステンレスのため、手応えは少し硬かった。

インナーワイヤーを切ったところで、はんだ付けを行う。
はんだこては予めコンセントに繋いで熱しておく。

ケーブルの先端にパーツクリーナーを吹きウエスで拭いて掃除してから、フラックスを塗布してはんだ付けを行った。熱いコテ先でケーブルの温度を上げてはんだを流し込む。
すると自分でも驚くほど簡単かつキレイにすることができた。練習なしのぶっつけ本番だった。鉛入りのためはんだの乗りはよく、ケーブル内に染み込んで行った。

角度を変えてもう一枚。
我ながら満足の仕上がり。
続いてリヤブレーキのインナーケーブルを処理する。
はんだ付けはとても簡単。逆にインナーキャップを付ける方が面倒のような気がする。
ブレーキケーブルの処理が終えたあと、シフトケーブルの取り付けを行う。
シフターを移動するので、シフトのアウターケーブルとインナーケーブルの長さが変わり、付け直す必要があった。
アウターケーブルはエンドキャップが6個も付属してお得なグランジ製を選択した。
 
シフトのインナーケーブルは太さ1.2mm、エンド形状はMTB・ロード共通になっている。
インナーケーブルは切れても命の危険はないが、リヤが切れると強制的に重たいハイになるので、シマノのステンレス製を選んでおいた。
シフト側は切れたら交換でもいいような気がする。
 
シフトのアウターケーブルを切る。
切り口のようす
中のライナーが潰れてしまっている。
ワイヤーカッター本体に付属するニードルで穴を整形する。
ニードルが本体に付いていると、工具を持ち替えることなく作業できて非常に便利。
整形後のアウターケーブル。
念には念を入れて、ヤスリで削って切断面を平らにしておくといいだろう。
切り口を横から見たようす
アウターキャップが入らなかったので、カッターナイフで角を落とすことにした。
このように角を落とした。
角度を変えてもう一枚。
無事エンドキャップを取り付けることができた。
エンドキャップはインナーケーブルの保護が目的。アウターケーブルの角で傷めないように必ず取り付けておく。
シフトインナーケーブルの切り口。
はんだ付け処理を行ったところ。
うむ、我ながら惚れ惚れする仕上がりだ。
 

インナーケーブルはんだ付け処理まとめ

今回初めてインナーケーブル端のはんだ付け処理に挑戦したが、とても簡単で拍子抜けした。
インナーケーブルを抜く度に、エンドキャップを付け直したり、ほつれて交換したりすることになるくらいなら、はんだ付けした方が良い。
時間が掛かるのははんだこてを温める時だけで、実際のはんだ付け作業はすぐに終わる。

以前、ブレーキのインナーケーブルのほつれを瞬間接着剤で修理したこともあり、今回も瞬間接着剤で処理しようかと思った。冒頭でも書いたとおり、毎回同じ方法ではつまらない。そこで新たなはんだ付けを行うことにした。

 

リヤブレーキのインナーワイヤーのはんだ付け処理のようす。
ケーブルの出代が長め。あとで20mmとなるよう短く切ってはんだ付けをやり直した。

はんだ付けの処理は見た目がキレイだし、インナーケーブルを抜き出しても端がほつれないのが良い。
何度か抜き挿ししてみたが、ほつれてくることはなし。

インナーケーブル端のはんだ付け処理のメリット

・見た目がキレイに仕上がる
・ケーブルを抜いてもほつれない。
 
ケーブルの定期点検を行いグリスを塗布しておくと、レバー操作が軽く、ケーブルが長持ちするようになり、経済的かつ安全に自転車に乗ることができるようになります。
ケーブル端は「はんだ付け」による処理をおすすめします。