ホローテックⅡ用BB (ボットムブラケット) SM-BB52の交換

こんにちは。からあげです。

はじめに

ボットムブラケット(Bottom bracket=BB)はクランクに掛かる大きな力を支える重要な部品。だが、脚を止めて惰性で進んでいるときは負荷はほとんど掛からない。「万が一故障したとしても、家まで押して帰れるし。」などと言い訳して作業を先延ばししていたBBの交換。
以前、ペダルのネジ穴を傷めてクランク一式を交換したとき(走行距離約16,000km)、「ゴリゴリ感が少し出て来ているので、もうじき交換ですね。」と自転車屋さんに言われたことなどすっかり忘れていた。

それから時は流れ、気がつくと走行距離は25,000kmを超えていた。
もういい加減に先延ばしするのは止めよう。そう決心した私は新品を手に入れたうえで、BBを取り外して状態を確認し、悪ければ交換することにした。

今回整備する自転車はサーリーのディスクトラッカー(クイックリリース仕様の旧型)。
ロングツーリングでは定番中の定番「ロングホールトラッカー」のディスクブレーキ版だ。
MTB系の安価なコンポを主体とした財布に優しい9速のツーリング車に仕上げてもらっている。

クランクはALIVIO(トリプル 40-30-22T)、スプロケットは11-36Tの低いギヤ比で、荷物を満載して急な坂を上るときでも座ったまま漕ぐことができる。
ほかにはクロモリ製の丈夫なフレームで荷物を満載してもビクともしない、長いチェーンステーで直進安定性が良い、汎用性の高いフレームとパーツで出先での故障に対処しやすいなど、良い点を挙げるとキリがない。

 

BB(SM-BB52)仕様

今回交換するBBは「SM-BB52」。
中空構造になっている「ホローテックⅡ」の軽量クランクで使われているもの。
従来型よりベアリングの間隔が広くなって、高次元の安定性・剛性・軽量性・回転性が実現されているという。

ALIVIOはホローテックⅡではなく「2ピースクランク」だが、高性能なホローテックⅡ用のBBを使用できる。

ホローテック II テクノロジー | SHIMANO BIKE COMPONENT | SHIMANO BIKE(自転車部品)-日本
人と自然、そして自転車とのより緊密な関係作りを基本方針とし、サイクリングの楽しさを世の中に広げていくための製品を作り続けてます。 自転車を通じてすべての人たちの暮らしをエンジョイさせることが私たちのミッションです。
2ピース・クランクセット | SHIMANO BIKE COMPONENT | SHIMANO BIKE(自転車部品)-日本
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shimano公式ウェブサイトより

SM-BB52 ねじ込み式ボトムブラケット 68/73 mm シェル幅
 
BB選びの際に注目するのは、取り付け方法(ねじ込み式か圧入式)シェル幅ホローテックⅡまたはカートリッジ式(スクエア、オクタリンクなど)の3点。
昔ながらのねじ込み式BBは着脱が簡単で再使用が可能。定期的に外してグリスを塗布することができる。
ちなみにロードバイクの主流は圧入(プレスフィット)式。樹脂製で軽く、シェル幅が広くて剛性が高いが、取り外す際に叩き出すので再使用が難しいのが欠点。
BBの規格は多数乱立していて非常にややこしい。購入の際は十分注意されたい。知識が乏しい初心者の場合、付いているBBと全く同じ物を選んだ方が無難だ。
 
 
パーツの互換性は、シマノ公式ウェブサイト(マニュアル&技術資料 互換性情報)のページで確認できる。
そのほか詳しい整備方法が記載されたディーラーマニュアル、パーツ注文する際に必要なコード番号が記載された部品展開図などをダウンロードできる。サイクリストにとって要チェックなサイトだ。

 

SM-BB52にはスペーサーが4個付属。
内訳 厚さ2.5mm×2、1.8mm×1、0.7mm×1枚

これらのスペーサーの組み合わせでシェル幅68mmと78mmの両方に対応できるようになっている。

1.8mm厚のスペーサーが割れていた。到着後すぐに中身を確認して発見した。

受け取りまでに掛かる日数とスペーサー以外は問題ないBBの廃棄処分を考慮して、返品交換をせずに元のスペーサーを再使用して対処することにした。

 

BB交換作業のようす

クランクの取り外し

BBを取り外すには、先にクランクを外しておく必要がある。
まずは作業に邪魔なペダルを専用のペダルレンチ(15mm)で外す。

走行中に緩んできて異音がしないよう、ペダルレンチでしっかりと締め込んでいる。
先にペダルレンチである程度緩ませておいてから、ボールポイント6mmの六角レンチで手早く回す。

左ペダルは逆ネジ(左に回すと締まる)

 

チェーンをチェーンリング(インナー)から内側に落としておく。

左クランクアームの付け根のようす

クランクの取り外しは、左側のアームを外してから、チェーンリングとシャフトが付いた右側のアームを引き抜く。
左のクランクアームは六角穴付き(5mm角)ボルト2本で固定されている。

左クランクアームを横から見たようす

穴の空いた樹脂製のクランク固定ボルトで奥へ押さえ込んでから、六角穴付きボルトでシャフトにしっかりと固定するようになっている。

2本の六角穴付きボルトを緩めて(抜く必要はなし)から、専用工具(TL-FC16)でクランク固定ボルト(樹脂製)を外す。

このボルトは軽く締め込んでいるだけなので簡単に外れる。
専用工具でなくても外せそうだが、樹脂製のボルトだし、とても安い工具なので、無難に専用工具を使っている。

シマノ専用工具(TL-FC16)

コード番号「Y13009220

固定ボルトと同じく樹脂製の専用工具。
締まる方向(右回し)、締め付けトルク 0.7~1.5N・m の表示あり。

TL-FC16の表示あり。

横から見たようす。

 

固定ボルトを外したところ。

クランクアームの隙間にマイナスドライバーのような平たい工具を突っ込み、はずれ止めプレートを動かす。

脱落防止プレートを動かしロックを解除した状態。
プレートの爪がシャフトの穴に嵌って、クランクアームが抜けないようになっている。

左クランクアームは手前に引くと簡単に外れる。
とは言っても、組み付け時にグリスをしっかり塗布していた場合の話。

風雨に晒されることが多い自転車は、固着防止のために定期的にボルトやナットを外してまめにグリスを塗布してやる必要がある。

内側のシャフト穴にはリングが付いているので、紛失しないように注意する。

左クランクアームを外したところ。
中空シャフトにはずれ止めプレートの爪が嵌る穴が見える。


シマノディーラーマニュアルより

左クランクアームのはずれ止めプレートの仕組み
 

左側のシャフトの先をプラスティックハンマーで軽く叩いて右側のクランクアームを抜き出す。

クランク一式とペダル

ALIVIO(MTB系9速)のクランクは2ピース構造で、右側のクランクアームにシャフトが固定されている。
クランクアームは軽量化のために肉抜きされている。強度は確保しつつも重量を減らし、製造の手間を省く。その結果、価格は約8,000円。

初めてBBの取り外しする場合、事前にシェル幅を計測して、緩める方向を確認しておきたい。シェル幅によって右アダプター(ネジ)の回す方向が異なるためだ。

アダプター表面には締め付け方向が矢印で表示されている。この矢印でも方向を確認できる。
写真を見てのとおり、右アダプターは逆ネジになっている。

シェル幅とはこの部分の幅のこと。
ノギスで計測するとちょうど68mmだった。

シェル幅 68mm(BSC/JIS)の場合 右アダプターが逆ネジ
     70mm(イタリアン)   両方とも正ネジ

【注】BSC=British Standard Cycle JIS=Japan Industrial Standards

 

ホローテックⅡ用BBアダプターツール

PWT製 ホローテックⅡ BBアダプターツール

ホローテックⅡ用BBの着脱には、安全確実でトルクレンチを使用できるソケットタイプを選択した。
スパナタイプのTL-FC32では強度に不安があるし、メガネタイプのTL-FC36では規定トルクで締め付けるのは難しい。
PWT製はシマノ製(TL-FC32)のおよそ1/3の価格。これまで多くのPWT製の工具を使ってきたが、価格以上の品質で非常に満足できた。

差込角 1/2インチ(12.7mm)、2面幅 32mmでシマノ(TL-FC32)と同じ仕様。

ソケット部のようす

精度は必要にして十分。BBアダプターにしっかりと噛み合ってくれる。

差し込み角 3/8インチ(9.5mm)用のソケットレンチをアダプター(12.7mm→9.5mm)と組み合わせて使う。
BBの締め付けトルクは35-50 N·mで大きな力が掛かるが、今のところ9.5mm角のソケットレンチでも問題はなし。

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ホローテックⅡBBの場合、左右どちらのアダプターから外してもよい。
整備スタンドを持たない私は、独自の方法で作業を行う。
大きな力を加えても大丈夫なように両タイヤを接地させ、丈夫な支柱などに立て掛けた状態にする。

このときタイヤが動かないように、自作のパーキングブレーキでブレーキレバーを引いた状態で固定してある。

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今回は右側のアダプターから取り外す。
BBツールを合わせてから押し付けるようにして回す。
ドライバーと同じ使い方。

シェル幅68mmの右アダプターは逆ネジ。右回転させて緩める。

ソケットを押し付けた状態。
ソケットの深さは浅め。押し付け方が弱いと、アダプター側の溝を傷めることがある。

初めての取り外しの際、アダプターを少しなめてしまった。

右アダプターを外した。
スペーサーをなくさないように注意したい。

シェル内部のようす。
円筒形の黒色樹脂製パーツ(インナーカバー)は左側にくっついて残っている。

左側のアダプターを外した。
こちらは正ネジ。スペーサーを失くさないように注意する。

BB一式

真ん中のインナーカバーは水や汚れの侵入を防ぐためのもの。ゴムのOリングで嵌っているだけなので、簡単に外すことができる。
ベアリングは左右のアダプター内に内蔵されている。

インナーカバーのようす

理由は不明だが、取り付け方向の指定あり。

右アダプターの締め付け方向の矢印。逆ネジの表示。

左アダプターの表示。こちらは正ネジ。

右アダプターが逆ネジとなっている理由は、右回転するクランクと連れ回りして緩まないようにするため。左ペダルが逆ネジとなっているのと同じ理由。

ではなぜ、シェル幅70mmのBBの右アダプターは正ネジなのだろうか。考えすぎると夜寝られなくなるので、ほどほどにしておく。

BB組付け順

インナーカバーの方向とスペーサーの枚数を間違えないように注意したい。
デジカメで写真を撮ったうえでメモをしておくと間違いがない。

BBのアダプター内臓のベアリングを手で回してみると、ゴリゴリ感がはっきりと分かる状態だった。
よってケチらずに新品に交換することにした。

 

各部の清掃

取り外したクランクなどを掃除する。
今回はチェーンリングの取り外しはせずに、できる範囲で行う。
チェーンリングの隙間にウエスを挟んで左右に動かすだけで結構キレイになる。

ボルト周りをよく見るとかなり汚れていたので、分解してキレイに掃除することにした。

この汚れ具合はどうしても見過ごせない。

はずれ止めプレートと固定ボルト2本

灯油にしばらく浸け置きしてキレイにした。

ついうっかりして、左クランクの穴に付いていたアルミとゴム一体型のリングを曲げてしまう。

このリングはおそらく密着させてガタを抑えるための物。
中古のクランクセットから取り外して使うことにした。

見違えるほどキレイになった左クランクアーム取付部。

掃除前のBBシェル内

塗布してあるグリスが黒ずんで汚れているものの、目立った汚れやサビはなし。

掃除後のようす

キレイになって非常に気持ち良い。ネジ山は全く問題なし。
下部には水抜き穴とシフトケーブルガイド用のネジ穴が空けられている。

サビないようにグリスを薄く塗っておく。

 

前回外した時(走行距離約17,000km)の状態

クランクセットを交換したばかりで1,000kmも走っていないのに、もうこんなにも汚れてしまっている。

右アダプターとインナーカバー

左アダプター

ネジ山には赤茶色の砂が付着している。

BBシェル内のようす

17,000kmで初めて分解したにもかかわらず、意外にキレイだったのには驚いた。
グリス切れはなし。若干の砂が入っていただけだった。

 

BBの取り付け


シマノ ディーラーマニュアルより

シェル幅68mmのスペーサー取り付け

左アダプターに2.5mm1枚、右アダプターに1.8mm・0.7mm・2.5mmの3枚を入れる。
右側の0.7mmを1.8mmと2.5mmの2枚で挟んで取り付ける点に注意。
今回、スペーサーはやむなく中古品を再使用したが、できれば新品を使った方がいい。
樹脂製のスペーサーは、強く締め込まれた際に段差ができていた。

BBの取り付け前にシェル内側にグリスを薄く塗っておく。
アダプターのネジ山には緩み止め剤があらかじめ塗布されている。
インナーカバーのOリングにグリスを増量。向きに注意して右アダプターに取り付けた。
スペーサーにもグリスを塗って順番に取り付けた。

もう一度締め付け方向を確認する。

アダプター内側にはプレミアムグリスがたっぷりと付けられているので、これを使うとよい。

BB締め付けの規定トルク35-50 N·m。締めすぎないように一番低い35N·mに設定する。おっさんは怖がりなもんで。

トルクレンチで確実に締め付ける。
走行中に緩んでくると、力を損失するし、異音の原因にもなる。

トルクレンチはデジタル式で差し込み角9.5mm、測定範囲3~60N・mのものをアダプターで12.7mmに変換してBBアダプターツールを取り付け。BBを取り付ける場合、柄が短いため力が要るが、そのほかは不便に感じることはなし。アナログ式よりデジタル式の方が使いやすい。
SK11のこのトルクレンチは音と光で知らせてくれる。

スポーツ自転車に乗り始めたばかりの頃は手の感覚だけで締め付けていたが、締付け力が全く不足していて緩んでくることが度々あった。家の近所で緩むだけならまだいいが、長期ロングツーリングの最中に緩んでくると対応しづらい。これではイケないと思い奮発して買ったのだった。

 

右アダプター取り付け完了。
スペーサーの隙間からグリスがはみ出している。

続いて左アダプターの取り付け。
ネジ山とスペーサーにグリスを塗布する。

左アダプター取り付け完了。

 

クランクの取り付け

掃除を終えた右クランク

隙間の汚れが落としきれていないが、この程度で妥協しておいた。

それでもチェーンリングの歯先だけは丁寧に掃除してある。
クランクシャフト表面にグリスを薄く塗布しておく。

右クランクを挿入すると、大量のプレミアムグリスが出てきた。
勿体ないので容器に入れてとっておく。

左クランクアームに中古のリングを付けてから、シャフトの溝を合わせて取り付ける。
脱落防止プレートと固定ボルトもグリスを塗って軽く付けておく。



シマノ ディーラーマニュアルより

はずれ止めプレートの向き

はずれ止めプレートは取り付けに向きがあるので注意したい。
この向きで取り付けると、プレートの操作がしやすい。

左クランクアームを取り付けたところ。とは言っても挿れただけ。

左クランクアーム取り付けの注意点は、先に樹脂製の固定ボルトを締め込んでおくこと。
締め付けの規定トルクは0.7~1.5N・m。表面にトルクが記載されている。

トルクレンチで締め付けるわけではないので、緩まない程度に締め込んだらヨシとする。

樹脂製の固定ボルトの取り付け完了。
これで左クランクアームが奥までしっかりと入った。

はずれ止めプレートを押し込んではみ出ないようにする。
この状態で2本の固定ボルトを交互に締め込んでゆく。

ある程度までは普通の六角レンチで締める。
締め方が偏らないように、少しずつ交互に締めてゆく。

クランク固定ボルトの締め付けの規定トルクは12-14 N·m。
最後はトルクレンチを使って13N·mで締め付けた。

 

BB交換まとめ

BBを交換したら走りが軽くなって感激した。
だが慣れてしまうと違いが全く分からない。慣れとは恐ろしいものだと思った。
たかがBB。されどBB。

BBを替えただけなのに走りが変わった。走っていると凄く気持ちがよいし、いつもより疲れにくいような気がする。次回からは20,000kmを目安に交換することにする。

新型コロナの影響で自転車のパーツが入手しづらくなった昨今。ネットショップどころかメーカーにも在庫なし。消耗パーツでも1ヶ月2ヶ月待ちはザラ。
念のため取り外した中古パーツは捨てずにとっておく。

多少のゴリゴリ感はあるが、全く使えないわけではない。
ネットの情報によれば、ベアリングの分解はできないが、ダストカバーを外してグリスアップはできるという。ものは試しだ。暇なときにやってみる。

忘れないように状態を箱に記載しておく。
こうしておけば、時間が経っても交換当時の記憶を蘇らせることができる。

これで当分の間はヨシ。