こんにちは。からあげです。
はじめに
自転車は名前のとおり自分の動力で進まなければならない乗り物だ。ペダルを漕いでいると自然と身も心も発熱してくる。だから自転車には膝が当たらず通気性の良いハーフパンツが最適だ。
以前から時や場所を選ばすどんなときでも履けるハーフパンツを探していたものの、私が希望するものが全然見つからない。股間モッコリのピチピチした派手なサイクルパンツは日常生活には全く向かない。
私が希望する条件は、ポリエステル入りの混綿、立体裁断ではなく伸縮性のない厚手の生地、濃い色、安価なもの。(非常に好みが煩い)
綿100%は履き心地は良いが乾きにくく、一枚のズボンを履き続けなければならない長期ツーリングには向かない。
立体裁断でなく伸縮性がない生地の方が良いのは修理しやすいため。修理は擦り切れた箇所にあて布を当ててゆく方法(パッチワーク風)なので、生地が平でないと縫いにくい。伸縮性があると履いているうちに癖が付いて伸びたままになる。
厚手の生地がよいのは破れにくいため。自転車に乗っているとサドルが当たるお尻の部分が擦れる。生地が厚いほど耐久性があり、頻繁に修理しなくてもよい。ゆったり目のハーフパンツは通気性がよいため、厚手の生地でもそれほど暑くはない。
濃い色が良いのは汚れが目立ちにくいため。愛用するブルックスの革サドルは色落ちがするし、野宿主体の長期ツーリングでは洗濯する機会が限られる。
最後にもっとも重要なのは安価なもの。懐に厳しい寒風が吹きすさぶ私には安いものがいい。華美な装飾はいらないし、上質な生地もいらない。
以上のような厳しい条件を満たすハーツパンツは既製品にはなし。生地からズボンを作るのは時間もかかるし技術も必要だ。ということで最低限の条件を満たす既製品を改造して、理想のハーフパンツを手に入れることにした。
愛用のハーフパンツ
オーストラリアのTarget.countryで28ドル(購入当時1AUD=80円、約2200円)で購入したハーフパンツ。それまで履いていたものは酷使し過ぎて生地が全体的に薄くなり、とうとう修理不能な大穴が空いた。
話を戻そう。これは綿100%のライトグレーで野宿ツーリング向きではなかったが、乾燥したオーストラリアでは脱水して干しておけば30分で乾いたので、替えがなくて困ったことはなかった。
ハーフパンツが見つからなかったので、帰国後もこればかり履き続けていた。
おしりの部分には内側から何重にもパッチを当てて補強していた。
こうした修理法は非力な家庭用ミシンでは非常に負荷がかかる。
分厚い帆布なども強引に縫うなどして酷使していたため壊してしまった。
裾の部分もすでにボロボロ。
破れては当ててを繰り返しているうちに購入時の倍以上の重さになってしまった。劣化が進んで頻繁に修理するようになると、そろそろウエスにでもしてしまおうかと思うようにもなった。だが体に馴染んだ愛用の服は貴重で手放せない。
まだしばらくはなんとか持つだろうが、いつなんどき修理不能な大穴が空いてしまうかもしれない。代替品の入手を急ぐ必要があった。
しまむらのロングパンツを手に入れる
そんな時に運良く見つけたのは、格安衣料品店「しまむら」のロングパンツ。
主に婦人物を扱う店だが、紳士物もちゃんと置いてある。バカヤロー!いちいち細かいことなど気にしていられるか。
文句なしの本体価格1,790円(税込み1,969円)。生地は厚めで混綿、立体裁断ではなく伸縮生地でもなし。
ハーフパンツを作るのに、なぜロングパンツを購入したのかというと、同じ価格だったから。
生地の量が違うのになぜか価格は同じ。やったぜしまむら!これだからしまむらが好き。
切った生地は補強するのに使える。
ズボンと一緒に購入した靴下。
2足組で本体価格190円(税込み209円)。こちらも激安価格だ!
普段自転車ばかり乗っているため、靴下の消耗はそれほど多くはない。だがひとたび屋外作業をするようになると消耗が一気に激しくなる。いくらか余分に持っておいた方がよいだろう。
プラスチックバックル付きのベルトあり。
十分な大きさのサイドポケットあり。
大きいポケットは中に小物を入れても生地に余裕があって突っ張らない。
お尻の部分にもフタ付きのポケットあり。
サドルに当たるので走行中お尻のポケットに物を入れることはないが、自転車を降りて歩く時には時々入れることがある。
あとで切ってしまう裾だが、作りはしっかりしている。
これで2,000円でお釣りが来るなんて信じられない。
前ポケットの内側の生地は汚れが目立ちにくい黒。
縫製はしっかりしている。
プラスチックバックル部分。着脱の操作は非常にスムーズ。
ファスナーは信頼のYKK。繰り返し操作しても本当に壊れない。こういう重要な部品をケチるところはロクなもんじゃない。
サイズは太ももで合わせてLを選択した。
ポリエステル65%で乾きやすい。走行中雨に降られても、走っているうちにすぐに乾く。
ロングパンツをハーフパンツに改造する
まずは基本中の基本。不要なタグやベルトを外す。
もちろんベルトとバックルは今後のために取っておく。
低い場所にあるサイドポケットの取り外し。補強が終わってから付け直す。
リッパーを使って縫い目の糸を切ってゆく。
ハサミで切れないことはないが効率が悪いしやりづらい。こういう場面では専用のリッパーを使用する。
ポケットの端は補強されているのでかなり手強い。
縫い目が細かくリッパーの刃先が入りづらい。
糸を外した跡
これくらいの傷みは許容範囲だ。あとで補強しておけば問題なし。
サイドポケット2つとお尻のポケット2つを取り外した。全く同じ大きさになっている。
後ろ側
お尻のポケットを外したのは補強用のあて布を当てるため
膝下のひだのあるところでズボンを切った。
ハサミは切れ味の良い、専用の布切りバサミを使用する。
ズボンは裾に向かって細くなっているので、切った部分をそのまま押し返すとシワができる。
そこで縫い目を切って割っておく。
切った端は折り返してほつれ止めしておく。
自分好みの丈になるよう折り返してミシンで縫ってゆく。
糸は定番のフジックス シャッペスパン#60。高品質で強度・耐久性はバッチリだ。
以前、修理を依頼したミシン屋さんに100円ショップの糸はミシンに負荷を掛けるので使わないほうがよいと言われた。
折り返した長さは約10cm。擦れやすい裾が丈夫になるようあえて長めにしておいた。
割いた部分の処理
これくらいで十分だろう。
ハーフパンツの原型が出来上がった。
こちらは裏側。
折り返し部分。シワはなし。強度は十分。
左に置かれているのは切った部分。補強材として当てるには十分な量だ。
筒状の切れ端の縫い目を切っているところ。
お尻に当てる補強材を作る。
平らな一枚物の生地が出来上がった。
端はほつれ止めに折り返して縫っておく。
補強材を縫い付けるのに邪魔だったベルトループの下側を切り離した。
職業用ミシンで補強材を縫い付けてゆく。
非力な家庭用と較べると非常に力強いミシンだ。
布マスク作成で需要が高まり一時は品不足だったミシン。在庫が回復した時を見計らって即座に購入した。
職業用ミシン ベビーロック エクシムプロ9400
職業用ミシン ベビーロック エクシムプロ9400
紹介するのが遅くなった職業用ミシン。愛称「極みちゃん」。白を基調としたシンプルなデザインに惚れた。
エクシムプロ9400LS極との違いに価格以上の価値を見いだせなかった。単にマジック掛けがあるなしの違いだけなので、安い方の9400を選んだ。極ではないが極みちゃんと名付けた。
フットコントローラーで操作する(ON・OFF、速度)ため、両手は自由に動かせる。いやっほー!めちゃくちゃ縫いやすい。直線縫いに特化したミシンだけあって高速で縫え、しかも縫い目が綺麗だ。
別の機会に詳しく紹介することにしよう。
何重にも重ねた分厚い生地でも軽快に縫う極みちゃん。
腰から補強材を入れたお尻の部分。
2枚の生地が密着するように格子状に縫っている。
さらに補強材を当てる。
丸みを帯びた股の部分は細い補強材を入れてゆく。
結果は失敗。ここは半分ずつ入れてゆくことにした。
難易度が高い股の部分。
こうした難しい場所は縫い糸で仮縫いしておいてからミシンで縫った方がよい。
シワが入ってしまった。細かいことは気にしない質だが、これはちょっと酷い。
シワは突っ張りのもと。そして履き心地の低下と破れを招く。
仮縫いしているところ。
何度もやり直すくらいなら少しの手間を掛けた方が早い。
仮縫いしてもやり直しは必要になる。
補強材を付けたり外したり何度もやり直して綺麗に縫ってゆく。
職業用ミシンで縫えない箇所は家庭用ミシンで縫う。
生地が厚くて負荷は掛かるが致し方ない。
家庭用ミシンの良いところは台の下を外せて筒もの縫いがしやすいところ。
こうすると職業用ミシンでは縫えない部分も縫えるようになる。
ただし、家庭用ミシンになるべく負荷を掛けないように縫い目を大きくして低速で縫う。
かがり縫いや筒物縫いが多ければ、家庭用と職業用の2台体制の方が良いかもしれない。
私は服は作らないが、修理・改造することが多くて筒物縫いしづらいのは困る。
サイドポケットのフタを付け直すのは職業用ミシンではどうやっても無理だった。
ここは家庭用ミシンに頑張ってもらった。
強化・改良版ハーフパンツの完成
作業時間を8時間以上掛けてしまむらのロングパンツをハーフパンツに改造し終えた。心地よい疲労感に包まれつつ豆乳を飲む。うむ、うまい!
無段階に調整できるプラスチックバックルのベルトを付けた。以前、空港のセキュリティチェックで金属探知機が反応してから、プラスチックバックルのベルトを使用するようになった。付け外しの際にカチカチという耳障りな音がしないのも良い。
面倒になったのでお尻のポケットは付けなかった。
どうせ自転車走行中は使わない。なくてもよいものは付けなくてヨシ。
サドルと擦れるところは特に厳重に補強した。
多少のシワは味ということにしておこう。
味わいをなくした自作品は無味乾燥の単なる工業製品と成り果てる。このくらいでちょうどいい。
迷彩柄で縫い目が目立たないものよい。
裏返すとこのようになっている。
こんな丈夫なハーフパンツは既製品にはないだろう。
サイドポケットは前ポケットに干渉せず、下過ぎない位置に縫った。
お尻のポケットよりも両サイドのポケットの方が使用頻度は遥かに高い。
とは言っても重たく嵩張るものや走行中に落として困るようなものは入れない。
前ポケットにはループを取り付けてキーホルダー代わりのカラビナを留められるようにした。
これで鍵を失くすこともない。
改造ハーフパンツの使用感
世界に一点だけのハーフパンツ。とても愛おしい。履き心地が良くて洗濯してもすぐに乾く。
お尻のあて布は補強になるだけではなく、衝撃を吸収しお尻に優しい。
生地が分厚くて引っ掛けても破れるこはないので安心してヤブの中に突っ込んで行ける。
今でもAUで購入したハーフパンツは履いているが、主としてこちらを多く履いている。冬になったらロングパンツを履くこともあるが、下にスポーツタイツを履いて通年履いている。
もう手放せなくなったしまむらのハーフパンツ。今後もしまむらで入手して改造してゆくことだろう。