ハンドルバーの交換(ドロップハンドルからマルチポジションハンドルへ)【前編】

こんにちは。からあげです。

はじめに

普段の生活で自転車に乗っていると、「もっと楽に走ることができないだろうか」と考えるようになる。
体を鍛えることがもっとも効果的な方法だと分かっているのだが、そう厳しいことも言ってられない。自分にあまり厳しくすると、生きてゆく気力が失われてゆく。

易きに流れるのは人の道。もっとも安易な方法がパーツ交換だ。手っ取り早くパーツを交換して、少しでも楽に走りたいという気持ちが沸き起こってくる。

私の頭に思い浮かんだのは、欧州のサイクリストに人気がある「マルチポジションハンドル」略してマルチバー。蝶のような独特の見た目からバタフライハンドルとも言わる。
名前の通り豊富なポジションで握ることができるのがウリ。付けているサイクリストに聞くと誰もが絶賛する。好奇心旺盛な私が気にならないわけがない。オーストラリアで会った世界一周中のフランス人カップルも付けていた。

 

ほかにブルホーンハンドルという、ドロップハンドルの下を切り取ったようなハンドルも気になったが、ミラーなどのアクセサリーを取り付ける余地がない理由で却下した。

生来なまけものの私は体を鍛えることよりも先に、パーツ交換というもっとも安易な方法に手を染めることにした。オートバイ用のミラーも付けたかったことだし、試しにやってみることにした。

 

ハンドル交換に必要な主なパーツ

BBBマルチポジションハンドル BHB-30

名のあるブランドでは日東、BBB、Bazookaの3社があるが、日東は高いし形が気に入らなかったので却下、Bazookaは品切れのままで入手できず、残るBBBが形がよく値段も手頃だったので、迷わずBBBを選択した。
ほかに中国ブランドのものもあったが、いまいち信用ならなかったので止めにした。

ハンドルバーの幅は570mmでかなりの幅がある。

 

BBBのロゴ

ロゴの下にMULTIBARと表記されている。

クランプ径は25.4mm。これまで付けていたドロップハンドルは31.8mmで、それより径が細くなった。なぜかクランプ径が太いマルチバーは見当たらず。剛性を高めるためにクランプ径31.8mmのものが欲しかった。

ステム取り付け部分には滑り止めの凸凹加工がされている。

ハンドルを横から見ると、ねじれているのがよく分かる。
写真では上側を下にして机の上に置いている。

横には成形用と思われる穴が空けられている。

グリップエンドのようす

キレイに加工されている。

ハンドルを正規の向きに置いて観察する。
切れ目がある方が手前。見れば見るほど不思議な形をしているように思える。

幅570mmのほか、取り付けに関係する寸法を計測してみた。

クランプからバーエンドの延長線上まで約60mm。
ハンドル位置がドロップハンドルよりもかなり手前になるので、長いステムを使用して適度に離してやる必要がある。

ステム選びに時間がかかった。

グリップエンド間の長さは約170mm。これはブレーキ・シフトケーブルの取り回しに関係する。

ハンドルの前後の幅が約170mm。
手前の定位置を持つと上体が起き、奥を持つと上体が寝る。

 

KCNC ステム 130mm

近くなるハンドルをできるだけ遠くにするため、もっとも長い130mmのロングステムを選択。
というより、私のディスクトラッカーに合うもので長いステムはこれしかなかった。

種類が豊富なクランプ径31.8mmのステムを選んで、シムを挿入して取り付ける方法があるが、取り付け取り外しの際に手間がかかるし、取り付け強度に不安があったので止めにした。

ほかにポジション出しが楽になる角度調整可能な可変ステムがあったが、これも強度に不安があったので止めにした。荷物を大量積載するロングツーリングでは信頼性がもっとも重要。ほかに気をつける点は、丈夫なアルミ製であること。軽量なロードバイク用のカーボン製ステムは使えない。

材質      アルミニウム合金
長さ      130mm
クランプ径   25.4mm
コラム径    28.6mm
スタックハイト 38mm

 

ステム選びで気をつけなければならないのは、クランプ径コラム径のほかに、スタックハイトと呼ばれる長さ。ステムによって微妙に異なるので、コラムスペーサーを挿入して調整してやる必要がある。

このことに取り付け作業をしている時に気がついた。

箱から出したところ。KCNC社製のステムは工作精度が高くてとても美しく感じる。
見ていても全然飽きない。

ハンドルクランプのようす

4mmの六角穴付きボルト4本でハンドルを固定する。

クランプ径25.4mmの表示あり

クランプ穴のようす

コラムクランプのようす

コラム径は28.6mm。オーバーサイズと呼ばれる規格で一般的なもの。4mmの六角穴付きボルト2本でコラムを固定する。

 

コラムスペーサー

スタックハイトが異なるステムを取り付けた場合、調整のためにコラムスペーサーが必要となる。
コラム長の微調整は、コラムカットするのではなくコラムスペーサーで行う。

信頼のブランドで調整幅の広いギザプロダクツのものを選択した。

スペーサーの厚みと枚数
10mm×1 5mm×1 3mm×1 1mm×2

 

スペーサーのセット

上が左から10mm、5mm、3mm。
下が1mm2枚。

スペーサーのようす

切り口にはレコードのような溝が掘られている。

スペーサー全てを重ね合わせたところ。
加工精度はバッチリ。キレイに揃っている。

 

ブレーキレバー Claris BL-R2000

マルチポジションハンドルには、フラットバー用のブレーキレバーが適合する。
安価でVブレーキとキャリパーブレーキの両方に対応する、モード切替付きのClaris BL-R2000を選択。多様なブレーキに対応できるのが最大の魅力だ。
ブレーキレバーには引き代の大きなVブレーキ用と、引き代の小さいキャリパーブレーキ用があるので注意する。

私のディスクトラッカーに取り付けている機械式ディスクブレーキShimano BR-CX77は、シクロクロス用でキャリパーブレーキ同様に引き代は小さく、ロード用のブレーキレバーを選択する必要あり。

 

内容物一式

ブレーキレバー左右のほか、スチール製だがブレーキケーブル(アウター・インナー)と各エンドキャップまで付属してかなりのお得感がある。左右のレバー単体でも販売されている。

BL-R2000はVブレーキとキャリパーブレーキの両方に対応するが、ブレーキインナーケーブルはMTB用なので注意する。

ケーブル掛け周りを確認する。やはりMTB用だ。

ブレーキレバー右側

2.5フィンガーのレバー。制動力の高いディスクブレーキは指2本の操作で十分。
制動力が低いカンチブレーキには短すぎる。

裏側のようす

クランプ径は22.2mm。

モード切り替え

裏側のプラスビスを緩めてからモード切り替えを行う。写真はキャリパーブレーキ(引き代小)の位置。

レバーの裏側は肉抜きされて軽量化されている。

ケーブルアジャスター

ブレーキ・シフトのアウター・インナーケーブル

ハンドルバーを替えると、ブレーキ・シフトケーブルの長さが変わるので、アウター・インナーケーブルの交換も必要となる。

ブレーキのインナーケーブルは1.6mmでMTB用とロード用の2種類があって、ケーブルエンドのタイコ形状が異なる。
シフトのインナーケーブルは1.2mmで、MTB用とロード用は共通で、ケーブルエンドのタイコ形状は同じ。
インナーケーブルはケチらずに両方とも耐久性のあるステンレス製を用意した。

MTB用のブレーキインナーケーブル

長さは2050mmもあって、機械式ディスクブレーキのリヤにも使える。エンドキャップ1個が付属する。

 

ブレーキインナーケーブルのタイコ形状

左がMTB用、右がロード用。一見しただけで違いが分かる。

ブレーキのアウターケーブルは、ブレーキレバーに付属していたものを使用して、シフト用のアウターケーブルのみ別途用意した。
手頃な値段でエンドキャップ6個も付属するグランジのものを選択した。

 

バーテープとスポンジグリップ

ハンドル交換にはバーテープも必要。単にハンドルを交換すればいいというわけではなく、ステムやブレーキ・シフトケーブルなどの各種パーツの交換にも迫られる。ハンドル交換はずいぶんと金が掛かることを知った。自転車店が勧めるのがよく分かる。

バーテープは手頃な値段で水濡れに強いとされるOGKのコットンタイプを選択。ヘルメットでお世話になっているメーカーだ。

 

バーテープのほかにスポンジグリップも購入した。BBBマルチバー専用のもの。
バーテープとスポンジグリップを実際に付けてみてどちらか良い方を使うことにした。私らしからぬ金遣い。

 

ハンドル交換作業のようす

まずは付いているドロップハンドルを取り外す。
オーストラリアでは強い向かい風の影響を軽減させるために、下ハンドルを握って前傾姿勢で走っていたときもあった。

今でもあの時の思い出が蘇ってくると、胸が苦しくなってくる。まさに精神修行の日々だった。そう、私は精神修行をするために海を渡ってオーストラリアまで行ったのだ。

ハンドルを横からみる。

ロードバイクのようにブレーキとシフトが一体化したSTIレバーではなく、別々になっている。
できるだけ単純な構造にして壊れにくく、そしてトラブルに対処しやすくするためだ。ロングツーリグにはトラブルは付き物。世界一周した店主の知識と経験がここに活きている。

ステムからコラムが大きく飛び出していて不細工。コラムカットする勇気がなかった。今は面一にしている。

シフターを取り外す。ALTUSという廉価グレードのもの。
これはマルチポジションハンドルに移設する。

ブレーキレバーを外す。

インナーケーブルを緩めてから、ブレーキレバーを引いて奥の5mm六角穴付きボルトを緩める。
始めはどうやって外すのか分からずにずいぶん悩んだ。初歩的なことはネットで検索しても出て来ない。これからは自転車初心者の私が初心者にも分かりやすい記事を書いてゆこう。自分の備忘録にもなっている。

このボルトを緩めるにはロングタイプの六角レンチを使う。私はソケットレンチに付けるソケットタイプを使った。六角レンチの長い柄のボールポイントの方で緩めようとすると、工具を傷める原因となる。

 

ボルトを緩めるとブラケットが外れた。あとはバーテープを剥がしてから、残っている固定金具を外す。

バーテープを剥がしているところ。
裏面に粘着テープが付いているので再使用は不可。オーストラリアを13,000km以上走ってボロボロになった。お疲れさま。

全て外してスッキリしたハンドル周り。
あとはハンドルバーを外すだけだ。

ドロップハンドルとマルチポジションハンドルを比較してみる。
上がDIXNA(ディズナ)CROSS バンディハンドル、下がBBBマルチポジションハンドル(BHB-30)。
バンディハンドルの幅はトップ部分が385mm、エンド部分が470mm。一方のマルチバーは570mm。

こうして並べてみると、ハンドル幅の違いがよく分かる。

 

バンディハンドルのクランプ径は31.8mm、太くて剛性は十分。
さらにブレーキブラケット部分が23.8mm、エンド部分が22.2mmとなっていてハンドルの太さが位置によって異なる。

下ハンドルのエンド部分の太さの境界線。

ハンドルバーは太いと剛性が高くなり、引きつけてペダルを踏み込むときに、しっかりと力を受け止めてくれる。私には剛性の高いバンディハンドルの方が合っていると感じた。何より走っていて気持ちいい。自転車ではこの感覚が重要。

ハンドルを外したついでに、ヘッドパーツのグリスアップも行うことにした。
前回から3,000kmほど走っただけなので非常にキレイだった。問題なし。

ヘッドパーツを分解したパーツを並べる。
何度もばらしているうちに構造が分かってくるようになる。
シールドベアリングの外観が多少錆びていたものの、動きは非常に滑らか。

コラムのスペーサに代えて付けているベル。コラムに付けるとハンドル周りがスッキリする。
ベルの装着は法律で義務付けられているし、ないと時々困ることがある。おっさんの低い声で呼びかけても気づいてもらいにくい。

色はシルバーで作りはシンプル。鳴らすとチーンという気持ち良い音がする。
ウエスで磨いてピカピカにしている。おっさんお気に入りの一品。

 

まずはクランプを取り付けてみた。裏表逆にすると角度が変わる。

今度は逆にして取り付けてみた。こちらは高め。

ステムの交換で気をつけなければならないのが、先ほど説明したステムのスタックハイト。
こちらのステムはドロップハンドルに付けていたもので、Giza Productsの長さは60mm、スタックハイトは40mm。

そしてこちらがマルチバー用のステムでスタックハイトは38mm。

スタックハイトがたった2mm違うだけで、トップキャップを取り付けてもガタつくようになる。
写真はスペーサーで適切に調整したあと。

これがもとのハンドルに付いていたスペーサー。

トップキャップを上から見下ろす。

横からみたようす。肝心な部分が影になって見えない。
トップキャップは重要なパーツで、ヘッド周りのガタツキをなくして、玉当たりを調整するためのもの。コラムとスペーサーが面一では調整できない。

何度も何度も調整してようやく位置が決まった。
ハンドルの取り付けは各部の調整が大変なのがよく分かった。特に独特の形をしたマルチバーは大変だ。

横から見る。このくらいの角度が握った感じが自然で一番しっくり来た。

続いてブレーキレバー、シフターを取り付けて位置が決まったとあとで、ケーブル類も取り付ける。
先にアウターケーブルの長さを決めてから、あとでインナーケーブルの長さを決めることになる。

ハンドルのエンドが近くてケーブル類の取り回しに苦労する。
ハンドルを左右にいっぱい切ったり、ブレーキレバーやシフターを操作したりして、重たくないかしっかりと確認する。

ブレーキレバーとシフターの角度を調整して、ステムの下にケーブルを通しても各部が干渉しないようにする。

さらに調整に長い時間を費やしてようやく位置が決まった。
慣れない作業で非常に疲れた。もうクタクタ。

ハンドルまわりのようす

オートバイ用のミラーと電池式のライトを付けている。
ミラーとケーブル取り付けの件は別の記事にくわしく掲載しているのでそちらを参照して欲しい。

 

マルチバー取り付けのポイントはケーブル類の取り回し。
ハンドルの構造上、ブレーキレバーとシフターの位置が近くなるので注意が必要。

前から見たところ。
引きが重たくならないように緩やかなカーブを描くように調整した。

ブレーキレバーを引いて操作感のチェックをする。
「うむ、なかなかいい感じだ。」などと、おっさんはいつも自己満足に浸る。

DIYは自己満足のためにするもの。いや、人生そのものが自己満足のためにある。
人生やったもん勝ち。ひと目を気にして好き勝手しないでどうする。

最後にブレーキレバーとシフターを取り外して、スポンジグリップを取り付ける。
先にバーテープを取り付けてしまうとやり直しがきかなくなるので、スポンジグリップから試す。

滑りが悪かったので石鹸水を塗ってから挿入した。

スポンジグリップを取り付けたものの、握って手首を動かすとねじれてしまうので、ゴムのりを塗ってしっかりと固定することにした。

ゴムのりを試してみるも奥に入れる前に乾いてしまい、結局しっかりと固定できず。
専用のグリップなのに緩くて使い物にならない。

バーテープを使うのがもったいなかったので、古チューブを巻いてみることにした。
バーテープの裏には強力な粘着テープが付いていて、一度貼ると貼り直しができない。
そこで何度でもやり直しができるように古チューブを巻いてた。

この件も別の記事でくわしく書いたので、そちらを参照して欲しい。

 

ブレーキレバーとシフターを操作する定位置には、ママチャリ用グリップを加工して取り付けることにした。近所のホームセンターで200円程度で購入したもの。ママチャリ用のパーツは安いので、思い切ったことができる。

グリップエンドをカッターナイフで切り落とす。

これで筒状のグリップになった。

キツいグリップに石鹸水を塗って渾身でなんとかねじ込んだ。だがまだまだ先は長い。
両方とも付け終わったころには握力がなくなっていた。

なんてキツいグリップなんだろう。スポンジグリップもこれくらいキツければよかったのに。

バーテープ代わりの古チューブとグリップの取り付けが終わったところ。
このあとおっさんは喜び勇んでテスト走行に出かけた。

マルチバーのポジションや使い心地などについては後編で。

 

つづく