こんにちは。からあげです。
ここのところ、オーストラリアツーリングの準備に忙しくて、サイト制作が全然出来ないでいた。昼夜問わずに頑張って作業を続けて、ようやく昨日一区切りが付いた。オーストラリア出発までさほど時間はないが、できるだけ記事を書いてアップしようと再びパソコンに向かい始めた。その過重労働におっさんが持つかどうか?
それにしても、まもなく1年が経とうとしているのに、まだ熊野古道を歩いた記事をアップできないでいたとは、自分でも驚きだ。こういうものは熱いうちにさっさと骨組みだけでも書いておいた方がいい。近年はおっさんも痴呆の気が出てきて非常に忘れっぽくなっている。(単に自分の都合の悪いことは忘れるようになっただけかもしれないが。)
今日でようやく熊野古道のハイキングは終了する。では、このへんで前置きは止めにして、本文に入るとしよう。
熊野古道 大峯奥駆道を歩く【4日目】2018年5月吉日
コース概要
小笹宿~山上ヶ岳~吉野山~近鉄吉野駅
水汲み場所 小笹宿のみ
*右下の「山行記録のページへ」をクリックすると、詳細なルートマップを見ることができます。
小笹宿から山上ヶ岳
昨日、夕方から降り始めた雨はしばらくすると止み、次第に風が強まって入り口ドアがガタガタ音を立てていた。
今朝は4時半に起床して手早く朝食を済ませて出発準備を整える。小笹宿は見かけによらず、なかなか快適な避難小屋だった。
小屋の隣の沢で1Lほど水を汲んで出発した。
今日は吉野山を下山して自転車を回収せねばならない。
さっさと下山して、余裕を持って自転車で走り出したい。
山上ヶ岳を越えれば、アップダウンを繰り返しつつ高度を下げてゆく。
もうここまで来れば、歩き切ったのも同然だ!
山上ヶ岳が近づくにつれて笹が増えてきた。
登山道に覆いかぶさるように背丈の低い笹が生えている。
山陰からひょこり姿を現した大峯山寺。
大峯山寺全景
まだ6時前の到着で本堂の扉は閉ざされたままだった。しばらくすると黒色の作務衣を来た僧侶が準備を始めた。
境内から見た景色。
今朝の天気は薄曇り。
境内の片隅に大きな錫杖が設置されていた。
隣には大きな鉄下駄もある。これで歩いたらかなりのトレーニングになるだろう。
手水舎兼防火水槽。
木製の水槽をシートで覆って水漏れを防いでいる。
山上にあるお寺で水は貴重品のため、雨水を溜めて飲水や雑用水にしているようす。
赤いバケツがいくつかぶら下がっている。
樋の水が導かれるようになっている。
本堂が開いたので参拝を済ませる。
なんとも味のある古めかしい建物だった。
お寺から歩いて山上ヶ岳山頂を目指す。
一面笹に覆われていて見通しは良い。
山頂の標識。周囲に人気はなし。
山頂からの風景。
山上ヶ岳から金峯神社
側溝には格子状に組まれたフタが取り付けられていた。
私の小屋と同じような作り。
歩くとパコパコという木のぬくもりのある音がして気持ちいい。
奥駆道の順峰はお寺の裏から入って表から出ることになる。
石段を下って立派な山門を抜ける。
参道脇には倒れた墓石が見られた。
自然のままにして敢えて直さないのだろう。
墓石に刻まれた文字は薄っすらと見える程度でかなりの年代物と思われた。
しばらくゆくと宿坊が何軒かあった。
木造瓦葺き屋根の建物がいくつか並んでいる。
軒を連ねる宿坊
私に宿など不要。その気になれば、いつでもどこでもそこら辺で寝ることができる。
あちこち野宿しながら歩くなど幾多の厳しい修行を経て習得した野宿スキルだ。
鳥居を潜る。
バッテン状に組まれた木の階段。
段差が低くて歩きやすかった。
お年寄りの参拝者が多いので、配慮しているのだろう。
山上ヶ岳を越えると、道は一気に歩きやすくなった。
大峯寒製 だらにすけ丸 松清店
休憩所を抜けて歩いてゆくようになっている。
シーズンオフのためか、営業しているようすはなし。
休憩所内のようす。
壁際にベンチがいくつか設置されている。雨の日にはありがたい建物だ。
だらにすけ 花丑出店
いくつかの休憩所が連続する区間。
地図を見ると、メインの参拝ルートは洞川温泉方面から周回コースで山上ヶ岳周るように思える。尾根を登りきって傾斜がゆるくなった場所に休憩所がある。実に考えられている。
休憩所内をゆく。
このような休憩室もあり。
板に書かれたメニューがぶら下がっている。
なんとも味わいのある建物だ。
だらにすけ 洞辻茶屋
3つ目の休憩所が現れた!ここが一番立派な建物だった。
中は広くて大型の木製ベンチが設置されている。
これは凄い!
こんないい場所と知っていたら、昨日はここまで歩いてきたことだろう。
天窓があって中は非常に明るい。
なんとアルコールも販売している。
まあ、少しくらいならいいじゃないか。そう思わせる何かが休憩所にはある。
山で飲むアルコールは麓の倍以上美味いんだよ。もう飲まんけど。
鍋冠行者堂
文武天皇の御字、修験道の開祖役の行者(神変大菩薩)が吉野熊野を結ぶ大峯山中で衆生済度のために修行中、この付近に差し掛かった際、その修業を妨げようと大蛇が現れ、口から火を噴き、その火は火の玉となって行者に降りかかりました。行者は峯中での食事用に携帯していた鍋を被ってその難を避け、修行で身につけた呪術で、その大蛇を退治しました。その大蛇の頭は現在の大峯山寺本堂のあたりにはじけ飛んだので、本堂の内々陣は現在も辰の口と呼ばれています。また、その大蛇の尾は、遠く吉野山まではじけ飛び、その地は現在、辰の尾という地名になっています。さらに、その大蛇の腹部が横たわっていたこの付近は蛇腹と呼ばれています。
このような故事にちなんで、古くからこの地には、他に類を見ない鍋を被った型の行者が祀られるようになりました。そして、いつの頃からか、このお堂は大峯山役講の京橋総講中によって、建て替えや補修が行われるようになり、現在も同講中によって維持管理されています。
立て看板より
木に鎖で下げられている大きな中華鍋。
こんな大きな鍋を持って修行していたのかよ!とツッコミしたくなる。
五番関にある女人結界門。
ここから山上ヶ岳方面へは女性立ち入り禁止。
女人禁制の看板
いろいろ落書きがされている。
現代にあって女人禁制は古いしきたりか?
通りすがりの人間がとやかく言う権利はないので素通りする。男で良かった。
二蔵宿小屋
縦走路沿いにある避難小屋
周囲は木々に囲まれていて静か。
二蔵宿小屋全景
小屋の周囲は平らな広場となっている。
水場へは約10下ってゆく。
小笹宿の沢で汲んだ水があるため、汲みには行かず。
大峯奥駈道では水場は尾根から下がった場所にあることが多いので、登山道沿いの水場では必ず汲んでおいたほうがいい。
小屋の外に仮設トイレあり。使用可。
小屋の屋根の水が導かれて貯水槽に貯まるようになっている。
雨水回収システムが正常に機能しているかは未確認。
小屋の入り口
上がってすぐのところにロフトに上がるハシゴあり。
小屋内部(1F)
小屋1F中央に設置されている薪ストーブ。鉄板を溶接して作った自作ストーブ。
小屋の棚には毛布などの備品が置かれている。
ハシゴを上ったロフトのようす。
奥のケースに備品が置かれている。
二蔵宿小屋から少しゆくと林道に出る。
麓が近くなってきた証。
足摺茶屋跡
再び登山道に復帰してしばらくゆくと、足摺茶屋跡の避難小屋に着いた。
見た目物置小屋のような建物。
山上ヶ岳近くの休憩所のように中を抜けてゆく。
なんと入り口ドアの窓ガラスが割られていた。
不届き者は、施錠されていたドアのガラスを割って中に入ったのだろう。
小屋内部の様子
一面土間で壁際にベンチがあるのみ。
奥に神棚が設置されている。
壁際のベンチ
幅が狭くて横になるには厳しい。
ここで泊まるなら、シートを敷いて横になったほうがいいだろう。
足摺茶屋にはトイレ・水場はなし。雨水回収システムが設置されていたのみ。
快適とは言えない小屋なので、緊急時のみの使用とした方が良さそう。
木々の切れ間から見える風景
白く霞んでいる。
植林された杉林の中をゆく。緩やかな下りが続く。
登山道脇にあった作業用モノレールの小屋。
山仕事のために必要なものなのだろう。最近使用された形跡はなし。
尾根沿いの道路を歩く。
すっかり現実に引き戻されてしまった感じがする。
短くも長かった熊野古道の旅はそろそろ終わりを迎えようとしている。
登山道脇の杉林の中で昼食をとる。
麓の神社まで下りると火気の使用はできなくなるので、早めに昼食を済ませておく。
人の気配はなくゆっくりすることができた。
伐採地をゆく。
なぜかここだけ皆伐されている。
伐採地跡にある東屋。
逆峯の場合は麓で水を汲んできてここで泊まればいいだろう。
東屋内部は広くて快適。
防風壁があるのもいい感じだ。
ちょうどお昼ころ、金峯神社に到着。
山奥の静かな佇まいの神社。参拝客の姿がちらほら見られた。
あとは舗装路を歩いて下るだけ。
金峯神社には公衆トイレと休憩用の東屋がある。トイレの水は飲用不可の表示あり。
さきほど休憩したばかりなので、そのまま素通りする。
金峯神社から近鉄吉野駅まで
急な坂道を降ってゆく。
登山道より硬い舗装路の方が脚を傷めやすい。歩幅を狭くしてゆっくり下りてゆく。
吉野水分神社
立派な鳥居が出迎えてくれた。
鳥居を潜った先にある山門。桜門と言って桃山時代に再建されたものらしい。
境内は順路に沿って歩くことができる。
吉野山の中で一番気に入った神社だった。
吉野山の神社は参拝料が無料なのがいい。
麓に見えるのが参道脇に立っている宿や土産物屋などの建物。
まだまだ歩かねばならない。
道路脇で見つけた水道。
野宿者には、こういう施設はありがたい。
無人のペット販売コーナー
虫かごにはクワガタやカブトムシが売られている。
麓に下りるにしたがって暑くなってきた。
まだ5月中旬だというのに凄い暑さ。先が思いやられる。
麓の吉野山にもあちこちに宿坊あり。
どれも雰囲気があって外国人旅行者が喜びそう。
山を下りてきたら、外国人が目立つようになってきた。
坂道で車を停めるのも大変。
暑いなか、プロパンガスボンベの配達を行っていた。
リフトでおろしたボンベを立てながら上手いこと転がしてゆく。
雰囲気の良い道路を歩く。両側には旅館や土産物屋が軒を連ねている。
桜のシーズンが終わってようやく落ち着きを取り戻したのか。
坂が多い吉野山では原付きが多く見られる。観光客がどっと押し寄せるここでは、車で出かけるのも一苦労だろう。
吉野山周辺には、無料Wi-Fiが整備されている。
ようやく日本もWi-Fiの重要性に気がついたか。
しかし、充電スポットはどこにも見当たらない。宿で充電しなさいということか。
下りに下ってようやく金峯山寺までやって来た。
石段を登って奥に進む。
圧倒的迫力のある金峯山寺本堂。
馬鹿でかい建物だ。
下から建物を見上げる。
今どきポケモンGOかよ!と言いたくなる。
まだあんなクソゲーやってるヤツいるんだ。
いったい何が楽しいんだろう?
ミツバチにご注意ください。
いったい何を注意すればいいのか?むやみに追い払おうとしなければ、どこかに行ってくれる。
なんだか現代のキャンプ場にあるような貼り紙だな。
仁王門は改装中で汚れ飛散シートで覆われていた。
残念無念!
金峯山寺から近鉄吉野駅
仁王門から参道を見下ろす。
たぬきの置物などいろいろ展示されているお土産屋さん。
うむ、旅行者のツボを心得ているなあ。おっさんも一つ欲しくなってくる。
だが自転車だと嵩張るものや壊れ物は運ぶ気になれない。結果的に無駄なものを買わなくて安上がりになる。
見るだけにしておこう。
吉野山のケーブルカーは機械の調子が悪くて運休中で、代行バスが運行されていた。
もちろん麓まで歩いて下りる。
麓への道は野生の勘を頼りに下りてゆく。
ちょっと大げさか、それほど迷うことなく麓への道を見つけることができる。
途中、土管を通るところがあって面白い。子供は大喜びだな。
バスに乗るより、歩いて下った方が速いように思える。
ただし、傾斜がかなり急。脚に負担を掛けないようにゆっくりと下ってゆく。
麓のケーブルカーの駅に到着。
運休の案内が表示されていた。
片道360円はかなり良心的な運賃だ。
歩道の標識まで設置されている。逆にこういう風に親切だと、乗ろうかなという気になってくる。
1時半、ようやく近鉄吉野駅に到着!
長かった熊野古道の歩き旅は終わった。いやあ、本当に長かったな!
おっさん、お疲れさん!!
近鉄吉野駅から下市口駅まで
きっぷを買って中に入ると、すでに電車が待っていた。
電車の中はクーラーが効いていて非常に涼しい。
バックパックをおいてシートに座ると、疲れがドッと出てきた。
今はなき茶色のタオルが懐かしく思える。
この時の100均タオルはまだ余裕を持って首に巻けるほど長かった。
今のものは微妙な長さで首に巻くと若干苦しい。
愛しのOJC4君と久しぶりの再開!
下市口(しもいちぐち)駅で下車して歩いて2分の駐輪場に向かう。
恐る恐る自転車を停めたところにゆくと、何も変わらずにカバーを掛けられている自転車があった。1日100円の料金で停められるのは非常に有難かった。
熊野古道の旅まとめ
高野山に続く町石道から小辺路を経て熊野本宮大社に参拝し、大峯奥駆道を歩いて吉野山に至る8泊9日の山旅はこうして無事に終了した。
この旅は、一昨年のアメリカ西海岸パシフィック・クレスト・トレイル(PCT)を歩いた成果を身をもって確かめるために軽装で歩いてみた。実際に歩いてみて、PCTの経験が確実に身についているということを実感した。宿泊場所一つとってみても、以前とは比べものにならないほど、的確にすばやく探し出すことができるようになった。加齢とともに体力は減少傾向だが、自分の体力の限界がだいたい分かるために、無理をしなくなり結果、余裕を持って歩けるようになった。計画どおりに歩けなくても、臨機応変に対応できるようになった。おっさんになってもまだまだ十分イケる。そんなことを感じた旅だった。
歩いていて一番楽しいと思ったのは、小辺路周辺を歩いていた時。静かな山奥の集落を抜けて続く道に当時の面影を見ることができた。ところどころに地元の方のさりげない配慮がみられて嬉しくも思った。観光地化した高野山や熊野本宮大社周辺を除けば、道は非常に静かで落ち着いて歩くことができる。歩く季節は暑すぎず寒すぎず日が長く人が少ない、吉野山の桜が散ってからGWまで、4月上旬から4月中旬までがベストだと思われる。私はGW過ぎの5月中旬に歩いたが、暑さで時々バテることがあった。ベストシーズンに歩けば、新緑の中を気持ちよく歩けること間違いなし!水場の少ない稜線歩きの大峯奥駈道でも、確実に水を得ることができる。
今度熊野古道を歩くとしたら、自由気ままに中辺路や大辺路なんかもブラブラと歩いてみたい。観光協会が使いやすいマップをアップしているので、適宜ダウンロードしてコンビニのマルチプリンタで印刷して使用しよう。この地図は本当にオススメ。
実際にダウンロードした地図をコンビニでモノクロ印刷した物を持ち歩いた。
大峯奥駈道では昭文社の「山と高原地図 大峰山脈」を使用した。5万分の1の登山地図で、コースタイムや水場の情報が掲載されていて非常に使いやすい。事前の登山計画にも欠かせない地図。
参考サイト 熊野本宮観光協会(エリア別マップダウンロード)
ではそろそろオーストラリアの準備に戻るとしようか。
おわり