熊野古道 小辺路を歩く【後編】出店跡から熊野本宮大社まで

こんにちは。からあげです。

 

前回は高野山から出店跡までの小辺路の前半部分をお届けした。あれからかなりの時間が経ってしまった!東京に新しい自転車を取りに行くなどしていたら、続きを書くのをついうっかり忘れていた。続きを楽しみにしてくれていた読者もいることだろう。

ここは素直に一言謝っておこう。

「すまん!」

 

熊野古道 小辺路を歩く【後編】2018年5月吉日

コース概略

出店跡~西中バス停~昴の郷~果無峠~道の駅「奥熊野古道ほんぐう」~熊野本宮大社


*右下の「山行記録のページへ」をクリックすると、詳細なルートマップを見ることができる。

 

出店跡から昴の郷まで

昨晩の冷え込みはさほどなく、夜は静かで快適な一夜を過ごすことができた。
朝5時に起床してタープを撤収して朝食の準備を始めると、木々の間から日差しが差すようになってくれた。

周囲の雰囲気は良く、気持ちのよい朝をたっぷりと堪能することができた。

荷物をまとめて出店跡を出発すると、立派な石垣が築かれていた。
非常に立派な石垣だった。なるほど、こいつのお陰で平になっていて、快適に眠ることができたのだな。

苔むした道標

侘び寂びをこよなく愛する人は、これだけでご飯3杯くらい食べられそう。

矢倉観音堂

出店跡から40分ほど下ると、若干の傾斜のある矢倉観音堂に辿り着いた。

出店跡を過ぎると、泊まれそうな場所は矢倉観音堂くらいしかない。昨日の選択はベストだったと確信できた。ここで泊まれないことはないが、傾斜に悩まされたことだろう。

気がついたら、斜面の立木に引っかかているかもしれない。間違ってもそんなことはない!(おっさんのひとりボケツッコミ)

集落手間にある廃屋

使われないようになってから、かなりの年月が経っているようにみえる。これまで似たような建物を何度も見た。

三浦峠からの長い下りを下りると、国道425号線に出た。
道路脇に水が引っ張ってきてあって、水を飲むことができた。

木製の桶一面にびっしり苔が生えている。これは貴重な桶だ!
何年経つとこうして苔に覆われるのだろう?

人気のない道路を歩く。今回の道路歩きは長め。
開発によって昔の道が消えてしまったので仕方がない。

西中バス停付近

バス停の他に自販機と公衆電話があるのみ。

公衆電話をチェックする。テレホンカードと硬化を使用できるタイプ。

再び水飲み場を発見!

山の斜面に作られていた。コップも備え付けられているのが嬉しい。

川合神社前に公衆トイレあり。

外には水道の蛇口もあって水を汲むことができる。

川合神社

広い境内の中は砂利が敷き詰められている。
開放感たっぷりで休憩にピッタリ。
集落の外れの静かな神社だ。

味のある狛犬

川合神社を出ると、さらに道路歩きが続く。
1つ目の黄緑色の鉄橋を渡る。

鉄橋を渡ったところの分岐。十津川温泉方面に真っ直ぐ進む。

右手に見える赤い鉄橋は渡らない。国道425号線を真っ直ぐ進む。

道路脇の池には錦鯉が飼われている。水は山から引いてくるのでタダ。
キレイな水で大きくなりそうだ。

道路歩きはまだまだ続く。山奥で交通量がほとんどないのが救い。

郵便局の手前、集落の中心部と思われる付近に25mプールがあった。
現在も使用されているかは不明。

集落の中の道は細く、車同士すれ違うのが大変そう。

川沿いの狭い土地に点在する集落は、山の斜面にも広がっていた。
日当たりがかなり良さそうだ。

歩きくたびれたので、道路脇の駐車スペースで休憩する。
転がっていた一升瓶のケースがちょうどいい椅子となってくれた。

なおも歩いて串崎バス停までやって来た。ちょうど休憩に良さそうなバス停がある。
さっき休んだばかりなのに休みたくなってきた。

ん?隣の小屋になんかいるぞ?

つぶらな瞳でおっさんを見つめるワンコ。
あまりに可愛くて連れて帰りたくなってしまった。赤い首輪が非常にオシャレ。

私が近づいても全く吠えることなく、しっぽを振って愛想を振りまく。
奥の方にはこの犬が生んだと思われる子犬が小さくなって怯えていた。
親とは正反対の反応だった。

白い犬には赤い首輪が本当に似合う。思わずお鼻をツンツンしたくなる。

串崎バス停内

小奇麗に掃除されていて気持ちよく使える。

道路から見える広い河川敷では何やら工事が行われていた。

無人販売所

覗いてみると、重たくて嵩張る大根とかが売られていた。
さすがに大根1本は持て余してしまう。

集落の外れ、柳本橋の手前に昴の郷(すばるのさと)という村の温泉施設がある。
お腹が空いたな!ちょっと寄ってゆこう。

昴の郷全景

立派な建物がいくつもある。奥には広い芝生の広場がある。

となりの広大な芝生の広場には、屋根付きの野外音楽ステージがある。しかし、デカデカとキャンプ禁止の看板が設置されている。

敷地内にある駐輪場。

駐輪場なのに1台も自転車は停められていない。アップダウンの多い谷沿いの集落には自転車に乗る人は少ない。

ここは雨の日の休憩場所になるだろう。

建物入り口の広い軒下には、自販機が3台も設置されている。
よし、なんか食べよう!

あいにくレストランの営業は11時30分で、営業開始まで随分とある。そこで売店でお菓子とアイスクリームを買って食べる。お腹が空いた時、ちょこっとお菓子を食べるだけで全然違う。

アメリカのPCT以降、再びお菓子を食べるようになってしまった。好き嫌いはダメ!
食べ過ぎなければ、それほど体には悪くない。(かも)

奮発してご飯を食べようと思った時に限って、なぜか食べられないことが多い。

駐車場の隣に温泉スタンドあり。

軽トラでやって来て、ポリタンクに入れるシステム。値段が安いのか高いのか分からない。

 

昴の郷から果無峠まで

昴の郷を出ると、旧道のトンネルを抜けて柳本橋方面に進む。
トンネルは長め。途中で曲がっていて入り口から出口が見えない。

柳本橋入り口

ガードレールの切れ目から橋を渡る。

待ってました!雰囲気がある吊橋だ。

吊橋を渡る。手入れが行き届いた立派な新しい橋。歩いていてもそれほど怖くはない。

敷板に腐りはなし。それほど高度感はなし。

吊橋を渡って一息吐く。

これから険しい果無(はてなし)峠への登りが始まる。
果無峠を過ぎれば、あとは下って熊野本宮大社に向うだけだ。

民家の軒下を通過する。
ごめんくださ~い。

果無峠入り口の標識

途中、舗装道路に分断されているが、標識が完備されていて道迷いするおそれはなし。

丸太をくり抜いた水溜。

どこからか山の水が引かれている。

石畳の道をゆく。
鬱蒼と茂る杉林の中に入った。

道端にギンリュウソウを発見した!
北海道や東北でよく見かけた植物。キノコの一種なそうな。

急な道を登ってゆくと、視界が開けて麓を流れる熊野川を見下ろすことができた。
川の水はなぜか茶色く濁っている。

山の上の方の集落には、今も水田があって稲が植えられている。
この時はまだ田植えが始まったばかりで、田んぼに水を張っているところだった。

世界遺産の石碑

ここは小辺路のみどころの一つ。今でも昔の雰囲気が色濃く残っている。

道は集落内の民家の庭を通る。
ここは良好な休憩ポイント。

石畳の広い庭の周りに古い建物がある。

 

バックパックを下ろして縁側に座って休憩する。
ちょうど日陰になっていて休むには最適な場所だった。

壁に年季の入った古い笠が下げられていた。

広い庭の中央には水が引かれている。

水溜に一輪のアザミが挿されていた。さりげない心遣いを感じる。

水は冷たくて非常においしい。

奥には休憩室とトイレがあって、誰でも使用できるようになっていた。
室内には熊野古道の写真が展示されていた。

強烈に後ろ髪を引かれつつも、居心地のよい民家を出発すると、集落の外れにバス停があった。
どれどれ?バスは何時に来るのかな?乗る気は全くないのに、バスのダイヤが気になるおっさん。

なんと月曜日のみの一日4便。

駄目だこりゃ!(いかりや長介風)

こんなバスでも残っているということは、集落内のお年寄りが利用しているのだろう。

天水田跡

広々とした開放的な空間でキャンプに良さそう。ただし、水場はないので、どこかで汲んでおく必要がある。

天水田

この辺りはかつての水田跡で、ここから約300m峠よりにあった「山口茶屋」の住人が、雨水だけを頼りにして稲作したといわれている「天水田跡」である。
水は効率的に使われ、水田はこの辺りに数枚あった。
十津川村教育委員会

 

みどりのトンネルを抜ける。
気持ちよくてたまらない。

森の中にだだっ広い空間があった。
ここが天水田で稲を育てていたという山口茶屋跡。

森の中に昔の屋敷林と思しき風格のある木が生えていた。

茶屋跡には現在も石垣が残っている。

道端のお地蔵さま

かなりの年代物。

最後の果無峠の登りはかなり急だった。これで上りは終わりだと思うと余計に辛くなってくる。

峠手前の観音堂で休憩することにした。

観音堂には水場あり。
どこからか水が引かれている。せっかくだから、ここで昼メシを作ろう。

日陰にシートを敷いて寛ぐ。
なんとも5月とは思えない日差しの強さで、日向にいると汗がダラダラ出てくる。

ラーメンに残り物を打ち込んで増量をした。
やっぱりタンパク質には、シーチキンやツナがいい。

最後1つのシーチキンを惜しげもなく投入する。

峠手前に見晴らしのよいところがあった。

天気は下り坂で雲が多くなってきた。今回はちょうど良いタイミングで小辺路を歩くことが出来た。

森の中の果無峠

木々が茂っているため視界はなし。
その分、風は吹かず落ち着いて休むことができる。

十津川トレイルランの張り紙。

間もなく行われるトレランレースの準備が行われていた。

 

果無峠から道の駅まで

果無峠を過ぎれば、小辺路ゴールの熊野本宮大社はもうすぐだ!

ただ、長くて急な下りが続くので注意が必要だ。おっさんはマイペースで歩いて行った。

木々の切れ間から、眼下に熊野川が見えた。
目をよく凝らすと本宮大社の鳥居が見えた。

もう間もなく。

長い下りを下りてようやく麓の集落までやって来た。
これは集落の手前にある簡易浄水場。

大きな貯水槽に個別の配水管が接続されている。

水道メーターがビッシリ。なかなかこういう施設は珍しい。
大雨が降って詰まったら、村人総出で掃除するのかな?

またまた民家の軒下を通る。
熊野古道は地元の民家と非常に近い。古き良き時代の名残が見られる。

熊野川もう目の前。

川はなんとなく増水しているようす。近年、熊野川は多くの水害をもたらしているそうな。

ようやく麓の道路まで下りてきたところ。
時間はちょうど午後4時。これから道の駅に向かって歩いてゆくと、ちょうどいい時間になる。

とりあえず、道の駅に着いてから、あとのことを考える。
次の大嶺奥駈道を歩くため、本宮のどこかで食料を補給する必要がある。

鉄橋を渡る。味も素っ気もない橋だが、これから腹いっぱい食べられると思うと、つい笑みがこぼれてくる。お腹が空いた!なんか食べたい。

道路には歩きやすい歩道が整備されていた。

歩きながら熊野川の景色を楽しむ。
川幅は非常に広い。

目印となるヘアサロンみのる。ログハウス風の建物でよく目立つ。
橋を渡らずにそのまま道なりに進む。

歩き疲れる前に、なんとか道の駅に到着した!

よし、早速施設の見学を行うか。野宿者はいろいろと忙しい。目的地に着いたからと言って、直ぐには休めない。

広々とした駐車場を囲むように建物がある。
真っ先に目についたのは、立派な東屋とよく分からない屋根付きの建物だ。

建物の中を覗いて狂喜乱舞。
以前は日曜朝市が行われていたそうだが、現在はやっていないそう。

そう言われてみると、商品を並べやすいように二段になっている。

駐車場と川の間には、広大な芝生の広場あり。

道の駅の中のスーパーを覗いてみると、なかなか品揃えが充実していた。
インスタント食品から生物まで各種取りそろえてある。
町中のスーパーほどではないが、田舎にしては十分な品揃えだ。

取り敢えず、ここである程度買っておくことにした。
本宮でここまで揃っている店はないように思えた。(実際、歩いて行ける本宮内のスーパーは、道の駅が一番大きかった。あとで戻ってくることにならないよう、ここで多めに買っておいた。)

スーパーにはイートインコーナー兼レストランが併設されている。
実にありがたい。すでにレストランの営業は終了していて、思う存分休むことができた。

氷と電子レンジ、湯沸かしポット、ゴミ箱が設置されている。

歩き遍路の人間に配慮してくれているのが分かる。

おっさんの食事第一弾!

小辺路を歩いたご褒美に欲しい物をあれこれ買った。
カレーヌードルは白米に合う。

ボリュームが全然足りなかったのえ、食後のおやつを購入。
これらもあっという間に平らげてしまった。

恐るべき食欲。通常でもこんなんだと思うと怖くなってくる。
食費節約のためにも、活動OFF期は体を安静にしておこう。

スーパーで購入した品。お腹が落ち着いてようやく買い出しを行う気になった。お腹が空いたまま食料の買い出しは無理。おっさんは気が狂ってしまうだろう。

道の駅のスーパーで大嶺奥駈道の食料をだいたい買っておいた。グーグルマップで検索すると、本宮大社周辺にはコンビニしかない。

主食は袋ラーメンで、レトルトカレーに乾物類を加えて量を増やす作戦をとる。
煮干しは軽量で日持ちするハイカー向けの食料だ。タンパク質が豊富に含まれているのがいい。疲れた時、煮干しを2,3食べると元気が出てくる。

この日は、道の駅の日曜市の屋根の下で泊まった。夜から雨が降ってくるという予報だったので、無難な選択をした。夜遅く煩い夫婦が車でやって来て、軒下にバカでかいテントを張り始めた。どうでもいい話にうんざりしつつも、疲れていたので深い眠りに就いたのだった。

 

道の駅から熊野本宮大社まで

道の駅の夜明け

朝の4時半ころから雨が降り始めた。雨が降り始めた頃に起き出して準備を始める。
鬱陶しい夫婦が活動する前に出発しよう。

ポンチョを着て道の駅を出発する。

空は分厚い雲に覆われていて、まだ周囲は薄暗い。

道の駅から30分ほど歩いて三軒茶屋跡に到着した。
広場には休憩所兼トイレが整備されている。

この休憩所を見て、昨日ここで泊まれば良かったと思った。

トイレはバイオトイレで、微生物で汚物を分解するようになっている。
まだ出来て間もないようすで、見た目が新しかった。

トイレの入り口に設置された雨水タンク。
蛇口を撚ると水が出てきた。お約束の「飲用できません。」と表示されている。

雨水は思ったより全然キレイ。煮沸すれば問題ないだろう。飲用はもちろん自己責任で!

小雨が降る中、休憩所で朝食をとった。
月曜日で全く人が来る気配はなし。屋根があると、雨の日でも落ち着いて休んでいられる。

九鬼ヶ口関所

三軒茶屋跡の広場の端にある関所跡。復元された小奇麗な柵が整備されている。

ここから本宮大社まであと僅か。さっさと歩いてどこかで休憩しよう。

道は殆どフラットで歩きやすい。
食料を買って一気に重たくなったバックパックのストラップが肩に食い込む。

突然現れたちょっと寄り道の看板。

本当にちょっとだろうな?田舎の人のちょっとは当てにならないが、興味本位で行ってみることにした。まだ朝は早い。慌てることは全然ない。

展望台のような広場から大斎原の大鳥居を見下ろす。
周囲はこざっぱりと伐採されていて休憩にはピッタリ。

熱心な読者には私の休憩という意味は分かるだろう?おっさんにそこまで言わせないでくれたまえ。

森の中を抜けて町の中に出たところ。
目指す本宮大社はすぐそこだ。標識を頼りに歩いてゆく。

本宮大社へは裏側の鳥居をくぐって境内に入る。

そして本殿にたどり着く。長いようで短かった小辺路の旅はここに終わった。

ちょうど朝のお勤めの時間のようで、太鼓を打ち鳴らす音が聞こえてきた。

大きな大黒石。

頑張れば持ち上げられそう。って、そんなことできるか!

本殿のようす

力強い字で書かれた垂れ幕がぶら下げられている。この時、北海道ツーリングを無事で終えたことのお礼をした。まだこの時点では、来年オーストラリアに行くとは決めていなかった。

本宮大社を参拝して表の鳥居から出る。この時、まだ朝の7時を回ったばかり。
天気予報では、このあと大雨が降ることになっていた。

本宮の町まで来たのはいいが、朝早くてどこにも行くところがない!

小辺路を歩いて少し疲れた。どこかに休む場所はないか?そう思いながら、本宮の町に繰り出すおっさんであった。このあと、おっさんは大嶺奥駈道を歩いて吉野山に向うことになる。

さてさて、どうなることやら。この続きはまたおっさんの気が向いた時にでもアップするとしよう。

 

参考リンク

和歌山観光情報(熊野古道 小辺路)
水ヶ峰(奈良県野迫川村)~三浦口(奈良県十津川村)~柳本橋(奈良県十津川村)
十津川温泉(奈良県十津川村)~熊野本宮大社(本宮町)

 

 

つづく

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