こんにちは。からあげです。
はじめに
ペダルからクランクに伝達された大きな力を支える部分がボットムブラケット。通称BB(びーびー)と呼ばれるもので、自転車では重要な部品となる。仮にBBの調子が悪いと、ペダルを漕ぐたびに僅かずつ力が失われていく。力をロスなく伝達させるためには、BBを良好に保っておく必要がある。
現在のBBの主流はカートリッジ式で、調整・整備の必要はなく(分解不能)、悪くなったらBBまるごと一式交換することになる。
2018年夏の北海道は、例年に比べて雨が多く精神修行のような厳しい日々が続いた。完全防水のカバンに入れていたテントは乾く暇もないほどで、ついには薄っすらとカビが生えてしまったのだった。そんな雨の多い北海道だったが、じっとしていられない質の私は大雨の中を何度も走ったりもした。いったい何を考えていたのだろう。
ツーリング終盤の帯広では、大雨の中を長い時間走ってカッパを着ていたにも関わらず、ずぶ濡れになってしまった。やけになったおっさんは、自転車ごと噴水の中に入って遊んでしまう。
チェーンオイルやベアリングのグリスなどの油を落とす水は大敵。ましてや高圧の噴水に突っ込むのは論外、ということにあとから気がついた。
それなので、家に帰ったら早めに自転車を整備しようとは思っていたものの、雨の日のカンチブレーキの効きの悪さに嫌気が差して、帰ったらすぐに自転車に買い替えることにした。新しい自転車を手にれると、興味が薄れてしばらくの間放置することになってしまった。
それではクランクとチェーンリングの取り外しに続いて、BBの着脱について。
今回が初めてのBBの着脱だったが、事前にネットでしっかりと勉強したおかげで、問題なく作業を終えることができた。先人たちに感謝。
初めのことは誰にでもある。まだ一度もやったことがないからと言って、他人任せにしていたらいつまで経っても自分でできるようにならない。過去に何度も物を壊している私が言うのも何だが、失敗の積み重ねが大きな成功を呼び込む。
ヨシ、あなたもレッツチャレンジ!
BBの着脱に必要な道具
BB抜き出し工具
カートリッジ式BB(BB-ES300(オクタリンク))の着脱には、専用の抜き出し工具が必要となる。BBのタイプによって工具が違うので、初めての人は注意して欲しい。
シマノ純正では、TL-UN74-SとTL-UN66の2種類がある。BB取り付け時にトルクレンチで確実に締め付けたいため、ソケットタイプを選択。おっさんの懐事情と相談し、安くて質の高いPWTという台湾の工具メーカーの物にした。
TL-UN74-S
モンキーと組み合わせて使用する工具。実勢価格は約1,500円。
TL-UN66
モンキーまたはソケットハンドルと組み合わせて使用する工具。差込角 12.7mm(1/2インチ)。安心安全のシマノだが、実勢価格が約3,500円とかなり高価なのが欠点。だが、トルクレンチを使用したいならTL-UN66を選ぶ。
PWT BBツール CB65SIL
シマノ製カートリッジ式BBに対応したPWTのBBツール。差し込み角12.7mm(1/2インチ)でクロムメッキ仕上げ。
PWT直販サイトで845円(税込み)という驚きの安さ。これまでPWT製のペダルレンチや六角レンチを使用してきて、確かな品質と価格の安さに非常に満足していた。そのためPWTの直販サイトで他の工具とともに購入した。
参考サイト PWT(PWT カートリッジB.B.ツール 差込角1/2インチ シマノカートリッジB.B.対応 CB65SIL)
全長は52mm。
重さは106g。
工具のようす
こちら側をBBに当てて使用する。
角度を変えてもう一枚。正面から撮影する。
モンキーとソケットレンチが使用可能。六角の2面幅は24mm、ソケット差し込み角は12.7mm(1/2インチ)。
トルクレンチ
BBなどの重要部品の取り付けには、トルクレンチを使用して規定トルクで確実に締め付ける。
Amazonで手頃な値段で評判の良いSK11 SDT3-060。デジタル表示のアラーム付きで扱いやすい。全長22cm。測定範囲3~60N・m。差し込み角9.5mm(3/8インチ)。
トルクレンチの差し込み角は9.5mmで、BBツールの差し込み角12.7mmに合わない。そこで、ソケットアダプターを使用する。
BB本体締め付けの規定トルクは50-70N・m。トルクレンチ最大の60N・mまでで締め付ければ、差込角を太くしても工具が壊れることはない。
アダプターの規格は紛らわしいので、ネットで購入する場合は間違えないようにしっかり確認したい。
凸側が12.7mm角。
凹側が9.5mm角。
作業のようす
BBの取り外し
今回、BBを着脱する自転車はPanasonicランドナーOJC4。
しなやかな素材で長時間乗っても疲れにくいクロモリフレームで、溶接修理が可能。入門用ロードコンポのCLARISを搭載した完成車。BBはすでに廃れたオクタリンク方式という特殊なもの。
ペダルとクランクを取り外したあとでBBの取り外しに掛かる。
チェーンは邪魔にならないように出っ張りにに掛けておく。
BB取り外しは、まず左側からアダプターを外す。BB-ES300の場合は、プラスチック製。無理に力を加えて割らないように注意する。このアダプターは正ネジ(右回しで締り左回しで緩む)。
先ほど紹介したPWTのBBツールをソケットハンドルに取り付けた。
BBツールをアダプターに当てたところ。
工具の当たり具合をチェック。ガタツキはなし。
左のアダプターは簡単に緩めることが出来た。まずはほっと一安心。
アダプターを外したようすをズームで撮影。
アダプターのようす。軽量なプラスチック製。
アダプター(うら)
アダプターのネジ山のようす。
続いて右側からBB本体を取り外す。BBシェル幅によって正ネジと逆ネジがあるので要注意。
OJC4のシェル幅は68mmで逆ネジ(右に回すと緩み左に回すと締まる)。
BB取り外し後にBBのシェル幅を測ってみる。
取り外し後は計測しやすい。
ノギスのメモリを読むと68mm。つまりOJC4に付いているBB本体は逆ネジとなる。
両タイヤを接地させ自作パーキングブレーキで後輪ロックさせた状態で、ハンドル左側を柱に立て掛けて作業を行う。BBツールを押し付けた状態でソケットハンドルを右に回す。
すると思っていたとおり固い。防錆潤滑剤を噴射してなじませてから再トライするも緩まず。
そこで長めのソケットハンドルに付け替えて回したところ、なんとか緩めることに成功した!おっさん思わず歓喜の雄叫びをあげる!!
抜き出したBB本体。
外観にサビが浮いている。サビは当然というべきか。
BB本体のズーム
BBシェルの内側のようすを覗いてみる。
むむむ、中が錆びているではないか!
光を当てて撮影。めまいを起こしそうなほど酷い状態。おっさんの額から冷や汗が滴り落ちる。
あと1年放置していたら、手持ちの工具で外すのは無理だったかもしれない。
自転車は雨や汗で固着することもあるから、取り付けネジは定期的に外してグリスアップした方がいいのか。これでよく分かった。
防錆潤滑スプレーを吹き付けてからウエスで拭くと、とても綺麗になった。
始めはサビで見えなかったが、掃除してみると水抜き穴が空いているのが分かった。
もう1個の穴はシフトケーブルのガイドを固定するネジ穴。
外側からBBシェル底のようすをチェック。
BBを水没させると水抜き穴からフレーム内部に水が侵入するので、深い水たまりを越える時は要注意。深い川を渡る時は自転車を担ぐようにする。
ウエスで磨いてきれいになったBB本体。
表示されている文字はサビで、一部判読不能となっている。
それでもシャフト長さ121mm、シェル幅68mmというのがハッキリと読み取れる。
同じBB-ES300でもたくさんの規格があるので、間違えないように慎重に注文したい。
参考リンク シマノ(オクタリンクボットムブラケット BB-ES300)
BB本体シャフトとねじ山のようす
本体を持ってシャフトを回してみると、軽くスムーズに回転してくれた。
走行距離はまだ11,000kmを超えたところで交換の必要はなし。
このBBはカートリッジ式のため、カップアンドコーン式のように開放してベアリングの整備は出来ない。悪くなったらBBまるごと一式交換することになる。
BBアダプター
左側から締め付けるプラスチック製のパーツ。
BBの取り付け
本体のネジ山にはシマノプレミアムグリス、他の部分には安いリチウムグリスを塗布した。
アダプターはプラスチック製のためグリスを塗らず。シマノのマニュアルには、アダプターがプラスチックの場合はグリスを塗布しないでください。との記述あり。
参考リンク シマノディーラーマニュアル(フロントチェーンホイール)
グリスを塗布したところで、まずは手でBB本体を締め付ける。
BB本体締め付けの規定トルクは50-70N・m。
締め過ぎると外すときに苦労するので、トルクレンチを最低値の50N・mにセットした。
トルクレンチを用いて規定トルクでしっかり締め付ける。
無事にBB取り付けが終わり、クランクとペダルを取り付けて元通りに復旧したところで、クランクを逆回転させてみた。すると少し重たい気がする。いやこれは気のせいではなく、作業前と比べて確かに重たくなっている。
すでに日が沈み寒くなって来たところだったので、明日再びBBを付け直しすることにした。
翌日作業のやり直し
寝ながら一晩中考えていたが、BBがなぜ重たくなったのかは不明。
昨日たっぷりとグリスを塗って取り付けておいたため、BB本体はすんなり緩めることができた。
BBツールの噛み具合。しっかりと嵌っている。ドライバー同様にBBツールを押さえ付けながら回さないと、凸凹の山を傷めることになりそう。
自転車をヒックリ返してBBシェルを観察する。
これが水抜き穴。念のため、シフターケーブルのガイドを固定するビスを抜いて、きれいに掃除してグリスを塗ってから取り付けておく。
今回はフレーム側にもグリスを塗布しておく。
マニュアルにはアダプターがプラスチック製の場合はグリスを塗らないようにと記載されているが、アダプターのネジ山の部分にもグリスを塗っておいた。BB本体の方は昨日たっぷりとグリスを塗布してあるのでそのままグリスは塗らず。
なぜプラスチック製は駄目なのだろう?締まりやすくてなって割れるから?それともプラスチックがグリスに負けて強度が落ちてしまうから?いくら考えても答えは見つからない。
マニュアル通りが必ずしも最適解とは言えないなどと、おっさんの脳内で独自の理論を展開しつつグリスを塗布した。少なくとも固着とサビ防止にはなるだろう。
各部を点検したうえで、今回も規定トルクの最小値50N・mでBB本体を締め付ける。
そして左側から緩まない程度にアダプターを締め付ける。アダプターはプラスチック製なのでほどほどにしておく。
BB取り付け状態を点検する。
シャフトを回してみると、今回は軽くスムーズに回ってくれた。
昨日は何が悪かったのか?
BBの次はクランクの取り付け。
固着防止のためシャフトの部分にもたっぷりとグリスを塗布しておく。
固定ボルトにはパッキンが噛ましてあるので、入れ忘れないように注意する。
昨日は時間に追われてやっつけ仕事でやってしまったのを反省して、今日はゆっくり丁寧に行ってゆく。フロントディーレーラーの隙間に汚れが溜まっているのが気になったので、外して掃除することにした。
細かいスプリングの隙間まで丁寧に磨き上げてから可動部にグリスを注しておく。
それから元通りに取り付けてフロントディレーラーの調整を行う。
このOJC4はダブルレバーのためか、非常に調整が難しかった。これまでの経験を生かして何とかスムーズに変速できるよう調整することに成功。ふぅ~疲れた。
ようやく作業完了のOJC4。各部を磨き上げてピカピカになった。非常に満足。
自己満足こそが私のエネルギーの根源。
調整に手間取ったフロントディレーラー。もう二度とやりたくないと思った。
フロント側はケーブルアジャスターなしの仕様で本当に参った。
チェーンリング周りもピカピカ。
変速時に片手を離さないといけないダブルレバー。上り坂では早め早めのシフトダウンが必要となって扱いづらいが、昔ながらのアナログ感がなんとも心地いい。のんびり走るならダブルレバーも悪くない。
シンプルゆえに壊れにくい。ロングツーリング向けのシフターと言える。
BBを整備した感想
今回初めてBB着脱の作業してみて、定期的に分解してグリスアップする必要を感じた。雨天走行が多い場合は早め早めに作業した方がいい。
BBのサビが雨天走行によるものなのか、それとも噴水に突っ込んだことが原因なのかは不明だが、ベアリング部を浸水させてはイケないことだけは分かった。今後二度と自転車では噴水遊びはしない。そう心に誓ったおっさんなのであった。