こんにちは。からあげです。
はじめに
前回のクランク抜き出しに続いて今回はチェーンリングの取り外し。
2018年、自転車で北海道と東北を走ったのだが、初めてのスポーツ自転車で自転車のことを何も知らない私は、ロクに整備せずに乗り続けていたのだった。
チェーン掃除をすることなしに、粘度の高い湿式チェーンオイルだけ馬鹿みたいに挿し続けた結果、チェーン周りは汚れにまみれてしまっていた。もうここまで来ると、何をやっても駄目。ツーリング途中のため、分解洗浄することも出来ず、ウエスで拭くことくらいしか出来なかった。
本当に酷い汚れ具合のチェーン周り。たった8,000km走行しただけで、スプロケットの交換をする羽目になった。
ツーリングを終えて家に戻ると、これではイケないと気持ちを改めたのだが、新しい自転車ディスクトラッカーを手に入れると、一気に関心は失われてしまいOJC4は放置されてしまっていた。
2019年オーストラリアから帰国後、ようやく整備することにしたPanasonicランドナーOJC4。走行距離はようやく11,000kmを超えたところ。まだチェーンリングの歯は残っているため、交換の必要はないのだが、今回はチェーンリングを取り外して隙間に溜まった汚れをしっかり掃除することにした。
チェーンリング着脱に必要な工具
5mmヘキサゴンソケット
ソケットレンチのハンドルの先に取り付けて使用するヘキサゴンソケット。
通常の六角レンチでは剛性が足りず捻れてしまい、強く締め付けられたボルトを緩めることは難しい。工具を傷めないためには、目的にあった工具の使用が望ましい。写真はホームセンターで購入したもの。とりあえず六角レンチでやってみたところ、ボルトが固くて手持ちの六角レンチでは歯が立たなかったので買いに走った。
ソケットハンドルの差し込み角は、6.3mm・9.5mm・12.7mmなど規格がいろいろあるので注意する。私はソケットレンチの差し込み角を9.5mmで統一している。
大手ホームセンターコーナンのプライベートブランドPRO-ACTでも品質は十分。AmazonだとTONEのものが安くていいかと。自転車用品をまとめて買うついでにコレも買っておくといい。
セットで買うとお得だが、絶対に使わないサイズも付いてくるので、賢い選択とは言えない。自転車整備には、4・5・6・8mmの4種類あれば十分。
ペグスパナ(シマノ TL-FC21)
CLARIS(FC-2403)のチェーンリング(アウターとミドル)取り付け取り外しにはペグスパナという専用工具が必要。マイナスドライバーでやると、押さえのナットの溝を傷めるおそれがあるので、お金をケチらずに素直に買った方がいい。実際に作業をやってみて、この工具の必要性が十分分かった。
最近のクラリスでも、ペグスパナが必要なのかは不明。なんでシマノはこんな工具が必要な構造にするのか理解に苦しむ。入門用クラリスは本当にいちいち面倒くさい。工具の全長は117mm。
重さは22g。ロングツーリングには持ってゆく気がしない。
外す必要に迫られたら、自転車屋さんにお願いしよう。
押さえナットに嵌める方。肉厚は1.6mm。
何に使用するのか分からない9mmの六角穴が空いている。
先端のようすをズームで撮影。
中央部がナットの中心穴に、両端が溝にピッタリ嵌る仕組み。
中心の出っ張りがないと、両端の出っ張りがズレやすくなる。安易なマイナスドライバーの使用は危険。アウターとミドルリングは12-14・mのトルクで締め付けられているので、専用工具の使用を強くお勧めする。
角度を明けてもう一枚。
こちらが反対側の先端。
15mmの間隔を空けて出っ張りが2つ、そして10mmの六角穴が1つ。これまた何に使用するのかは不明。自転車いじりをしているうちに明らかになることだろう。
トルクレンチ
以前は自分の感覚で締め付けていただけであったが、トルクレンチを使ってキチンと締め付けてみると、これまでは大幅なトルク不足だったことが判明。重要パーツの締め付けには、トルクレンチが必要なことを身を持って知った。人間の感覚は結構いい加減。毎日のように作業しているプロならともかく、年数回の作業しか行わない作業回数が圧倒的に少ない素人はトルクレンチが必要だ。
使ってみるとその有り難みが分かる。安全に直結する重要パーツ、滅多にバラさないパーツはトルクレンチを使って規定トルクで締め付けておく方が安心。トルク不足で途中で緩んできたり、締めすぎてボルトをねじ切ってしまったりすることがなくなる。
私が購入したのは手頃な値段で扱いやすいデジタル式のもの。
全長22cm。測定範囲3~60N・m。差し込み角9.5mm(3/8インチ)。Amazonのレビューにあったように柄が短くて締め付けに力を要することもあるが、デジタル表示でアラーム音が出るのでそこそこ使いやすい。辛口として知られるAmazonユーザーの評価もまずまず。トルクレンチを使って初めて分かるトルク管理の重要性。
見やすいデジタル表示。電池カバーがプラスピスで留められているのがマイナスポイント。
電池の液漏れで壊れるのを防止するために、使用後は必ず電池を取り外す。
ビスのつけ外しが面倒なので、電池カバーをテープで留めている。柄は短いが手に馴染みやすいラバーグリップ付きなのが嬉しい。
作業のようす
クランクごと外したところで、まずは最小のインナーリングから取り外す。
ネジはすべて通常の右ねじ。(右回転で締まり左回転で緩む)
チェーンリングの歯を傷めないように合板の切れ端を当ててクランクアームをしっかり握ってヘキサゴンソケット5mmで固定ボルトを緩める。全部で5本。インナーはナットなしでボルトのみで外しやすい。
外したインナーリング固定ボルト。
インナーリングを外したクランク。さあて本番はこれから。
ミドルとアウターリングはナットとボルトにより共締めされている。ヘキサゴンソケットのみでボルトを緩めようとすると、押さえナットが連れ回りして緩めることが出来ない!
これが極悪仕様の押さえナット。ミドルアウターのみ外したい場合でも、インナーリングに干渉するので、インナーリングの取り外しは必要。しっかりとペグスパナを当てるためには、邪魔なインナーリングはない方がいい。
押さえナットのズーム。
緩める前に防錆潤滑剤を吹きかけておくことをお勧めする。
ペグスパナを当てた状態。インナーリングと同じように合板の切れ端を当ててヘキサゴンソケットで試みたが、固くて全く緩まない。
固く締まったボルトを外すには、まずはしっかり固定する必要がある。
左手でペグスパナを当ててクランクを固定するのは無理がある。こうした場合には万力(バイス)を使用してしっかり固定する。すると両手が自由に使えて圧倒的に作業しやすくなる。
作業台と万力は整備作業には必須。
ミドルリングを外したところ。アウターリングは汚れでくっついてしまっている。
万力を使うと固く締まったボルトでも楽々外すことができる。
取り外したミドルリング
隙間にはこのような汚れが付着していた。
取り外した固定ボルトと押さえナット。インナーリングと同じく5個ずつ。
角度を変えてもう一枚。
ミドルとアウターリング固定用の穴。連れ回り防止用の切り欠きはなし。ただのまん丸。
洗浄液と歯ブラシを使って丁寧に汚れを落とす。
あちこち真っ黒。
きれいに洗浄したクランクとチェーンリング。長年の汚れを落として気分も自転車もスッキリ!
歯数は右のアウターから50、39、30T。荷物満載のツーリングには、ロードのクラリスは歯数が多すぎる。しばらく時が経って体が出来てきても、上り坂になると立ちこぎばかり。やはり歯数の少ないMTB用のコンポが合っている。初めてのスポーツ自転車だと分からないことだらけ。
きれいに各部を洗浄したところで元通りに組み立てる。
チェーンリングは表裏と取り付け位置が決まっているので注意が必要だ。これは50Tと表示されたアウターリング。
アウターリングにはチェーン噛み込み防止用の出っ張りあり。この出っ張りを取り付けクランクに合わせる。ほとんど使用しないアウターリングは新品同様な状態。丸々と歯が太っている。
これはミドルリング。一番使用頻度が高いリングで歯先がかなり摩耗しているのが分かる。
だが、あともうしばらくは使用できそう。パーツは最後まで使い切ってやらねば!
ミドルリングには39-Dと8sの刻印あり。
これも表裏と位置が決まっているので注意が必要。
インナー、ミドルリングともに内側の出っ張りをクランクに合わせる。
あとは裏表に注意してしっかり組み立てる。
SG-X 30Dと刻印されたインナーリング。ミドルに比べて使用頻度が少ないため、歯先の摩耗は少ない。
取り外しとは逆にミドルとアウターから取り付ける。ネジ山ネジ穴もきれいに掃除して、ネジ山に緩みどめ剤かグリスを塗布して組み立て、最後にトルクレンチで規定ドルクで締め付ける。作業前にシマノのマニュアルを熟読して作業を確認しておいた方がいい。会員登録なしにネット上からいつでもダウンロードできる。
シマノトリプルギヤタイプ締め付けトルク
最大・中間チェーンリング(アウター・ミドル)締め付けトルク 12 – 14 N·m
最小チェーンリング(インナー)締付けトルク 16 – 17 N·m
組み立て中にチェーンリングに裏表と取り付け位置が決まっていることに気がついて、途中でやり直す。作業が終わった頃には真っ暗になってしまった。
作業の感想
初めてのチェーンリング取り外しで少々手間取ったが、無事に作業を終えることができた。
作業のポイントは専用工具のペグスパナの使用。あとは作業台と万力はあった方がいい。
素人でも時間を掛ければ、必要にして十分な作業をすることができる。定期的に分解しておかないと、ネジが固着して外すのが大変になるので、交換の必要がなくても定期分解して掃除しておくほうがいい。そのことがよく分かった。
次回はBBの取り外し作業を行ってゆく。続きはまた。