こんにちは。からあげです。
ペダルが固く締まった理由
2018年の夏、海外ツーリングに出るまえに自転車に慣れておこうと思い、約4ヶ月間北海道から東北を走った。
自転車はPanasonic OJC4という昔ながらのランドナー。荷物をたくさん積める丈夫なクロモリのフレームに、ダボ穴が装備されて前後にキャリアを取り付けることができる。
ツーリングに出かけた当初は順調だったのだが、次第に各部のパーツが消耗してきてガタが出てきた。
走行距離7,000kmを超えたころ、クランク周りからカチカチという異音が聞こえるようになった。始めのうちは気にしないようにしていたのだが、次第に音が大きくなってきて、とうとう我慢出来なくなった。自分で点検してみたものの、原因は分からず。そこで、大きな町の自転車店で緩みがないか点検してもらったのだった。
その際、ペダルに緩みがないかも当たってくれたのだが、大きなペダルレンチで腰を入れてキツく締め込まれてしまった。異音は解消されたものの、ペダルは手持ちの六角レンチでは外せないようになってしまった!
通りすがりの見ず知らずの人間の自転車なんて誰も見たくはない。それなのに親切にみて頂いたのだ。自転車屋さんは悪くない。今回はいい経験ができて良かったと思うことにした。
手持ちのスパナでペダルを外してみる
固く締まったペダル(MKS RMX)
外したい時に限って固着して外れない。ママチャリのペダルなどではよくあること。
今回、ガッチリ締まっているペダルは、MKS RMXというペダル。
日本国内の三ヶ島製作所(MKS)が製造している高品質なものだ。
純正ペダル(MKS TOURING-LITE Short)は小さくて長時間漕ぐと足裏が痛くなってくるし、靴底が傷んできたので、より踏面が広くて踏みやすいRMXに交換した。
これまで4サイドバッグのフル装備で4,000km以上走ったが、剛性も十分で非常に漕ぎやすかった。ソールの柔らかいトレランシューズでも、雨天の踏み外しはなし。靴底にドロが付着していると、多少滑る程度だった。
ライトなツーリングから街乗りだったら、これで十分だろう。ママチャリに付けたら、安物のプラペダルとのあまりの違いに驚くこと間違いなし。
ホームセンターの安物の工具で作業する
ペダルの取り付けボルトの2面幅は15mm。そのボルトに六角穴があれば、6mmの六角レンチでも外すことができる。大きな力を加えたい時は、ネジ山を傷めにくい15mmのレンチを使用する。
専用のペダルレンチが最適なのだが、スポーツ自転車に乗り始めたばかりの私は、まだペダルレンチは持っていない。そこで手持ちの15mmのコンビネーションレンチを使うことにした。
6本組600円程度のホームセンターで売られていた安物のセット。
同サイズのスパナとメガネが一緒になったレンチで、本締めなどの大きな力を加える時はメガネ側を使用する。ペダルの場合はスパナ側しか使えない。
あらかじめネジ山に防錆潤滑スプレーのCRCを吹きかけておいた。
じばらく待って緩めてみると、全くビクともせず。
それでやむなくレンチに鉄パイプを継ぎ足して緩めようとした。
結果は失敗。レンチを傷めてしまう。
ジワリジワリと力を加えてゆくと、ヌルっという感触とともにレンチが外れてしまった。
始めは緩んだのか?と思ったのだが、イマイチ感触が変だった。
やってもうた!
スパナの口が広がってしまっていた。
スパナのアップ
やはりホームセンターの安物の工具ではダメだった。
道具には適材適所がある。今回の作業は明らかに無理があった。
通常のあまり力の掛からないネジを締めたり緩めたりするには十分だが、キツく締まったネジを緩める時などには強度不足だった。
専用工具の「ペダルレンチ」で作業する
購入したペダルレンチの詳細
ペダルの取り外しに失敗した私は、すぐさまネットを検索して専用のペダルレンチを買うことにした。
いつも世話になっているAmazon.jpを覗いてみる。すると良さそうなものを発見した!レビューには、ずらりと高評価が並んでいる。これを買えば間違いない。そう確信した私はポチッとクリックしてペダルレンチを購入したのだった!
購入したのは、PWT ハイトルク ペダルレンチ PW01S-163。台湾の工具メーカーPWT社が製造販売しているもの。しっかりした作りで手軽な価格が特徴。
10度のオフセットが付いた上位機種のペダルレンチの肉厚は4.5mm。
一方、通常のペダルレンチは少し厚めの5mm。
迷わず通常のペダルレンチを選んだ。
レンチのヘッドは15mmの口が2つと、15mmのメガネ穴が空いている。
ペダルを外す際は、口の方を使用する。
手で触ってみると、非常に重厚感があって丈夫なことが分かる。
レンチの長さをメジャーで測ってみる。
メーカー公称値のとおり、長さは約35cm。
PWT製のペダルレンチは最長クラスのレンチだ。ヘッドは肉厚で柄は長ければ長いほど良い。
これでも緩まない時は、柄に鉄パイプを付けて延長してみるのもいいだろう。
ただし自己責任で。
ノギスでヘッド部分の厚みを測ってみた。
約5.2mmの厚さ。
レンチの柄は真っ直ぐでオフセットはなし。柄は中空で扱いやすいようにゴムのグリップが付いている。
重さを量ってみると363g。メーカー公称値の347gより若干重ため。
これだけ重たくて大きいと、ツーリングには持って行けない。
自宅かトランポの車で使う備え付け工具となる。
専用ペダルレンチでの実際の作業
今度は専用のペダルレンチで固く締まったペダルを外してみる。
さて、今回はどうかな?
ネジ山部分にはあらかじめ防錆潤滑剤のCRCを吹いておく。
5分ほど待って、ネジ山の内部にしっかりと浸透させる。
ネジ外しには定番中の定番潤滑スプレー。
クランクの内側から見たようす
こちらの方からたっぷりとCRCを噴射する。
ペダル外しの作業では大きな力が掛かるので、革手袋を着用した方がいい。
力を掛けている時に工具が外れたり、急にネジが緩んだりして、どこかに手をぶつけることがある。
以前、エンジニアとして船に乗っていた私だが、横着して手袋なしで作業していて手をぶつけて非常に痛い思いをしたことが何度もある。時には骨折することもあるので注意が必要だ。
ホームセンターで300円も出せば、必要にして十分な革手袋が買える。大事に使えば確実に数年は持つ。始めはライディング用として使い、傷んできたら作業用にしたらいい。写真の革手は10年以上使っているもの。油が染み込んで手によく馴染んでいる。
ではペダルを緩める作業に入る。
クランクの先にネジ穴が空いていて、ペダルのネジ山の付いたシャフトをねじ込むようになっている。この六角部分にペダルレンチを掛けて緩める。
工具が滑らないように、あらかじめウエスで表面の油分をしっかり拭いておく。
ペダルレンチを掛けたところ。
肉厚5mmのレンチでもクリアランスは十分ある。
角度を変えてもう一枚。
実を言うと専用のペダルレンチを使うのは今回が初めて。よく分からない初心者なりに、レンチの位置や体勢を変えてやってみた。
すると、だいたいこんな感じになった。
右ペダルの外し方
前を向いて右手で右側のブレーキレバーを握ってフロントブレーキを効かせた状態で、右ペダルを前にクランクを水平にして、右足を右ペダルに乗せてペダルを固定し、左手でペダルレンチを上から押さえ付けるようにして、ネジを左に回して緩める。
左足一本で立って作業を行うので、ある程度のバランス感覚が必要だが、普段自転車に乗っていれば大丈夫だろう。一人でやりにくいなら、体の反対側を立て掛けるか、誰かにペダルを抑えてもらおう。利き手以外でも慣れておくと作業がはかどる。
緩める方向は、右ペダルは左回し・左ペダルは右回し。これは全ての自転車のペダルに共通。
左は逆ネジとなっているので注意が必要だ。
大きなペダルレンチで逆の方向に回してしまうと、ネジ山を傷めてしまいかねない。
左のペダルを緩める際は、緩める方向の右回し以外は全て逆。
ジワリジワリと少しずつ力を掛けてみたが緩まず。そこで腰を入れてグイグイと力強く押すと緩んでくれた!
ようやく外れたペダル。
一時は自転車店に持ち込んで、人に外して貰おうかと弱気なことを考えていた。
ペダルレンチを購入して挑戦してみると、上手く行った!
専用のペダルレンチであれば、多少キツく締まっていても問題なし。
ペダルの取り付け
ネジ山にシールテープを巻いて軽く締め付ける (これは非常に危険な方法。絶対にやってはならない。)
ペダルを取り外すことができたのは良かったが、ペダルレンチでしっかりと締めてしまうと、外出先で六角レンチを使って緩めることが出来なくなる。
そこで、今回はネジ山にシールテープを巻いて取り付けてみることにした。
取り付けの際は錆びて固着しないように、通常ネジ山にグリスを塗るのだが、締め付け方が弱いとカチカチ音がすることもある。
シールテープは水道配管に使われるもので、ネジ山の隙間を埋めて水漏れを防ぐ効果がある。シールテープを巻いてペダルを取り付ける方法は今回が初めてで効果は未確認。
よって今後、検証してゆくことになる。
シールテープを巻く時は、締め込む時に緩まない方向で巻く。
隙間によってテープの巻き数を変える。今回はだいたい2回転巻いた。
右ペダルの場合は、ネジ山に向かって右方向に巻いてゆき、切り口が右側に出るようにしておく。
締め付けの途中で緩めてしまった場合は、テープを巻き直す。一旦締めたものを緩めると、テープが外れてシール効果を期待できない。
シールテープを巻いて取り付けたペダル
隙間からシールテープがはみ出ている。
角度を変えてもう一枚。
うむ、我ながらいい仕事をした気がするぞ!満足満足。
六角レンチでペダル取り付け後、自転車に乗ってみたが、特に違和感はなく異音もなかった。
このまましばらく乗ってみて異音がなければ、軽く外れるかどうか一度確かめてみる予定。多分、シールテープを巻いての取り付け方法で良い気がする。
しばらくした後に結果をアップするとしよう!
追記(2019.11)~クランクのネジ穴を傷める~
しばらくはシールテープを巻く方法で問題なかった。しかし、新たな自転車でオーストラリアを13,000km走ったあと、帰国後の自走中に問題が発生する!!
シールテープのためにネジが奥までしっかりと入らず。ネジが斜めの状態で締め付けてしまい、走行中にダメージが蓄積された。帰国後、ついにアルミ製クランクのネジ穴がダメになってしまった。
シールテープを巻いた状態だと、ネジ山のかみ合わせが悪くなり、ネジ山にかなりの負担が掛かるように思われる。なので、この方法は絶対にやってはならない。
携帯用ペダルレンチの自作
クランクのネジ穴をダメにした後、しっかりとペダルを締め付けられる携帯用のペダルレンチを探していた。ところが、自分の探し求めるものが見つからないので、市販品を改造して携帯用ペダルレンチを自作することにした。
ペダルをしっかりと締め付けさえできれば、ネジ山に負荷をかけず、カチカチという異音が発生することはない。これでロングツーリングに出かけても安心できる。詳しくは参考記事を参照して欲しい。
ペダルレンチまとめ
今回、ガッチリ締め込まれた固いペダルを外してみたが、やはり専用のペダルレンチは必要だと感じた。汎用のスパナでもできないことはないが、安全確実に作業を行うには、ペダルレンチはあった方がいい。
こうして写真で見比べてみると違いは歴然。コンビネーションレンチはペダルレンチの半分ほどの長さしかなく、ヘッド周りの大きさや厚みがまるで違う。
専用のペダルレンチは、ママチャリからスポーツ自転車まで幅広く使用できる。
特に乗りっぱなしでまともに整備されていないママチャリの場合は、錆びて固着していることが多く、普通のレンチではまず外すことができない。こういう時にCRCを吹きかけてからペダルレンチを使えば、簡単に外すことができるようになる。もうこれで自転車屋さんに助けを求めなくても済む。
ペダルレンチはそれほど高いものではなし。何度か使うだけで元は取れるので、買っておいて損はなし。台湾メーカーPWT製のペダルレンチは安いうえに品質もよく、強くおすすめできる一品。