モッチョム岳山頂から望む海岸線の風景

こんにちは。からあげです。

はじめに

屋久島にやって来てからというもの、自転車での夜間走行が当たり前となり、つくづくハブダイナモを付けておいて良かったと思った。明るく照らされる路面を見ていると、非常に頼もしく感じる。これまでの電池式のライトと比べて段違いに明るい。

今日はいつものように暗いうちからゴソゴソ準備して登山に出かける。
今の私にバスに乗るという選択肢はなし。自転車で生活をする私は、道が繋がっていれば自転車でどこへでも出かける。それが自転車生活者というものだ。

昨日は低気圧の通過で嵐となり、フェリーは欠航して高速船は条件付き運行となっていた。多くの観光客は屋久島へはフェリーなどの船で来る。そのためフェリーが欠航すると観光客が減って、島本来の静けさを楽しむことができるようになる。

今回登りにゆく本富岳(モッチョム)は標高940m、屋久島の南、尾之間(おのあいだ)地区から少し上った千尋(せんぴろ)の滝近くに登山口がある。往復4~5時間の登りやすい山。登山口から尾根伝いに伸びるタナヨケ歩道があるのみ。登った道をそのまま下って来るのはなんとも味気ないが、千尋の滝、万代杉やモッチョム太郎、山頂からの景色など見どころが多い。

登山道のイラストマップ

目印となる場所が記載されているため、登山地図を見るよりも分かりやすい。描き手の温もりを感じさせる。

このイラストマップによると、水場は4箇所。すでに確かな記憶はないが、何箇所か水が流れていたのを覚えている。雨が多い屋久島は水が豊富で、飲水に困らないのが良い。

登山コース

コースタイム 4時間50分

登山口P~万代杉~モッチョム太郎~神山展望台~山頂~神山展望台~モッチョム太郎~万代杉~登山口P

水場4箇所(モッチョム太郎過ぎ、神山展望台手前に最終水場あり)

 

モッチョム岳登山のようす

登山日 2020年1月

夜道を走って登山口近くに辿り着くころ、ようやく明るくなってきた。
屋久島外周の県道77号線は多少アップダウンがあるもののまだ走りやすい。ところが、一歩山に踏み込むと地獄の激坂が続く。調子に乗って山に入ってどれだけ苦しめられたことか。

今回は県道から20分ほど上っただけで済んだので、かなりの体力を温存することができた。

雲ひとつない快晴の青空のもと、登山口駐車場に到着。
昨日のフェリー欠航もあってか、停まっている車は2台のみ。

おや、なんだか真新しい建物があるではないか。早速調査してみよう。

トイレと休憩用の東屋あり。どれもこれも立派。

東屋にはベンチも完備。ここならゆっくり休むことができそうだ。

何度も言うが、屋久島は雨が非常に多くて雨宿りできる東屋は本当に助かる。
ずぶ濡れになるところを幾度となく助けられた。

ここのトイレで水を汲む。登山地図には水場は載っていないうえ、この時まだ登山口のイラストマップも見ておらず、水場はないものと思っていた。

駐車場から千尋の滝方面に進んでゆくと、手前にモッチョム岳の登山口あり。

登山口からいきなり急登が始まる。
すでにウォーミングアップは終了している。ガンガン上ってゆくだけ。
自転車でやって来ると、始めから全開で登れるところが良い。

くねくね曲がりくねって距離のわりに全然上って行かない道より、まっすぐ最短距離で上ってゆく道の方が好き。

苔むす森

白谷雲水峡(しらたにうんすいきょう)ほどではないが、苔むした森が広がっていた。
麓の集落では真冬でも氷が張ることのない南国。冬でもこうして青々とした苔が生えている。

縄文杉や宮之浦岳に比べると、圧倒的に登山者が少ないモッチョム岳だが、ところどころピンク色のテープの目印があって道に迷うことはない。

登山道脇に生えている万代杉。というより万代杉のそばを通るように道を付けたのだろう。
見上げると首が痛くなってくるほどの屋久杉の巨木。
全体を撮りたくても、大きすぎてカメラに収まり切らない。

万代杉を見上げながらしばしの休憩。こうした巨木の近くにいるとなぜか心が安らぐ。

登山道の至るところには木の根っこがうねっている。
つまずかないように注意する必要がある。

足元をよく見て歩かないと危険。
雨で濡れるとよく滑るようになる。

水が流れる沢沿い。どこもかしこも苔だらけ。

水が流れる沢沿い近くに生えているモッチョム太郎。登山道から少し下がったところにあった。
薄暗い山の斜面にあって、周囲には陰気な雰囲気が漂っている。

モッチョム岳周辺にはモッチョム花子という巨木もあるらしいが、どこに生えているのかは不明。そのうち探しに行こうと思っていたが、結局行かずじまいになった。

江戸時代の試し切りの跡。
痛々しいモッチョム太郎。元気がないと感じられるのは、切られたこともあるかもしれない。

モッチョム太郎を過ぎ、最後の水場を出て急登を上ってゆき、潮騒が聞こえるようになると神山展望台は近い。木々の合間からモッチョム岳が見える。そう、山頂へは下りてゆかなければならない。

展望台からの景色

海面に反射する光。ゴロゴロしたい気持ちを抑えてやって来た甲斐があったというもんだ。

神山展望台を過ぎると道は急に険しくなる。
ところどころロープのある岩場が現れる。
せっかく上ってきたところなのに、急激に高度を下げてゆく。

モッチョム岳が近づいてきた。

あと少し。もうあと少しだ。

山頂直下の岩場

ここを登り切れば山頂だ。ロープが付いているが、あまり頼らないほうがいい。

このようにロープが岩角で擦れて傷んでいた。
岩はしっかりしているので、ロープは使わない方が無難。ここの岩場だけは鎖が欲しいと思った。

10時半過ぎ、モッチョム岳山頂に立つ。

海から吹き上げる風が気持ち良い。

山頂から見下ろす景色。眼下には尾之間の集落が見える。気分爽快。
絶景の見える展望台を独り占めする。

展望台方向を望む。
ずいぶんと下って来ている。

モッチョム岳は山の斜面に突き出た、天然の展望台のような岩。
屋久島三大岩壁でロッククライミングのゲレンデとして知られているそうな。

背後の耳岳方面。なんとなく猫の耳のように尖ったピークがあった。

山頂直下に祠あり。下りてゆくためのロープが垂れ下がっているが、いまいちロープが信用できないので下りてゆかず。

ゆっくり玄米ご飯を食べながら、山頂からの景色を楽しむ。

長い休憩のあとモッチョム岳をあとにする。

帰りも万代杉の下でゆっくり休む。

くつろぎの癒やし空間ここにあり。

沢沿いで歩いていたカニ。踏まないように歩く。

帰りにも千尋の滝を見てゆく。
道の一番奥までゆくと、遠目で滝を見ることができる広場あり。

なかなか見ごたえのある滝。荒々しい断崖から流れ落ちる。
これより先、関係者以外立ち入り禁止。もう少し近くで見たいものだ。

駐車場入り口手前に、もう一つの滝の展望スポットあり。
さりげなく看板が設置されている。

奥には立派なコンクリート製の展望台が整備されている。
ここからは滝と海岸線の景色を見ることができる。

げじべえの里 げじべえ由来書き

 

「げじべえ」って、なんなーつか(なんだろう)

「げじべえ」は屋久島の山に住む妖怪です。
屋久島の山には、色々な妖怪が住んでいます。その代表的なものが、「げじべえ」「山姫」「山のもん」「川のもん」などです。

「げじべえ」は、森の精の妖怪で大木や老木などに住み着いています。昔のきこりたちは、老木などを切るときには、ヨキやノコなどを供え、お神酒を奉って、ことわりを言って切り倒しました。

その昔、木炭が重要なエネルギー源であった頃、屋久島では炭焼がさかんに行われていました。その頃集落の人達も組合を作り国有林を払い下げどんどん森を切っていったのです。
これに怒ったのでしょうか、「げじべえ」は山で炭を焼く人たちに夜な夜ないたずらを仕掛けてきたのです。それは、昼間に人たちがしていた事のまねをするのです。

まず、木にヨキで切り込みを入れる。
そして、ノコで引き、矢を打ち込み、木が倒れる。
それを、本物と寸分も違えずに再現してくるのです。その倒れる木が如何にも自分たちのいる炭窯に打ちかかってくるようで大変怖かったそうです。
このことは、自分たちの棲家が荒らされてゆくことへの「げじべえ」たちからの人間への無言の抵抗だったのかもしれません。

今でも屋久島の山々、そしてこの森には多くの「げじべえ」たちがいて私たちの行動を監視しています。人間のわがままで山や森を傷つけると「げじべえ」はいたずらを仕掛けてきます。
「げじべえ」は決して私たちに悪意は持っていないはずです。私たちの思いや願いを聞いてくれるに違いありません。あなたも「げじべえ」に語りかけてみてください。何か聞こえてきませんか。

この山、この森とともに生きてきた先人たちの知恵とこれからの私たちの生き方を考えていきたいとの思いでこの地を「げじべえの里」と命名しました。

だったら屋久島空港の滑走路の延長は止めないといかんな。ジェット機が離発着できるようになると、観光客が増えてウハウハ。などと目論んでいる連中が大勢いる。

 

この登山のあと、再び自転車でねぐらまで戻ったとさ。