コロナ禍の軽量装備による槍北穂縦走2020【後編】

登山2日目(槍ヶ岳山荘~北穂高岳~涸沢)

 

2日目は3時に起床。まずは食事を済ませる。
朝はアルファー米にフリーズドライのビーフシチュー。乾燥わかめを載せた。

軽量化のためにクッカーを1つにしたため汁物はなし。量が少し物足りない気がするが、朝食としては必要十分な量。体調がよいと腹がよく減る。

木札を返して暗いうちに小屋を出る。
徐々に薄っすらと東の空が明るくなってきた。これならヘッドライトなしでも十分歩ける。

朝のトイレ渋滞を避けるため、出発はいつも早め。それに大を済ませておくと、体調も良くなるし、軽量化にもなる。いいこと尽くめ。

日の出直前の槍ヶ岳。実によい眺め。

大喰岳山頂で日の出を迎えたところでしばしの休憩。
途中の稜線上には残雪がたっぷりとあった。

水には余裕があったのでとらずに通過する。手洗いなしで歯磨きもしない。水を使うのは飲むときと調理するときだけ。稜線上では水は貴重品。

私の場合、特に気を使うことなく普段どおりの生活をするだけでいい。

岩場を歩いていると、チョロチョロ動いている小動物がいた。
お、オコジョだ!

早めにウエストにロープを付けて感触を確かめておく。この自作バックパックにはウエストストラップが付いていない。前屈するとパックが覆いかぶさって来てバランスを崩しそうになる。

今日は鎖場やハシゴが連続する「大キレット」という難所を通過する。できればパックを固定したい。

3mmのロープをウエストストラップ代わりに付けてみたところ、結果は良好だった。ただ、付け外し手間が掛かって面倒だったので、プラスチックバックル付きの取外し可能なものを作ってみようと思う。

南岳を越えると、大キレットの全貌が現れる。
これまで何度も通過する機会があったが、体調が悪いだの、天気が崩れそうだのと、何かと理由を付けて避けてきた。

今日は逃げないぞ!

南岳小屋全景

こじんまりとした小屋。テント場には2,3張りのテントあり。
水は買わなくとも問題なし。

景色の素晴らしい一等地に設置されたピクニックテーブル。
ここで休みたかったが、風が強くて寒くなってきた。そこで石垣の影に隠れて休憩することにした。

南岳小屋を過ぎると大キレット最低部に向かって急な下りが始まる。よし、気を引き締めてゆこうか。
浮石が多いので慎重に下ってゆく。

靴は一年中履いているアシックスのトレランシューズ。散歩、自転車、ランニング、作業靴と何にでも使う。今回はまだソールがそれほどすり減っていないので問題なし。

機会があれば愛用のトレランシューズを紹介したいと思う。

ハシゴは横の棒をしっかりと持つ。

今回の手袋は普通の軍手。
鎖やハシゴがすべりやすいので素手で歩いた。軍手を使うのならイボ付きがいい。

間隔広めのボルトで固定されたハシゴ。

下りは高度感高め。体の力を適度に抜いて確実に下りてゆく。
怖がって体の動きが硬くなると危険。鎖に全体重を掛けるのではなく、あくまでも補助。自分の手足の3点でしっかりと体重を支える。

A沢のコルは安全地帯。ここではバックパックを下ろしてゆっくり休める。
南岳小屋を過ぎると、登山者が一気に減った。

緊張の連続で喉がカラカラに乾いた。

A沢のコルからは再び急な登り。
浮石だらけで全然気が抜けない。

雨が降ると石の下の土が流れされてグラグラと動く不安定に状態になる。この浮き石に足を載せると、バランスを崩して滑落したり、落石を引き起こしたりしそうになる。とても危険だ存在だ。

足を載せる石は慎重に選び、足裏の間隔を研ぎ澄ませてゆっくり体重を預ける。ヤバいと思った時は慌てずゆっくりともとに戻る。靴底の柔らかいトレランシューズだと危険を察知しやすい。何度か大きい石が動いて冷や汗をかいた。

眼前に迫る岩壁。大迫力だ。よそ見をしてルートを外さないように注意する。

痩せ尾根の鎖場

あと一息。
気がつくといつの間にか「飛騨泣き」と呼ばれる難所を過ぎていた。
すれ違いが困難で非常に高度感のあるところだったらしい。思わずオシッコちびっちゃいそうな。

人の話し声が聞こえるようになると小屋は近い。岩壁上に急に現れる。
この小屋下の斜面が荒れていて浮き石が非常に多かった。しかも結構な大きさ。実に嫌らしい。
最後の最後まで気を抜けない。落石が下の人に直撃したら死は免れない。

9時過ぎには北穂高岳小屋に到着。小屋前の展望席はかなりの賑いを見せている。
この小屋は北穂高岳山頂直下にあり、見晴らしが大変素晴らしくてとても人気がある。

槍ヶ岳方向を望む。
今日はあそこから来たんだと思うと感慨深い。

天気はまずまず。雲が多かったので涼しく歩けた。(冷や汗もあり)

適度な緊張感があり、3点支持を要求される縦走路。なかなか面白かった。

前穂高岳と涸沢。
険しい尾根が北尾根。

まだ9時を回ったばかりで時間もあるし、体力にも余裕がある。今日は穂高岳山荘で泊まり、明日は奥穂高岳から前穂高岳を縦走し、岳沢経由で上高地に下山することもできる。

だが、ここ最近群発地震が発生していて、夜中何度も揺れに気がつくことがあった。話に聞くところによると、最近の大雨で岳沢小屋より上部がかなり荒れているらしく、落石の危険性が大とのこと。

今回は大キレットを通過して満足だ。急に人が増えたことだし、涸沢へ下山することに決めた。

小屋から歩いて3分で北穂高岳山頂。広くて休憩に最適だが、小屋がすぐ近くなので小屋で休む人のい方が多い。

北穂分岐

どうしようか少しだけ悩む。

昨日、穂高岳山荘に電話を架けたが繋がらず。コロナ禍の現在はテント場が予約制かもしれない。
群発地震が発生していることだし、先ほど決めたとおり涸沢に下山することにした。

涸沢への下りはかなり急。さっさと下りてゆっくりしようと、速めに下りていったら膝に来た。

普段自転車に乗って脚を鍛えているはずなのに、歩きと自転車では使う筋肉が微妙に違うようだ。自転車はほぼ一定の回転運動。歩きは場所によって歩幅や負荷が違ってくる。たぶん、それが脚に効く。自転車ばかりに乗って規則正しい運動をしていると、融通の効かない体になってしまう。

マスクの落とし物をちらほら見かけた。
ポケットに入れたマスクが落ちてしまったようす。

今回の登山では梓川沿いの平らな場所では何人かマスクを着用して歩いている人を見かけた。中にはフェイスガードをしている人もいたのでビックリした。

涸沢まで下りてきた。
こちらは北穂側の山にへばり付くように建てられている涸沢小屋。
展望デッキには人がわずか。開店休業状態だった。

小屋の中は人気なし。

人の気配があったので覗いてみると、下で土木工事を行っていた。

石畳を歩いて涸沢ヒュッテの方に向かう。
涸沢小屋と涸沢ヒュッテの間の広大なカールがテント場になっている。
テントの受け付けは涸沢ヒュッテに近いテント受け付け小屋で行われている。

涸沢も閑散としていた。昼前の時点でテントは約30張り。通常の時期なら少なくともこの3倍はあるだろう。

テントの受け付け小屋。小屋の正面には「国設涸沢野営場」と表示されている。

テントの受け付けは15:30~17:00。
涸沢では受け付け前にテントを設営し、あとで受け付け時間内に手続きを済ませる決まりとなっている。テントはキャンプ場の区画内であれば、どこでも好きな場所に設営してもよい。

今日のねぐらは涸沢。

景色がよくて悪天候でもらくらく滞在できる。そして水は汲み放題。とても居心地のよいテント場。
中央付近が涸沢岳。右手が北穂高岳。右中の建物が涸沢小屋。

涸沢ヒュッテのウッドデッキにはほとんど人がいない。
通常であれば、酔っぱらい登山者たちで大賑わいとなる。

小屋周辺にも人は疎ら。ほとんど客がいない。

宿泊客以外は建物内に入ることができない。
コロナ禍の山小屋は部外者立ち入り禁止。ますます山小屋が遠い存在となる。

水汲み場で水を汲む。
雪解け水は冷たくとても美味しい。稜線上の小屋とは違い水が豊富なのがありがたい。

水道の水圧は高く水量は十分過ぎるほど。短時間で汲める。

水を汲んだあとでタープを張ることにした。
場所は選びたい放題だ。
中央通路から西側の奥穂高側の人気のないところを選んだ。コロナ禍であることもあり、できるだけ人を避ける。

レジャーシートとポンチョタープを合わせて張った。

晩に雨が降る予報だったので、なるべく低くして風に備えた。
雨水が溜まらないように、屋根の勾配を調整する。

涸沢は岩場なので石に困ることはない。石でロープを固定し、石を積み上げて防風壁を作った。

風下側の東に長さ110cmのポールを1本設置して居住性を高めた。

下にはエアライズ1用のグランドシートと、短く切ってあるリッジレストのショート。
タープは通気性がよくコロナ禍のキャンプには最適だ。

内部空間が広々としていて一日過ごす分には快適過ぎるほど。
虫は全くいないし、たいして暑くもない。

腹が空いたのでラーメンを作って食べることにした。

ラーメンの中に切り餅、大麦、乾燥わかめを入れて増量した。
いつものラーメンだが、食べる場所がいいとごちそうになる。

ごちそうさまでした!

予報どおり天気は下り坂。次第に雲が多くなってきた。
「涸沢に下りてきて正解だったな。」などと一人ニンマリして自己満足に浸る。

時間が来るとテントの受け付けを済ませる。
団体の場合は代表者が手続きを行う。人との距離は1.5m以上空けて密にならないようにする。

小屋の中に入る前にアルコール消毒をして中で検温を実施。
37.5℃以上の高熱だった場合、退場となってしまうのか?

2020年の利用料金は1,000円。徐々に値上がりしてついに1000円の大台に乗った。
2021年の今年はコロナ禍で経営環境が厳しいため、テント場の料金も2000円に値上げされている。
テントと寝袋のレンタルは中止。

あとは受付済みのプラスチック製の札をテントの目立つ場所に付けておく。

 

コンパネのレンタルもあり。1枚500円。テントの下に敷くと快適になるそうな。

私は長年の厳しい修行により、ゴツゴツした岩場や硬い板の間でもマットなしで眠ることが可能となった。コンパネなど必要はない。小屋の建築材料として必要なだけ。軟体動物のように体をくねらせてしっくりくる体勢になる。

裁縫のじかん

暇な時は裁縫するに限る。
自作サコッシュのストラップが傷んできたので、糸で縫って直しておく。

周囲の景観に溶け込むレジャーシートとポンチョタープ。
「うむ~、実にいい感じだ。」などとまたまた自己満足に浸る。

結局、この日も明るいうちに就寝した。夕飯を終えてしまうとやることがない。

 

登山3日目最終日(涸沢~横尾~小梨平)

最終日の三日目、3時半に起床して準備を始める。
昨日は日没とともに風が止み、雨がパラパラと降った程度。

タープは設営に手間が掛かるが、撤収は非常に早い。
まずはタープを撤収して広々とした空間で片付けをする。

これが今回の持ち物の全て。余計な物がないと撤収が捗る。

涸沢とは当分の間お別れ。
次回はいつに来ることになるだろうか。同じ場所に何度も来るなら、初めての場所に行きたいもの。

次は雷鳥沢を拠点に立山周辺を登山しようか。だが立山黒部アルペンルートは自転車も通行禁止。

さあて、出発だ!

昨日、北穂高岳の急な下りで脚に違和感があるので、最も無難な横尾谷のコースで下山することにした。

本谷橋まで下りてくると、沢は酷いありさまだった。橋は最近架替られたばかりのようす。

横尾山荘付近まで来ると、沢沿いの道が水に流されて消えており、迂回路が付けられていた。本当に酷い状況だった。近年の荒れ方はただ事ではない。

自作バックパックの側面にはユーティリティストラップと呼ばれる、便利な物が付けられている。

手洗いした衣類を掛けて、歩きながら乾かすためののも。汚れた靴下を履き続けていると、単に不快なだけでなく靴ずれを起こしやすくなる。

大型のメッシュポケットも非常に便利。容量アップのほか、中身が見えて濡れたものを乾かすことができる。

徳沢までやって来た。

広大な草地のサイトで小梨平に比べて人は少なめ。ペグ効きがよく、地面が柔らかで快適。テントの受け付けは徳沢園で。以前何度か泊まったことがある。

上高地長期滞在で、小梨平に飽きてきたら、徳沢に引っ越しするのもいいかもしれない。

ここはすぐ近くの徳沢ロッヂでお風呂が入れるのが目玉。
ロッヂはチに点々ということに注意する。

石垣に生えた苔が実にいい。いつかは泊まろう。とは思っているものの、そんな時は実際やってくるのだろうか?

*2021年徳沢ロッヂは外来入浴休止中

 

昼にはまだ早いが、テントサイトにシートを広げてラーメンを作ることにした。
食料は非常食を除いて全て使い切る。あと2時間歩いて小梨平に戻るだけ。全て食べても問題ない。

小屋前の人集りから離れて木陰での休憩。快適な場所は時間によって刻々と変化する。今はココ!雲が湧いてきて怪しい天気になってきた。さっさと済ませてさっさと帰ろう。

代わり映えしないいつものラーメン。
こんな画像を載せる意味はあるのか。

おっさんの自己満足のために載せているだけ。残りの食材を投入して大幅に増量されたラーメン。実に食べごたえがある。

お腹が満たされ、バックパックは軽くなり元気いっぱい。あとはのんびりと歩いて小梨平に戻った。

昼前に小梨平に到着。預けておいた自転車一式を引き取って受け付けを済ませる。

以前の場所が空いていたので、同じ場所にテントを張った。多少客が増えた程度で目立った変化は見られず。

こうして2泊3日の登山は終わりを迎えたのだった。

 

登山コース

おわり