メカニカルディスクブレーキ(BR-CX77) ブレーキパッドの点検

こんにちは。からあげです。

はじめに

カンチブレーキのPanasonic OJC4からディスクブレーキのサーリー ディスクトラッカー(Surly Disc Trucker)に乗り換えて、より楽しい自転車生活を送れるようになった。

昔ながらのカンチブレーキでも晴天ではそれなりに効くが、雨天になると一転して効きが非常に悪くなる。荷物満載した自転車で急な下り坂だと、渾身の力を込めてレバーを握りしめても、減速するのがやっとで完全に停止することができない。そのためのツーリングの最中は、効かないブレーキに神経をすり減すことになる。

一方、ディスクブレーキの場合は天候に左右されず安定して効くため、安心して自転車に乗っていられる。この違いは非常に大きい。ディスクトラッカーに乗って直ぐにOJC4とはまるで違う、その歴然とした違いに感動したものだった。

ただ、いくら優れたディスクブレーキでも、きちんと整備されていることが前提となる。
まだ初心者の私は知らないことばかり。
2018年の北海道・東北ツーリングではチェーンの手入れを怠り、スプロケットなどの駆動系を無駄に消耗させてしまった。その結果、たった8,000kmでスプロケを交換する羽目になったのだった。

 

メカニカルディスクブレーキ(BR-CX77)ブレーキパッドの点検

初回点検(走行距離 約1,000km)

これがブレーキパッドの点検するサーリーのディスクトラッカー

ディスクブレーキには油圧式と機械式(メカニカル)の2種類あって、今の主流は油圧式。レバーの引きが軽く指一本で操作できる。もともとMTB用に開発されたディスクブレーキだが、最近ではロードバイクにも搭載されるようになっている。
ただ、整備が難しい油圧式はツーリング用途には向かないので、扱いやすい機械式を選んでいる。
Shimano BR-CX77というシクロクロス用。シクロクロスとはロードバイクでオンロードのほかにオフロードも走る競技のことで、ULTEGRA6800シリーズというロード系上位グレードのブレーキとなる。

 

Shimano BR-CX77は経験豊富な元世界一周サイクリストの自転車見聞店店主が太鼓判を押すブレーキ。過酷な海外ロングツーリングでも耐えられるよう、厳選されたパーツの中の一つだ。
重要パーツには金を惜しまず、重要度の低いパーツは廉価グレードを積極的に使用して組み立てられた自転車は財布にも優しい。もちろん海外でのパーツの入手性が考慮されているのは言うまでもない。

初心者の私は実践あるのみ。習うより慣れろ。走行距離がちょうど1,000kmを超えたところなので、ディスクブレーキのブレーキパッドの点検を行うことにした。

メンテナンス用のスタンドを持たない私は、いつも自転車を倒立させて整備を行う。
ハンドルとサドルの地面と接触する部分はウエスで保護してある。

 

フロント側の点検

ブレーキローターとブレーキキャリパー

まず始めにクイックリリースを緩めてからホイールを取り外す。

SM-RT64はメタルパッド使用可能な160mmのブレーキローター。
ブレーキパッドにはレジン(樹脂製)とメタル(金属製)の2種類あって、標準ではレジンパッドが付いている。まずはこのまま扱いやすいレジンパッドで慣れておくことにする。

ホイールを取り外す前にパッド調整ネジを緩めてパッドのクリアランスを広げておく方が良い。ローターとパッドの隙間が少ない状態では無理な力が掛かるおそれがある。何も知らない当時の私はそのままホイールを取り外した。

ブレーキキャリパーのようす

各部をチェックして仕組みを頭の中に叩き込む。

車輪(内側)から見たようす

R-PAD IN」と表示されている黒い部品がパッド調整ネジ。車輪側のパッド(固定)のクリアランスを調整するネジだ。
走行しているとパッドが次第に減ってくるので、調整ネジを締めてパッドとローターのクリアランスを規定値0.2~0.4mmに調整する。(目測でだいたい)

スナップリングが付いたものがパッド軸。パッドを保持する役目の非常に重要な部品。パッドを外すには、まずはスナップリングをラジオペンチで外してからパッド軸を緩める。

車体外側から見たようす

画像中央やや左、凹んだ場所にあるマイナス頭のネジがパッド軸。
通常のネジと同じく左に回して緩める。

パッド軸のようす

全長30mm、太さ3mm

パッド軸のマイナス頭

スナップリング

非常に小さなものなので、なくさないように気をつける。
屋外の作業では風で飛ばされないように注意する。風の当たらない物陰で行い紛失しないように容器などに入れておく。

パッド軸を抜くと、パッドを抜き出せるようになる。
こちらの方からマイナスドライバーのような先の細いものでパッドを軽く押し出す。
穴の中央にあるのがスプリングで、2つのパッドを押し広げる役目をしている。

押してはみ出て来たパッド。あともう少し。

角度を変えてもう一枚。

スプリングが効いているため、キャリパーから出ると広がる。

取り外したブレーキパッド

パッドは左右対称で左右の区別はなし。パッドのカスで黒く汚れている。

スプリング

パッド軸の穴近くにRとLが表示されている。
パッと見た限りではスプリングも左右対称で左右の区別はないように思える。

角度を変えてもう一枚。

ブレーキパッドのようす

アルミ台座にレジンパッドが付けられている。上の穴がパッド軸が貫通する場所。
アームの部分がやけに華奢に見える。

こちらが反対側。
G01A RESINと表示されている。G01AのAとはアルミニウム(ALUMINIUM)、RESINは樹脂製の意味。

こちらは車軸側でパッド調整ネジの跡が付いている。

パッドの前側に来る角は斜めにカットされている。
これはおそらくブレーキの鳴きを抑えるとともに、馴染みやすくするためだと思われる。

自走して帰る途中で初めてこれに気づいたとき、パッドの剛性が足りなくて削れてしまったものと勘違いしてしまった。
偏摩耗してしまい残りはあと僅か。家に帰ったらパッドを交換しなければと思ったのだった。

当時はディスクトラッカーに乗り始めたばかりで、ディスクブレーキのことは全然知らなかった。勘違いに気が付かないまま、伊豆半島のアップダウンの激しい山岳路では、優しくブレーキを掛けながら走行した。
今思い出すと笑ってしまうが、当時の私は自転車に慣れるだけで精一杯だった。

 

パッドを横から見たようす

斜めのカットの具合がよく分かる。パッドの表面から線維のような物が飛び出ているのが分かる。

2つのパッドを重ね合わせたところ。
左右のパッドの偏摩耗はなし。見た目は均等に減っている。
こまめにパッドのクリアランス調整していたのが良かったようだ。

パッドの前側を見る。
斜めカットは直線ではなく、波型になっているのが分かる。
shimanoのこだわりなのだろう。

 

ブレーキパッドとブレーキローターの厚さ

取り外したままの状態で、ノギスを使用して残りのパッドとブレーキローターの厚さを計測した。

パッド G01A RESIN 走行距離1,000km
車軸側 2mm
車体外側 1.8mm
新品時 2.4mm
使用限界 0.5mm
ローター SM-RT64 160mm 走行距離1,000km
1.8mm
使用限界 1.5mmまたは片方のアルミ面が出るまで

 

ブレーキキャリパーのようす

ウエスを突っ込んでキレイに拭いておく。

パッド表面はパーツクリーナーを噴射してしっかりと汚れと油分を除去しておく。

表面がキレイになって見違えた。レジンパッドは油が付着するとブレーキの効きが悪くなるので注意したい。油分が内部に染み込むと取れなくなるため、減っていなくても交換しなければならなくなる。

レジンパッドを使用する時は、油分の付着で効きが悪くなることに備えて、予備のパッドを持っておいた方がいい。

掃除してキレイになったパッドにスプリングを付ける。画像のようにパッドを組み合わせる。

パッドにスプリングを付けて組み合わせたところ。
スプリングの力でバラバラになりやすいので、しっかりと持っておく。

スプリングとパッドのパッド軸の穴を合わせてパッド穴の方からキャリパーにセットする。

今回はパッドはそのまま元の位置に戻して取り付けた。
パッドの厚さを計測すると、車体外側のパッドの方が減っていたのが分かった。
左右入れ替えて取り付けた方が良かったのかもしれない。

ブレーキパッドも左右でローテーションした方が長持ちします。
 

キャリパーにセットするには多少のコツがいる。
何度か失敗したのちにようやくできた。
パッド取り付け時は、パッド調整ネジとアーム調整ネジをいっぱいまで緩めておく。

点検したついでに掃除して、見違えるほどキレイになったブレーキ周り。

元のようにパッド軸にスナップリングを取り付けておく。脱落防止には絶対に欠かせない。

G02Aのパッドはパッド軸のボルト方式ではなく、割りピン方式となっている。

ホイールを取り付けてクリックリリースを元に戻す時に、アームのところに傷みを発見した。

このようにフロント側には出っ張りがあって、レバーの向きが悪いと当たるようになっている。
この件に気づかずに強く締め込んでしまい、レバーの付け根を傷めてしまった。

ホイール取付後、パッドのクリアランスの調整を行った。
回数をこなすうちに要領が分かってくる。前後合わせて1,2分でできるようになる。

 

リヤ側の点検

リア側もフロント側と同じ要領で作業を行う。

まずはホイールを外したところ。

ブレーキパッドを外したところ。

ブレーキパッドとブレーキローターの厚さ

パッド G01A RESIN 走行距離1,000km
車軸側 2.3mm
車体外側 2.2mm
新品時 2.4mm
使用限界 0.5mm
ローター SM-RT64 160mm 走行距離1,000km
1.8mm
使用限界 1.5mmまたは片方のアルミ面が出るまで

 

パッドの表面

パッドの裏側のアルミ台座

パーツクリーナーを吹きかけて掃除したところ。

フロント同様、リヤもパッドの前側が斜めにカットされている。

角度を変えてもう一枚。
繊維質状のものがハッキリと分かる。

パッドを外したあとでブレーキキャリパーもしっかりと掃除をする。
パッド調整ネジとアーム調整ネジは、いっぱいまで緩めてある。

 

ブレーキローターの取り外し

ホイールを外したついでにブレーキローターを外してみることにする。
ブレーキローターはロックリングで締め付けられていて、付け外しには専用の工具が必要。

今回はPWTという安くて品質の良い台湾メーカーの工具を使用した。携帯用の工具も買ったが、まずは扱いやすい柄のついたもので行った。スプロケット外しもできるセットの工具。

 

工具の先端部

角度を変えてもう一枚。

パッと見ただけでは、shimanoの携帯工具との違いが分からない。
私が作業する分には、十分な品質だ。先日、PWTのペダルレンチで硬く締まったペダルを取り外したこともあり。PWTという工具メーカーは信頼できると判断した。

 

まずはホイールのクイックレリーズを取り外す。

左のレバーと反対側のナットを回すと外れるようになっている。
取り付け時はたけのこ型のスプリングの向きを間違えないように注意する。

このようにナットが外れるようになっている。

工具をセットしたところ。
下に置く時は傷めないようにダンボールを敷いている。

内セレーションタイプのロックリング

これは通常のネジと同じで、左に回して緩める。

ロックリングに工具をセットしたところ。

実際に緩める時はタイヤを立てて、跨ぐようにしてタイヤを固定し、工具のハンドルを下に押す。
グッと力を加えると、簡単に緩めることができた。

ブレーキローターを外したあと

取り付け部分にはギザギザの溝が彫られている。

角度を変えてもう一枚。

今度は真上から撮影した。

ロックリング表側

非常に薄くてペラペラ。

ロックリング裏側

ブレーキローターのようす

shimano SM-RT64 160mm

メタルパッドも使用可能なもの。

MTB用のローターはワイドタイプ、ロード用のものはナロータイプになっている。
ローターの形状に合わせてパッドの種類を選ぶ。

どうして自転車パーツの種類がたくさんあるのか?初心者には分かりづらく、適合するパーツを選び出すだけでも一苦労。
初心者にはブレーキ・シフトケーブルでさえも分かりづらい。今では当たり前になっているが、初心者のうちは戸惑う。シフトケーブルはMTBとロード共通で、ブレーキケーブルは、エンドのタイコ部分が違って互換性なしとか止めて欲しい。

自転車業界はもっと初心者に優しく分かりやすくした方がいい。カンパニョーロやスラムとかも出てきたらもうお手上げだ。

ローター中心部のようす

ギザギザの溝のようす

 

ブレーキパッド点検の感想

今回はパッドの初回点検のついでに、飛行機輪行に備えてブレーキローターも取り外した。初めての感想はやれば簡単。
何度も点検しているうちに外側のピストン側のパッドの方が減りやすいというのが分かる。
こまめにパッドの調整をしておけば、極端な偏摩耗することはない。
ロングツーリングに出かける際は、パッドの予備を1,2組は持っておいた方が安心できる。

いくらダンボールに入れてキッチリ梱包したところで、横積みされたり放り投げられたりしたらひとたまりもない。ブレーキローターは外しておいた方が良い。多少の歪みであれば、モンキーを掛けて直せるようだが、ローターは繊細だ。些細な手間を惜しんで多くの時間を無駄にしたくない。

今回、ブレーキパッドを点検して仕組みが分かり、自分で対処できる幅が増えたように思える。この調子でオーストラリアツーリングの準備を進めたい。

参考資料
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メカニカルディスクブレーキ  ディーラーマニュアル(PDF版)

 

おわり