長距離バス「グレイハウンド オーストラリア」でらくらく輪行

こんにちは。からあげです。

オーストラリアの長距離バス「グレイハウンド オーストラリア」は自転車を分解せずとも輪行できる、自転車旅行者に適したバスです。

輪行(りんこう)とは公共交通機関に自転車を載せて移動することの意味で、通常は自転車を分解して専用の輪行袋に入れる必要があります。

はじめに

2019年自転車でオーストラリアを旅していた私は、見渡すかぎり地平線までつづく広大な大地に初めのうちは感激していたが、やがて感動は薄れ、しだいに苦痛を感じるようになる。
長い無補給区間と強い向かい風で心身ともに消耗していた最中、リヤホイールのリムが割れる。もはやここまでか。
修理して気分新たに走り始めるが、またしても故障が襲いかかる。

オーストラリア北西部 Kununurra(カナナラ)の町にたどり着くと、左ペダルの不調に気がつく。
これまでスムーズに回っていたペダルが急に重たくなった。指で弾いても回らない。

分解して点検してみると、ロックナットが緩み玉当たりの調整が狂っていることが判明した。本来なら10,000kmも走るまでに、途中どこかで一度整備したほうがいいのだが、作業環境の劣る出先で小さいベアリングが入ったペダルの整備は難しい。
壊れたら新しいペダルに交換したらいい。そう考えていた。

Kununurraは人口4,000人弱の西オーストラリア州としては比較的大きな町。幸いにも、こじんまりとした町のスポーツ用品店で自転車を扱っていた。喜び勇んで新しいペダルを買ったものの、取り付けボルトの径が違い取り付けできず。これにはガッカリ。ペダルの整備を依頼するも断られる。

調子の悪いペダルではそう長くは持たない。ノーザンテリトリーの州都Darwin(ダーウィン)でなら、新しいペダルは確実に手に入る。距離はおよそ800km。途中でペダルがダメになると、面倒くさいことになる。

キャンプ場で滞在中どうしようか迷っている時に、長距離バスの割引キャンペーンを知る。

 

長距離バス グレイハウンド オーストラリア(Greyhound Australia)

グレイハウンドオーストラリア(Greyhound Australia)は内陸部縦断や東海岸を路線に持つ、AU国内大手の長距離バス会社だ。赤い車体は青い空にとてもよく映える。躍動感のあるグレイハウンドのマークが目印。
Broome(ブルーム)を出て東に向って走っていると、たびたび見かけるようになった。

バスの路線図 *Greyhound Australiaウェブサイトより借用

DarwinからAlice Springsを経てAdelaideまでの大陸縦断。そして途中KatherineからBroomeまでの北西部横断。あとは東海岸が少し。

偶然駐車場で停まっているのを見かけたので、運転手に自転車を載せられるか尋ねてみた。するとOKだった。それ以降、私の頭の中からグレイハウンドが離れなくなったのだった。

 

スマホでグレイハウンドの乗車券を購入する

通信環境
スマートフォン HUAWEI P10lite(SIMフリー)
SIMカード   TelstraプリペイドSIM(AU国内で入手)

 

バスに乗ろうか乗るまいか思い悩んでいるときに、運賃20%割引キャンペーンを知る。
これまで長い無補給区間に耐えて頑張って走ってきたが、厳しい修行僧のような日々に心底うんざりしていた。
自走のこだわりはとうの昔に捨てている。通りすがりの車に「乗ってく?」などと言われたら、喜んでお世話になっていたことだろう。(実際は一度もなし)
運賃20%割引が強烈に私の背中を後押し。抗うすべはなし。グレイハウンドに乗ってDarwinに行くことを決意する。

スマホでグレイハウンド オーストラリアのウェブサイト「https://www.greyhound.com.au/」にアクセスする。

 

KununurraからDarwinまで片道(One Way)

私の人生は常に片道切符。

乗車日は本日。出発は21時25分。
料金は「Early Bird・Advantage・Premium」の3種類あり。
当日のためPremiumしか選択できず。

自転車旅行者の場合は予定は未定なので、キャンセル・変更・払い戻し可能なPremiumが最適。
せっせと自炊を頑張って少々高い輪行費用を捻出しよう。

Early Bird 
限定座席、変更不可、Premiumへのアップグレード不可、払い戻し不可(ただし法が定める特殊事情を除く)

Advantage 
限定座席、出発24時間前までは変更可、Premiumへのアップグレード不可、払い戻し不可(ただし法が定める特殊事情を除く)

Premium 
出発15分前まで変更可、払い戻し可(ただし予約した時点でPremiumを購入した場合)

 

シートは予約購入時に選択可能

□:空席 :予約済み :自分の席

 

氏名、メールアドレス、電話番号、国籍、搭乗者人数(大人小人/男女)の入力に続き、
手荷物の追加、特殊手荷物(サーフボード・自転車)、サンゴ礁保護募金を入力する。

手荷物は2個まで無料、1個追加 $10、2個追加 $15
サーフボード $15、自転車 $49

注意事項を確認チェックのうえCONTINUEをタップ。
続いて座席の確認が表示されるので、良ければCONTINUEをタップ。

最後に予約内容確認のうえ、クレジットカード情報を入力して支払いボタン(PAY)をタップする。

確認表示なし。一度のタップで支払い手続きが開始されるので注意。

 


Eチケット

料金支払い完了後、しばらくすると登録したメールアドレスにEチケットが添付された予約完了メールが送られてくる。
乗車の際、運転手にスマホ画面のEチケットを提示する。

バス乗車前の準備

輪行袋に入れずに自転車むき出しのままで輪行可。
危険物の持ち込みは禁止。

バス乗車前にガソリンストーブ用のガソリンを全て消費し、自転車の掃除を行う。
ガソリンの残りを用いて、チェーンやスプロケット周りの油汚れを念入りに落した。

日が暮れて暗くなる前にバス停にやって来た。
ガソリンスタンドの一角にある東屋がバス停。
分かりにくいので早めに来て確認した方がよい。

ここで最後の乗車準備を行う。

自転車のミラー、ライト、サイコンの小物類は取り外して、カバンの中に入れておく。

あらかじめスーパーでサランラップを購入しておいた。
確か$3くらい。

サイドバッグは取り外し、2個を1つにまとめてフックを内側にしてサランラップを巻く。
手荷物は2個まで無料なので、こうして2個にまとめておいた。

自転車に付けていた荷物はそのまま。ペットボトルの水は捨てて、必要最低限の500mlのみバックパックに入れて車内に持ち込む。食料はおおかた消費して軽くしている。
防寒着や貴重品などの車内持ち込み用の荷物はバックパックに入れておく。

あとは荷物と自転車の管理に気をつけてバス到着まで待つ。ときどき何をしているのか分からない人が通るので警戒を怠らない。
気温は30度から少し下がったくらいで、Tシャツ1枚で快適だった。

トイレはガソスタ店内で鍵を借りて使用する方式。AU国内の治安があまりよくない場所で見られる。

 

バスに乗車する

自転車の積み込み

Broome始発の便のようで乗客を下ろすと一旦どこかに走り去り、時間になると再びやって来た。

バス停で待っていた人は5,6人程度。運転手が下りてきて乗車の手続きを開始する。
ほかの乗客の荷物の出し入れが終わるのを待って自転車を積み込む。

バスの座席下のトランクルーム

荷室の高さは1m以上あり中腰の状態で入ることができる。地面から床までの高さは50cm程度、自分ひとりで自転車を持ち上げて入れることができた。
自転車の積み込み積み下ろしは、基本セルフサービスのようす。運転手はいっさい触らず。

中央の柱に自転車を立て掛けてロープで縛ることにした。

前後のパーキングブレーキを掛けた状態でドロップハンドルの右側を柱に立て掛ける。
そして、まずはトップチューブを固定する。

パーキングブレーキがあると便利。傾斜のある場所やつっかえ棒で自立させる時に役立つ。ロープは自分のものを使用した。

 

さらにシートポストをしっかりと固定する。
これで倒れることはなし。
2個1にしたサイドバッグを自転車の横に置いておく。

自転車と荷物の積み込みが完了した。
ほかの荷物が少なかったため、楽々積むことができた。

車内設備と乗り心地

車内設備
座席:合成皮革、背もたれ可倒式
各座席に2点式シートベルト、O型コンセント、読書灯を装備
バス車内に空調、トイレ、Wi-Fiあり

運転手にEチケットを見せ、貴重品などが入ったバックパックを持ってバスに乗り込む。座席の配置は中央通路を挟み2席ずつ並び日本と全く同じ。一番奥にトイレあり。

乗車率は4割ほどで空席が目立つ。

車内の空調は寒すぎない程度でひんやり快適。
備え付けの毛布なし。防寒着は欲しいところ。

座席は合成皮革で座り心地はまずまず。背もたれは倒すことができる。
各席に2点式シートベルトを装備。

エチケット袋あり。

さらに各席にO型コンセントを備える。

AU用のO型プラグで変換して日本のUSB充電器でスマホを充電する。

車内には無料Wifiあり。

出発してしばらくすると運転手から注意事項の説明があり。
車内は消灯され真っ暗になるので、ヘッドランプなどのライトがあった方がいい。

運転手は2名乗車で途中で交代しながら運転する。
夜間の交通量は少なく非常に静か。バス車内にエンジン音だけが響く。
耳栓をしてタオルで目を覆い、背もたれを少し倒して眠った。

途中、Timber CreekとKatherineで停車する。
Katherineでは全員が強制的に降ろされて、深夜営業のガソリンスタンドで休憩することになった。バスは乗客を下ろすと、どこかに走り去っていった。

ここのガソスタのトイレも店内で鍵を借りて使用する方式。

店内では飲食せずに、そこら辺に座って手持ちのビスケットを食べる。

眠っていたところを起こされて外で待つことになる。気温は下がって肌寒い。

1時間ほどでバスが戻ってくると、乗客を載せてDarwinに向かって走り出す。
Katherineを出てしばらくすると、外は明るくなり始めた。

Darwinからは同じ道を南下することになるので、外の景色をなるべく見ないようにした。

Darwin市街地手前の営業所でうしろの貨物を切り離す。
少しでも利益を上げるために貨物の輸送も行っているようす。

はじめこちらの方に自転車を載せるものだと思っていた。常時鍵を掛けられていて中を見ることはなし。

自転車を下ろす

予定時刻にDarwin市街地のバスターミナルの到着。
運転手2名の運転は丁寧かつ紳士的、安心して乗っていることができた。

ほかの乗客が荷物を下ろしたところで荷室に入る。自転車が動いた形跡はなし。

自転車と荷物を下ろすと、ただちに点検を行う。
行方不明の荷物はなく、自転車は無傷だった。

30分ほどたっぶり時間を掛けて出発準備を整える。

観光はあとにしてまずはペダルを買いに郊外の自転車店に向かって走る。

同じペダル(Shimano PD-GR500)を$120で手に入れることができた。

こうして新しいペダルを手に入れて、Cairnsに向かって走ることになったのだった。

 

グレイハウンドオーストラリアの感想

ペダルの調子が悪くなり一時はどうなることかと思ったが、グレイハウンドのおかげで新しいペダルを入手でき、その後も自転車で走り続けることができた。
成田からMelbourneまで片道、自転車込みで40,000円弱のジェットスターと比べると割高に思える運賃。だが、自転車を分解せずとも輪行できるのがいい。

乗車券はウェブサイトから当日でも購入できる。サイトは英語表示のみだが、外国人にも分かりやすく、中学生レベルの英語読解力があれば十分理解できる。

 

自走にこだわりがないのなら、グレイハウンドを使った柔軟な旅をおすすめする。
快適な時期は限られるので、単調でつまらない区間はバスで飛ばし、自分が走りたい区間に重点をおいた方がよいだろう。時間に追われると旅を楽しめなくなる。

運賃は安くないので、まずはダメ元でヒッチハイクを試みてみるのもいいかもしれない。狙い目は現役引退後にキャンピングカーでオーストラリア一周している老夫婦。荷物を満載している車が多いが、どこかに自転車を載せられる空きがあるかもしれない。走行中ではなく、レストエリアで停まっている時を狙うのがポイント。気軽に話しかけてみて、感触が良ければそれとなく切り出してみる。ただし、治安の良いオーストラリアでも、不審人物が徘徊しているので、むやみにヒッチハイクをやらない方がいい。

次回オーストラリアに行くときは、DarwinからAdalaideまでの大陸縦断。エアーズ・ロック周辺をたっぷりと観光し、その後はグレイハウンドでAdelaideまでワープ。あとは気がおもむくままTasmaniaに寄ってSydneyあたりまで、なんていうことを考えている。

情報は2019年8月バス乗車時のものです。
現在は新型コロナ感染拡大防止のため、州境で検査が行われている模様です。