ダウンシュラフの汚れ防止~布団カバーでインナーシーツを自作する~

こんにちは。からあげです。

長期間野外活動をしていると、ダウンシュラフの汚れによる保温力の低下が問題になってきます。
インナーシーツを使うと、ダウンシュラフが汚れにくくなり、本来の保温力を長期間維持できるようになります。

インナーシーツの必要性

今日はダウンシュラフにはインナーシーツが必要という話。

シュラフ(寝袋)は自分の体温を外に逃さないようにして、低温下の屋外でも寝られるようにするもの。体温の保温がシュラフの役目だ!そんな重要アイテムのシュラフは、素材によりダウンと化繊の2種類に分けられる。

ダウンシュラフは、鳥の羽毛を断熱材として使用した保温力の高い寝袋で、化繊に比べてコンパクトで保温力に優れる。ただし、水に濡れると一気に保温力が落ちる。

一方の化繊シュラフは、ダウンほどの保温力はないものの、水に濡れても多少の保温力は維持してくれるため、取り扱いが楽。同程度の保温力だと、ダウンに比べて嵩張るが、安価でコストパフォーマンスに優れる点も見逃せない。

 

私は装備の軽量化をするために、長年ダウンシュラフを愛用しているが、活動が長期化するにつれて困った問題が起きてきた。

それはダウンシュラフの汚れによる保温力の低下だ。

新品のダウンシュラフの状態

これは2017年、アメリカ西海岸のロングトレイルPCTを歩くために新調した寝袋。モンベルのアルパインダウンハガー800#2で、リミット温度は-6度まで。低山なら積雪期でも十分使用できる保温力の高いモデルとなっている。

首周りのようす

非常にふかふかで、触るだけでほのかに温かい。

生地の表には、ポルカテックスという撥水加工を施してあり、ダウンが濡れて保温力が低下することを防ぐようになっている。

そんなハイクオリティーのダウンシュラフであったが、半年間ろくに風呂にも入らず、着の身着のままの状態で使っていたところ、汚れまみれになって大幅に保温力が低下してしまったのだった。

 

インナーシーツなしで使い続けた半年後のダウンシュラフの状態

これが半年間、ハードに使い倒したダウンシュラフ。見るも無残な姿に変わっていた。ああ、可哀想に!帰国後すぐに撮影した写真。
半年前の面影は全くなし。汚れてダウンのロフトがペチャンコに潰れてしまっている。
皮脂汚れのため、干しても全然フカフカにならない。常に湿ったような状態だった。

首周りのようす

汚れた衣類と体に触れて一番汚れていた部分。

生地表面。ハッキリと汚れが分かる。

中のダウンは、皮脂汚れで団子状に固まってしまい、このように生地が透けて見えるようになっていた。保温力は大幅に低下し、氷点下を下回らずとも、かなりの寒さを感じるようになった。

洗濯後のダウンシュラフ

その後、自分で洗濯して保温力はある程度は回復したものの、新品同様の保温力を取り戻すことはできなかった。せっかくの良い道具なのに、自分の使い方が悪くてダメにしてしまった。

これらの教訓を活かし、インナーシーツを使って寝袋をできるだけ汚さないようにしようと思ったのだ。

 

ネットで検索してみると、あれこれインナーシーツが出てくる。
その中でも寝心地が良さそうなシルクのシーツは1万円以上もする。さすがに手が出ない。
そこで普通のシーツをあれこれ物色してみた。どれも手頃な値段で良さそう。

ん?

この時、私の頭にふと浮かんだのは、インナーシーツくらいなら簡単に自作できるということだ。
袋型の単純な作りで、全然手間は掛からない。既製品を買うくらいなら、自分で作ってしまおう。そう考えるのも自然な流れだった。

 

インナーシーツの自作

材料

材料はどこにでもある敷き布団のカバー。実家で不要となった布団カバーを材料とする。

綿100%で吸湿性が高く肌触りがよい。生地は薄くて嵩張らない。色が白で清潔感があるのもいい。インナーシーツの材料としては悪くはない。

ただ、伸縮性が全くないのが気になった。

布団カバーを広げたところ

サイドがファスナーとなっていて、布団を入れて閉めるとカバーが外れないようになっている。
サイズは1×2mほど。

 

インナーシーツ自作の作業のようす

いろいろ検討した結果、作業を簡略化するため、封筒型のシーツを作成することにした。
伸縮性のない生地で体にジャストフィットするシーツを作ると、あちこちが突っ張って使い心地が悪くなるように思えた。そこで多少の重量増は受け入れて、大きめの封筒型にして快適性をアップさせることにした。

出来上がりの寸法は160cm×75cm。身長165cm痩せ型の私がゆとりを持って入れるサイズとした。長さは、肩までカバー出来れば十分だと考えた。
枕はシュラフの収納袋の中に不要な替えの衣類を入れたものとし、タオルでカバーして使用する。

自作のイメージが出来上がったところで、さっそく裁断作業に入る。
木工などで使用する直角定規の差金を使用した。

カットは普通の裁ちばさみを使った。
端は1cmの縫いしろをとった。

袋状に縫っているところ。

重ねた生地がズレないように慎重に縫っていった。

生地の端の処理は、かがり縫いをして解れないようにした。
最近のミシンであれば、かがり縫いの機能が付いている。

ほつれ止めはこれで十分。3つ折りにして縫うことも考えたが、インナーシーツに高い耐久性は求めていない。1,2年くらい持てばいいだろう。
ほつれ止めを簡単にすることで、省力化と軽量化を図った。

ただし、シーツの口の部分だけは3つ折りにして、強度を高めておいた。

ざっと縫っただけだが、意外にいい感じになった。

シーツを裏返すとこのようになった。

折り返したところが、少し膨らんでいる。
アイロンを掛けてしっかり伸ばそうかと思ったが、ここは縫ってしまった方が手っ取り早いと思った。縫った方が折り目がしっかりついて、畳みやすくもなるだろう。

膨らんだ折り目を縫って、パシッとなったところ。

インナーシーツ完成品

2時間ほどで、インナーシーツの完成!

出来上がりサイズは、当初の予定どおりの160×75cm
サイドにファスナーはなし、ゆとりのある封筒型。

口を広げてみたところ。
3つ折りにしたことで剛性も上がり、使いやすくなった気がする。

収納袋は、透湿性のあるタイベックシートを使って作成した。
紐は太さ1.5mmのナイロンロープ、ミニタイプのコードロックを付けた。

寝汗で湿ったシーツが少しでも乾くように、収納袋は防水透湿性のあるタイベックを素材に選んだ。ちょうど手元に端材があったこともある。

タイベックシートとは家の外壁の下地に貼られる防水透湿性のあるシート。ウルトラライト志向のハイカーが好んで使う自作素材。

 

恒例の重量計測タイム!

シーツ単体209g、収納袋6g。合計215g。
十分満足できる重量となった。

収納袋に入れたところ。

実は収納袋の大きさが決まらず、何度も作り直した。
ようやく心持ち余裕のある収納袋が完成した。

試しにダウンシュラフに入れたところ。

うむ、いい感じだな!

寝袋に頭からすっぽり入ると、長さが足りなくなるが、そんなことは滅多にない。
野宿では外のようすを探るために、常に頭を出して音が良く聞こえるようにしておいた方がいい。

だいたいイメージ通りのインナーシーツが完成した!

 

インナーシーツの使い心地

自作インナーシーツとセットで使用したダウンシュラフ

実際にインナーシーツを入れて使用することになるダウンシュラフは、駅前アルプスのダウンシュラフ。モンベルの#3と同程度の保温力があるものと思われる。自分が購入したわけではないのでよく知らない。駅前アルプスとは、JR名古屋駅前にある登山用品店のこと。

実家の押し入れから出てきたもので新品同様だった。これを2018年北海道・東北ツーリングで使用することにした。

ブランドこそ駅前アルプスとなっているが、シュラフの内側にはナンガのタグが付いていた。
ひょっとすると、ナンガのオーロラ450DXと同等品なのかもしれない。

サイズはショートで身長165cmの私にはピッタリだった。

 

実際の使用中のようす

2018年北海道ツーリング中、とあるバス停内で泊まったときのようす。

ろくに風呂にも入らず、野宿旅を続けていた私。この日も大量の汗をかいていた。
そんな汚い体であったが、シーツを使用すると気兼ねなく寝袋に入ることができた。

ただ、伸縮性がないので寝心地は悪い。シーツに入ってから芋虫のように体を動かし、シーツの突っ張りをなくす必要があった。

汚れたシーツは洗濯機に放り込んでそのまま洗えるため、気軽に洗濯することができる。
汚れが染み込んだシーツだと、防汚性能が落ちて本来の役目を果たせなくなる。天気を見計らって定期的に洗濯を行った。

生地が薄いので、日当たりのよい場所に干しておけば、1時間ほどで乾いてくれる。
コインランドリーの乾燥機を使用しなくても、すぐに乾いてくれるのは嬉しい。

ロングツーリングでの使用後

4ヶ月間の北海道・東北ツーリングで毎日使用したインナーシーツのその後。
散々酷使したインナーシーツとシュラフはどうなってしまったのか?

これから紹介しよう。

長旅を終えて、山梨の小屋に帰ると、早速シーツを洗濯した。
何度か洗濯をしていたものの、汚れが染み込んでベージュ色となっている。

しっかり手洗いして洗濯したが、色は元通りに戻ることはなかった。

こちらがインナーシーツとセットで使用し続けていたダウンシュラフ。
洗濯は一度も行っておらず。

インナーシーツのお影で、汚れは最小限となっている。まだまだこのままでも使用できる。
旅の途中で寒い思いをすることは一度もなかった。

逆に暑くて、インナーシーツ1枚だけで眠ることも多かった。山小屋の備え付けの毛布で寝る時も、インナーシーツはあったほうがいい。

首周りもフカフカのまま。

首周りの汚れも少ない。
インナーシーツの効果は歴然!

 

インナーシーツまとめ

インナーシーツを使ってからは明らかに汚れなくなって、本来の保温力が長期間保てるようになった。
シャワー・お風呂に頻繁に入れない(入らない)野宿旅では、より一層の効果を発揮する。

目先の軽量化にこだわるあまり、重要なインナーシーツを省いて、シュラフの保温力が落ちるようでは意味がない。装備の軽量化の基本は、道具の性能を最大限発揮させてやること。
もう一度PCTを歩く機会あるのなら、私は間違いなくインナーシーツを装備に加える。
長期間ダウンシュラフの保温力を維持するためには、インナーシーツは必要だと断言する。

インナーシーツの効果を知ってからは、日常でも使用するようになった。
材料はお古の布団カバーだから、全然勿体なくはない。いや、インナーシーツを使わずにダウンシュラフを汚して、頻繁に洗濯が必要になる方がよっぽど勿体無い。いくら手洗いだとは言え、洗濯する度に確実に保温力が落ちてゆく。ダウンシュラフは洗濯しないに限る。

鳥の命と引き換えに、できたダウンシュラフ。大事にしてできるだけ長い間使用したい。