メカニカルディスクブレーキ(BR-CX77) のパッド軸を割りピンに交換する

こんにちは。からあげです。

パッド軸の頭をなめてブレーキパッドの交換ができなくなる

2020年早春、中国大陸で新型コロナが感染拡大し始めたころ、自転車で西日本を走っていた。
ある朝、雨上がりの海岸沿いのサイクリングロードを通ると、パッドに砂を噛んで一気に削れてしまった。
いくら効きの良いディスクブレーキでも、パッドが磨り減っていては本来の制動力を発揮することはできない。そこで早速ブレーキパッドの交換を行うことにした。

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ブレーキはロード系ULTEGRAのメカニカル(機械式)ディスクブレーキ(Shimano BR-CX77)。上位グレードで高品質のものだが、あいにく廃番になってしまっているのが残念。
しっかり整備さえしていれば、たくさんの荷物を積んでの下り坂でもしっかりと効きストレスがない。
ただレジン(樹脂製)パッドは砂などの異物を噛み込むと一気に削れてしまうのが欠点。その代わりローターに優しい。


shimano ディラーマニュアルより(PDF版) BR-CX77はパッド軸の頭はマイナス

ブレーキパッドの交換はとても簡単。パッド軸を抜いてパッドを交換するだけ。

パッド軸の頭にマイナスドライバーを当てて緩めようとしたら、なんとマイナス頭をなめてしまった。なめた瞬間のぬるっとした感触が忘れられない。

もうこうなってしまうと、携帯用のマイナスドライバーでは緩めることは難しい。雨天の中走ってネジ山のグリスが完全に落ちて固着していたと思われる。

幸いパッドの残量があって負荷の軽いリヤの方で助かった。

フロント側だけパッド交換を行うことにした。
慎重に作業をしてパッド軸の抜き出しに成功した。

およそ19,000km使い続けてきたため、軸は傷が付き痩せ細ってしまっている。

ネジ頭もなめ気味になっている。これ以上の継続使用は危険過ぎる。
新しいパッド(G02S)に付属していた割りピンを使用することにした。

取り外したフロント側のパッド。
左のピストン側(可動側)の方がよく削れている。

新品の厚さ2.4mm、使用限界は0.5mm。
目測でパッド残量は1mm以上あるようだが、残り少ないと調整が難しくなる。より重要なフロント側は新品に交換しておきたい。

この時、フロント側のブレーキローターが摩耗して薄くなっているような気がした。実際にローターもかなり摩耗していた状態だった。ローターが削れて薄くなると、パッド同様に調整が難しくなる。そしてより頻繁に、より限界まで調整する必要がある。中途半端なパッドは捨てるのは勿体ないので、家の近所で使い切るようにしたい。

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パッド交換のついでにパッド調整ネジのグリスアップも行うことにした。
こちらもグリスが切れていて回しづらい状態だった。

パッド調整ネジ(反対側)

できる範囲でブレーキキャリパーを掃除する。
パーツクリーナーを吹き付け、ウエスで丁寧に拭いて汚れを落とした。

角度を変えて撮影。

パッド軸の穴に割りピンを挿してラジオペンチで端を折り曲げた。

硬いステンレス製のため短い方が曲げづらかったが、ラジオペンチで挟んで引っ張りながらペンチの先を回転させてなんとか曲げた。

新品のパッドに交換したフロント側。
新品のパッドは効きが良くてとても気持ちいい。

ローターにパーツクリーナーを吹きかけでウエスで磨いた。

 

帰宅後にパッド軸を抜いて割りピンに交換する

その後、リヤのブレーキパッドを使い切る前に1,000km走って愛知の家に無事辿り着くことができた。パッドの残量に余裕はあるが、なめたパッド軸を抜いて割りピンに交換することにした。

いつものように自転車を倒立させて作業を行う。出先ではいつもこのようにして整備するため、家でも同じようにしている。ときどき整備スタンドが欲しくなることもあるが、また今度と言いながら購入を先延ばししている。そのうち廃材や不用品を利用して作ろうと思う。

これが問題のリヤブレーキ。ポストマウント台座にアダプターを使って取り付けられている。パッド軸の頭をなめて抜けなくなったため、パッドの交換ができない。

ブレーキのインナーケーブルの端に取り付けられているエンドキャップは、外れないように瞬間接着剤で固めてある。困ったことにこのインナーケーブルはアウターケーブル押さえの穴を通っているため、インナーケーブルを抜くときはエンドキャップを外さねばならない。
残された方法はエンドキャップの手前でインナーケーブルを切るしかない。本当にそうなのか?

まだまだ使えるインナーケーブルを切るのは勿体ない。長いリヤ側であれば短いフロント側に使えるが、重要なフロント側には中古のケーブルはできれば使いたくない。

ブレーキキャリパーの車輪側(裏側)

いろいろな方向から眺める。見方を変えることで新たな考えが思い浮かぶことがある。

まずはインナーケーブルを付けたままの状態でブレーキキャリーパーを取り外す。

インナーケーブルの固定ボルトを外したところ。アウターケーブル受けが邪魔をしてインナーケーブルを抜き出すことができない。

手が届きにくい下側を撮影。パッドのカスや油汚れが付着している。

作業台に自転車を寄せてバイスで挟めるかやってみた。
アウターケーブルをダウンチューブに留めている結束バンドを切ったら届いた。

バイスで挟めたらもうこっちのものだ!

ウエスで保護してバイスに挟んだ。
しっかりと固定できた。

キャリーパー組み立てボルト2本はトルクス穴。T-30Hのトルクスレンチを使って外す。

ブレーキキャリパーは2つに分かれるようになっている。

組み立てボルト2本を外すことができた。緩み止め剤が塗布されきつく締め付けられていた。
ソケットタイプのヘックスレンチで外すことができた。剛性の低いL字型では捻れて難しいと思われる。

パッド軸が挟めれば抜くのは簡単だ。

キャリパーを外すとブレーキパッドを外すことができた。

キャリパー組み立てボルト(緩み止め剤塗布)

強い力が加わっても折れないように太くなっている。

パッド軸はウォーターポンププライヤー(全長約23cm)で挟んで回してみることにする。
本来は水道配管で使用する工具だが、口を大きく広げることができて何かと使い勝手が良く機械弄りでも大活躍する。

防錆潤滑スプレーを吹いてしばらく放置し、飛び出ているパッド軸を挟んで左方向に回す。
すると簡単に緩んでくれた。

無事になめたパット軸を抜き出すことができた。
手間をかけさせやがって!

そもそも古いパッド軸を使い続けた私が悪い。以後は気をつけよう。

なめたパッド軸の頭

材質がアルミでなめやすい。

約20,000km使用したパッド軸。新品では直径が3mmあるが、パッドと擦れる部分は削れて2.7mm程度まで細くなっていた。

ブレーキキャリパー(車輪側)

黒いものがパッド調整ネジ。このネジを回して車輪側のパッドとローターの隙間を調整する。

ブレーキキャリパー(車輪側)の内側

パッド調整ネジを外してキレイに掃除してグリスを塗布しておく。

ブレーキキャリパー(外側)

丸いものがピストン。ピストンでパッドを押してローターに押し付けてブレーキを掛ける仕組み。
これはピストンが一つのシングルピストン型。両側にピストンが付いていて2つのピストンで挟み込むデュアルピストン型のキャリパーもある。

ピストンも外すことができるのだが、インナーケーブルが付いたままなので、またの機会に行うことにした。
今回はとりあえずパッド軸を抜いて割りピンに交換するだけでヨシとする。

できる範囲でキレイに掃除した。
黒く汚れていた内側もキレイになった。

組み立てボルトに緩みどめ剤を塗って適度なトルクで締め付けた。
見違えるほどキレイになったブレーキキャリパー。

上 パッド軸(Pad Axle) 長さ30mm 直径3mm   型番 Y8L410000
中 スナップリング(Snap Retainer)         型番 Y8B212000
下 割りピン(Split Pin) 長さ35mm  直径約2.6mm 型番 Y8DB06100

アルミ製のパッド軸からステンレス製の割りピンに交換する。

割りピンの先を曲げてパッドの交換は作業完了!
短いほうが曲げにくいが、少しだけなら曲げることができる。
ブレーキキャリパーを傷めないように作業する。

 

パッド軸交換作業の感想

今回、バイスの力を借りてパッド軸の抜き出しに成功した。
一時はどうなることかと思ったが、なんとか自力で解決することができた。
こうして小さな成功体験を積み重ねることで、大きな問題でも何とか片付けることができるようになるだろう。

2021年現在、全世界で自転車パーツが欠乏しているため、ツーリング途中でパーツの入手が困難になっている。コロナ前であればAmazonコンビニ受け取りで簡単に手に入った。だが今はチェーンやブレーキパッドなどの消耗品でさえも1~3ヶ月待ちも珍しくない状況だ。よってロングツーリングには予備パーツを持って出かける必要がある。少々面倒だが、その分喜びも増えることは間違いない。

 

アルミ製の古いパッド軸使い続けるのは非常に危険です。丈夫なステンレス製割りピンに交換するか、パッド交換毎の交換を強く推奨します。