こんにちは。からあげです。
軽量化への誘い
人力の自転車でできるだけ楽に走ろうと思ったら、装備の軽量化は欠かせない。少しでも楽をしたい。加齢とともにそんな気持ちが強くなる。それで楽をしたい一心で軽量化に励んでいると、自転車用の携帯工具にも手をつけることになる。
普段の走行には全く関係のない携帯工具たち。しかし機械的なトラブルが発生すると、工具なしには直すことはできない。単なるパンクでさえも、エアポンプがなければ即走行不能に陥ってしまう。
必要最低限の工具だけを持ち、それらをできるだけ軽く嵩張らないようにしたい。しかし、工具としての機能はしっかりと維持したい。そうなると、工具の柄を短く切るなどの軽量化を施すことになる。
軽量化の要となるのが、工具の延長用の柄として使用するシートポストだ。
柄を短くカットした工具を挿し込んで使用する。このアイデアは、元世界一周サイクリスト自転車見聞店店主に教えて頂いたものだ。
愛車のディスクトラッカーに付いていたシートポストは長さ35cm。サドルの高さを合わせても長過ぎる代物で、延長用の柄として使用するにも長すぎた。10cm切って60gの軽量化に成功した。
この軽量化の結果に満足した私はさらなる軽量化を進めることにした。私はロングトレイルのハイキングで、すでに軽量化病という不治の病を患ってしまっている。医学が進歩しても完治の見込みはなし。ならばとことんやってやろうではないか!
厳選された携帯用工具
ロックリング締め付け工具(シマノ TL-LR15)
ブレーキローターやスプロケットの着脱に使用するロックリング締め付け工具は、長い柄の付いたタイプと先だけの携帯タイプの2種類がある。もちろん柄の付いた物の方が扱いやすいが、携帯するとなるとモンキーとセットで使う携帯タイプを選択することになる。
モンキーは小型で携帯しやすいTOPショートエコワイド HY-26Sがおすすめ。信頼できる日本メーカーのものなので、パイプを掛けて使用するにも何のためらいもない。
モンキーの柄はシートポストに挿し込めるように、プラスチックのグリップ部分を少し削ってある。
柄付きの工具に比べると、携帯工具は大幅に軽くなった。
工具を組み合わせるため、多少グラグラして使いづらいが、注意して使用すれば問題はなし。
柄付きロックリング締め付け工具 | 249g |
携帯用 〃 | 58g |
ミニモンキー | 95g |
通常工具との重量差 | 96g |
スプロケットリムーバー
スプロケットリムーバーはスプロケットを外す際に必要な工具で、ロックリング締め付け工具とセットで使用することになる。スプロケット取り付け時はスプロケットリムーバーは不要。
下が通常のスプロケットリムーバー。上の小さなものが、スポークレンチにもなる超小型のスプロケットリムーバーだ。Unior(ユニオール)というメーカーから「ポケットスポークレンチ」という名称で販売されている。
こんな小さな工具でも、しっかりスプロケットを外すことができるのだから驚きだ。昔は中古チェーンの切れ端と木の棒などを組み合わせて使っていたそうな。まさに発明と言うべき素晴らしい工具だ。
Unior ポケットスポークレンチ
PWTスプロケットリムーバー | 287g |
Unior ポケットスポークレンチ | 12g |
スポークレンチ | ??? |
通常工具との重量差 | 275g |
ハブスパナ(17mm)
パークツールのハブスパナ(DCW-3)。17mmと18mmの両口スパナになっている。
ハブスパナは通常のスパナと違い、ハブの薄いロックナットや玉押しを回せるように薄型で、ハブコーンレンチとも呼ばれる。
ハブスパナ使用時のようす
シール性と整備性の良い高品質のハブ(Shimano XT HB-M8000 / XT FH-M8000)は5mmの6角レンチと17mmのハブスパナで分解整備することができる。
重さを量ってみると、49gと地味に重たい。薄型のハブスパナでも両口だと重量がある。
使用するのは17mmの方だけなので、使わない18mmの方をカットすることにした。
作業台のバイスに挟んで金鋸でカットする。
高品質のパークツール製をカットするのは勿体ない気がするが、使わないものを持っているのはもっと勿体ない。
カットしてさっぱりとしたハブスパナ。それほど力を入れないハブのロックナットなので、短い柄でも十分使える。重さは33gになり16gも軽くなった。
ブルックス革サドル(B-17 Standard)専用と8mmスパナ
乗れば乗るほどお尻にフィットして座り心地が良くなるBROOKSの革サドル。
そのなかで定番のB-17 Standard。革の張り具合を調整をするための工具が必要なのが大きな不満だが、柔らかい座り心地が気に入っている。経年変化する風合いも楽しめる。
重たくて水濡れに弱いほか、張り具合の調整に六角レンチを使えないのがBROOKS革サドルの欠点。しかし、その欠点をも遥かに上回る座り心地の良さがあるので、今もなお革サドルを使い続けている。
この特殊なスパナは柄が短くても問題はない。黄色のペイントマーカーで印を付けているところで切ることにした。
柄を短く切ったあと先にドリルで穴を開けた。小さくて紛失しやすいので、同じく柄を切って短くした8mmのスパナとロープで繋げて携帯するようにした。当時衝動的に切ってしまったので、重さは量っていない。
8mmのスパナは前後キャリアの固定用ナットに必要なもの。
8mm/10mm両口スパナの不要な10mm側を切った。
走行中の振動で緩むことが多いキャリア固定用のビスやナットは緩み止め材を塗布して、定期的に確認しておきたい。
緩んだまま走行すると、フレームのネジ穴がダメになるおそれあり。ロングツーリング中でのキャリアの不具合は致命的となり得る。
チェーンカッター
チェーンはクランクの力を後輪に伝える重要な役目を持つパーツで、走行距離4,000〜5,000kmで通常は交換する。チェーンカッターはチェーンを切ったり繋いだりするときに必要で、ロングツーリングには絶対に欠かせない。
これはトピーク ユニバーサル チェーンツール。もとから軽量コンパクトで品質がよく人気がある商品。これを更に軽量化する。
詳しくは上記の参考記事を見て欲しい。
軽量化を進めた結果、チェーンカッターのヘッドのみになった。
重量はチェーンフック込みで51g。もとの82gから31gの軽量化に成功した。
チェーンカッターヘッドをモンキーで挟み、ハンドルは5mmの6角レンチを使用する。6角レンチは先が重要なだけで、柄が多少傷んでも問題なし。
2019年オーストラリアツーリングはこれで乗り切った。
6角レンチセット
新興台湾工具メーカーPWTの6角レンチセット
1.5、2、2.5、3、4、5、6mmの7本組の色付きで視覚的に分かりやすくなっている。
さらにボールポイントで扱いやすく、長い柄の方でしっかりトルクをかけて締め付けることができる。
工具は所詮消耗品。自転車の整備では使用頻度が最も高く消耗が激しい6角レンチ。1,000円でお釣りがくる安価な工具としては非常に優秀だ。
通常の6角側
固く締まったボルトを緩めるとき、本締めするときに使用する。
こちらがボールポイント側。
斜めに当てて回すことができ、奥のボルトを締めたり、早回ししたりできてとても便利。ただし、強い力で回すと角を傷めるので注意が必要だ。
不要な1.5mmと2mmは外して、ホルダーの余分な部分を切り取って軽量化の完了。
普段の整備で大きな力を掛けるときは、ソケットタイプの6角レンチを使用してできるだけ消耗を抑えている。
ビットホルダー(PB 470 M)
UNIORポケットスポークレンチ並に凄いやつがコレ。
スイスの工具メーカー「PB Swiss Tools」のビットホルダー PB 470 M。5mmの6角レンチと組み合わせて、各種ビットを挿して使用する。
柄は1本で十分。先のビットだけ替えるだけでよい。革命的な商品と言える。
耐久性のあるステンレス製アダプタに磁石が内蔵されていて、6角レンチと各種ビットをほどよい力で固定してくれる。
これはバイクツール(PB 470)の中のビットホルダー単品。セットは非常に高価。
ビットホルダーのアップ
シリアルナンバーが表示されている。
なんでこんな小さなものが1,000円もするんだ!と思わずケチを付けたくなるが、価格以上の仕事をしてくれるので、価格は不問にしている。
6角ビット(対辺6.35mm=1/4インチ)を挿す側。
奥に入れられている磁石が見える。
5mmの6角レンチを挿す側
組み合わせた工具をバラしたところ。
なぜ、より丈夫な6mmの6角レンチを使わなかったのだろうと考えた。ビットのサイズと6角レンチのサイズが近いと間違いを起こしやすい。それを回避するためあえて5mmを選んだと思われる。
ビットホルダー用のトルクスビット。
T10H、T15H、T20H、T25H、T30Hの5本組。手頃な価格だが信頼性のある国産工具メーカーのベッセル。トルクスタイプのネジはトルクの伝達効率が高く、耐久性も高いことから、従来の6角穴に代わって使われるようになってきた。私の自転車ではブレーキキャリパーや6本ボルト留めタイプのブレーキローターで使われている。
ビットは必要にして十分な品質。小さくて紛失の可能性の高いビットはホルダーに付けて携帯する。
ただし、ホルダーの邪魔な部分はカッターで切り落とす。
常時携帯するビットは10個。通常の6角レンチを傷めたときのために、3,4,6mmの6角ビットを持っておく。あとは+−のビットも外せない。
こうしてあれこれ考えて選ぶのも非常に楽しい。
携帯用ペダルレンチ
ロングツーリングに15mmのペダルレンチは必需品ではないが、あるととても頼もしい工具だ。6mmの6角穴付きのペダルを使用しているが、大きなトルクで締め付けたペダルを外すときは6角レンチでは、安全確実に緩められないときがある。
外すときのことを考えると、強く締め付けるわけにもいかず。それで力を加減して緩めに締め付けると、ペダルを強く踏み込んだときに、カチカチと音がするときがある。
短時間ならまだしも、長時間カチカチ音を聞くのは耐えられない。ペダルの異音を無視していていると、他の不具合も見過ごす恐れがある。
重要なペダルレンチだが、携帯しやすいものはなし。そこで市販のペダルレンチを改造して携帯用を作った。
不要な柄を切り詰めて重さを100g以下にした。
モンキー同様にシートポストに挿して使用する。
しっかりとペダルを締め付けることができ、途中で緩んでくることはなし。
輪行するときは確実にペダルを外すことができ安心感がある。いくら携帯しやすくても使いづらくてはダメ。出発直前に慌てるのは心身ともに消耗する。
ラジオペンチ
切る、掴む、回すの3つの機能を有したラジオペンチ。
プライヤーではケーブル類を切ることができないし、普通のペンチでは精密作業をやりにくい。ピンセット代わりにもなるラジオペンチがもっとも汎用性が高い。
切る機能は、ブレーキ・シフトのインナーケーブルの切断に必要だ。専用のケーブルカッターは、切るだけの工具なのに大きく嵩張る。硬いステンレスを切ると刃が欠けてしまうだろうが、1回限りの使い捨て用として安価なラジオペンチを選んだ。
ただし、ただ安いだけの工具ではダメ。刃が欠けても惜しくないが、それなりの作業はしっかりとこなしてくれる。それがSK11のラジオペンチ。価格が1,000円以内で財布が軽量化されない。レザーマンの高価なマルチツールだけは絶対に使いたくない。
このラジオペンチだけは全く軽量化していない。真っ先に柄のプラスチックカバーを外すことが思い浮かぶが、極端に使いづらくなっては意味がない。オレンジ色のカバーが目立って紛失しづらい。実際にステンレスのブレーキケーブルを切れるかは不明だが、持っていると安心感がある。
ほかに切り口が潰れてキレイに切れないと思われるので、長めに切ってあとで自転車店か、自宅に戻ったあとで専用のケーブルカッターで適正に処理する。
軽量化のまとめ
軽量化された携帯工具たち。
金属製の硬い工具同士がぶつかって傷まないように、個別に収納袋に入れてからタッパに入れている。
これまで詳しく紹介しなかったエアポンプ、タイヤレバーなどは次の機会にやることにする。
携帯工具入れのタッパ。安価で手に入り耐久性はそこそこある。
ケチって100均のものではなく、できれば本物を選びたい。フタの開け閉めの感触や耐久性が違う。
もちろん余計な出っ張りは切り落とす。
カッターで簡単に切ることができる。
底の出っ張りはヤスリで削って落とす。私の軽量化病はいまだ進行中だ。もう手遅れ。医者からも見放されている。
これは途中段階の携帯工具。
おもにパンク修理するためのもの。まだまだ軽量化の余地が残されている。
タイヤレバー2本にミニモンキーなど。一番底にハブスパナが入っている。
タッパから出したところ。
工具の軽量化の肝は柄を省くこと。今回軽量化に大きく貢献したのは、UNIORのポケットスポークレンチとビットホルダーの2つ。本来の機能を失わずに十分な役目をこなしてくれる。
国内ツーリングならAmazonのコンビニ受け取りが利用できるし、自転車店の工賃も高くないので、さらに携帯する工具を減らすことができる。しかし、私は持続可能なツーリングを目指したい。整備は自分で行い、パーツは最後まで使い切る。
さらに経験を積めば自分で対処できることが増えて、携帯する工具や予備パーツを減らすことができる。
目指すは持続可能なツーリング。より楽により楽しく、そしてより遠くへ行きたい。