こんにちは。からあげです。
バックパックの自作について振り返る
去年の2017年、PCTをスルーハイクできたのは、超軽量のバックパックのお陰だという考えは日に日に私の中で確信に変わってゆく。
Ray Jardineのバックパック自作キットと格闘すること6日間。私は夢中でミシンを操ってバックパックを完成させた。ああ、喜びと苦しみに満ち溢れていた懐かしい日々。
丁寧にチェックするとかなり酷いところがあるが、なんとか完成させることができた。
このレイジャーディンのバックパックのメリットは、非常に軽いということのほかに、自ら作ることによってバックパックの構造が分かるということもある。ただ軽いだけのバックパックなら既製品でいくらでもあるが、こうした道具の奥深くまで知ることができる自作キットというものはまだ少ない。
自作によって超軽量のバックパックを手に入れることができ、縫製技術まで身についてしまう。
道具は買うものではなく自分で作るもの、という意識の大変化を体感することもできる。
レイジャーディンのバックパック(レイパック)によって私の意識は大きく変わったと言っていい。
アメリカでは私のそばを片時も離れることはなかったレイパックは、今ではなくてはならない旅の相棒だ。
PCTでの143日間の激闘の日々が思い出される。
過酷なトレイルを歩きながら、修理して使い続けたバックパックは、帰国後も私の良き相棒として日常生活を共にしている。
そんな私のバックパックだが、山に持ってゆくのは不安になるほど傷んでいたのだった。
詳しくは下の記事を読んで欲しい。
レイジャーディンバックパックの修理
端材と修理前の重さ
今回、PCTで学んだ軽量ハイキングの成果を見極めるために、熊野古道を歩きにゆくことにした。その前にバックパックの修理だけは行わねばならない。
修理の材料はサコッシュ2号を作った時のX-pac VX21の端材使うことにした。
写真の左にバックパックの端材が写っているが、使用したのはX-pac VX21のみ。
修理前に重さを計量しておく。
バックパックの完成時が328g。修理を重ねたため、修理前時点で9g増加して337gとなっている。
コードロックの入れ替えと交換
まずはコードロックの入れ替えと交換
トレイルを歩いている最中、エクステンションカラーのコードロックが傷んだため、バックパック本体のコードロックと入れ替えていたが、今回は本体のコードロックをメッシュのサイドポケットのものと入れ替えることにした。(付け替えたエクステンションカラーのコードロックは、暑さで溶けてダメになってしまったため、収納袋のコードロックと付け替えてある。)
サイドポケットのコードロックは操作することは稀でほとんど傷みはない。
コードがゴムのため縛ればよく、コードロックの必要性は低い。
これが傷んだコードロック
コードの穴が摩擦熱により溶けて大きくなっている。コードが丈夫なため、雑にスライドさせると熱で溶けてしまうことがある。
コードロックはコードとのバランスと耐久性も考慮する必要がある。
続いて大きなセンターメッシュのポケットのコードロックを交換する。
センターメッシュのポケットの口に通すコードがゴムだと、伸びてきてだらしなく口が広がるかもしれないと思い、細いロープに変えておいた。(勝手なことをするなと、Rayおじさんに怒られてしまうかもしれない。)
ゴムからロープに変更したことにより、付属のコードロックが通らなくなったため、アウトドア用の衣類を解体した時にでたコードロックを使うことにした。
しかし、このコードロック、プラスチックがスプリングになっていて、力が弱いためコードが滑ってしまうのだ。
そこで新しいコードロックと交換しておいた。
修理前の再チェック
簡単な修理はここまで。これからもう一度、バックパックの修理箇所を説明するとしよう。
一番気がかりなのはショルダーストラップの付け根。
軽量のバックパックにも関わらず、重たい荷物を詰め込んだため、傷んできてしまった。(PCTを歩くために、時には一週間分の食料を持って歩かねばならない時があった。)
ショルダーストラップの付け根(左)
ショルダーストラップの付け根(右)
ショルダーストラップの裏側
擦れる部分のコーディングが剥がれてしまっている。
コーティングが剥離しているようす
生地はペラペラで薄っすらと向こう側が透けて見える。
そして次に気になるのが、腰の当たる部分。摩擦で生地が薄くなり、テカテカ光っている。
裏側からみると傷み具合がよく分かる。特にシワの入る部分の傷みが激しい。
コーティングが剥がれて向こう側が透けて見える。シースルーの生地みたいになっている。
不意に大きな力が加われば、裂けてしまうおそれがある。山奥で修理不能なほど大きな穴が空いてしまうと大変なことになる。大穴の空いたバックパックで、いったいどうやって荷物を運べと言うのだ!
いつ破れるかと気にして歩くくらいなら、さっさと修理してしまった方がいい。
生地が摩耗して薄くなっているため、その部分に当布を当てて縫い補強することにした。
分解して背中の部分の生地を交換することも考えたが、縫い目に負担を掛けることになるため、たとえ重量が増えようとも、より安全で確かな当布を当てる方法をとることにした。
修理のようす
普段は普通地用の60番の糸を使用しているのだが、できるだけ強度を上げるために厚地用の30番の糸を選択した。
針は太めの16号(緑)。
バックパックの取り回しがしづらく作業は難しかった。
ちっ、やり直しだ!
かと言って手縫いだと時間がかかり過ぎる。ここは多少やりにくくても、ミシンで作業を続けた方が良い。
ズボンの裾上げするときなども、こうした方がやりやすい。
あまり端の方まで縫うと、メッシュも一緒に縫ってしまう。バックパックを操りながら、なるべく直線になるように縫ってゆく。
修理した糸やパッチは取り外さず、そのまま上から修理を行う。せっかく直してあるのに、外すのは勿体ない。パッチや糸が補強材にもなるはずだ。
修理後の各部チェック
全面当てたかったのだが、長さが足りなかったため、消耗の激しいショルダーストラップの付け根と腰の当たる部分に入れた。
真ん中の部分はそれほど傷んではいない。
今後、丈夫な端材が手に入ったらここも当布をして補強しておこうと思う。
来年新たにバックパックを作るつもりなので、1年ほど待つことにしようか。
ちょっと残念な部分
シワが入り見苦しくなってしまった。もう少し端を縫いたかったのだが、ミシンのクリアランスがなくこれが限界だった。
まあ、今後ようすを見て手直ししてゆこう。
腰の部分
強度を高めるために格子状に縫った。外からは当布が見えず、縫い目だけ見える。
おっさんにしては、まずまずの出来と言っていい。
これで不安要素の一つだった腰の部分の傷みが直ってくれた。
ショルダーストラップの付け根
パッチや余ったストラップの上からそのまま縫い付けた。当布を当てたことにより、大幅に強度が上がり修理がしやすくなった。
ショルダーストラップを裏返したところ。
ウレタンパッドのところも剥げてボロボロだが、当分の間は持ちそうに見える。
付け根の傷みの進行を止めることに重点をおいた。
ショルダーストラップの付け根(右)
どちらもしつこいくらいに縫って強度を高めておいた。
修理して気になるのは、バックパックの重量。せっかく超軽量のバックパックだから、少しでも軽さを維持したい。
ドキドキしながら秤に載せて量ってみると378gだった。
完成時328g、帰国後337g 今回の修理で41gの増加となった。
50g増えようとも、まだまだ十分軽い。軽すぎる!
修理後のバックパック(外側)
修理後のバックパック(背中側)
軽く荷物を入れた状態
大修理をして強度と耐久性をかなり取り戻したレイジャーディンのバックパック。
今後もどこまでも一緒に連れてゆくことだろう。
修理後に使用した感想
バックパックを修理すると、早速熊野古道に歩きに行った。
自転車を駐輪場に停めて、バックパックを背負って歩きだすと、過去に歩いた四国遍路やみちのく潮風トレイルやPCTのことが思い出されてきた。
自転車に乗ろうとも、私は歩くことが好きなんだと実感することになった。
電車に乗ってスタート地点に向かう。
食料は途中の駅で購入するため、バックパックはまだ膨らんでいない。
メッシュのセンターポケットには、トレラン用のポールのULトレイルポールが見える。
熊野古道で新たに装備に加えた道具だ。
持っていたBlack Diamondのトレイルはみちのく潮風トレイルで曲げてダメになった。
ストラップが傷む
町石道(ちょういしみち)を歩いて高野山を参拝すると、熊野古道 小辺路(こへち)を歩いて熊野本宮大社に向かった。
そして熊野の町で体勢を整えて、熊野古道 大峰奥駈道(おおみねおくがけみち)を歩いて吉野山に向かう途中に事件は起こった!
大峰奥駈道は稜線上に延びるハードな道のため、5日分と非常食をたっぷりの計6日分の食料を持った。さらに水場が少ないため、最大で4.5Lの水を持ち歩くことになった。
写真はパンパンに膨れ上がった食料袋。一日目の昼食時に写したものだ。PCTでもこれほど大きくなるのは稀だった。
休憩中ふとバックパックを見ると、右のショルダーストラップの付け根が切れているのを発見した!直すと別のところに負荷がかかってしまい、弱いところが傷んでくる。
早速その場で修理を行った。
大修理後、傷んできたのはこの1回のみ。
町石道と小辺路は小手調べ、大峰奥駈道が本命だった。
やはりPCTで得たものは大きかったと感じた。ハードな道ながらも、余裕を残して全行程歩くことができた。ちょうど新緑の時期で山々は生命力に満ち溢れていて気持ちよく歩くことができた。
まとめ
今回、大修理を行ったバックパックで熊野古道を歩いて、レイジャーディンのバックパックはまだまだ使えると確信した。
ただ、全盛期の強度はないため、ハードに使うのは避けた方がいい。
修理しながら使い続けることによって、バックパックの弱点や修理方法を学べてしまう。
どんだけレイジャーディンの自作キットは勉強になるんだ!と思ってしまう。
送料込みで$104.36(115円換算で約12,000円)で手に入れたもので、完全に元はとっている。
これは凄いキットだ!間違いない!!
来年は完全自作のバックパック作りに挑戦したい。バックパックの素材にはもちろんX-pacを使用する。あとはどの種類にするか。より軽量なX-pac VX07にするのもいいかもしれない。
ただ、ボトムだけはX-pac VX21するか、いやいっその事、大枚叩いて丸ごとキューベンファイバーで作ってしまおうか。ムフフ。
なんだか来年が楽しみだ。
おわり
コメント
からあげ隊長、初めまして。
恐らく2年位前にどのキーワードでここに辿り着いたのか思い出せない
のですが、最近またブログ再開されて、楽しんで拝読させて貰っております。
いろいろありますが、今回ザックについてお聞きしたいのですが、
最近私も軽いザックが欲しいと店で見たりしているのですが、
外のメッシュが気になって、水やなんやと出し入れしたり、木の枝なんかが
引っ掛かったりして、すぐに伸びたり破れたりしないかなあなんて思いとどまっています。
からあげ隊長は、PCTで長期間毎日使ってみてメッシュ部分については、
使い勝手、耐久性など感想や考察などありますか?
外のメッシュポケットは非常に使い勝手が良いですよ。
水場で水を汲んで、濡れたままさしておいても乾きますし、残量が人目で分かります。濡れたカッパなどを入れておけば、歩きながら乾かすこともできます。あと中身が見えてものを取り出しやすいです。
耐久性ですが、見た目によらず十分あります。ネズミに囓られて穴が空いた以外は目立った傷みはありません。PCTで使っても僅かな擦り傷と紫外線にさらされて色あせしているだけです。
引きずったり、岩角にぶつけたりしなければ十分強度はあります。
ただ、ハードな藪漕ぎには不向きだと思います。危惧されているように枝に引っ掛けて穴が空きそうです。活動する場所に見合った道具選びが必要だと思います。
なるほど、濡れた物も入れて歩けるのは良いですね。
気を付けて使えば耐久性もなかなかありそうで、あとは自分で実際使ってみてですね。
ありがとうございます。
北海道での活動楽しみしております。
はい、いちいちビニール袋にいれてザックの中に入れる必要はありませんからね。
一度使ってみれば、メッシュポケットの有用性が分かると思いますよ。ぜひ。
思い出が増えた分だけ重くなる
不思議なバックパック。ですねー笑
ダイニーマコンポジットとかも気になります。
隊長、代表してサンプル集買って各材種を紹介してよ。広告20回クリックしとくからさぁー笑
今体調は時期のシュラフ何使ってます?
あなた悪い人ですね。リスクをとらない人は嫌いです。
シュラフはモンベルの3番ですね。夏はたいていこれでイケます。
隊長に好かれても受け止めきれないからそれでいいよ笑
更新多くて嬉しい限りだよ。
私もブロガーであると同時にブログの読者でもあるので、更新が多いのは嬉しいですね。