こんにちは。からあげです。
自転車用スタンドの必要性
自転車にあると便利なものの一つにスタンドだ。どこでも簡単に停めることができる。しかし、荷物満載のツーリング自転車に付けるとあまりいい話を聞かないスタンド。塗装が剥げたり、フレームが凹んだりした、というのを実際に見聞きすることが多く、今回の新しい自転車ディスクトラッカーにもスタンドは付けていない。
町中であればガードレールや壁などに立てかけられるし、山の中であればそこら辺に生えている立木に立てかけられるので、スタンドがなくてもあまり困ることはあまりない。しかし、今シーズンのオーストラリアでは、人工物や立木などが一切ないところを走ることが多いと思われるので、スタンドがないと困ることになるだろう。
荷物を満載した自転車を地面に寝かせると、キャリアやフレームなどあちこちに負荷が掛かるのでなるべくやりたくない。かと言ってフレームを傷つけたり、重たくなるスタンドは付けなくない。本当におっさんはワガママだな。
そのため、自転車を支えるつっかえ棒を自分で作ることにした。
自転車用スタンド(つっかえ棒)の自作
素材のトレッキングポール
つっかえ棒に使用する素材は、以前みちのく潮風トレイルを歩いている最中に転んで曲げてしまったトレッキングポールの片割れ。
自分で修理しようとバーナーで炙ったり、バイスに挟んで元のように真っ直ぐにしてみたのだが、一度曲がった中空のポールを元通りに戻すのは素人では無理だった。だいたいは真っ直ぐになったものの、伸縮させようとすると引っかかりがあり、操作が重たくて使い物にならなくなってしまった。
自分で直そうとはせずに、曲がった部分だけ交換すれば良かったのだが、変な虫が騒いでまともな部分も炙って曲げてしまいダメになった。
だが、こんなこともあろうかと、捨てずにとっておいたのだ!
トレッキングポールは定番のブラックダイヤモンドのトレイル。1ペアで500g弱とかなりの重量があるが、丈夫で年中使える非常に使い勝手のいいポールだ。これなら荷物を満載した自転車を支えるのにピッタリだ。
以前、トレイルランニングポールをつっかえ棒として使用したこともあったのだが、長さ調節できないことに加えて強度が全く不足していて、全然ダメだった。軟弱なトレランポールでは、荷物満載の自転車を支えきれないだろう。
ポールは3分割の伸縮式となっている。
スタンドにするにしてもかなりの長さがあるので、重たいグリップ部分は除くことにする。
このポールはフリックロックといって、固定・解除の操作がしやすいロック機構が搭載されている。手袋をしていても操作しやすい。
現行版はフリックロック2にバージョンアップされていて、機能はそのままに小型化されている。
スタンドの自作
グリップ部分を外したポールを自転車に当ててみる。
フレームに負荷がかからないようにトップチューブのシートポスト側にした。
ポールの先端には、物置に転がっていた塩ビパイプのエルボを挿してみた。
なにか使えそうな素材がないか物置を探したところ、このエルボが出てきた。
エルボの他にT字も出てきたが、いろいろ検討して軽くてシンプルなエルボを採用することにした。
ポールの上側。
グリップ部分を抜くと、パイプの先端にプラスチックパーツが付いている。
角度を変えてもう一枚。
見た感じかなり弱そう。こちら側を塩ビのエルボに挿す。
電動工具は煩くて嫌いと言いつつも、この卓上グラインダーは結構使っている。
奥から出してきて作業台に載せてクランプで固定する。そのまま置いただけだと、振動で動くので危ない。
グラインダーを使う時はカスが飛ぶので、メガネをしていても保護メガネは欠かせない。
トップチューブのRに合わせてエルボを削った。
右側は始めにやった失敗作。
エルボを削って強度が落ちたように見えるので、補強のために直管の塩ビ管を挿しておく。
もちろんこれも削る。
直管の加工が済んだところで、エルボの長さに合わせてノコギリでカットした。
うむ、初めてにしては上出来だな!
おっさんいつもの自画自賛だ。誰からも褒めて貰えないので、自分で自分を褒めまくる。
もの作りでは意外に重要。
角度を変えてもう一枚。切り口がだいたい面一になっているな。
各部のパーツの加工が済んだところで、組み立てを行う。
もうここまで来たら簡単だ!
今回使用する接着剤は、セメダインのスーパーX。最近ホームセンターで安売りされていたので、試しに購入した接着剤なのだが、接着力が強くて弾力性があって何でもくっつき、最近のおっさんのお気に入りとなっている。(以前は馬鹿みたいにG17ばかり使っていた。)
硬化時間はかなり掛かるが、安くて強力なので非常に気に入っている。
ポールとエルボの径が合わないので、ポールの先端にビニールテープを巻いてエルボの内径に合わせる。先に付いていたプラスチックパーツは不要なので削った。
角度を変えてもう一枚。
スーパーXをたっぷり塗って、硬化し始めたところでくっつける。
あとは一晩安静にしておく。
躓いて転ばないように上の本棚の間に挿しておく。
物置内は足の踏み場もないほどものが散らかっている。いつものことだ。
一晩経って接着剤がだいたい硬化したところで、実際に自転車を支えてみる。
コンクリート上でも先端のゴムキャップが滑り止めとなって安定している。
後ブレーキは自作のパーキングブレーキシステムでロックしてある。
そのままつっかえ棒を付けただけだと非常に不安定。
このつっかえ棒はパーキングブレーキと同時に使って始めて機能してくれる。
ロックが後ブレーキだけだと、ハンドルがブレた時につっかえ棒を支点に動いて倒れることがある。
そのため前ブレーキもロックしておくと万全だ。
エルボのRがトップチューブにピッタリ。おもわずおっさんニンマリ。
少しずつ削った甲斐があった。
うむ、満足な仕上がりだ!
ただ、このままだと多少滑りやすい。
そこでビニールテープを巻いてみた。
端は剥がれて来ないように端は瞬間接着剤で止めておいた。
ビニールテープがいい感じに滑り止めとなってくれたぞ!
よし、完成だ!!
2段伸縮式の自転車用つっかえ棒。
重さは先端のゴムキャップ付きで162g。縮めた状態で長さは約55cm。つっかえ棒の他に、タープのポールとして、しつこい犬を追い払うためのお仕置き棒としても使える。縮めた状態でなら、かなりの打撃を与えることができる。コイツでぶん殴ってやったら一目散に逃げてゆくことだろう。
自作スタンドのテスト
後日、フル装備でのテスト走行時に使用してみた。
結果は良好。
荷物を満載している状態にも関わらず、多少しなるだけで全然ビクともしなかった。
自転車が重たい方が滑りにくくて逆に安定するような気がする。
これで木のない砂漠だろうと、どこでも好きな場所に自転車を停めることができる。
記念撮影でも大活躍してくれることだろう。
通常走行時は、このようにトップチューブに付けておく。
いつでも使えるようにという配慮もあるが、55cmとかなりの長さのため、付ける場所は限られる。
伸縮するショックコードにコードロックを付けて前後2箇所で固定する。
これなら簡単につけ外しできる。
つっかえ棒は軽いため、すぐに伸びてしまうことはない。
実際に使った感想
実際に現地で使ってみると、強度は十分で伸縮しやすくて非常に便利だった。
想像したとおり、乾燥地帯の荒野ではガードレールなどの人工物はなく、休憩するときや記念撮影する時に大活躍した。パーキングブレーキが後輪だけの始めのころ、前輪が動いてバランスを崩して倒れたしまったことが何度かあったので、途中で前輪にもパーキングブレーキを装備した。それからは自作スタンドを使用している時に倒れてしまうことはなし。
地面が砂地の時に先端が地中深くに埋まってしまい、スタンドを引き抜く時にゴムキャップが外れてしまった。それ以来むき出しの石突きのまま使用していたが、滑りやすいコンクリート以外では特に問題はなかった。
収納時はトップチューブに付けていたが、走行時でも邪魔になることはなくいい感じだった。
オーストラリアで半年間使用した自作スタンド。
丈夫なトレッキングポールなだけあって、壊れることなく最後まで使用し続けることができた。
先端の石突きのようす
滑りやすいコンクリート以外ではグリップ力がある。予備のゴムキャップを持った方が良かったかもしれない。
フリックロックの操作は非常にやりやすい。伸縮式のトレッキングポールだと、傾斜や地面の地質に合わせて長さを調節することができる。
エルボに巻いていたビニールテープが少し剥がれてきたくらい。
あとでまたテープを巻き直しておくことにする。
他のサイクリストのスタンド
せっかくなので、ここで他のサイクリストのスタンドを紹介したい。
これはポーランド人のスタンド。よく見ると前にも付けてあってダブルスタンドになっている。
後ろのスタンド
既製のスタンドは、BB付近かチェーンステーのエンド付近につけるタイプが多い。これは後者。
前のスタンド
ただ、後ろのスタンドだけだと、安全に自転車の重量を支えることは難しいので、前にもスタンドを付けてある。フロントキャリアに金具を使用して取り付けている。ヨーロッパの右用スタンドを左側に付けると、前側に跳ね上げるようになる。これだと、前後に自転車が動くことはなし。
彼はスタンドの他に犬撃退用のお仕置き棒を持っていた。
丈夫な棒に自分でロープを巻いて握りやすくしている。
こちらは日本にも走りに来たことがある世界一周中のフランス人サイクリスト。夫婦おそろいで鉄製松葉杖をスタンドとして使用している。長さ調節出来て丈夫なのがとても良いとのこと。先をサドル下に当てて使用している。
この他にサイクリストの定番のスタンドと言えば、そこら辺に落ちている木の枝で作ったもの。現地調達できて、不要になったら気軽に捨てられる。ただ、ものによっては重量があったり、強度が不足していることがあるので注意が必要だ。
今回オーストラリアで自作のスタンドを使用してみてすごく便利だったので、今後も使い続けていくことだろう。野良犬がいるところでは非常に頼もしい。オーストラリアにはディンゴと呼ばれる野生の犬の様な生き物がいて、荒野でキャンプしている時にディンゴがテントの周りを徘徊したことがあったが、頼もしいスタンドのおかげで安心して休むことができた。
多分、このスタンドは一生もの。むふふ。。。