【西日本ツーリング2020】枕崎でつかの間の休息

こんにちは。からあげです。

 

九州で雨が多い時期は夏から台風シーズンにかけてまでと思っていたが、実際には違っていた。2020年の冬はやけに雨が多かった。それを確かめたくて地元の方に聞いてみると、みな口を揃えて雨が多いと言う。これも地球温暖化による気候変動の影響なのだろうか。

枕崎に到着した翌朝、激しい土砂降りの雨になった。小降りになったすきに、外に出てテントの各部をチェックする。

おかしい。水はけのよい場所にテントを張ったというのに今回も浸水した。

ついうっかりして初歩的なことを忘れていた。グランドシートがテント本体からはみ出ていたのだ。これでは浸水しても無理はない。

私のテントは老舗のテントメーカー「アライテント」のエアライズ1。軽量コンパクトな山岳用テントで自転車旅にも適している。
底面の保護と防水性能を向上させる目的で、常時別売りのグランドシートを使っている。純正品だけあってピッタリのサイズなのだが、凸凹のある地面だときれいに張れずグランドシートがはみ出ることがある。
横から吹き込んだり、フライシートから落ちたりした雨水が、テント本体とグラウンドシートに隙間に入り込むと、いくら防水性能の高い生地でも浸水してしまう。

 

速乾・吸水性のあるのマイクロファイバータオルで水を吸い取ったあと朝食を作る。
一晩浸け置きした玄米を炊く。炊飯中に味噌汁用のクッカーを重ねておくと、中の水が温められて多少の燃料節約になる。

水たまりができた芝生の広場。一時は一面水浸しだった。
土地を切り開いて造ったキャンプ場は水はけが悪いところが多く、大雨が降るとたいてい水浸しとなる。寝心地が悪くて嫌われる傾斜地は、水はけがよくて雨天ではそこそこ快適になる。

そのあと天気は急速に回復して晴れ間が覗くようになった。
テント内の濡れた荷物を出して広げて乾かす。

マットを外に出して日向ぼっこしながらキンドルで読書する。

外出する時はフライシートが少しでも傷まないように、自転車カバーを掛けておく。
紫外線は全てのものを劣化させる。こうしておくと多少は違う。自転車を停める時はできるだけ日陰にしたり、自転車カバーを掛けたりするなど、日頃の細やかな気遣いがのちのち大きな違いとなって現れる。

キャンプ場の林間サイト

森の中にもテントを張れるスペースがいくつかある。南東の強い風が吹く時は林の中に張った方がよい。それでもダメな時はテントを撤収してカッパを着て物陰に避難する。それだともはやキャンプとは言えないが。

火の神公園周辺を散策する。

公園一番奥の海を見渡せる小高い場所に戦艦大和とともに沈んだ乗組員たちの鎮魂碑が建てられていた。

自転車で枕崎市街までやって来た。
やはり平坦な道は走りやすい。疲れがとれたうえに荷物が軽いということもあってスイスイ進む。
やって来たのは薩摩酒造花渡川蒸溜所明治蔵。明治時代から続く酒蔵を見学することができる。薩摩酒造は「さつま白波」という芋焼酎をはじめ麦焼酎、米焼酎、発泡酒なども造っている。

以前酒を飲んでいたころは、薩摩酒造の中では神の河(かんのこ)が好きだった。だがそれも遠い昔のこと。さつま白波は辛口の芋焼酎で口当たりはスーパードライ。ちびりちびりとストレートで飲んでいた。

薩摩酒造花渡川蒸溜所明治蔵

営業時間 09:00~16:00
休館日  12月31日、1月1日
入館料  無料

 

一歩酒蔵のなかに足を踏み入れると、むっとした焼酎の臭いが漂っている。しばらくすると酒の蒸気だけで酔ってしまい、妙にハイテンションになる。
見学は自由。順路の従って見学してゆく。

将来は立派な酒飲みになってくれることだろう。

大きなカメが並んだ空間。

こちらは大きなタル。

中には水が流れる日本庭園風の空間もあり。
飛び石伝いに奥へと進む。

木造の螺旋階段を上ってゆく。下を見下ろすと目がくらむほどの高さ。

最上階の展望台からは枕崎の町を一望できる。
花渡川の向こう側が町の中心部。

ある日、町に出かけてみると、駅伝のため道路に交通規制が敷かれ一時通行止めになっていた。
地元の人に混じって私も応援することにした。

奥の方からさっそうと走ってくる選手たち。町の人の応援を受けながら駆け抜けて行った。

このあと町の図書館に行って本を眺めていると、「聖 天才・羽生が恐れた男 」という漫画本が目に留まる。面白くて読み出すと止まらなくなった。雨でもカッパを出かけて行って全巻読んだ。この漫画の影響で、人生何度目かの将棋ブームが訪れる。

 

ある日、漁港で朝市が開かれたので行ってみることにした。

当日の昼前に着いたのだが、すでにもぬけの殻だった。朝市が行われていた痕跡はなく、ただ屋根付きの空間が広がっているだけだった。これにはガッカリ。残り物を安く買えるかもと期待していた。

雨は降ったり止んだり。いっこうに安定した好天がやってくる気配はなし。
テント内に引き篭もっていて感じたのは、ここ最近強い北西の季節風が吹かなくなったこと。以前は密度の濃い縦縞の等圧線が見られたが、最近はアメーバ状の気持ち悪い等圧線が見られるようになった。

運動不足にならないように、雨の合間に公園内を散歩する。
立神岩はどことなく厳かな雰囲気を漂わせていた。

私の野宿生活を支えるテント。
雨風遮るテントと体温を保温する寝袋、多少の金さえあれば、野宿生活はできる。
だが、ただ単にテントで野宿生活をしていれば満足というわけではなく、楽しみながら生活したい。ここ、火之神公園キャンプ場は町へのアクセスが良くて快適なのだが、私の心を惹きつけるものが欠けている気がする。

ただ漫然とその日暮らしをするだけなら、ほかの場所でもできる。屋久島と種子島での滞在が長かったためか、私は無性に移動したかった。移動生活は毎日が単調になることはなく、新しい発見に満ちている。今の私が求めているのは移動生活。安定した定住生活ではない。

それとも本来向き合うべきものから、ただ逃げているだけなのだろうか。

キャンプ場の誘惑を振り切って、雨上がりの道路を走り始めた。
朝焼けに染まった東の空が美しい。

天気予報では一時的に晴れるらしいが、そんなことは関係ない。ただ先に進みたい。

 

おわり