エポキシパテで割れた鋳物製の万力(バイス)を修理する

こんにちは。からあげです。

 

道具はこまめに整備して使えば、末長く使うことができる。それこそ、孫の代、ひ孫の代までも。いや、モノによっては1000年、2000年と保つだろう。ちょっと壊れたからといって、捨ててしまうのは勿体ない。修理は慣れると驚くほど簡単だ。ダメでもともと、やってみて損はない。

道具の整備や修理などに絶対に欠かせないのが万力。しっかり固定して作業性を高める。
サビで固着したネジでも、万力で固定して作業すると、あっさり緩むことも多い。嬉しさのあまり思わず「万力様」と呼びたくなる。

自転車の整備をしているところ。
強く締め付けられたチェーンリングを外すため、万力でしっかりと固定してから左手でナットを固定して右手でネジを緩める。

万力で固定すると両手が使えるようになることもメリットの一つ。

私の生活に欠かせない万力は、物置入り口の屋根の下に置いてある作業台に取り付けてある。
万力は作業台とセットで使用するのが基本。さらに作業台は万力よりも重たくなければならない。
横から雨が吹き込んで傷んできたので、作業台と万力を手入れすることにした。

これが愛用している万力。以前、親父がどこからか入手してきて取り付けたもの。
サビが浮いて見た目は悪いが、重量があって使い勝手はなかなか良い。こうした道具はある程度の重量が必要だ。

ボルトナットを緩めて万力を外したところ。
近頃、グラつくようになっていたのが気になっていた。

この際、サビ落としのついでに分解整備してみる。

金属のサビ落としには、硬めのワイヤーブラシと柔らかめの真鍮ブラシがあると便利。
しつこいサビもブラシでゴシゴシ擦ってやるときれいに取ることができる。
木製の柄のものは安価だが、狭い場所では使いづらい。ほかに柔らかい塩ビ製ブラシや先曲がりタイプもあるので、用途によって使い分けて欲しい。

 

万力をバラバラに分解したところ。
分解するとガタツキの原因が分かった。

シャフトを支える金物が折れていた。
万力は型に溶かした鉄を流し込んで造った鋳物。この金物も鋳物製だった。

手元に溶接の道具はなし。町工場に電話して聞いてみると、「鋳物製は溶接修理できない。」といって断られた。たしか以前そう聞いたことがある。

ネットで検索してみると、鋳物でも溶接修理できないことはないが、高度な技術が必要とされるようす。持ち込んで簡単に修理というわけにはいかないし、たかが万力修理のために高額な料金を支払う気もない。

そこで、以前船に乗っていた時に穴の空いたパイプの修理と同じ、エポキシパテによる修理方法を試してみることにした。さいわい金物は台座の部分が割れているため、パテによる修理は可能のように思われた。

エポキシパテによる修理は、塗装と同じく下地処理重要
ワイヤーブラシで金物取り付け部分のサビや汚れを丁寧に落とす。

きれいにペンキとサビを落としたあと、洗剤を使って洗って油分を完全に落とす。
表面はザラついており、ヤスリで凸凹にする必要はなしと判断した。(表面が滑らかだとパテが剥がれやすいので、ヤスリがけしてあえて表面を荒らしておく必要あり。)

乾かしたあと、パーツクリーナーを吹きかけてからウエスで磨き上げる。
細かい隙間にはまだ油分が残っていた。

これでヨシ。下準備は整った。

割れた金物を接着してからパテで隙間を埋めるようにして取り付ける。
接着剤はあくまで仮留め。パテを盛りやすいようにあらかじめ付けておく。

これは衝撃、水、熱に強くて弾力性のある強力な接着剤。セメダインスーパーX。近頃私が愛用しているもの。剥がれた靴底や取れてしまった鍋のフタの取っ手、割れたプラスチックケースなど、修理した数々の実績がある。

弾力性があるのがポイント。瞬間接着剤はすぐに固まって強力だが、固くて弾力性がないため案外脆い。衝撃を与えると、ポロッと剥がれてしまうことがある。その点、このスーパーXは弾力性があって衝撃にも強い。速乾タイプもあって用途によって使いわけできる。

 

接着剤で固定したところ。

接着面両側に塗ってから、5~10分程度乾燥させたのち、強く押さえつけるようにして貼り合わせる。約1~2時間で動かなくなり、24~48時間で実用強度に達する。
できれば丸一日放置しておくのが望ましい。

横から見たようす

接着面の凹凸を埋めるために、接着剤はあえて多めに塗っている。

セメダイン エポキシパテ金属用

乾くと金属のように固まり、穴あけ加工や塗装などが可能になる。
船の穴の空いたパイプは、とりあえずコイツで穴を塞いで修理しておくと、次回ドックまでは持たすことができる。(通常年1回は整備のため、ドック(船の修理工場)に入る)
エポキシパテは100円ショップでも売られているが、修理後長く使うならしっかりした品質のものが良い。

作業のしやすさをとって、A剤とB剤が一つになった本製品を選んだ。ほかに木部用や耐熱用などもある。

 

パッケージから出したところ。手荒れを防ぐビニール手袋が付属する。

フタを開けて中身を取り出したところ。
端にはアルミシールが付けられている。

シールを剥がしたところ。金太郎飴のようにA剤とB剤に分かれている。

カッターナイフで必要な分量だけ切る。

側面のビニールを剥がす。

そしてよく練り合わせる。私は素手で行っているが、肌荒れを防ぐために手袋をした方がよい。

A剤とB剤が完全に混ざり合うと、グレーっぽくなる。
硬化時間約3分。写真を撮りながらゆっくり作業している場合ではない。
化学反応が始まるとパテが温かくなってくる。もうすでに硬化へのカウントダウンは始まっている。手早く練り合わせて接着させる必要がある。固くなってからでは手遅れ。

練り合わせている途中で硬化してしまったパテ。やり直し。

今度はすばやく練って金物の台座部分にパテを盛り、金物を本体に取り付ける。

金物を本体に取り付けたようす。

パテを盛ったあと、濡れた手で撫でてやると表面が滑らかに仕上がる。引っかからないように余分なパテを取り除いておいた。
金物は台座がテーパー状になっていて、上にすっぽ抜けてしまうことはなし。割れた場所が良くて本当に助かった。

反対側から見たようす。
指で押さ付けて隙間にパテを詰め込む。これで二度と分解はできなくなった。今度壊れたら買い替えだ。

残りのパテは端にアルミシールを貼ってケースの中に入れ、直射日光の当たらない場所で保管する。今回の使用量はおよそ1/3。まだ修理1,2回分の量は十分にある。

一晩経った翌日。
まだメーカーが推奨する実用強度には達していないが、手で触ると表面はすでにカチカチ。
力を掛けなければ問題ないだろう。

反対側から見たようす

ペンキを塗ってから組み立てることにした。

これは亜鉛入りのシルバーペイント。塗りムラができにくくキレイに仕上がり、亜鉛入りで錆びにくい優れもののペンキ。金属製のものなら、コイツを塗っておけばまず間違いない。

 

ネジ山部分を除いてペンキを塗ってキレイにした。
これで当分の間、サビは出てこないだろう。

ペンキが乾いたのち、元通り組み立てて作業完了。ふう、以前のような輝きを取り戻してくれた。

 

その後、修理して半年近く経つが、全く問題なし。
以前のようにハンマーでどつくことは控えるようにしているが、相変わらず強く締め付けている。(ギッチギチに)それでも盛ったパテは剥がれることはなく作業が捗っている。
捨てずに修理して本当に良かった。愛着が湧いてますます大事にしたくなる。

この万力には今後も頑張ってもらうことにしよう。

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