北海道自転車ツーリング中のベアキャニスターの運用について

こんにちは。からあげです。

 

ベアキャニスターを使用する目的

ベアキャニスターとは、クマに食料を奪われないようにするための丈夫な容器のこと。
非常に丈夫な容器で、クマが叩いたり噛んだりしたくらいではビクともしない。クマの牙や鉤爪が引っかからないようにノッペリした作りとなっている。

ただ気をつけなければならないのは、容器自体には完全に密閉して匂いを漏らさない機能はないということ。人間の嗅覚の30,000倍はあるとされるクマの敏感な嗅覚は、遠く離れたあらゆるものの匂いを嗅ぎ分ける。仮に密閉出来たとしても、気休めに過ぎない。

クマの生息域でテント泊する際は、ベアキャニスターに食料、クッカー、日焼け止めクリームなど匂いのするものを全て入れて、テントから離した場所に置いておく必要がある。

クマは深夜、人間が寝静まった頃を見計らってやって来る。迂闊にもテントの中に食料を置きっぱなしにしていたら、テントの周りを徘徊しだすかもしれない。お腹を空かせた熊は、刺激的な匂いのする人間の食べ物を我慢することができない。クマだって人間が怖い。しかし、食欲には勝てない。運が悪いと寝込みを襲われて命を落とすことになる。

襲われなくても、やって来る人間が度々食料を奪われていれば、クマは人間と食べ物を関連付けて学習して、人間を恐れずに逆に近寄ってくるようになる。

そのようなヒグマは危険な個体と判断されて、ハンターによって射殺されてしまうことだろう。
人間によって住処を奪われて奥地へと追いやられたあげく、さらに命まで奪われる。そんな理不尽なことがあっていいのだろうか。死傷者や不幸なヒグマを生み出さないためにも、クマの生息域ではより慎重な行動が求められる。

 

自転車で登山するためにはベアキャニスターは必要だった

今回、北海道を自転車でツーリングするにあたって、北海道全域に生息するヒグマ対策が欠かせなかった。自転車は車と違って、身を守る丈夫な箱がないため、常にヒグマの危険にさらされる。
それでも交通量のある道路を通行するだけであれば、ヒグマを見かけることはないだろう。しかし、人気のない山奥の道を走るとなると事情が異なってくる。

普段の生活でそれほど人間と接触する機会の少ない山奥のヒグマは、人間への警戒心が弱くなっていることだろう。そのため、森の中の獣道を通らずに、歩きやすい林道を通ることもあるはずだ。そんな時、至近距離でばったり出会ってしまったら、反射的に襲われる可能性がある。

今回初めての自転車での北海道ツーリング。自転車を漕ぐだけではなんだか物足りないので、積極的に登山もしてゆきたいと思った。
3年前、車中泊で北海道を周ったことがあり、登山口へのアプローチで、長い未舗装の林道を走らなければならないこともあると知っていた。

移動距離が長い北海道では、前日車を走らせて登山口に向かい、そのまま登山口で仮眠して、夜明けとともに出発するスタイルをとることが多い。そのため、登山者の利便性を考慮して地元自治体が登山口に山小屋を整備することもある。しかし、それは一部の登山口のみ。

さて、どうするか?

前日に登山口まで行ってテントを張り、翌日朝一番で出発する方法がいいだろう。遅い時間から自転車で行くと、登山口に着くまでに日が暮れてしまうかもしれない。
テントを張るのはいい。ヒグマが出て来なければ!

根っからの心配性の私は、常に最悪の事態を予想して慎重な行動をしている。ヒグマの被害が数多くありそうなイメージのある北海道だが、実はヒグマに襲われて命を落とす人は、毎年一人いるかいないかの僅かな人数となっている。相当運が悪く無ければ、死ぬことはない。しかも襲われる人は山菜採りの人が多い。

ヒグマに襲われるより、交通事故に遭う可能性の方が遥かに高いとみていいだろう。それでも、私の頭の中には、三毛別の山村を襲った凶暴なヒグマやカムイエクウチカウシ山八ノ沢のカールで大学生を執拗につけ回って襲った粘着質なヒグマが住み着いていて、ヒグマのことを考えると夜も眠れなくなることがある。

そんな臆病な人間が人気のない山奥の登山口で、ヒグマ対策をせずに寝れる訳がない!

テントで寝る時は、手元にベアスプレーを用意しておいて、食料はベアキャニスターに入れてテントから遠く離して置いておく。このようにしようと決めたのだった。

 

使用するベアキャニスター

今回使用するベアキャニスターはBearVault社のBV-500というもの。
去年、アメリカのPCTを歩く時に購入したものだ。出国前に本場のAmazon.comから取り寄せた。この他にBushwacker Backpack & Supply社のベアキャニスターも持っているのだが、BV-500より重たく、蓋を開ける時にコインが必要なため、PCTで使って信頼性のあるBV-500を使うことにした。

Counter Assault Bear Keg クマ対策フードコンテナ(ベアキャニスター)
こんにちは。探検家のからあげです。 今回はヒグマ対策用グッズ、フードコンテナを紹介します。 北海道に行くので、購入しました。 商品を実際に手にとって各部をじっくりと確認しました。 その時、いろいろ分かったことをブログ記事にて報告します。 ヒグマ対策の一助となれば幸いです。
BearVault ベアキャニスター BV-500
PCTをスルーハイクするためにBearVault社製ベアキャニスターBV-500をアメリカAmazonで購入しました。 軽量で道具いらずで開けられる仕組みで気に入りました。 製品の詳細をおっさん流に丁寧に説明しました。

 

右の黄色いベアキャニスターがBushwacker Backpack & Supply社製のもの。重たいが、作りはより頑丈そうに思える。
左が今回使用するBearVault社のBV-500。軽くて道具いらずで蓋を開けられるところが気に入った。

上から2つを比べたようす。

Bushwacker Backpack & Supply社製のものは、蓋を開ける時にコインが必要。
しかし、作りは非常に丈夫そう。

一方のBearVault社のBV-500は、ロック機構のポッチ2個を指で押さえて、蓋を回すだけで開けられる。この差は大きい。

さらに優れた点として、半透明で中身が見えること。
上から覗き込まなくても、横から見ればだいたい中身が分かる。

ただ注意が必要で、半透明で中身が透けて見えるということは、むき出しのまま日向に置いておくと中身が加熱させられるということ。痛みやすい生物を入れている場合は、日中は木陰に置くようにする。

ベアキャニスターで一番気になるのは重さだが、容量もかなり重要だ。小さくて食料が入り切らないようであれば持ってゆく意味がない。このBV-500は、フリーズドライなど嵩張らないインスタント中心の食料を詰めれば、5日分をギリギリ詰め込むことができる。日常生活で食べているような嵩張る袋ラーメンやレトルトごはん、カレーなどを詰めると、せいぜい3日分が限界となる。

ベアキャニスターには少なくとも全部の食料を入れる必要があるので、その点を考慮して計画を練ることになる。

リンクを貼り付けておくので、ベアキャニスターの運用方法に興味がある人は読んで頂きたい。

PCTでのクマ対策~ベアキャニスターの運用報告など
こんばんは。からあげです。 ここ最近、あれこれ資料やメモを読んで頭の中を整理していた。そしてようやくひとつの記事としてまとめることができた。PCTを歩き終えてからすでに2月経過している。記憶が確かなうちにまとめておきたかった。PCTでクマ対

 

自転車への積付け

おっさんを悩ませたのは、ベアキャニスターの自転車の積付け方法だ。
嵩張る円筒形のため、どこに積んだらいいのか分からない。
リアキャリアの天板には、寝る時に敷くマットを丸めて縛るのでダメ。残る場所はフロントキャリアの天板しかなかった。

そこでフロントキャリアの天板に積みやすくなるように、100均の金網を半分に切って結束バンドで止めたのだった。

あれこれ向きを変えみる。

私の自転車には、ハの字で末広がりになった(前から見て)通称ランドナーバーというドロップハンドルが取り付けられているが、ベアキャニスターをスッポリと間に嵌めてしまうと、ブレーキが操作出来なくなる。

ブレーキレバー周辺のクリアランスが狭く、ブレーキレバーを握れない。

もう少し高さが低ければ、ジャストフィットしたのだが。

横でダメなら縦にしてみる?

うむ、座り心地はいいのだが、視界の妨げになる。しかも、空気抵抗が増えそう。

ダメだこりゃ!(いかりや長介風)

試行錯誤のうえ、最終的に落ち着いたのが蓋の方を前にして横積みする方法だった。

ただ、これだと容器が安定しない。下に動かないように何かを噛ます必要がある。

道具には複数の役割を持たせる。単機能より多機能。それが軽量化の基本となる。

今回の長旅では、大事な自転車を雨から守るために自転車カバーを持ってゆくことにした。これを下に敷いて縛れば、いい感じになる。走行中自転車カバーを使うことはない。

ヨシ、これで行こう!

出発直前になって、ようやく積付け方法が決まったのだった。

ツーリング出発当日

フル装備を搭載した自転車。ベアキャニスターを縛ってある。
なかなかいい感じではないか!

フロントのズーム

横方向だけでなく、縦方向もロープで縛って、前に飛び出さないようにした。100均金網と自転車カバーのクッションがいい感じにベアキャニスターを包み込んでいる。

前から見たようす

ハンドルとブレーキレバーの間には、十分なクリアランスがあって、ハンドルとブレーキ操作の妨げになることはない。

縦のロープをズラして蓋を開けて、中身を取り出すことができる。
道路脇に自転車を止めて休む時に、こうして食料を取り出していたのだった。

ただ、この積付け方法。リアブレーキのアウターワイヤーに干渉して、急な曲がり癖を付けてしまった。ブレーキ操作には問題なし。

アウターワイヤーのカバーが裂けて中が見えるようになったため、ビニールテープを巻いて補修した。

昔ながらのランドナースタイルだと、アウターワイヤーをブレーキレバーの上から出すため、このように干渉することはない。昆虫の触角のように飛び出ていると邪魔になるので、Panasonicはハンドルバーにケーブルを這わしたに違いない。ただ、こうすると、今度は荷物と干渉するようになる。
ソフトタイプのフロントバッグの使用を想定してのケーブルの取り回しだろう。

 

ベアキャニスター運用中のようす

これからは、実際にベアキャニスターを運用していた時のようすを説明する。事前に想像していたより役立ったような気がする。本来の目的のクマよりも、カラスやキツネに効果を発揮した。

 

東大沼キャンプ場

初めて役立ったと思ったのは、道南の東大沼キャンプ場に泊まった時。大沼湖畔にある無料のキャンプ場で、函館から近くて雰囲気がいいため、シーズン中は多くのキャンパーで賑わう。
私は人気を嫌って一番奥にテントを張った。

いちおう、寝る時はテントの外にベアキャニスターを置いていた。

キャンプ場周辺にはヒグマの気配はなかったが、カラスが徘徊していて、常に人間の食べ物を狙っていた。何か視線を感じると思って振り向くと、狡賢そうなカラスが目をキラキラさせてこちらの方を見ていた。

これはイカンと思って、食べ物を外に放置することはせずに、テントの中に入れておくか、ベアキャニスターに入れておくかして外出した。

その甲斐あって、カラスに食べ物を奪われることは一度もなかった。

クマの他に気にかけていたキツネは、私のテントの周囲は彷徨くことはなかった。

 

積丹岬の性悪カラス

ベアキャニスターの運用中とは違うが、積丹(しゃこたん)半島の積丹岬に寄った時のこと。
いつものように邪魔にならない場所に自転車を止めて、岬の遊歩道を散策して自転車に戻って来てみると、近くの食堂のおばさんが出てきて、さっきカラスがカバンを漁っていたよ!と教えてもらった。なんでも、付近を通りがかった人がカラスを追い払って、しっかりとカバンを閉めてくれたらしい。

にわかに信じ難かった話だが、ずる賢いカラスのことだから、個体に寄ってはありえるかもしれない。

これが自転車に付けているオルトリーブ社のサイドバッグ。
小さいオレンジのカバンがフロント用、大きいグレーのカバンがリア用となっている。

口を巻いてプラスチックバックルで留める仕組みとなっている。
ファスナーと違って耐久性があり、雨水が侵入する恐れはない。

カラスは器用にも、プラスチックバックルを外して、カバンの中に入れていた食料を奪おうとした。出発前、私はスティックパンを何本か食べて、残りのパンをカバンに仕舞っていたのだった。
そのようすをヤツは見ていた!

途中で会った他のサイクリストも、積丹岬の性悪カラスにカバンを漁られて食べ物を盗られそうになったと言っていた。

 

礼文島 緑ヶ丘公園キャンプ場

礼文島の緑ヶ丘公園キャンプ場にて

ヒグマはいないとされる礼文島だが、カラスやキツネは数多く生息している。
キャンプ場周辺には数多くのカラスが住み着いていて、朝早くから大合唱を始めるので、目覚まし時計なしでも寝坊することはない。

キャンプ場周辺でキツネは見かけなかったが、カラスはそこら中にいた。常に警戒して外にむき出しに食料を置いておくことはしなかった。積丹岬での前例があったため、食べ物はカバンに入れたままにせずにテント内に入れるかベアキャニスターに入れるかした。食料はベアキャニスターに入れて外に出しておくことが出来たので、テント内部でゆっくり寛ぐことができた。

 

道東のとあるキャンプ場

とある道東のキャンプ場にて

相変わらずカラスが多数徘徊している。時々キツネの気配も感じる。
民家が近くにあるためか、クマの気配は全くなし。

カラスを警戒して、食べ物はテント内に入れるか、ベアキャニスターに入れるかしていた。
テントに匂いを付けないために、天気が許す限り外で調理と食事を行った。

 

羅臼温泉野営場

羅臼温泉野営場

羅臼岳山麓に位置する緑豊かなキャンプ場。知床峠から下る羅臼の町の手前にあって、周囲に民家はなし。そのため、数多くの野生動物がキャンプ場内を徘徊している。
カラスやキツネ、シカなどの気配をよく感じる。

キャンプ場の山側には、ヒグマ対策のための電気柵が張り巡らされている。
ただ、地面と電気ケーブルの距離が空いているため、キツネは素通りすることができる。これはあくまでヒグマ対策。

キャンプ場から羅臼岳に登った時に見かけたキツネ。
私の前を道案内するかのように歩いていた。

キャンプ場で日中見かけることはなかったが、夜間になるとゴソゴソと音がして気配を感じた。
近くで泊まっていたファミリーキャンパーが迂闊にも前室に食べ物を置いていたため、漁られてそこら中にゴミが散乱していた。

羅臼で泊まった時は、いつも以上に食べ物の管理に気をつけた。
寝る時は食べ物をベアキャニスターに入れて外に出し、入り切らなかった食べ物はバックパックに入れてテント内で抱きかかえるようにして眠った。調理と食事はできるだけ外で行った。

なぜ、それほど野生動物の食料漁りを恐れるのか?それはキツネがテントを切り裂いて食べ物を漁るからだ。3年前、羅臼岳に登るため、登山口手前のこのキャンプ場を通り過ぎた時、ボロボロに引き裂かれたテントを見たことがある。キツネは行儀よくファスナーを開けて、食べ物だけを奪っていくことはしない。

無残に引き裂かれたテントはぐちゃぐちゃにされて、荷物やゴミなどがそこら中に散乱していた。おそらくキツネの仕業。テントを張りっぱなしにしてどこかに出かけたため、被害に遭ったようす。あまりに可愛そすぎて被害状況の写真を撮るのを忘れてしまった。登山を終えて戻って来た時には、跡形もなくファミリーテントは撤収されていた。その後、どうなったんだろう?

 

基本野宿の自転車ツーリング中に、テントをボロボロにされてしまったら、宿泊場所が限定されてしまう。それに軽量コンパクトな山岳用テントは安くはない。キツネなんかに荒らされてなるものか。

寝るときや外出時は、食料はベアキャニスターに入れてテントの外に出して置くのが基本。
テントに匂いを染み込ませないために、外で調理食事をするのも基本。
車と違い自転車は、食べ物を安全に保管しておく場所がない。そのため、ベアキャニスターを持った方がいい。

杜撰な食料管理は後のキャンパーや周辺住民に多大な迷惑をかける。
キャンプ場に行けば、食べ物にありつくことができると学習した野生動物は、以後頻繁に出没するようになる。ヒグマが出るようになれば、キャンプ場はしばらく閉鎖となる。

 

キトウシキャンプ場

釧路市の東、断崖の上にあるキトウシキャンプ場

ワイルド感満点のところで、無料かつサイト内に車両が乗り入れ可能なため、オートキャンパーになかなか人気がある。利用者が多いキャンプ場には、野生動物が付き物。ヒグマとキツネを警戒して、食料はベアキャニスターに入れてテントの外に置いておいた。

 

オンネトー国設野営場

雌阿寒(めあかん)岳の麓、オンネトー湖畔にあるオンネトー国設野営場。

圏外の山奥にあるキャンプ場。野生動物の気配が多く、知床周辺と同じく食べ物の厳重な管理が必要なところ。

ここの管理人さんに聞いたことなのだが、2018年中2件もテントを荒らされる事案が発生したとのこと。1件目はテントの中に食べ物を置いて寝ている時にキツネにテントを切り裂かれたというもの、2件目はテントの中に食べ物を残して登山に出かけて、留守中にキツネにテントを切り裂かれて荒らされたというものだった。

留守中に荒らされるのは仕方がないとしても、夜間寝ている時にも荒らされるとは、いったいどうなっているんだ?キツネがここまで性悪になってしまったのは、以前のキャンパーたちが食べ物を奪われていたからだ。人間の食べ物に味をしめたキツネは、次第にエスカレートしていったのだろう。

天気が良くて蚊がほとんど居なかったこともあり、外で炊事から食事を済ませてテントに食べ物の匂いを染み込ませないようにした。

夜間寝る時と外出時は、食べ物を一切テント内に置かないようにして、ベアキャニスターに入り切らない食べ物は、袋に入れて東屋の梁に吊るしておいた。

吊り下げ用の袋は、ベアキャニスターの収納袋を用いた。
ファスナー付きで開けしめしやすく、ザック固定用のループが付いている。

収納袋に食料を入れたところ。

適度な水平の枝があれば、そこに吊り下げたのだが、あいにくどこにも見つからなかった。

東屋の梁に吊るしたところ。

この方法だとヒグマには無力だが、知能が劣るキツネ程度なら十分だろう。
不便な山奥までやって来るキャンパーに人の食べ物を盗むような輩はいないと思いたい。
目立つ場所に吊り下げるので盗難が心配だが、自転車旅行者にはこの程度の方法しかない。

親切な管理人さんに食べ物を預かってあげると仰って頂いたが、人の手を煩わすのは好かないし、テストするいい機会なので、東屋の梁に吊り下げることにした。

結果は良好だった。

 

白雲岳避難小屋キャンプ場

8月中旬、大雪山系の白雲岳避難小屋に泊まった時こと。

3年前、ようすを見に来たことがあって、サイトの状況を分かっていた。このキャンプ場はアプローチしやすいこともあって人気があり、結構な賑わいを見せている。
ベアキャニスターを用いなくても安全に宿泊できると判断したのだった。

その代りに熊よけの鈴とベアスプレーは携帯していた。

 

ベアキャニスターの意外な使い方

ベアキャニスターは、本来クマなどの野生動物に食料を奪われないようにするためのものだが、丈夫な容器のため、他にもいろいろな使い方がある。

 

椅子として使用する

蓋をキッチリ閉めて地面に置くと椅子になる。
ツーリング中は常にフロントキャリアに縛り付けているため出番はないが、キャンプ地に付いて荷物を下ろした時に椅子として活用できる。

硬くて座り心地が悪いので、あまり私は椅子として利用しないのだが、アメリカのハイカーたちは好んで椅子として使っていた。

 

耐衝撃・防水ケースとして使用する

蓋を閉めれば、防水容器となる。ただ、完全な防水ではないため、ジップロックなどのチャック付き袋に入れて水濡れに弱いスマホなどを収納する。

オルトリーブのバッグが完全防水だったこともあり、今回の自転車ツーリングでは、スマホを入れることはなかった。

その代り、卵運搬ケースとして役立った。
常温保存が可能でタンパク質が豊富、しかも安い。卵は野宿派自転車乗りには便利で有り難い食べ物。試しにやってみたところ、結果は良好だった!

高い耐衝撃性に自転車カバーのクッション性が加われば、ベアキャニスターで運べないものはない。卵を運搬して、この積付け方法の良さを再確認したのだった。

無事に卵を運搬できて喜んだのはおっさんだ。長雨に閉じ込められて、楽しみは食べることくらいしかない。日頃の疲れを卵を食べて癒やした。

 

洗濯桶として使用する

衣類の洗濯は、流水で洗うより、溜めた水に入れて洗う方が節水にもなるし、汚れも落ちやすくなる。このようにベアキャニスターを洗濯桶として使用すると、洗剤を用いなくても十分汚れは落ちる。

ただ面倒なのは、いちいち食べ物を出さなければならないこと。山奥で外に食べ物を出しておくのは、危険極まりないので、洗濯桶として用いたのは数少ない。

 

ストーブ台として使用する

蓋の口を下にして地面に置くと、良好なストーブ台となる。
写真はカートリッジ式アウトドア缶のガスストーブを使用している時のもの。
不安定な砂地の地面でも安定させることができる。

今回の自転車ツーリングで使用したのは、ランニングコストが安いカセットボンベ仕様のガスストーブだったため、ストーブ台として使用することはなかった。
カセットボンベ仕様は横置きタイプとなるため、ガスボンベがはみ出てストーブ台としては使いづらい。

 

一時的なゴミ箱として使用する

これもアメリカのPCTを歩いていた際のもの。
ベアボックス付きのキャンプ場に泊まった時、食料は全てベアボックスに入れて、ゴミ箱として使用した。食べ物のゴミをそこら辺に置いておくと、荒らされるおそれがあった。

今回の自転車ツーリングでは、常に食べ物を中に入れていたため、ゴミ箱として使用することはなかった。
その代り、ゴミはチャック付きの袋に入れて密閉して、できるだけ匂いが漏れないようにしていた。

 

ベアキャニスターが不要になってから

3ヶ月間、北海道各所を周って十分堪能したあと、津軽海峡をフェリーで渡って、自走して家まで帰ることにした。
東北の山深いところでも、北海道ほど食べ物の管理に注意を払う必要はないため、ベアキャニスターは実家に送ることにした。

函館の郵便局前で荷物の整理を行っているところ。

ベアキャニスターに入れる荷物の全て。不要な地図、レシート、メモ帳、細いワイヤー錠など。

嵩張るベアスプレーも送りたかったのだが、内容物に危険物が含まれているため、ゆうパックでの発送は出来なかった。そのため、最後までカバンに入れて持って帰ってきたのだった。

ベアキャニスターは蓋を閉め、蓋が開かないようにテープで止めて、むき出しのまま発送した。
ゆうパックのラベルは蓋に貼り付けておいた。

実家に届いたベアキャニスターに傷みはなし。丈夫な容器なので、多少乱暴に扱ったところで、傷むことはない。梱包に手間がかからないのは、自転車旅行者にとってメリットとなる。

ベアキャニスターを送って身軽になった自転車。

食料庫となっていたベアキャニスターがなくなったことで、食料の搭載スペースが減ってカバンの空きがほとんどなくなったのだった。
ベアキャニスターなしに慣れるまで、食料を買い過ぎてしまい、カバンに入れるのが大変だった。
そんな時は、すぐに食べれるものは食べて処分した。何のために行動食として買ったのか分からなくなった。

 

少しだけ気になったのは、ベアキャニスターを搭載しての操縦性能。ベアキャニスターに荷物を入れ過ぎると、下り坂などでハンドルがブレるようになる。そのため、走行中は軽くて嵩張るものを入れていた。

ベアキャニスターを自転車ツーリングで使った感想

私以外に自転車でベアキャニスターを使用している人間はいなかった。
日本ではベアキャニスターの使用は一般的ではない。

では携帯する必要はないのか?

否。私はあった方がいいと思う。

ベアキャニスターほど頑丈なものではなくても、ホームセンターのコンテナボックスくらいはあった方が安心できる。コンテナボックスは、ヒグマに対しては無力だが、カラスとキツネには有効だ。キチンと蓋を閉めて、そこら辺の石を重しとして載せ外に置いておけば、小動物には荒らされることはない。

2018年の北海道は例年になく雨が多い年で、登山するチャンスが少なかった。そのため、登山口にテントを張って泊まることは一度もなかった。

 

ベアキャニスターは、重たく嵩張るため、自転車には不向きだが、安全な食料保管庫を確保するためにも、ベアキャニスターを携帯したほうがいい。そう私は思う。
今回一度もヒグマに遭遇することはなかったが、途中で頻繁に会って仲良くなったサイクリストは、知床峠付近で一日に2度もヒグマに遭ったという。しかも1回は、危険な子連れの母グマ。突然道路脇の茂みから出てきて威嚇されたそうな。

知床周辺は、野生動物を見ると、すぐに餌を与えたがる低レベルな観光客が多くいるので、身を護る鉄の箱がない自転車は厳重な注意が必要だ。いくらヒグマに襲われる死亡事故は滅多に起きないとはいえ、その滅多にない、事故の被害者になることもありえる。

 

次回、北海道に自転車ツーリングに行くときも、ベアキャニスターを持ってゆくつもり。
もちろん、熊鈴とベアスプレーの基本装備も含めて。

しっかりとした備えがあれば、行動の選択肢が増え自転車での活動範囲も増える。

今後、ベアキャニスターは日本でも目にする装備となるだろう。これは間違いない。

 

おわり