こんにちは。からあげです。
今はナラボー平原西出口にあるNorsemanという町に向かって走っているところ。手持ちの水・食料の関係から、日々ノルマを決めて走り続けている。長かったナラボー平原も終わりが近づくと、なんだか非常に寂しい気がする。強い向かい風に吹かれてボロボロになった時は、こんなところ来るんじゃなかったと思っていたのに。
今朝も昨日のように厳しい冷え込みがあり、自転車カバーが凍っていた。夜、満天の星空を見て冷えると思ったので、しまむらのパッチを履いて眠った。
お陰で寒さで目覚めることはなく、朝まで快適に眠ることができた。しまむらのパッチというのは、四国遍路の時に長ズボンだけだと寒かったので買ったやつ。どんだけ物持ちがいいんだよ、と自分で突っ込みを入れたくなる。
おっさん臭いからパッチは絶対に履くまいと心に誓ったはずだったが、一度履くと快適で手放せなくなってしまった。もうおっさんだから、おっさん臭くても全然構わない。
今朝も出発時は霧に包まれていて視界は100m前後だった。
ナラボー平原に入ってから、よく霧が発生するようになった。
一見するとぺんぺん草しか生えていない不毛な土地のように思えるが、よく観察すると豊かな植生が育まれているのが分かる。そうした植生を支えているのが湿っぽい霧なのだろう。
今日は日が出て30分くらいすると、霧が晴れてくれた。
フリースとカッパのズボン、手袋を着用しての走行。
キレイさっぱり霧が晴れて青空が広がった。
今日に限って無風時間が長い。いつもの時間だと、向かい風が吹き始めている。いったいどうしたんだ?
1時間ほど走ったところで、フリースとカッパのズボンを脱ぐ。ようし、暖機終了だ!おっさんエンジンはポンコツだからな。労ってやらねばならん。
むむ、けしから〜ん!(磯野波平風)
焚き火の後始末をせずに行ってしまった奴がいる。しかも、まだ燃えているではないか!おしっこを掛けて消火しようとしたが、量が全然足りずに消火するには至らず。
今日は風がほとんどないし、このまま燃え尽きるまで放っておいても問題ないだろう。
いやっほ〜。長い下りだ!
ナラボー平原が終わりに近づき、多少のアップダウンが出てきた。平坦ばかりだと本当に飽きてくる。たまには刺激が欲しいね。もっと激しいのが。
むむ、この標識はなんだ?
鉱山から出てきたロードトレイン。3輌編成のやつ。
何だか重たそうに走ってゆくな。どこまで行くんだろう?
疲れた時は無理せずに道端で休むに限る。
しばらくすると、風が追い風に変わる。
旗を付けるメリットは、目立つことのほかに風向が分かりやすいこと。最近、旗が意外に便利なことに気が付いた。
昨日のロードハウスで買ってきた味も素っ気もないタダの食パン。でも食べないより全然マシ。
Cedunaを出て10日以上経つが、全く他のサイクリストに会わない。どうしたんだろう?と思っていたら、向こうから自転車がやって来た。始め幻覚ではないかと思った(疲れているとよく見る)が、本物の自転車だった。
PerthからSydneyに向かって走っている非常にガタイのいい大男で、なんとサイクルトレーラーを引いていた。オーストラリアは道幅も広いし、無補給区間が長いので、サイクルトレーラーの人気が高いように思っていたが、実際は違い10人くらいのサイクリストと会って今回が初めてだった。サイクルトレーラーの魅力はなんと言っても、その積載力。水食料を好きなだけ積むことができ、しかもパッキングが非常に楽。わざわざ重さが左右均等になるように荷物を詰める必要もなく、上から放り込んであとは防水シートを掛けておけばいい。
丈夫そうなトレーラーは重さが10kgくらいありそうだったが、重戦車のようなサイクリストにとっては全く問題にならない重さなのだろう。オーストラリアのサイクリスト界では、パニア派とトレーラー派に真っ2つに分かれているようだが、バイクパッキングという新たな流れが加わり今後さらに面白くなりそうだ。
私は定番スタイルのパニア派でバイクパッキングを多少取り入れている。ハンドルバーバッグやステムドリンクホルダーにその一端を垣間見ることができる。
PanasonicのOJC4にバイクパッキングスタイルで荷物を積載したら、軽快に輪行ツーリングを楽しめそうな気がする。OJC4の真価が発揮されるのは、荷物を軽量化した時のように思えてならない。去年の北海道ツーリングで荷物を満載して走ってみて、なんとなく分かった。
大男のサイクリストと分かれて1時間ほど走っていると再び向こうから自転車がやって来た!まさか1日で2人のサイクリストと会うとは!彼はたぶんポーランド人で、PerthからBrisbaneに向かって走っているそうな。Brisbaneから再び海外に飛ぶようなことを言っていた。
彼の自転車は定番のパニアスタイルで、前後tubesのキャリアにクラシカルなORTLIEBのバッグを付けていた。タイヤはもちろんマラソンプラス。ハンドルは多彩なポジションが取れるバタフライハンドル。飛び出た大型のミラーがよく目立つ。
自転車の装備で一番目に付いたのはダブルスタンド。
後方のスタンドはシートステーとチェーンステー2本に止めて強度をアップしている。シティーサイクルのスタンドと同じ方式。
そしてフロントのスタンドが小径車用のスタンドをキャリアに取り付けている。しかも向きを逆にすることで自転車が固定されるようになっている。それとも右側通行用のスタンドかな?彼に停め方を実演して貰うと、あっという間に前後のスタンドを出して駐輪することができていた。荷物が少なく軽量のため、こうしてスタンドを付けていても、フレームに負荷が掛からないのだろう。
右のリアバッグに取り付けられていた対ディンゴ用の武器。
丈夫な丸棒にロープが取り付けられている。
ディンゴとは犬のような動物で、ナラボー平原にも多数生息している。噛まれるとひょっとしたら、狂犬病を発病してしまうかもしれず注意が必要な動物。
何度かテントの周りに寄って来られたが、非常に臆病なようで石を投げたり大声を出して威嚇すると逃げて行った。先日、明るい時に遠目でディンゴを見たが、犬そのものだった。
話を戻そう。彼は世界中を自転車で旅している人らしくて、エッフェル塔の前で撮った写真を見せてくれた。
今日は思いがけず、2人のサイクリストに会ってご機嫌になったおっさんは早めの昼食にする。
遅くても明後日にはNorsemanに辿り着ける目処が付いたため、水・食料に余裕が出てきた。
Norsemanに近づくにつれて、植生もさらに変化してきて、背丈のある大きな木が見られるようになった。
今日も玄米とラーメンとじゃがいものごった煮。
とりあえずお腹が膨れればいい。
Norsemanまで100kmの表示。
次で長かったナラボー平原の横断はようやく終わる。
いやあ、長かった。
道路脇の土は赤茶色に変わってきた。
水が流れて削れたあと。先日のロードハウスで洪水の写真をみた。ここナラボー平原では時に大雨が降って広範囲で水没するらしい。
昨日泊まったねぐらが砂が溜まって平だったのは、水が流れたあとだったのだ!重機の跡が見られたのは、水はけをよくするために溝を掘っていたためだと思われる。恐るべしナラボー。
そんなナラボー平原だが、湖は干上がっていた。猿の惑星のような風景が広がっている。
夕方が迫ると、再び弱い追い風が吹き始めて、おっさんの背中を後押ししてくれるようになった。
これまでの追い風続きだった流れがハッキリ変わったと感じた。
きっかけは多分、ゴミ箱からじゃがいもとさつまいもを救出した時。あれから歯車がうまく噛み合い始めた。あの時、拾わずにいたら、今日のいい感じの流れは来ていないように思える。さらに夕方のゴールデンタイムをしっかり走るようになって距離が伸び始めた。
ナラボーの神様に散々嫌われていたが、いくら向かい風を吹かせようとも走ってくるおっさんに参ったようだ。ナラボーの神様とは実は女性で非常に気難しい。一度機嫌を損ねると、とことんやられる。
もう、アンタには参ったわ!UluruでもKakaduでも好きなところに行きなさい!
そんなことを言われたような気がした。
おお、なんだこのお菓子は?
実は道行くインド人旅行者から貰ったもの。若い男性2人組でレンタカーでPerthからSydneyへ向かう途中、わざわざUターンして来てくれた。
最近、私は他のキャンパーや旅行者を避けていた。というのは、彼らが聞くのは決まって、どこから来たのか?どこへゆくのか?一日何キロ走るのか?今日で何日目?とかだから。何度も同じことを聞かれるのは嫌になる。どうせ聞くだけ聞いて気が済むと、どこかに行ってしまうので、相手をするのは馬鹿らしい。
そんな風に思っていたが、今日に限ってたまには愛想よくするのも、サイクリストのイメージアップに繋がっていいかも?と気まぐれを起こして、彼らの聞くことに答えて、一緒に写真を撮るなどしていたら、後ろのトランクを開けて、食べ物はあるのか?水はあるのか?ビールは飲むか?など言ってくれた。
まさかこんな展開になるとは思いもしなかったので、おっさんの喜びようはすごかった。水は十分あるので一度は断ったが、彼らの好意をむげに断るのは良い流れを断ち切ることになると思い、500mlのペットボトル1本だけ頂いた。
あとはスナック菓子とスニッカーズ。
彼らにとってはサイクリストは未知なるもので、非常に珍しいのだろう。彼らのよき思い出の一つにでもなればおっさんは嬉しい。
スニッカーズを食べるおっさん。
自転車に乗るようになってながら運転が上手くなった。いちいち止まっていたら、走れなくなる。スニッカーズを食べると、一気にペダルが軽くなりスピードアップした。
今日の思いがけない展開に気分が非常にいいおっさん。
夕方のゴールデンタイムをキッチリ走ったあとで、道路脇に入ってテント設営。
タイミングがバッチリ。早すぎず、遅すぎない絶妙な時間。
自転車だって愛情を注いでやれば、キッチリと応えてくれる。
毎日自転車カバーを掛けるようになって、細かい各部の状態が分かるようになってきた気がする。
いや、気のせいじゃない。ディストラ君がおっさんの愛情に気づき、応えてくれているのだ!雨は降らなくとも、夜露が降りる。カバーを掛けてやれば、ディストラ君も安眠することができる。
Norsemanまで残り50km。明日の午前中には着く予定。
町に着いたら、ホットシャワーを浴びてホッと一息ついて、洗濯をして、それからスーパーに買い出しに行って腹いっぱい食べようか。その後、落ち着いてから今度のルートをもう一度検討する。だいたい決まっているけど。
頂いたお菓子を頂く。いつもは空腹でご飯が炊けるのが待ち遠しいが、今日はおやつを食べて気持ちにゆとりがある。
よし、明日はナラボー平原の横断を締めくくるぞ!
旅行者に水・お菓子を頂く。