こんにちは。からあげです。
長きにわった屋久島での滞在は、ロケット打ち上げ前に終えることになった。愛知県からはるばる遠い鹿児島までやって来た第一の目的は、種子島でロケットの打ち上げを見学するためだ。
宇宙飛行士にはなれなかったが、せめてこの目でロケットの打ち上げを見てみたい。(マンガの宇宙兄弟を読んで宇宙飛行士になりたくなったが、すでに時遅し。)
歳をとると諦めなければならないことがたくさん出てくる。Jリーガー、メジャーリーガー、パイロットなどなど、体力が必要とされるスポーツの類はまず無理だ。だが歳をとるのは悪いことばかりではない。思慮深くなるし(本当か?)、選択肢の幅が狭まることで迷うことがなくなる。
それにまだ探検家になる夢を諦めたわけではない。探検家には高いサバイバル技術や桁外れの体力が要求されるが、そのほかにも多額の資金、飽くなき好奇心、強靭な精神力などたくさんのものが必要だ。まだ時期が到来していないだけなのだ。焦らずチャンスが来るまで自分を磨いておくことにする。
出発日はあいにくの雨。雨の多い屋久島だから仕方がないか。
宮之浦までやって来た。ああ、これで屋久島も終わりか。
港に係留されている船は全くなし。
閑散とした風景。シーズンオフはどこもこんなものか。
フェリー乗り場で種子島行きの乗船券を購入する。
今回は屋久島町営のフェリー太陽で種子島に渡る。
屋久島から種子島への船便は、高速船のほかに行きに乗った「フェリーはいびすかす」と「フェリー太陽」があるが、高速船だと自転車を解体して輪行袋に入れる必要があるので却下。(しかも運賃が高額)
「フェリーはいびすかす」は出港時間が8時10分とかなり早く、起きれるか心配だった。それに一度乗ったことがある船より、初めての船に乗りたい。そう思ったのでフェリー太陽に決めた。
屋久島(宮之浦)から種子島(島間 しまま)まで片道大人1,460円。
特殊手荷物(自転車)340円を加えて合計1,800円。
乗船する際、左の荷札を自転車の目立つところに取り付けておく。
フェリー太陽の注意点は、偶数日と奇数日によって運行ダイヤが異なることと欠航しやすいこと。島民に欠航丸と揶揄されるほど、欠航が多いフェリーなのだそうだ。
事故を起こせばすべては船長の責任。経歴に傷が付くと転職がしづらくなる(大手は絶望)のでリスクを冒さなくなるのは当然のこと。船は風で流されやすく、その場に留まることは難しい。狭い港内での回頭中に強風が吹けば非常に危険。それに海が時化ると乗客が船酔いを起こしてあとの掃除が大変になる。
待合室内にあった無料本コーナー。
心配性なおっさんは早く来すぎてしまったので、椅子に座ってのんびり休憩する。いつものことだ。こういうところで大人の余裕ってもんを見せねばならん。
港内にフェリーが入港してくる少し前、作業員たちが岸壁でスタンバイする。
今回乗船する「フェリー太陽」。
屋久島となりの口永良部(くちのえらぶ)島の島民にとって、島を出るための唯一の交通手段。
口永良部島のために運航されていると言っても過言ではない。火山噴火などの緊急時には、このフェリーが避難船となる。
すでに代替の新造船の建造が進められているようだ。すでに船齢は22年以上。人間であれば元気いっぱいの若者だが、海に浮かぶ船は傷みやすい。もう爺さん。そろそろ交代の時期だ。
全長 53.02M
総トン数 499GT
主機関 1800×2PS
航海速力 15.7KN(約30km/h)
旅客定員 合計100名
積載能力 中型バス(4Tトラック)×2台、乗用車×5台
岸壁には出船左舷付する。徐々に回ってきた。
先に細いロープを投げて、先に結ばれた太いロープを陸上の作業員たちが力を合わせて引き上げて輪っかを係船ビットに掛ける。あとは甲板上の機械でロープを巻き上げてしっかりと張るだけ。
入港作業は非常にスムーズ。流れるように進む。
乗用車が下船した後、積み荷が降ろされる。
乗客や車のほか、いろいろな生活物資も載せられている。豪華客船と違い非常に生活感があるのが特徴。
自転車に乗って船尾のランプウェイから乗船する。
岸壁と車両甲板の高さが異なるため、エレベーターが装備されている。
そのため上下船には時間が掛かる。
このように1m以上高さが違う。
身の回りの手荷物品だけ持って客室に上がる。
思ったよりも広々としている。
少なくとも「フェリーはいびす」よりは快適。はいびすかすはただの貨物船。
一日遅れの新聞が備え付けられている。
南日本新聞という非常にローカルな新聞。屋久島に来て初めて見た。
1階上が1等客室となっている。1等の高い料金を払った人間以外は立ち入り禁止。
2等客室内はカーペット式のゴロ寝スペースとなっている。私は座席よりゴロ寝できる2等の床の方が好き。
室内には窓がたくさんあって明るく開放的。
ゴミ箱も完備。
野宿者には嬉しいサービス。
船尾方向の壁際に荷物を入れる棚が設置されている。
船酔いも洗面器があれば安心。思いっきり吐くことができる。
丈夫で耐久性のあるアルミ製洗面器が完備されている。
備品の毛布も多数用意されている。この雑然としたたたみ方が面白い。
いちいち四隅をキレイに揃えて畳めるか。ざっとでいいんだ。ざっとで。
数は少ないが充電できるコンセントあり。
フェリーはスマホ充電し放題。このチャンスを逃してはならない。
徒歩の乗客は舷梯で上下船する。
舷梯のすぐ近くに郵便物を入れるポストあり。
ここに投函するのはできない。ただの保管庫。
種子島島間港まではおよそ1時間。
体力を温存するために寝ておく。いつでもどこでも寝られるようにするのが野宿者の努め。
入港前の船内放送が流れると、おっさんは目を覚まして車両甲板に向かう。
積載車両は2台と自転車1台のみ。シーズンオフの平日はこんなものか。
入港を待つディスクトラッカー。
前後にタイヤ止めを設置し、トップチューブとシートポストにロープを取ってしっかりと固定されている。多少の揺れでは全く問題なし。革サドルが濡れないようにビニール袋を被せてある。
それにしても機能美あふれる自転車だな。などと、いつもの自画自賛が始まる。
これが後部車両甲板のエレベーター。
高さが違う岸壁でも、自走での車両の積み下ろしが可能になる。
船尾のランプウェイのゲートが開いているところ。
もうすぐ上陸だ。
さよなら太陽丸。そしてありがとう。
もう二度とお前と会うことはないだろう。
時間通り14時過ぎに種子島島間港に到着。しままという名前は非常に口にしづらい。
しまま、しまま、しまま。
フェリー乗り場周辺には港湾設備と発電所があるだけ。ほかには何もない。
ちなみにロケットはバラバラのパーツの状態で島間港にて陸揚げされ、深夜に特殊なトレーラーで宇宙センターまで運ばれるそうな。パーツの一部だけでも巨大。
種子島のマスコットキャラ。名前は忘れた。
ロケット打ち上げのお知らせ
島の至るところに案内板が設置されて打ち上げ日時が分かるようになっている。
打ち上げ当日、打ち上げ場所から半径3km以内が立ち入り禁止エリアとなる。
ロケットの打ち上げまであと3日。打ち上げ当日までは無料のキャンプ場で滞在することにする。
島間港にはバス停があるにはあるが、便数が少なくとても不便。
こういう辺鄙な場所では自転車がとても便利。一般観光客は西之表(にしのおもて)でレンタカーを借りるようす。
まずは南種子(みなみたね)町中心部に向かう。
道路沿いのハウスでは葉っぱものが栽培されていた。
九州の南の方の墓地でよく見かける「葉っぱもの」。私が勝手にそう名付けた。切り花だとすぐに傷んでしまうので、長持ちする葉っぱものが人気なのだろう。
周囲にさとうきび畑が広がる。
そんな畑の片隅に止められていたサトウキビ収穫用の機械。
動いているところを目撃したのは数日後。
雨が降るなか自転車を走らせる。
防水性能が落ちたゴアテックスのカッパは気休め。体が徐々に冷えてくる。
南種子町のAコープに到着。
いやあ、結構遠かったな。なんか食べて体力を回復させておこう。キャンプ場まではまだもう少しあるし。
ここが無料でキャンプできる宇宙ケ丘公園の食料買い出し場所。自転車でも楽に来れる。
Aコープでしばらく休憩したあと、まっすぐキャンプ場に向かう。
雨のなか寄り道はしたくない。もう疲れた。
町の中心部になんとコンビニを発見する。
西之表周辺にはたくさんあるらしいが、南種子町ではココだけ。
種子島にも結構長い間滞在していたが、コンビニに寄ることは一度もなし。
雨脚が強まったので途中で図書館に避難する。これは寄り道ではなく、緊急避難。
屋久島から遠目で見る種子島はフラットだったが、実際に入ってみるとアップダウンが多いことが分かる。
このあと嫌というほど味わうことになる。
図書館のある建物は元は学校。
なんとなく懐かしい雰囲気が漂っている。
宇宙が丘公園という名前の通り、丘の上にある公園にようやく辿り着いた。これでもう走らないで済むと思うと嬉しくなった。
周囲は誰もおらず非常に静か。
公園入口にはH-Ⅱロケットのモニュメントあり。
キャンプ可能な場所は広大な多目的広場。
雨が降っているせいもあって誰もいない。受付なしで自由に利用することができる。
広場をくまなく歩き回って最適な場所を探す。
一番奥の少し手前にテントを設営した。
背の高いヤシの木のすぐ近くで張るのは危険。落雷した時に側撃を食らうおそれあり。必ず安全距離をとっておく。
湿っぽいテント内で晩御飯の用意をする。
まだカヤック疲れが取れないのか、全身がダルい。
天気予報ではしばらくハッキリしない天気が続きそう。
ロケット打ち上げは大丈夫なのか。そんなことを思いつつ、種子島でしばらくの間過ごすことになったのだった。
おわり