こんにちは。からあげです。
昨日は安易に軒下を借りて泊まったものの、夜明け前に人がやって来て強制的に早起きする羽目になる。たまには遅くまでダラダラ寝ていたいし、日が沈んだらさっさと寝てしまいたい。野宿者の悲しい定め。そんな贅沢は許されるはずもなく、遅寝早起きが基本となる。
夜から降り始めた雨から逃れることができただけでもヨシとしよう。昨日からの雨は小降りとなったものの、空を見る限り一時的に過ぎないと思われる。大して快適とは言えない東屋の方で食事を済ませた。
施設に続々と運び込まれる農産物。
軽トラックで乗り付けてカゴに入った野菜を下ろす。それらを載せた台車を通路に並べて順番待ちをする。
カッパ上下を着るなどして出発準備を整えて7時過ぎ出発する。
宗像から北九州手前の芦屋町までサイクリングロードが整備されている。交通量が増えてきてストレスを感じるようになったので、マイペースで走れるサイクリングロードをゆくことにした。
走り始めてすぐに立派な東屋を発見する。
民家から離れた森の側にあり野宿に適していた。
このあともいくつかの東屋を見つけて悔しくなった。
私の数少ないツーリング経験から言うと、日本国内ではサイクリングロード沿いは野宿場所の宝庫。野宿場所に困った時はサイクリングに入って探せば、必ずどこかに野宿適地が見つかる。
水道は近くにないこともあるので、あらかじめ水を多めに汲んでおく。トイレはその辺。適切な方法で処理する。
なんと集落の外れにランナバウト交差点を発見する。
日本では非常に珍しい交差点。マナーが良い地域でないと機能しない方式。
県道300号線沿いのサイクリングロード。見た目は歩道とさほど変わらず。
つなぎ目の段差がなく、松林の影になっていて走りやすい。
安全地帯の松林を抜けると、吹きっさらしの海岸道路に出る。ここからが本番。
北九州へと向かう車は、海岸沿いの県道ではなしに内陸の国道をゆく。
交通量はほとんどなく波の音が聞こえるのみ。冷たい季節風が容赦なく吹き付ける。向かい風でなくてよかったと心底思う。
寒風と冷たい雨にやられてすっかり体が冷え込んでしまった。
民家のあるところに行けば、どこかに休むところくらいはあるだろうと楽観視していたが、行けども行けども休む場所は見当たらない。
せめて風に当たらない場所があればいいのだが。
国道495号線と交わる手前でサイクリングロードは自動車道から離れた。
ようやくお楽しみの時間がやってきた。三里(さんり)松原周辺がもっともおいしい区間。ほかは単なる移動区間、刺し身でいえばツマのようなもの。
天気が良ければ気持ち良さそうな道。今日は雨風が強く精神修行要素が多め。
寒い寒いサイクリングロード。
体が濡れた状態で風に吹かれると非常に寒い。期待した松はそれほど多くない。隣接する航空自衛隊基地のフェンスが延々と続く。
東屋があるにはあったが、風当たりの強い小高い場所にあって全然休めない。
雨に当たらないだけマシだが、じっとしていると体が冷えてくる。
サイクリングロード終点の公園に着いた時にはすっかり疲労困憊していた。
トイレの影で熱々のお茶を飲むと、ようやく体の震えが止まった。
そのころようやく雨が上がった。
芦屋町のシャッター街をゆく。道路沿いの商店街にはシャッターが目立つ。
時間は9時半過ぎ。いくらなんでもシャッターくらいは開ける時間。地方は深刻な不景気が続いているのだと改めて気付かされた。
今日の目的地は北九州。有名な八幡製鉄所がある大きな町。
無料のキャンプ場でしばらく滞在し、その間に疲れを癒やして自転車の整備を行う。
枕崎の火の神公園キャンプ場を出てからは、ずっと走りっぱなしだった。
走行距離を減らして体力の消耗を抑えていたものの、おっさんの体には疲労が蓄積していた。
目指す無料キャンプ場は、若松区のしょうぶ谷ではなく、小倉城に近くて買い出しに便利な金比羅公園キャンプ場。地図で見ると、繁華街まですぐ近く。こんな場所に本当にあるのだろうかと疑問に思えてくる。
グーグル・マップで検索して偶然に見つけた場所。私が愛用するツーリングマップルには、無料キャンプの記載なし。
交通量が増えてきたなあと思っていたら、いつの間にか北九州市内に入っていた。
ツーリングマップルを穴が空くほど見ていた時に見つけた「安川電機ロボット村」に寄ってみることにした。
だがそこは国道3号線沿いの工業地帯の真っ只中にあって自転車では近づき難い場所だった。
グーグルマップで歩行者の最適ルートを検索しながら徐々に近づいて行った。
複雑な形状の交差点。信号が赤になると、左折車の長い列ができて行く手を阻まれる。
歩道橋を通って向こう側に行こうとするが、スロープがあるところとないところがあって、どこをどう通ればいいのか分かりづらい。
いったいどうやって抜けたらいいんだ!
時にはこんな怪しいガード下もくぐった。
道を知っている地元民でなければ、絶対に通り抜けしようとは思わないような道。真っ直ぐではなく、途中で曲がっていてとんでもない場所に出る。
その後、なんとか安川電機にたどり着いたが、一般人の見学は受け付けていないと丁重に断られた。
なんでも学校や会社関係を対象に10名以上の団体を受け付けているそうな。
最先端のロボットを間近で見れると思ったのにがっかり。コロナ感染拡大防止のため、現在は新規受付を停止しているようす。
北九州の町はとにかく平地が少なく傾斜地が多い。国道3号線は片側3車線になっているものの、路肩はないに等しい。名古屋の八事(やごと)周辺を思わせるような道。道はくねくねと曲がりくねっていて直線区間は短い。
こういう道では反射材付きのベストは大活躍する。蛍光イエローは遠くからでもハッキリと見える。
道行く車は大きく距離を空けて抜いて行ってくれる。九州の人は旅人に優しい。
あとになって気がついたのは路上駐車の車がいないこと。
3車線もあるとたいてい一番左は駐車場と化してしまうのに、そういうことが全くない。
おかげで交差点以外は走りやすかった。
しばらく走って曲がりくねった道に慣れてきたころ、強制排除されてしまう。トンネル区間は自転車通行禁止。あらまあ。
いったいこの先、どうやって走ればいいのだろう。しばし途方に暮れる。
グーグル・マップで検索した抜け道をゆく。
途中、商店街を抜けてショートカットした。
キャンプ場に行く前に、イオンに寄って少しだけ買い物をしておく。
この先も厳しいアップダウンが予想されるので、必要最低限のものを買うに留める。
アップダウンで体力を消耗し腹が減った。菓子パンを食べて腹の虫を満足させておいた。
イオンからキャンプ場まで3kmもないのだが、迷宮のように入り組んだ道に阻まれて一向に近づけない。
しばらくゆくと急傾斜の住宅街に迷い込んでしまった。最大ギヤに切り替えても乗車が困難な坂。押して上がるだけでも大変だった。荷物を満載した自転車は筋トレマシーンとなった。行けばゆくほど難易度が上がってゆく不思議なダンジョンだ。
軽自動車さえギリギリの狭い道路。板金屋が儲かりそうな道。
こういった傾斜地に建つ家は駐車場を別に借りているところが多いようす。頑張れば通れないこともないが、車の出し入れだけでも大変。原付きがある家が多かった。
狭い路地の奥にある駐車場なのに月6000円。北九州の相場で安いのか高いのかは全くの不明。
写真でみると比較的なだらかに見えるが、実際は急傾斜になっている。
上り坂では強烈な押し歩きでヘロヘロ、下り坂は効きのよいディスクブレーキでもフルブレーキを掛けねばならないほどだった。あまりにもブレーキに負荷がかかるので、急な下り坂では自転車から降りた。このような場所では雨の日のカンチブレーキは危険すぎる。Vブレーキではリムが削れてすぐにダメになる。
朝方、雨のなか砂に埋れたサイクリングロードを走り、パッドが一気に磨り減ってしまった。ブレーキを掛けると、パッドの摩耗を示す「キーキー」音がするようになった。
頑張った分だけ上から見る景色は良かった。
山の斜面に民家が密集して建つ。汗ばんだ体に冷風を浴びて気持ちいい。
その後も自転車走行禁止区間に阻まれて、道路と一進一退の攻防を繰り返した。
キャンプ場はすぐそこなのに、全然近づくことができない。迂回してむしろ遠くなっている。「ダメだこりゃ」いかりや長介風のため息が出た。
車道は自転車走行禁止。それで歩道をゆくしかないのだが、フェンスの切れ目が全くない。横道に逃げることさえ許されない。この先、どこへ行ってしまうのか?
ああ、あそこに行きたい!でも、どうやって下りればいいのだろう?
非常にもどかしい。目に見えているのに、行き方が分からない。グーグル・マップでは馬鹿みたいに遠回りする道が出て唖然とする。
高等ドライビングテクニックが要求される駐車場。
さらに難易度を高める資材なども置かれている。ハンドル操作を誤って柵を突き破ったら命の保証はない。
一日何度も車を出し入れする必要があるのなら、私なら絶対に自転車を選ぶ。いや、せめて電動アシスト車にして欲しい。
くねくね曲がった道を面倒くさがって、真っ直ぐの遊歩道を行こうとしたところ階段に阻まれる。
結局くねくね道を上がって行った方が早かった。
おっさんだけど、利用してもいいですか?
昼過ぎに山の上にある金比羅公園キャンプ場に到着した。
だが、最後の最後でまたしても階段に阻まれる。
仕方なく荷物をバラして自転車を上げたが、あとになって秘密の通路を発見する。
無料の金毘羅公園キャンプ場へようこそ!
たしかに料金は無料だが、利用は予約が必要だ。連絡してから使ってくれよな!
ということで看板に表示されていた電話番号に電話を架ける。担当者に繋いでもらって予約を行う。
当日予約もOK。氏名、在住の県名、利用日数を口頭で伝えただけでよかったのかな。たしか。
キャンプ場内を隈なく歩いて施設を調査し、大木の下にテントを張ることにした。
山の上にあって風当たりが強い。散歩にやって来る人がいるので、なるべく動線から外れた場所がいい。
木には近づき過ぎず、離れすぎないところ。冬でも雷には気をつけたい。雷怖いもんで。
砕石混じりの土でペグ効きが悪かった。そこで放置されていたレンガやブロックを利用してテントの張り綱を張った。出入り口は風下、通行人から見えない方向にした。
一度テントを張ったら、もうてこでも動かない。ここでホームレスになってやる!勢いで書いたが、それも悪くないと思った。
頑張ってペダルを漕ぎ続けたため、もうお腹ペコペコ。
スーパーで補給した菓子パンエネルギーはとっくに切れている。
朝炊いた玄米ご飯に熱々ラーメンのセット。温かいテント内での食事は最高。
今日は朝方の雨風にやられて体力の消耗が激しい。食後はしばしの昼寝タイムを楽しむ。
ディスクトラッカー。おっさんのライトなお買い物仕様。
リアバッグを外してフロントのみ。カゴの中の不要な荷物を下ろして軽量化するとともに、新たな荷物を載せられるようにした。
自転車に荷物を積載するには、前後左右の重量配分が非常に重要。リアばかりに荷物を積むと、極端なリア荷重となって走りにくくなる。試行錯誤してたどり着いた答えが「フロントのみサイドバッグを付けて、前後カゴとバッグに荷物を分散させる。」
前後にカゴを付けたディスクトラッカーでは、このスタイルが一番走りやすい。オレンジ色のオルトリーブバッグもおしゃれでグッド。もう少し小綺麗にすれば、どこに出しても恥ずかしくない自転車になる。
ツーリングのために設計された自転車。それがSURLYディスクトラッカー。クロモリ製のロングホイールベースのフレームは最高。どこまでも走っていけそうな気がするディスクトラッカー。本当に惚れ惚れする。
金比羅公園のすぐ近く。山を降りたところに大きなショッピングセンターあり。
ホームセンターからスーパー、100円ショップまであって何でも揃う。
明日の自転車整備のためにいくつか資材を調達した。
行きはよいよい、帰りは地獄。この世の生き地獄とは北九州の坂道のことよ。
子供の頃からアップダウンの多い北九州で自転車に乗っている人間はさぞかし体が鍛えられているに違いない。うかうかしていると小学生にあっさりと抜かれる。お、恐ろしい。できれば避けて通りたい場所だ。
正規のキャンプ場に予約して堂々とキャンプする。後ろめたいところは全くないので思う存分ゆっくりできる。
出かける前に洗濯して干していた衣類はおおかた乾いてくれた。あと一息。
夜露に濡れないようにテント内に取り込んでおく。
こうして激闘の一日は終わった。
尻上がりに天気が良くなって、日が沈む頃には青空が広がった。
だが好天はそう長くは続かない。
新型コロナが急速に感染を拡大しつつあり、予断を許さない状況になっていた。
おわり