縄文杉と宮之浦岳をめぐる山旅 2020年冬【2日目】鹿之沢小屋~宮之浦岳~淀川入口~紀元杉

こんにちは。からあげです。

 

はじめに

いよいよ始まった西日本自転車ツーリングの屋久島編。
待ちに待った好天が訪れ、喜び勇んで出かけた宮之浦岳縦走。1日目は荒川口から縄文杉を越えて鹿之沢小屋まで。陽気なフランス人と一緒に歩くことになった今回の山旅。その後どうなったのか引き続き書いてゆこう。

登山ルート

1日目 荒川口~縄文杉~永田岳~鹿之沢小屋(泊)
2日目 鹿之沢小屋~宮之浦岳~淀川入口~紀元杉

 

2日目(鹿之沢小屋~宮之浦岳~淀川入口~紀元杉)

4時半起床

夜間にネズミが出ることはなく、めずらしく朝まで熟睡することができた。いや、ひょっとしたら冬季大運動会が開催されていたかもしれない。だが熟睡していたので知る由もなし。吊り下げていた荷物は無事だった。

寝袋の外に出していた水筒の水は凍らず。小屋の中は冷蔵庫なみに冷えていたが、夜露や風に当たらないだけでも十分快適だった。
寝起きから今日もカレーうどんを食べる。

 

昨日寝る前に相棒のフランス人と「5時半に一緒に出発しよう」と打ち合わせをしていたにも関わらず、食事も食べずに起きてすぐ出発したがる。バスの時間が気になって気になって仕方がないらしい。非常に忙しない朝食となった。

小屋からヘッドランプの明かりを頼りに夜道を歩く。ところどころ水たまりが凍結していたものの、トレランシューズでも十分歩くことができた。

永田岳直下の分岐までやって来ると、道のことで相棒と揉める。彼は山頂に続く道を進もうとする。そっちは間違いだと説明するものの、相手に伝わらず。彼は山頂へ、私は宮之浦岳方面に直進する。
しばらく経って道間違いに気がついた相棒が大急ぎでやって来る。遅くまでドローンで遊んでいるからそうなる。

永田岳を過ぎてしばらくすると、東の空が明るくなり始める。

宮之浦岳の登りの途中で夜明けを迎える。

山頂で日の出を見るつもりだったが間に合わなかった。

7時半ころ宮之浦岳山頂に到着する。
誰もおらずひっそりとしている。雪は全くなし。

周囲に広がる雲海の眺め

山頂広場のようす

しばらく休んでいると、単独の女性登山者がひょっこりと現れる。昨日は白谷雲水峡から入り、新高塚小屋で泊まったのだとか。今日は荒川口経由で白谷雲水峡まで下山する予定。普段から歩いて鍛えているようすで足腰が引き締まり動きが身軽だった。

私たちの方が早く出発したのに、15分もしないうちに追いつかれてあっという間に姿が見えなくなった。

宮之浦岳から黒味岳(くろみだけ)まではアップダウンを繰り返す。
山腹を巻いてゆくため比較的楽だが、ロクに食べずに重荷を背負う相棒はかなり堪えているようすだった。
ときどき足を止めてうなだれる。

登山道から見える奇岩の数々。

見る角度によっては人の顔に見えなくはない。
不思議な人面岩。

身長180cm以上はある大男が背負うザックは容量90L前後か。

荷物は多いが食料は少ない。宿で作ってもらったと思われるサンドイッチを少しずつ食べているところしか見なかった。大きな体のわりに食べる量が少ない。胃腸がどうもといいながら、お腹をさすっていた。

単に食料を買いそびれただけなのかもしれないが。

木道をゆく。一部湿地帯になっているところがあった。

見晴らしの良いところに遭難碑らしきものあり。

黒味岳に近づく。名前のとおり黒っぽい山。

時間があるので黒味岳に寄ってゆきたかったが、相棒が嫌がったので素通りした。

ところどころロープが設置された滑りやすい岩場あり。慎重に通過しよう。

屋久島は水場が多く水の心配は全くなし。

花之江河(はなのえごう)

標高1,600mにある湿原。一面枯れた草原が広がっている。
雪は全くなし。

木道の広がったところで休憩する。
相棒は座って水だけ飲んでいた。食料は有り余るほど持っていたので、チョコレートをあげると嬉しそうに食べていた。

花之江河からしばらくゆくと、猿の群れと遭遇する。
こちらと一定の距離を保ちつつ登山道沿いで寛ぐ。屋久鹿同様に小さい。

高盤岳(こうばんだけ)山頂にあるトーフ岩。

豆腐のように切れた不思議な岩。コンデジの最大望遠で捉えた。
こんな面白い岩を見たのは初めてだった。

うねる木の根。躓かないように慎重に歩く。
濡れていると滑りやすくなる。

屋久島島内に点在する屋久杉の巨木は見どころのひとつ。

11時過ぎ淀川小屋に到着。
小屋のすぐ近くを流れる淀川。

川の水は澄んでいて橋の上からでも川底がはっきりと見える。

河原に下りて記念撮影する。相棒は三脚を使って撮影する。

水の中のようす

一眼レフにないコンデジの大きなメリットは、防水だと水中撮影できること。
私が愛用しているカメラはOlympusのタフなTGシリーズ。これ一つで何でも撮る。

 

淀川小屋(Yodogawa-goya)

木造
収容人数 約60人
トイレ あり
水場 あり(小屋近く 淀川)
テントサイト あり(小屋の前の広場)

小屋前の広場

平らに整地されていてテントを張りやすい。

小屋入口

屋根下にベンチが設置されていて雨の日の休憩に最適。

屋内は土足禁止。
入ってすぐの板の間。

玄関の下駄箱。
高さは十分にあり、ハイカットの登山靴でも入る。

居住区は通路を挟んで2段の板の間あり。
上段は垂直ハシゴで上り下りする。左右2箇所ずつハシゴあり。

明かり取りの窓が多くて屋内は明るいものの、やはりこの小屋もカビくさい。

上段のようす

小屋の近くに汲み取り式トイレと携帯トイレブースが一つずつあり。

 

広場で休憩する。
余っていた菓子パンを食べる。

小屋の周囲は苔だらけ。

ふわふわの苔も見どころの一つ。
苔は冬でも青々としている。

巨大な岩

12時半まえ淀川入口登山口に到着した。
相棒のフランス人は歓喜の雄叫びを上げる。

 

淀川入口

登山口の案内板と登山ポスト

登山口の駐車場

トイレ前とゲート手前に計10台程度停められる。一番手前は業務用車専用の駐車スペース。緊急車両の転回場所にもなっていてロープが張られている。

淀川入口まではマイカーは通年通行可能。夏山シーズンは路上駐車の車で周囲一帯が埋め尽くされるという。シーズンオフの1月だったこともあり、駐車場には営林署の車1台のみ。

男女別の簡易式水洗トイレと更衣室、携帯用トイレの回収ボックスあり。

トイレの奥に水場あり。
水量は少ないが、水を汲むことができる。

新しく休憩所が建てられていたが、鍵が掛けられていて使用不可。

この写真は別の日に自転車で来た時に撮影したもの。延々と上りが続き辛かった。

登山口で昼食を作って食べる。
食料がまだたくさん余っていたので、相棒にいるかどうか聞いてみると、下山したら食べるので要らないと言う。
トビウオの刺し身を食べるのが楽しみなのだとか。

一人だけで食べるのは気が引けるが、腹が減ったので食べない相棒にかまっていられない。
見せつけるようにうまそうにすすって食べた。チキンラーメンにレトルトカレーを入れただけのカレーラーメンだ。

あとは紀元杉のバス停に行くだけ。登山口でゆっくり休んでいけばいいものを、相棒はバス停に行きたがる。バスの出発まではまだ2時間以上もあるのに。

川上杉

林道建設予定地の真ん中にあって邪魔だったが、立派な屋久杉を伐採するのは忍びないということで、計画を変更して残された杉。
当時の担当者の名前をとって「川上杉」と名付けられたそうな。

紀元杉

樹齢   約3000年
樹高   19.5m
胸高周囲 8.1m

紀元前から生えているとされる紀元杉。近くにバス停あり。道路から木道を通って木の下まで歩いてゆけて、木に触ることもできる。

バスの時間まで1時間以上もある。

トランプで遊んで暇つぶしすることになった。
2枚めくって同じ数字であれば、そのカードを貰えてゲーム続行でき、最終的に取ったカードが多い者が勝ちとなる、定番の「神経衰弱」を行った。ルールはフランスでも全く同じ。

さあ、一対一の真剣勝負の開始だ。

おっさんの私は記憶力が悪く一方的な展開になる。何枚めくってもカードを覚えられない。めくったカードを元のように伏せた瞬間忘れてしまう。そのため同じカードをめくること数知れず。
相棒はやりたい放題。ここぞとばかりに仕返しをされた。

勝負の相手は元気いっぱいの若者。一方の私は記憶力が衰えてきた50前のおっさんだ。浮世離れしたマイペースの生活を長年続けたためか、記憶力は相当衰えている。悔しいが完敗を認めないわけにはいかなかった。

記憶力のなさを年齢のせいにしてはイケない。いや、記憶力がないわけではない。この着ているシャツは15年前に○○という店で1,980円で買っただとか、あそこのスーパーの惣菜コーナーは夜の8時を過ぎると半額シールを貼り出すとか、どうでもいいことを覚えているではないか。

力の差がありすぎて白熱した勝負にならず。わずか2回で終了になった。
まだ時間があるのでバス停前で記念撮影。

着ている上着の白いフリースはかれこれ10年近く着ているもの。肘や背中の部分の起毛は剥げてつるつるになっている。
長ズボンは2014年1月スキー場にアルバイトに行く前にしまむらで購入したもの。お尻のサドルが当たる部分に1枚生地を当てて補強してある。自転車生活を始めると太ももが太くなってきてズボンが窮屈に感じるようになってきた。

紀元杉バス停は1日2本のみ。
乗り遅れると大変なことになる。

相棒は相当の心配性のようでバスの時間を気にしてばかりいた。
私が大丈夫だと何度言っても、先へ先へ急ごうとする。

2日間一緒に歩いた外国人は既婚の28歳フランス人。
日本へは彼一人でやって来て、東京から熊本を回って屋久島まで来たそうな。
新宿で本物のさぬきうどんを食べたとか言って喜んでいた。写真で見る限り「さぬきうどん風の麺」のようにしか見えなかった。

また彼は漫画アニメのオタク系趣味があり、ワンピース、NARUTO、ハンターハンターが特に好きだと言っていた。熊本にあるワンピース登場キャラのウソップ銅像前で撮った写真を見せてもらった。

屋久島のあとは広島、京都と周ってオーストラリアで奥さんと落ち合うようだ。ワーキングホリデービザを活用して働きながらゆっくり各地を観光してフランスに帰るようなことを言っていた。

はじめ宝くじが当たって億万長者になったというような冗談を言っていたが、今回の海外旅行のためにバーテンをしてお金を貯めたと白状した。定職には就かずにアルバイトをしているんだとか。「バスの時間よりも将来のことを心配しろよ」と突っ込みたくなったが、頭のなかだけに留めておいた。それが若者に対するやさしさというもんだ。言われなくとも本人が一番考えている。

彼にも一般人のように職業を聞かれたので、「I am freeman. 自由人だ」といつもの調子で答えておいた。

道路上で無邪気に遊ぶ相棒

道やバスの時間などで彼とは言い合いになったが、どこか憎めない奴だった。
ヨーロッパからわざわざ辺境の地までやって来てくれるだけでも嬉しいではないか。これまで外国人にいろいろ世話になったこともあり、できるだけ親切にするようにこころがけた。細かいことはいい。

日本を楽しんでいってくれよな。

バスは時間通りにやって来た。相棒の喜んだこと喜んだこと。
途中のバス停で彼とは分かれた。またな、という軽いあいさつのみ。
のちほど彼から一眼レフで撮影した写真が送られてきた。

これがそのうちの1枚。

登山の感想

2日間好天と相棒に恵まれて楽しい登山をすることができた。
積雪も全くなく歩きやすかった。全く文句なし。
機会があれば、また登りにゆきたい。

他の登山者が少ないシーズンオフも悪くない。宿は割安だし、暑くもなくそれほど寒くもなく非常に快適。ただ、一旦季節風が吹き荒れると、飛行機やフェリーが欠航してしばらく島から出られなくなるので注意が必要だ。そんなときはゆっくりと流れる島時間に身を委ねて、のんびり過ごせばよい。