こんにちは。からあげです。
夜寝るころになって、どこからともなく公園パトロールの車が現れた。青い回転灯を点けながら低速で近づいてくる。テント内でじっと息を潜めていると、何ごともなくそのまま通過してくれた。ホッと安堵のため息をつく。
そのあと人がやって来ることはなかったが、近くの高速道路の音が聞こえてくるので落ち着かない夜を過ごした。
今朝5時に起床してみると、外はまだ雨が降っていた。
夜中、横から雨が吹き込んで多少テントを濡らしたものの、屋根がないより遥かにマシだった。
早くも人の気配がするようになったので、テントを撤収して東屋に移動。朝食をとることにした。
海から吹く風が強くて寒く感じた。じっとしていると体の芯まで冷えてくる。無駄に動き回って体を温める。
朝食を済ませたあと、温もりのない殺風景な海岸周辺を散策する。
雨だというのに散歩の人を多く見かけた。
しばらくして雨が止むと、福岡タワーの真下までやって来た。
ん?なんだろう。この大きなカメラは?
自撮り用のカメラ台だった。セルフタイマーで福岡タワーを入れた写真を撮ることができる。いったい何階建てなのだろう?果たして全ての部屋が埋まっているのだろうか?などと疑問が次から次へと浮かんできたものの、3分後にはすっかり忘れていた。
福岡を離れる前に、志賀島へ行くことにする。
金印が発見された島として全国的に有名な島。混雑する市街地を自走して行くのはダルいので、博多港から渡船で対岸の西戸崎に渡る。
まずは博多港の渡船乗り場を目指す。横断歩道入り口に並べられた密度の濃い杭に行く手を阻まれる。ちきしょーめ。
通勤時間帯で混雑する道路だが、自転車専用レーンで気持ちよくスイスイ走れる。
自転車こそ21世紀の乗り物。走行音は静かで環境に負荷を掛けず、しかも運動にもなる。
一日の始めのうちはこうして自転車を絶賛するも、一日の終りころになると「こんな疲れて時間の掛かる乗り物に乗っていられるか」などと悪態をつくようになる。
気持ちよいサイクリングはそう長くは続かなかった。自転車専用レーンが終わると歩道に誘導される。
ちょっと寄り道して国際フェリーターミナルにやって来た。
博多港には韓国釜山行きの国際フェリーが着く。フェリーで海外に行ける貴重な航路だ。
フェリーは飛行機のときように分解して箱詰めする必要はなく、荷物を積んだまま乗り入れることができてとても楽。組み立てて走行しだすと、あちこち調整の必要が出てくる。これが非常に面倒。
日本国内には韓国釜山行きのほか、中国上海とロシアのウラジオストック行きの国際フェリーもある。暇人を自負する私は、3つ全ての国際フェリーに乗ろうと密かに企んでいる。
案内板にはハングル表記もあり。なんとなく国際的な雰囲気が漂う。
建物内に入ってみると、待合スペースはガラガラ。
ただいまフェリーは岸壁で荷役中。乗客の姿は見られない。
椅子には邪魔な肘掛けがないので、横になって寝ることができる。
受付カウンターは閉まったまま。人はいったいどこに消えたんだ?
客はいないのに売店は営業中。
店員さんが暇そうにしている。
片隅に飾られている雛人形。そういえば、もうじきひな祭り。2月も終わりに近づいているのを思い出した。
なぜか中途半端な使いかけのトイレットペーパーが多いトイレ。
どうでもいいことだが、私もペーパーホルダーなしでそのまま使う方が好きな方。
本当にどうでもいいことだな。
ターミナルビルに横付けするバス。
乗客はほとんどなし。乗る人がいないのになぜ動かすのだろうと、見るたびに不思議に思う。
やけに長い2台連結したバスが走っていることに驚く。アメリカやオーストラリアでは見たことがあるが、日本で見たのは福岡が初めて。いや、東京で見たことがあるかもしれない。
岸壁伝いに走って渡船乗り場に向かう。初めての場所でもグーグル・マップがあればどこへでも迷わず行ける。
普段は紙地図のツーリングマップルを使っているが、例外的に町中ではグーグルマップを使う。おっさんは方向音痴なもんで。今日のようにおひさまが出ていないと、すぐに逆方向に走ったりする。
ナビを使うと目的地まで最短ルートで迷わず行けるようになるが、面白みが全くなくなる。
自転車の移動には苦痛が伴うので、楽しさがないと精神修行をともなう単なる移動に成り果てる。
出港までまだまだ時間はあるが、慌てないように余裕を持って乗船券を購入しておく。
通勤・通学時間帯は過ぎたようで中は閑散としている。
市営渡船乗船券売り場
なぜ渡船に乗る気になったかというと、運賃が安かったということもある。ネタにもなるし。
自転車が通常料金だったら、面倒でも自走していただろう。
市営渡船 片道運賃
博多~西戸崎(さいとさき)大人450円
自転車100円(社会実験のため割引中、通常は430円)
小型の渡船の場合、自転車の積載台数は5台程度。大人数で乗船する場合は事前に確認しておいた方がいいだろう。
出港時間までかなりの時間あり。周辺を彷徨いて暇つぶしする。
ぱっとしない電車の乗り物。寒さ対策だろうか。開口部に透明ビニールが貼られている。
ブルーシートで覆われたきっぷ売り場。
潮風でスチール製の屋根が腐って雨漏りしているようす。
角度を変えてもう一枚。
ブルーシートが何重にも掛けられている。これが一番安上がりの補修方法なのだろう。
私が建てた小屋は見た目はボロいが雨漏りはしない。今のところは。
耐久性のあるガルバリウム波板がしっかりと雨を防いでくれている。
しばらく待っていると、乗船する渡船がやって来た。
双胴船タイプでそこそこスピードが出る。
とても立派な船で驚いた。赤サビが浮いた生活感溢れる舟がやって来ると思っていた。
船は浮き桟橋に着くため、潮の干満の影響はなし。
スロープに段差はなく移動はスムーズ。自転車でもらくらく乗船することができる。
自転車は船尾付近の甲板上に停めることになる。
手すりに立てかけて自作のパーキングブレーキでブレーキを掛けたあとは乗組員の方にお任せ。慣れた手付きでロープで縛ってくれた。
西戸崎までは陸地で囲まれた湾内で海上は穏やか。船はほとんど揺れない。
船内のようす
暖房が効いていてとても暖かい。乗客はまばら。
ソファーに横になって休みたいところだが、コロナに感染しないように外で過ごすことにする。
船内の写真撮影を終えたあと、外のデッキ上に出る。
風が当たらない壁際に座って博多港の景色をぼーっと眺める。
対馬行きのフェリーきずな。
次回時間がある時に対馬・壱岐方面にも足を伸ばすことにしよう。
これが釜山ゆきのニューかめりあ。
いつかこのフェリーに乗ってEスポーツをやりに韓国に行こう。
Eスポーツ大国の韓国。ゲームをやってやってやりまくる。
東京オリンピックはEスポーツ大会に変更した方が盛り上がりそうな気がする。これまで準備してきた選手や関係者には申し訳ないが、このコロナの状況でオリンピックを強行するのは無謀というもの。できることをやった方がいい。
あとは釜山からソウルへと続くサイクリングロードも走りたい。韓国の自転車事情を知りたいし。もちろん野宿をしやすいかどうかも。当分の間は無理だけど。
博多港をあとにする。
ネットカフェ「寝太郎」に寄れなかったのが心残り。兄さんの「今だけ100円~」というかすれた声(半ばやけっぱち)が今でも頭にこびり付いている。
西戸崎にまもなく到着。駅周辺にいくつか大きなマンションがあるだけ。
西戸崎も浮き桟橋に着き、乗下船が非常にスムーズ。通路は十分な広さがあり、自転車を押し歩きしやすい。
西戸崎待合所
周辺は閑散としている。
建物内は広々。邪魔なものが何一つない。
外に屋根付き駐輪場あり。
雨の日の荷物整理のときに役立つ。
西戸崎周辺に特に観光するような場所はなし。
西戸崎は志賀島まで続く砂州にできた小さな出っ張り。
市街地は交通量が少なく走りやすい。
町を抜けると、前方に志賀島が現れる。遮蔽物はなく向かい風にもろに吹かれる。
志賀島に渡ると、民家が密集した集落内に入る。
その中にひときわ目立つステーキハウスがあった。
集落を抜けてしばらくゆくと金印公園あり。
この付近で金印が発見されたそうな。
なぜか賽銭が供えられている。
金印のレプリカ
実物は2.2×2.3cmの小さな印鑑。重さは108.7g。よくもこんな小さなものが土の中から見つかったものだと感心する。
公園内の東屋
金印公園自体は珍しくもなんともない。「ああそうですか」という感じで、わざわざ山を削ってまで作ることもない。だが東屋だけは気に入った。
志賀島の海岸線に沿って道路がある。町からやって来る自転車乗りが多いようすで、平日にも関わらず2,3台ロードバイクを見かけた。左端に自転車の走行レーンが設けられている。
海から吹く風が強くて、漕いでも漕いでも全然体が温まらない。
島内は夜間125ccを超える二輪車の通行が禁止されている。自転車には関係のないこと。
いっそのこと島民以外の四輪も通行禁止して欲しい。
島内はとりたてて観るようなところはなし。山の上に潮見公園という福岡市内を展望できる公園があったが、坂を上るのが嫌だったので海岸線を走るだけにした。
海岸線の外周道路は交通量は少なく、おおむねフラットで走りやすい。町でレンタサイクルを借りて渡船に乗って走りにくるのもいいかもしれない。特に見るべきものはないが、逆にそれがいい。
山陰に入ると風が吹かなくなった。志賀島一周まであと少し。
漁港内では網の修理をしている漁師さんの姿がちらほら見られた。
長さ数百メールもある大きな網を広げるだけでも大変そう。
漁港内に浮かぶ一本釣りの小型漁船。
志賀島一周し終えたあとは福岡を出て北九州へと向かう。
帰りは強い西風に押されて非常に楽だ。
横断歩道のところに現れた邪魔なポール。
この先歩道がなくなるため、反対側の歩道に誘導される。
松林の中に入ると強い風がピタリと止んでしまう。
反対車線は志賀島へと向かう車が多い。早めに行っておいてよかった。
ちょうど昼ころ、公園を通りがかったので休んでゆくことにした。
ときどき日が差すものの、いつ雨が降り出すか分からないような油断ならない天気。
念のため橋の下で休むことにした。
公園内にある歩行者用の橋でとても静か。道路の騒音の方が気になる。
青空キッチン
おっさんのゆく先々が生活の場となる。
広大な公園で人通りは少なく落ち着いて休むことができる。
朝炊いた白米の残りとラーメンの組み合わせ。
寒い日には熱々のラーメンが欲しくなる。
食べている途中で淡白な白米の味に飽きてきたので、ラーメンに投入する。
すると最後まで残さずに食べきることができた。めでたしめでたし。
自分が作った食事は責任を持って全て平らげる。
橋の下によさそうな野宿スペースがあったが、早すぎる時間のため後ろ髪引かれる思いで公園を後にする。夕方に来ていたら、間違いなく泊まっていたことだろう。
市街地で落ち着かない夜を過ごすのなら、ここまで来た方が良かったかもしれない。
まあ過ぎたことだ。あとでウダウダと考えない。
風に乗って東へと進む。
交通量の多い国道は避けて県道を走る。
途中、スーパーに寄って食料の買い出しを行った。客の多くはマスクをせずに出入りしていたので、タオルで頬かむりして短時間で済ませた。
店の前で買った菓子パンを食べていると、流暢な日本語で外国人に話しかけられた。声を掛けられるのは久しぶりだったので驚いた。目立つ黄色の反射ベストを着ていても道行く人は知らんぷり。大都市周辺では話しかけられることは稀。自転車に大量の荷物を積んで旅する人間に、積極的に関わろうという奇特な人は少ない。
県道が終わってしまったので、やむなく国道495線に出る。市街地から離れるにつれて交通量が減ってきたが、それでもストレスを感じるほどの交通量。
途中、いい感じの公園を見つけたので寄って長めの休憩をとる。時間は3時を過ぎたところ。おそらく本日ベストの野宿場所であったが、この時は知る由もなく先に進んでしまう。
明日のできるだけ早い時間帯に北九州の町に着いておきたい。天気は下り坂。しばらく雨が降るようだった。
4時過ぎ宗像(むなかた)大社に到着。なんでも世界遺産に登録されているそうな。
夕暮れ迫る境内に入り、急ぎ参拝を済ませることにした。
片隅に生えていた立派な松。なんでもご神木なんだとか。
一見しただけで風格を感じさせる。
張り出した枝が折れないようにつっかえ棒が設置されていた。
このあとサイクリングロードを走って国道を目指す。
どこかに野宿場所はないかと探すためでもあったが、全く見つからず国道に出てしまう。
今晩は確実に雨に降られるため、できれば屋根付きの場所で泊まりたい。そんな贅沢なことを考えたのがよくなかった。
ずいぶん迷った挙げ句、とある施設の軒下を借りて泊まった。
この日は良かったものの、翌日夜明けのはるか前に撤収することになる。松原の中でなぜテントを張らなかったのかと悔やまれた。
福岡市街===市営渡船乗船===西戸崎~志賀島一周~宗像
立ち寄り場所 金印公園、宗像大社
走行時間 約5時間、走行距離 約70km
ねぐら とある施設
おわり