こんにちは。からあげです。
はじめに
単に早く目的地に着けばいいというものではない。
旅の目的は、慣れ親しんだ日常を離れて、非日常を味わうためでもある。
いつも最短ルートでの移動ではもったいない。敢えて時間をかけていくことで、いつもとは違った風景が見えてくることがある。
こんにちは。からあげです。
今回紹介するフェリー「はいびすかす」は鹿児島と屋久島を結ぶ一日一便の船。
屋久島へ船で行くには、高速船とフェリーの2種類があるが、はいびすかすはもっとも時間がかかる。
まずはそれらの運賃と所要時間を比較してみよう。
鹿児島~屋久島の船便一覧
船名 | 旅客運賃(片道) | 所要時間 | 到着時間 |
高速船 |
9,200円 | 約2時間30分 | 一日11便 始発9時45分 最終18時30分 |
フェリー屋久島2 | 5,200円 | 4時間 | 12時30分 |
フェリーはいびすかす | 3,800円 | 13時間 | 7時 |
注意事項
2020年6月現在、新型コロナの影響で、減便されているので注意。必ず最新情報を入手しよう。
高速船は、屋久島直行便のほか、種子島経由便あり。屋久島では、宮之浦港と安房港の2つの港を発着するので要確認。
フェリーはいびすかすの発着場は、鹿児島本港ではなく町から離れた谷山港。
フェリーはいびすかす要目
船首側からだと、船尾にあるランプウェイが見えないため、ただの貨物船に見えるフェリーはいびすかす。船体はピンク色に塗装されていて遠くからでもよく目立つ。速力18ノット(1ノット=1852m/h)というスピードは、燃料節約を重視する船では速い方。
総トン数 | 1,798トン |
全長 | 105.62m |
全幅 | 17.0m |
航海速力 | 18ノット(約33km/h) |
旅客定員 | 223名 |
車両積載台数 | 40台 |
はいびすかすのメリット
運賃が安い
鹿児島~屋久島の旅客運賃は最安の片道3,800円。時間がかかってもいいから、とにかく安く屋久島に行きたい人におすすめ。
屋久島(宮之浦港)に早朝の7時に着く
運賃の安いこと以上に魅力的なこと。種子島(西之表港)に21時40分に入港してそのまま岸壁に停泊し、翌朝5時に出発して7時に屋久島(宮之浦港)に到着する。
船便では最も早い時間の到着となる。
1泊分の宿泊費を節約できるうえ、早朝の到着で到着日から登山することができるため、登山者に密かな人気がある。
白谷雲水峡やヤクスギランドなら到着日でも日帰り可能。
縄文杉や宮之浦岳は距離が長いため、到着日の日帰りは無理。山中の避難小屋に泊まるか、翌日早朝の登山バスで日帰り登山することになる。
(宮之浦岳は最短ルートの淀川口から往復で約10時間。紀元杉へのバスは始発が遅いので、宮之浦岳日帰りはレンタカーを利用する。)
鹿児島港(谷山港)を18時に出港する
夕方18時の遅い出港なので、昼間に鹿児島市内を観光することが可能。
種子島の島民たちは、町で用事を済ませてからフェリーで帰島しているようす。
はいびすかすのデメリット
13時間も掛かる
屋久島直行便ではなく、必ず種子島に寄港するので時間がかかる。
宿泊費の節約と早朝7時の到着のことを考えると、時間がかかるのはそれほど気にならない。
フェリー乗り場が町から遠い
市街地に近い鹿児島本港から南に10km以上離れた谷山港に乗り場がある。
移動手段を持たない徒歩の観光客には不便。これが一番のデメリットとなる。鹿児島交通のバス(鹿児島市内~谷山港)がフェリーの時間に合わせて一日一往復運行する。
運賃は鹿児島中央駅から谷山港まで片道380円。
鹿児島交通 鹿児島市内線路線図
いわさきコーポレーション(お問い合わせ先)
船の居住性が悪い
もとは貨物船だった船を乗客も乗せられるように改装しただけなので、長距離フェリーのような快適さはない。客室はカーペット敷きの大部屋で雑魚寝の2等のみ。設備は必要最低限でシャワー風呂なし。エンジンの音や振動がもろに伝わってくる。できれば耳栓は欲しいところ。
鹿児島市内中心部からフェリー乗り場(谷山港)まで行く
鹿児島市内中心部から谷山港フェリー乗り場までおよそ15km。とても歩いて行ける距離ではない。移動手段を持たない場合は、中心部から出る鹿児島交通のバスに乗る。
車などで行く場合
市内中心部から混雑する国道225号線を走り、新川橋を過ぎると産業道路(県道217号線)に入る。産業道路に入ってしばらくゆくと、交通量が減って流れがスムーズになる。
谷山港入り口交差点
入り口の看板が小さいので見落とさないように注意する。
産業道路を逸れてフェリー乗り場に向かっているところ。
大型車両が多いので注意。
フェリー乗り場入り口。看板がなければ、ただの岸壁に見える。
バスで行く場合
山形屋バスセンター(金生町)出発の5番線、七ツ島1丁目線のバスに乗車する。
私は自転車で向かったので、バスのことは知らない。
ネットで検索しても、旅行者に分かりやすい情報は出てこない。
早めに行って観光のついでに、現地の旅行案内所でバスの乗り方を確認しておいたほうがいい。
参考リンク 鹿児島交通(鹿児島市内線路線図)
谷山港フェリー乗り場のようす
谷山港フェリー乗り場周辺は、倉庫が点在する港湾地帯で民家は全くなし。コンビニや飲食店などは産業道路沿いにいくつかあるだけ。
産業道路沿いにある大型のホームセンターのナフコ。パンやインスタントなどの簡単な食料なら手に入る。
食料の買い出しは、時間に余裕があれば、鹿児島市街で済ませておいたほうが無難。
種子島(西之表)では一時上陸は不可のため、外に買いに行ったり、食べに行ったりすることはできない。船内で食べるものをあらかじめ用意しておく必要あり。
屋久島に到着してすぐに登山に出かける場合は必ず町で食料を買っておく。島内にはコンビニはなし。はいびすかす船内には売店はなく、カップラーメンとジュースの自販機のみ。
私は中心部からやや離れたスーパー「サンキュー」で買い物した。となりのディスカウントショップ「ベリーマッチ」と並んで建つ。看板を見て思わずにやけてしまった。
フェリー乗り場近く
海上コンテナの上にフェリーの姿がちらりと見えるだけ。フェリー乗り場らしき建物はどこにも見えない。
乗り場の建物はコンテナを改装したもの。道路入り口から入ると、建物の裏手の方にたどり着く。
フェリーが着いている岸壁側が正面玄関。
フェリー乗り場の建物
ピンク色に塗装されたコンテナ。フェリーと同色のピンク色でとてもオシャレ。
岸壁に接岸して荷物を積み込んでいる最中のはいびすかす。
大型のフォークリフトやトラックがひっきりなしに出入りしている。
荷役作業中は危険なので、フェリーには絶対に近づかないこと。港にある公園のような、のんびりと散歩するような雰囲気ではない。
作業中の大型フォークリフト
フェリー乗船券の購入
建物内のようす
人と四輪は電話予約が可能。オートバイと自転車の2輪車は予約不可。先着順の当日販売のみで台数制限(10台程度)あり。
盆正月などの繁忙期に乗船する場合は、できるだけ早めに行って購入しておいたほうがいいだろう。
出港1時間前(17時)までに乗船手続きを済ませておく。運賃の支払いはカード払いOK。
フェリー乗り場には待合室とトイレ、ジュースの自販機があるのみ。
予約・問い合わせ先
受付時間 9:00~17:30
鹿児島 099-261-7000
種子島 0997-22-1355
屋久島 0997-42-0140
フェリーに乗船する
およそ出港1時間前の17時すぎに乗船開始となる。
まずは人と二輪車から乗船する。タラップはなし。人も左舷船尾のランプウェイ(車両搬入口)から乗船する。
乗船の際は、係員の指示に従い足元に十分気をつける。
二輪車は端の方に停める。
自転車の場合は、手すりに立て掛けて、タイヤ止めを設置し、ロープで固縛する。
乗組員にロープで縛る場所を伝えておいた方が間違いがない。
航海中は車両甲板への立ち入りは禁止。船内に持ち込む荷物はあらかじめ別にしておいたほうがスムーズに乗船できる。
フェリーには乗客や車両のほかにコンテナや資材などの生活物資が積み込まれる。
荷物置き場の棚
車両甲板から居住区に入って階段を上ると、カップラーメン自販機、トイレ、荷物置き場がある。2等船室はもう一つ上の階層にある。
写真は居住区内に入ってすぐの荷物置き場。人目につきにくい場所にあるので、高価な品物は置かない方がいいだろう。
階段を上ってすぐに目に入るのがカップラーメンの自販機。
照明に照らされたカップたちが誘惑してくる。
隣にはゴミ袋が下げられていて、燃えるゴミ・空き缶・ビンなどを分別して捨てられるようになっている。
カップラーメンは全品220円。
船内に給湯器はなく、お湯が出るのはカップラーメンの自販機のみ。
持ち込みのカップラーメンにも湯を注ぐことができる。
カップを入れて奥のレバーを押し、フタを閉めてボタンを押すとお湯が出る仕組み。先進の安全装置付きだ。写真のような大型のカップラーメンにも対応する。
自販機には割り箸の備え付けあり。買い物するときに箸を貰っておいた方がいいだろう。持ち込みで箸だけ貰うのは気が引ける。
船室は2等のみ。7区画に分かれていて、そのうち一つが女性専用になっている。
乗船したばかりの時は乗客が少なかったが、あとから種子島へ帰る島民たちが乗って来た。
船室前の通路にはジュースの自販機が設置されている。
出っ張りがほとんどない薄型の自販機。ジュースのみで、タバコ・アルコールの自販機はなし。
通路の奥に喫煙スペースあり。船室内は禁煙。
船内の水洗トイレ。
船酔いして吐きたい場合は大便器を使用する。
鹿児島湾を出るとそれなりに揺れるので、揺れに弱い人は気をつけておいたほうがいい。
いつでも吐けるようにビニール袋を用意しておこう。
船室に入るとすぐに角のスペースを確保した。やはり角が落ち着ける。
客室内には使用料無料の毛布と枕あり。ただし毛布は一人1枚まで。
ブリッジ下から見たようす
重量バランスを考慮されて積載されているコンテナが見える。ブリッジ(船橋)は一つ上の階。右舷側の大型クレーンが視界を遮る。
出港は定刻どおりの18時。谷山港の岸壁を離れて防波堤を抜けると、南に進路を取る。種子島の到着までしばらく時間がある。
さあて、飯にでもするか。
自販機で持ち込みのカップラーメンにお湯を入れさせて貰う。健康に気を遣いもやしを追加した。カップラーメン(豚キムチ、もやし追加)、サバの水煮缶、塩おにぎりが晩飯だ。さっさと平らげて横になった。
床は薄いカーペット敷きで硬め。普段フカフカのベッドで寝ていると、かなり辛いだろう。どこでも寝られるように、板の間で寝る訓練をしておいた方がよい。
ほかの乗客は種子島島民が多かった。缶ビールを飲んだり、弁当を食べたり、ゴロ寝したりして、みな自分の家のように寛いでいた。
さすが貨物船の造りだけあって防音性は低い。客室内で横になっていると、エンジンの音と振動が伝わってくる。目を閉じていると、船員時代を思い出した。
テレビの音や会話の声が気になったので、耳栓をしてタオルをアイマスク代わりにして眠った。
種子島西之表港には、定刻の21時40分前には到着。30名以上はいたと思われる乗客は、おおかた種子島で下りていった。入港後、積荷を下ろす作業をしていてガタガタ音が響いていたが、20分くらいすると静かになった。
静かになると船員が巡回してきて、テレビと室内の照明を切って消灯時間となった。室内で点いているのは常夜灯のみ。メインエンジンは停止していて、停泊用の発電機が回っている。翌朝5時の出港までぐっすり眠った。
船内はエンジンの音が響くし、人の出入りがあるので、耳栓はあった方がいい。おすすめは遮音性が高いモルデックス製の耳栓。百均のものとは比べ物にならないくらいの遮音性がありながら、1組100円以下で買える。高性能耳栓があれば、いつでもどこでも、快適に眠ることができる。
まずはたくさんの種類が入っているお試し品を買って、自分の耳に一番合うものを見つける。
出港30分前くらいにメインエンジンが起動して、定刻通り朝5時に種子島西之表港を出港した。出港前に数人の乗客が乗ってきた。
エンジンの音で一度目が覚めたものの、屋久島までまだ時間があるので再び眠りにつく。屋久島入港30分前くらいに案内放送がされて、室内灯が点けられる。目が覚めると身の回りの荷物を片付けて、車両甲板へと向かう。
荷物を整理して出発準備を整える。
自転車はサーリーのディスクトラッカー。ディスクブレーキは、整備性の良い機械式を選択。丈夫なクロモリフレームにダボ穴付きで前後キャリア装着可能となっていて、ロングツーリングのための自転車だ。
天気は曇りで風はなく海上穏やか。種子島から屋久島まではほとんど揺れず。
屋久島宮之浦港には7時に到着。ちょうど日の出を迎えたときで、東の空が紅く染まっている。
港に着くと乗客たちはあっという間に散ってしまって、あとはトラックやフォークリフトが出入りして荷物を下ろしていた。
宮之浦港の旅客船ターミナル。
寂れた雰囲気がする港。夏季は観光客でとても賑わうようだが、シーズンオフのため非常に静か。
フェリー「はいびすかす」のほか、高速船トッピー・ロケット、フェリー屋久島2(鹿児島~屋久島)、フェリー太陽(口永良部島~屋久島宮之浦~種子島島間)が発着する。
屋久島交通のバス停はフェターミナル前にある。安房方面行きは8時、白谷雲水峡行きは8時10分の出発。バスに乗る場合はおよそ1時間待つことになる。待ち時間の間に宮之浦港から歩いて行けるような店はなし。
ターミナル建物内のようす
観光客の姿はほとんどなし。
宮之浦港のようす
奥に見える三角屋根の建物が観光案内所。屋久島は海岸近くまで山が迫っていて平地は少ない。その僅かな平地に集落が形成されている。
フェリーはいびすかすに乗った感想
今回フェリー「はいびすかす」に自転車と一緒に乗って片道5,750円。(旅客3,800円+自転車1,950円=5,750円)船便の中でもっとも運賃が安い。
船内はお世辞にも快適とは言えないが、普通のフェリーでは味わうことができない珍しい体験をすることができる。時間は掛かるが、一泊分の宿泊費を節約できるし、早朝7時に宮之浦港に着くので、初日から登山に出かけることもできる。などいいこと尽くめ。
天気や日程にもよるが、のんびり旅をする人には、はいびすかすをおすすめする。
ただし、海上が時化ると欠航になるので注意。冬季や台風シーズンは頻繁に欠航して、数日間屋久島から出られなくなることもある。