こんにちは。からあげです。
現在、Karrathaの町を目指して日々ペダルを漕ぎまくる毎日を送っている。
オーストラリアに来れば、雄大な景色を見ながらマイペースで自転車に乗れる。そう思っていた時期は遠い昔のこと。町と町の間が200km以上あるところが普通にあって、自転車だと積載量に限りがあるためかなり無理がある。手持ちの水・食料が尽きる前に町に辿り着けなければゲームオーバーとなる。
そのため必死になって漕ぎ続ける必要がある。ナラボー平原の時みたいに夜が明けてしばらくすると風が吹き始めて日が沈んでしばらくすると風が収まるという、なんとも腹立たしい自然のサイクルが続いている。しかも向かい風と来たもんだ!今日も向かい風にこってり絞られて機嫌が悪いおっさんがここにいる。
朝からショッキングな出来事が起こる。
反対車線の真ん中に横たわる牛の死体。お腹が大きいので子持ちと思われる。夜間走行中の大型車にはねられたのか。見たところかなり新しい。生々しいのでモノクロとした。
昨晩泊まったねぐらの付近には、野生の牛がたくさんいて、無言であちこちを歩き回って葉っぱを食べていた。全く鳴かないと逆に気持ち悪い。牛は大人しく臆病な生き物で、テントの寄って来ることはないだろうが、警戒してワイヤーロックを手元において備えておいた。声を出したり、ライトで照らしても、遠ざかろうとはせず、マイペースでのしのしと歩く。そのうち、どこかに行ってしまったのだった。
そして、今朝一番に見たのが牛の轢死体。見通しの悪いカーブの途中にあって、このまま放置は危険。ドライバーはずらかった。
便利な社会の影でこうした野生動物が犠牲になっている。普段町で生活していると、こんなことに遭遇することは滅多になし。
はねられた牛が子持ちだったことが余計にかわいそうに思えて気分が沈む。こうして自転車を漕いでいられるのも、トラックが昼夜を問わず走って食料を運んでくれているから。私もあの牛の死に間接的に関わっている。ドライバーばかりを責められない。
鉱山をつなぐ未舗装道路。下の道を超大型のダンプカーが通っている。昨晩、どこからともなく音が聞こえて来たのは、10km以上離れた場所にある鉄鉱石の鉱山だった。おそらく夜間も操業していたと思われる。
日が出てしばらくすると、風が出てきて向かい風になる。
なぜ、向かい風になるのか?たまには追い風が吹いてもよさそうものだけど。
レストエリア隣の川は完全に干上がっている。
早朝のレストエリアには多くのキャンピングカーがとまっている。
食べられるうちにチョコバーを食べておく。
今日のとりあえずの目的地はFortescueロードハウス。昼過ぎには到着予定。
追い風に打ち勝って走れ!
右斜め前からの風の時が一番対向車の風圧を受ける。
前面が切り立ったキャビンの場合は風圧が強烈!ボンネットが飛び出ているタイプは風圧はマイルド。
上体を思いっきり伏せて風圧に備えろ!こいつはヤベー!!
道路脇に牛の群れがいる。
大地の色に合わせたような赤茶色の牛たち。耳にタグを付けた牛がいる。
移動する牛たち
水際でのんびりする牛たち
この水溜りが枯れたら、どうするつもりだろう?
道路脇を歩く牛たち
危ないから向こう行けって!
それにしても暑い!暑すぎる!!今が冬だって?ふざけるな。
昔こんなことしていた奴がいたな。
そのまんま。
ロードハウスでハンバーガーを食べることを夢見て走り続ける。
ロードハウスまで5kmの標識で久しぶりのガッツボーズ。
いやあ、嬉しいな!
がしかし!まだまだ先はある。
もう勘弁してくれ!
ヨレヨレになってロードハウスに到着!
なぜか全く人気のないキャラバンパーク。
それにしても木陰が少ないな!
軒下がやけに狭い。
フラフラになって店内に入る。壁に貼られたメニューを見ながら、拙い英語で注文する。
それにしても、ロードハウスに来る度に思うのは、なぜ他の人はこうも涼しげなんだろう?荒野を走ってきたらボロボロになるだろう?普通。
端っこの東屋の日陰で休憩する。ここが一番の休憩ポイント。
空いてて良かった♪
おっさん、ステーキバーガーを食べる。
うむ、なかなか美味いな!しかし、量が全く足りない。
注文の品を待つ間。テーブルの上においてあった新聞を目にする。なんと週刊の新聞!芸能ネタがトップニュース。他の地域で起きていることは、たぶん外国で起きていることのように思っているのだろう。よその地域には関心がないと見える。
週刊だけあって非常に分厚い!なんじゃこりゃ!!
オーストラリアのスキー場にはこんな格好の姉ちゃんがたくさんいるらしい。前方不注意に気をつけねばならんな。
やっぱり寒いところに憧れるみたい。南極ツアーだって。
紙面はフットボールに最も多く割かれている。充実した内容。
とにかくオーストラリア人はフットボールとバーベキューが大好き。
ポテトとフィッシュバーガーを頼んだ。
初めてChipsがポテトの意味だと分かった。では、Fish&ChipsのFishとは?まさか焼き魚が出てくるわけではあるまい。
レジのお姉さんに腹が空いていると言ったら、サービスしてくれたみたい。ミニサイズのポテトがてんこ盛り。
いやあ、サイクリストにとってボリューム満点のサービスが一番嬉しい。
1回目と打って変わって、スッキリした顔をしていたので笑っていた。どんだけやつれていたのだろう?
揚げたてのフィッシュバーガー。
食べすぎたので横になる。
今が一番暑い時間帯。向かい風も強くて、こんな時に走るなんてバカ。アホ、間抜け。
すぐ隣にあったお墓。若くして病気や事故で亡くなった子供の墓。おもちゃやぬいぐるみが置かれている。
オーストラリアでは見かけることが多い。町自体が孤立した場所が多く、小さな町には病院がない。早く運ぶことができたら助かった命も、オーストラリアの広大な大地では助からないことが多いのだろう。
そうした遺族の悲しみが伝わってくる。会社を一時休職して心を癒やす旅に出るのだろうか?時間とオーストラリアの大地が心の傷を癒やしてくれるのかもしれない。
風が弱くなってきた!ような気がする。
ヨシ、出発するぞ!
次のKarrathaまで111km。
走れ!地平線に向かって。
行け!行くんだおっさん。
現実的な距離になってホッとした。
今日、ペダルを漕ぎながら蟻塚について考えていた。蟻たちはなぜこんな高い蟻塚を作るのだろう?と。オーストラリアを走っていてよく目にするのが、Flood Wayという黄色の標識。大雨が降ると、水はけの悪い平らな大地は水浸しになる。すぐに水が引く時もあるだろうが、酷い時は数週間、数カ月間に及ぶ浸水もあるはずだ。これまでロードサイドで野宿を頻繁にできているのは、水溜りが干上がった砂地の平らな場所があるから。乾燥地帯の草は硬くてとてもではないが、上にテントを張ることができない。草木が生えていなくて地面が平らな場所がテントを張るのに最も適している。そんな大雨が降ると水浸しになってしまう場所に、巨大な蟻塚が見られるようになった。なぜなんだ?
巨大な蟻塚
Floodwayの標識
寒さ暑さを凌ぐだけなら、普通のアリのように地面に穴を掘って巣を作ればいい。だが、地下に巣を作ると、洪水が発生した場合、中にいる蟻が溺れて全滅する恐れがある。まだ数日間程度なら、所々にできたエアポケットにいる蟻たちが生き延びて、巣を存続させることができるだろう。どうやって自分たちを生き延びさせられるか?生まれながらDNAに刻まれた高い蟻塚を作れという指令に従って、黙々と蟻たちは蟻塚を築いて行ったに違いない。
時には蟻塚を作っている最中に洪水が起きて、蟻塚の蟻が全滅してしまったかもしれない。空き家となった蟻塚に、近くからやって来た蟻たちが移り住み、蟻塚を引き続き作ってゆく。荒野に点々とそびえ立つ蟻塚は私の身長より越える高いものもある。材料はオーストラリアの乾燥地帯でよく見られる赤茶けた土。触るとコンクリートのように硬くて、ところどころに出入り用の穴がある。蟻塚の奥深くに女王蟻がいて、子孫を増やすために卵を生み続けているのだろう。高い蟻塚であればあるほど、洪水から身を守ることができる。多少の被害が出ようが、女王蟻さえ生き残れば、蟻一族は存続できる。蟻の一生はどの程度か分からないが、蟻たちの日々のコツコツとした営みにより種が絶えることは絶対ない。
自転車で走っていると暇だから、つい考え事をしてしまう。これでオーストラリアの謎をまた一つ解いたぞ!この調子で一つずつ謎を解き明かして行こう。ネットで調べるのではなく、じっくり観察し考えたうえで答えを導き出す。蟻塚の件は、たぶんこれが正解。雨季に大量の雨が降り洪水が起きる北部地方で蟻塚が多く見られるようだから。
17時まで走って道路脇でキャンプ!
道路から丸見えだが、構うものか!