こんにちは。からあげです。
朝3時過ぎ、出漁する漁船のディーゼルエンジンの音で目が覚める。
やっぱりな。
夕方は閑散としている漁港だが、早朝になるとにわかに活気づく。
八代海出入り口に位置する牛深港。絶好の漁場の真っただ中にあって漁船が出ていかないわけがない。出漁ラッシュは30分ほど続き、漁船がみな出てゆくと周囲は元の静けさを取り戻した。
ふぅ~やれやれ。
一度完全に覚醒してしまうと、二度寝するのは難しい。脳内で今後のプランを練りながら朝を待つ。
そしていつものように朝7時ころ出発。「ころ」というのがポイント。すっかり体内時計は野宿生活に馴染み、時計を見なくてもだいたいの時間は分かるようになっている。いちいち時間を確認して何時に出ようということはしない。これが自由人の特権だ。腕時計は奴隷の証。もう二度とするものか。
早朝の漁港のようす
ほとんどの漁船は出払ってしまい閑散としている漁港内。
昼前の水揚げの時間帯になると、大挙して漁船が帰ってきて再び賑やかになることだろう。
漁獲を制限するために、たいていは漁ができる時期と時間、場所などが決められている。これは絶対に守らなければならない鉄の掟。バレたら漁協追放。
ハイヤ大橋を渡る。まだ通勤通学時間帯の前のため、人気がほとんどない。
橋の欄干部分に取り付けられているのは、おそらく風よけ。
風の通り道にある橋の上は強風が吹きやすい。歩行者が飛ばされないようにするとともに、風圧で橋が壊れないする。角度を付けて力を受け流す。
外部からの圧力は、さりげなく受け流すようにしたいもの。
朝っぱらから爺さん婆さんたちが元気いっぱい。
夜明けとともにプレー開始しているようす。皆童心に返った感じでわいわいと楽しんでいる。
元気でなによりだ。
牛深港沿いの直線道路をゆく。どこまでもフラットで走りやすい。
スイスイ気持ちよく進む。
港の奥の桟橋に係留中の海上自衛隊の自衛艦と海上保安庁の巡視船。
ねずみと白の組み合わせが面白い。
どちらも外洋の荒波に耐えられる重厚な造り。
牛深から国道266号線で北上する。
峠を越えて坂を下ったところで寒くなってきたので一息付く。
自転車は峠の上りと下りでは寒暖の差が激しいので、こまめに衣類を着脱しなければならない。
無理して走り続けると、余分に体力を消耗してしまう。
遠浅の内海
入り組んだ海岸線の中に広がる静かな海。渡り鳥たちの鳴き声が聞こえてくる。
走り始めたと思ったらまた休憩する。東屋あるところおっさん現る!
うむ~、この東屋は居住性が低いので30点。短時間の休憩用だな。もっと長く快適に休める東屋であって欲しいものだ。それでこそ、公園東屋としての存在意義がある。以上、東屋研究家おっさんの講評終わり。
海沿いの快走路をゆく。またもやフラットになって非常に走りやすい。しかも交通量はわずか。道行く車は大きく距離を開けてくれる。
白木河内で国道389号線へ折れる。この先にあるのは世界遺産に登録された崎津教会だ。
9時過ぎ、早くも崎津の道の駅に到着する。
駐車場はガラガラで人気はなし。
できて間もない新しい道の駅だった。さっそく施設チェックさせてもらおう。
広大な屋根下に思わず大興奮。二輪専用の駐輪スペースがある。
おお、これは凄い。荒天時の緊急避難スペースもある。
道の駅で崎津集落の地図を手に入れた。
よし、このマップを頭に叩き込もう。
道の駅から少し離れた公園内に休憩用の東屋あり。
低い壁もあり耐候性はまずまず。何より目立たないのが良い。
短時間の休憩に利用させてもらったが、とても快適だった。おっさんの評価では90点。文句なしの合格点だ。夕方遅くから朝早い時間までなら特に問題ないだろう。
ここでカバンからジャンボあんぱんを取り出す。イケダパンというメーカーは私の生活圏では見かけない。スーパーで安く売っているので、ついつい買ってしまう。気が付くとイケダパン。
対岸から崎津教会を眺める。白い壁と尖塔が良く目立つ。周囲に馴染んでいながらも、存在感を示す興味深い建物だ。世界遺産に登録されただけはある。
集落内を通って教会を目指す。
こういう狭い道路では自転車がいい。交通の妨げになることなく、立ち止まってゆっくりと見学できる。
あいにく世界遺産の教会は工事中だった。
ガタガタと作業の音が聞こえてきて落ち着かない。次回があれば、その時ゆっくり見学するとしよう。
路地で会った猫の親子。日向ぼっこ中のようす。
このとき煮干しを持っていなかったのが残念。
カメラを向けるとそっぽを向かれてしまった。それはそうだ。タダで撮影しようとは虫が良すぎる。猫の世界も厳しいのだよ。
崎津教会を出たあとは戻らず、そのまま海岸線の道をいった。
しばらく行ったところで国道に復帰し、やって来たのは丘の上に建つ大江教会。
白い建物は遠目でもよく目立つ。
坂道を上っている途中、くまモンたちに励まされる。
表情豊かなくまモンが面白い。熊本にやって来た実感が湧く。
丘の上のこじんまりした大江教会。個人的には崎津教会よりもこちらの方が好き。人が少なくて静か。それに建物の雰囲気が良い。尖塔の十字架が青空によく映えている。
教会から麓の集落を見下ろす。
昔、ここから見る風景は大変長閑なものだっただろう。田園のなかに茅葺き屋根の民家が散在するような。
途中で休んだ公園でまたまた東屋を見つける。
太い柱が壁代わりの風よけになる。
風光明媚な妙見浦周辺
海岸に降りて散策することができる。旨そうな生き物がいないか探して歩く。
九州には丸形ポストがたくさんある。
子供のころはよく見かけたタイプのポストだが、近頃では見かけなくなった。塗り重ねられたペンキが分厚い層になっている。
爽快、海岸線の道をゆく。長い間雨に降られていたのがウソみたいだ。
今日の最も期待する立ち寄り先は下田温泉。ゆっくり走って時間調整していた。
天気が良い日には風呂に入って洗濯したい。天気が良くて早い時間であれば、一日ですべて終わらせることができる。
私は風呂に入ったら、下着だけは着替えたい派。着替えができないのなら、いくら汚くても風呂に入りたくない。昔から中途半端は嫌。大嫌い。酒を飲むときは泥酔して意識を失うまでトコトン飲む。そんな飲み方しかできないので、酒は完全に止めることにした。
まだ時間が早かったので、足湯に寄って湯を試してみる。
うむ。なかなか良い。あとが楽しみだ。
たっぷりと湧き出る温泉。
目当ての温泉は下田温泉センター白鷺(しらさぎ)館。
こちらの公衆浴場の方はなんと200円で入ることができる。
温泉センターと公衆浴場は同じ建物内にあるので非常に紛らわしい。間違えないように注意したい。
営業時間
温泉センター 09:00~21:00
公衆浴場 13:00~22:00入浴料
温泉センター 中学生以上500円
公衆浴場 町内大人(高校生以上) 100円、町外200円定休日 毎月第2第4木曜日
田舎らしからぬ自己主張する看板
温泉は100%源泉かけ流し。豊富な湯量とあっさりした泉質、そしてほどよい熱さ。私が好きな温泉そのものだった。ちゃっと入ってちゃっと上がる。それが私の入り方。
着替えと石鹼を出してスタンバイする。
準備はOKだ。まだかな。
営業時間直前になると、どこからともなく地元の人が現れる。畑仕事の帰りに寄ったと思われる原付がいい味出している。野良仕事のあとの温泉は最高だろう。
私の自転車も負けじと生活感を出しまくる。
温泉に入って身も心も清められたあと、近所の公園で昼休みにする。
すぐさま水道で下着を洗ってそこら辺の柵に掛けて干す。
公園では爺さん婆さんたちがグランドゴルフをしている。
構うものか。生活感を出して何が悪い。
邪魔にならないところで荷物を広げてラーメンを作る。昨日買った生姜がとてもうまい。量がたっぷりあって全然減らない。
朝炊いた玄米ご飯とアツアツのラーメンの組み合わせは最強。玄米でお腹を膨らませ、アツアツの汁で体を温める。麺は嵩を増やす。
休んでいるとお年寄りたちに囲まれて質問攻めに会う。
どこから来たのか、どこへ行くのか、毎日何キロ走るのかなどなど。仕事は何をしているかは聞かれず。さすが人生の先輩。分かっていらっしゃる。察してあえて聞かないのも優しさ。
もう少し公園でゆっくりしたいところだったが、温泉地ではさすがに野宿する気にはなれず、先に進むことにした。汗をかかないようにゆっくりしたペースで走る。道が真っ平で非常に快適。
今日の目的地は嶺北(れいほく)町のあたりまで。島のように飛び出た岬に野宿場所がありそうな気がする。時間は3時ころ。距離は10㎞もない。楽勝モード。
時間の余裕がある今、自転車の整備をすることにした。
道路脇の退避スペースに自転車を停めて、まずは機械式ディスクブレーキの調整。Vブレーキやカンチブレーキとは違って効きが良い。雨天や過積載の状況で効果絶大。気持ちに余裕が生まれる。
だがディスクブレーキでも機械式はこまめな調整が必要。ブレーキパッドが薄くなってくると、調整がシビアになる。ブレーキキャリパーを動かす荒業を使って引き代を確保する。
ブレーキ調整のあと、以前から気になっていたリアディレーラー周りの異音の元を調べる。聞き耳を立てつつクランクを逆回転させる。何度かやっているうちにプーリーから音が出ているのを突き止めた。
リヤディレーラーにはテンションプーリーとガイドプーリーの2つのプーリがある。新車を購入してから油を差した記憶が全くない。大雨でも走っているのだから油切れして当然だろう。自転車を傾けてチェーンオイルを差してやると異音は消えた。
文明を感じさせる火力発電所。薩摩川内の原発からは電気を引いていないようす。
国道を逸れて四季咲岬(しきさきみさき)を目指す。語感がよい四季咲岬。何度でも言いたくなる。どもるから脳内で何度もリピートする。
松林の間から海岸が見える。
集落の中に海水浴場があったのだが、人気が多く野宿には不向きな場所だった。
地元の人が入れ替わり立ち替わりやってきて落ち着かない。
さらに奥へと進み、四季咲岬付近に私が探し求めていた人気のない公園を発見した。
広大な公園内には東屋やトイレが整備されている。
駐車場前のトイレは屋根が広くてなかなか良し。だが簡単に車を横付けできる人工物は避けた方がいい。
さらに奥へと進むと芝生の広場があった。付近に民家は全くなし。駐車場からは離れているので夜間人がやってくることもないだろう。
草刈り作業が終えた軽トラが出てゆくのを待って、目立たない端にテントを設営した。
日没までまだ時間があるが、人がやってきそうな気配は全くなし。
下田温泉の公園で頂いたデコポンを食べる。出ベソのように出っ張っていて妙に面白い。
甘くて瑞々しい。
日没まで公園内を散策する。岬の先端にある灯台からは真っ赤な夕日を見ることができた。
今日は久しぶりの会心のサイクリング日和。しかも温泉に入ったうえに洗濯も済ますことができて上出来の一日だった。こんな日が続けば自転車旅は最高なのだが、そう毎日楽をさせてはもらえない。長い苦行の合間にわずかな癒しの時間があるのみ。まるで自分の人生みたいだ。