こんにちは。からあげです。
ようやく念願かなって、ロケットの打ち上げをこの目で見ることができ、本ツーリングの目的を達した私は、快適な中種子町のキャンプ場で一夜を過ごした。久しぶりにいつもと異なる場所での宿泊に心が躍る。夕方から夜にかけて一時的に雨が降ったが、夜半すぎに雨は上がり月明かりに照らされた。
連泊したい誘惑に駆られたが、「安定こそは我が身に破滅をもたらす」と言い聞かせて荷物をまとめて出発する。
日が昇ってしばらくが経ち、暖かくなってきたところ。ようし、出発だ!
交通量の少ない道をゆく。
今日はまず中種子町の中心部で食料を手に入れ、そのあと東海岸沿いを北上する。そして適当な場所を見つけて野宿の予定だ。ここしばらくキャンプ場泊まりが続き、何もないワイルドなところで泊まりたくなってきた。
サトウキビ畑が多く目立つ種子島。
暖機終了。そろそろ本気を出してゆくか。
中種子町の中心部に近づくにつれて、離島とは思えないような町の風景となった。
徐々に交通量が増えてきた。気を引き締めてゆく。
町中心部のショッピングセンターに到着。
写真には写っていないが、ほかにホームセンターのサムズやドラッグストアのマツモトキヨシやコスモスもある。ここに来れば何でも揃う。九州本島とはなんら変わらない。一方の屋久島には大きなショッピングセンターはなし。
駐車場には軽自動車が目立つ。
ラーメンには長ネギが絶対必要。そう爺ちゃんが言ってた。
長尺物はこのようにロープで縛っておく。
なんだか一気に生活臭が溢れてきたな。
ちょっとあんた大げさ過ぎるでしょ!
欧米テイスト溢れる注意看板。まだヨーロッパには行ったことがないが、おそらくこんな看板が町の至るところで見られることだろう。私には分かる。
道路脇でサトウキビの収穫作業中。大きな機械で一気に刈り取っている。
道路脇に停って作業のようすを眺める。
コンパクトな自転車だとこうしたことが気軽にできる。
海岸線をゆく。
光線の加減で振り返って撮影。否が応でもテンションが上がる。これぞ、種子島の風景だ。
開放的な海岸。どこまでも続く青い海。
あの水平線の彼方に何があるのか。
航空基地作戦室跡
空襲に備えて鉄筋コンクリートで作られた作戦室。現在、出入り口は鉄の扉で封鎖されている。
サトウキビ畑の中の道をゆくと、フェンスに囲まれた広大な施設あり。
なんだろう?よし、行ってみよう。
やって来たのは増田宇宙通信所。ここもロケット打ち上げの重要な施設。
巨大なパラボラアンテナが宇宙の人工衛星と交信している。
小さな展示室あり。種子島宇宙センターと比べるとかなり小さい。
それでも一見の価値はある。
目に付いたのは、敷地内ですくすくと元気に育つあこうの木。種子島の気候に合って巨木に成長している。
道路脇に置いてあるサトウキビの山。収穫されたサトウキビは一時このように道路脇に置かれ、別のトラックで農協まで運ばれるようす。
おや?なんだろう。絶景だって。行ってみよう。
小道を入って行ったところに展望台あり。
絶景というほどではないが、そこそこ見応えのある風景が広がっていた。
この時、たまたま通りがかった地元の方に話しかけられる。何でも少し北にある馬立岩屋の景色がいいらしい。
県道からずいぶん下って海岸まで下りてくると、馬立(まだて)の岩屋と呼ばれる海蝕洞があった。自転車を置いて周囲をうろつく。
この洞穴は、波の侵食によってつくられたもので、特に波の勢いが強い太平洋に面した東海岸では、このような洞穴がいくつも見られます。
「馬立」の名の由来は、「修験道の犬神使いであった第十代島主・種子島幡時(はたとき)がこの洞穴で修行中に忽然と姿を消し、彼の愛馬だけが洞穴の前で主人の帰りを待っていた」ことにちなむと言われています。
また、この辺りを「犬城(いんじょう)」呼ぶのもこうした幡時の逸話からきているようです。
さらにこの岩屋は、南種子町の宝満(ほうまん)の池につながっているとも言われている伝説の洞穴です。
まあ実際のところは波にさらわれたのか、この世に絶望して自ら命を絶ったのか、そんなところだろう。
ちょうど干潮時で潮が引いている。
地元の漁師さんが貝のようなものを採っていた。
崖には貝の化石が至るところにある。これがアンモナイトというやつか。
ふむふむ。興味が尽きないな。
県道に復帰するまえに、玄米ご飯を食べて腹ごしらえする。
海を眺めながらゆっくり食べる。
県道への長い長い上り。長い間、テント内に引き篭もっていたため、完全に体が鈍っている。
猛烈な上りは押して上がった。無理して漕ぐと、駆動系に負荷が掛かる。
来る時は下りでブレーキ掛けっぱなし。急な坂は無駄なエネルギーを使う。ここはサイクリスト泣かせの場所。
片側交互通行区間
ほとんど交通量がない県道だが、忘れたころに対向車がやって来る。それが種子島。
信号はしっかり守る。
県道に復帰するだけで猛烈に消耗した。
しばらく行って道が広がった場所で休憩することにした。
縁石に座ってパンを食べる。こういう時のアンパンは体に染みる。
道路脇の柵に大根が天日干しされている。
漬物用だろうか。
道路脇の退避スペースに置かれたコンテナの山。
みかん収穫用と思われる。
3時前、公民館の前を通り掛かる。
建物の前には水道の蛇口あり。まだねぐらを決めるのは早いが、とりあえず水だけ汲んでおくことにした。海岸で絶好の野宿場所を見つけても、水なしでは泊まることができない。
その後も淡々と走ってカシミヤ橋までやって来た。
見通しの良い直線道路。
風の通り道の谷に架けられた橋。
20m/S以上の強風が吹くと通行止めになる。
歩道がだだっ広いカシミア橋。
転落防止用のフェンスが非常に高い。
カシミア橋の名前は、アメリカの商船「カシミア号」に由来しています。
「カシミア号」は明治18年(1885年)に種子島東方沖で難破し、乗組員が立山海岸と伊関海岸に漂着しました。この時、安城・伊関の両村民は、漂着した乗組員を救助し、手厚い介抱を行い母国に無事に帰しました。そして、この時の人道的行為がアメリカ政府に感謝され、当時のクリーグランド大統領より感謝状と金メダル、さらに5000ドルの大金が両村に贈られました。また、このことを記念するために、安城小学校には「紀徳碑」が建てられています。橋の名前を決めるにあたり、安城と立山校区に意見を求めたところ、「この国際的美談は地域の誇りであるので、この船の名前を地元にできる種子島で一番長い橋の名前にして、これからも永久に語り継いでいきたい」との強い意向があったことから、「カシミア橋」としました。
橋からの眺め
交通量の少ない道にしては立派過ぎる橋。誰も急ぐ人はいないのだから、橋など架けずくねくね道を行けばいいじゃないか。
アップダウンの繰り返しで消耗する。
2インチ幅のタイヤは想像以上に抵抗が大きい。舗装路ではもう二度と履かない。
交通量が少ないのが救い。徐々に余裕がなくなり、景色を楽しめなくなってきた。
もういかん。そろそろねぐらを決めよう。
とか言いつつ寄り道する。
ここはあこうの木のトンネル。道路を跨ぐように生えている。
むむ、これはガジュマル?
もう何が何だか分からん。
アスファルトに根を生やす木。
それとも、上から舗装しただけなのか?
かわいい簡易郵便局。こういうところで週3日、3時間ずつだけ働きたい。
そんな暇人を寄せ集めれば、毎日しっかりと営業できそうだ。
ナイスなボンデン。
こういうのは地味に面白い。見てから5分くらいしたのち、ニヤニヤ笑えてくる。
広大な岸壁。漁港の一角が整備されていたが、係留されている船はなし。
地元の人が釣りに来ていた。
積まれた波消しブロックの影で泊まろうかとも考えたが、釣り人の出入りがあって落ち着かない。
まだ日没まで時間があるので先に進むことにした。
集落を抜けると、しばらくは民家なし。
人気がなくて野宿にはいいのだが、あいにくひと目に付かない場所がない。
ここはやむなし。種子島の最高峰「天女ケ倉」標高238m方面に行くことにした。
県道75号線を逸れて山頂へと続く林道へと入ると、緩やかな上り坂が始まった。
無理せずに軽いギヤで上ってゆく。
2時間以上掛かってようやく山の上に到着した。
すでにヘロヘロ。どこでもいいからテントを張って休みたい。
幸い、風は弱く設営場所は選べる状況だった。
山頂付近には立派なキャンプ場があったのだが、有料施設を無断で使用するわけにはいかない。
トイレ近くの水飲み場の蛇口を捻ってみると、水圧が低く白濁した怪しい水が出てくる。
キツい思いをして、下から水を持ってきて良かった。
野宿に最適な東屋もあったのだが、車を横付けできたのでほかを当たることにした。
夜間、わざわざこんな辺鄙な場所にくる人間がいるとは思えないが、絶対にいないとは断言できない。大都市近郊の展望スポットには必ずと言っていいほど、夜景を見るためにカップルがやって来るので注意が必要だ。
野宿者は彼らとは相容れない存在。できるだけ距離をとることに越したことはない。
キレイに下草を刈り込んだ神社前も良さそうだったのだが、神聖な場所でテントを張るのは気がひける。お参りだけしてほかを当たった。
そのようにして最後に行き着いたのが、とある施設の影の細長いスペース。
アライのエアライズ1がジャストフィットして思わずニンマリ。
テントを使い込むと、設営可能の広さがあるかどうか瞬時に分かるようになる。
自転車を眺めながら夕食を作る。
晩御飯は具をたくさん入れたチキンラーメンだ。
玄米を入手できるところは限られるため、ほかのものを食べてできるだけ温存しておきたい。
チキンラーメンはたまに食べると非常にうまく感じる。
ギトギトの脂が体に染みる。
今日は中種子町市街地経由で種子島の東海岸を走り、種子島最高峰の天女ケ倉まで。
明日は北端の喜志鹿崎を目指して、あとは気の赴くまま適当に走っておしまい。
さて、どうなることやら。
おわり