こんにちは。からあげです。
はじめに
去年新車で購入したサーリーのディスクトラッカーは、世界を旅するサイクリストにとても人気のあるロングホールトラッカーのディスクブレーキ版。雨が降ろうが、荷物を満載しようがしっかりとブレーキが効いてくれて安心して乗っていられる。
今回整備するハブという部品は、ホイールの中心にあってボールベアリングを内蔵していて、定期的にボールベアリングの当たり調整をする必要がある。(それを玉当たり調整という。)
自転車を購入した時に、「1,000kmくらい走ったら玉当たり調整してくださいね!」と言われたことでもあるし、オーストラリア出発を目前に控えた今、少しでも新しい自転車の取り扱いに慣れておくために、玉当たり調整をすることにした。
装備されているハブは、MTB上位グレードのXTで、耐久性と密封性が高くて転がり抵抗も少ない優れたものだ。
フロントハブ(HB-M8000)の調整
フロントハブ(HB-M8000)組立図
shimanoディーラーマニュアルより
必要な工具
・17mmハブスパナ
まずはやりやすい前輪から行うことにした。
世界のシマノ XT(HB-M8000)のハブ。
まずは自転車からホイールを取り外して、ブレーキローターを外したところ。
すでに何度も繰り返し行っているため、戸惑うことは一切なし。試行錯誤しながら、無駄に回数を重ねただけある。(これが飲み込みの悪いおっさんの利点。普通2,3回やれば簡単に理解できることを、おっさんは10回以上やらないと納得、理解することができない。つまりとんでもなく要領が悪いということ。無駄に回数をこなしていると、頭ではなく体で覚えられるようになる。理解するのは後からで全然OK。)
こちら側はブレーキローターが付いている左側。
シャフトの穴は六角に切られているため、六角レンチ(5mm)を挿せる仕様となっている。
ハブスパナ(17mm)が掛からないので、シャフト両端に5mmの六角レンチを掛けて緩めるか、反対側の玉押しにハブスパナ(17mm)を掛けて緩める。
玉押し部にプラスチックの防水カバーが取り付けられている。
一番手前がロックナット。玉押し部を固定するためのもので、中心に六角穴が空いている。
防水カバーは、切り欠き穴にマイナスドライバーを突っ込んでこじれば、簡単に外れるようになっている。
この時、防水カバーが簡単に外せることが分からなかったため、シャフト両端に5mmの六角レンチを掛けてロックナットを緩めた。
5mm六角レンチ2本でロックナットを外したところ。
ロックナットを緩めると、防水カバーと一緒に外れた。
防水カバーの付いたロックナット。
写真は内側。防水カバーの内側にOリングが取り付けられていて、水やゴミが入らないようになっている。
シャフトの反対側の六角穴に5mmの六角レンチを挿して、手前の玉押し部に17mmのハブスパナを掛けて緩めているところ。
ハブスパナの掛かり具合は完璧!
さすがは専用工具だけのことはある。
プレミアムグリスのまとわり着くような粘着性に戸惑うおっさん。
玉押し部を外したところで、単体側からシャフトを引き抜いてみる。
恐る恐る抜き出しているようす。
シャフトにはプレミアムグリスがべったりと塗られている。フロントハブのベアリングはバラバラにならない仕様だが、突然ポロッと出てくるかも知れず、怖くなって元通りに戻すことにした。
まあ、いちおう確認したまで。劣化は全くなし。ベアリングの当たり面は滑らか。
元通りに戻す前にベアリングのグリスを増量しておく。この時のために奮発して買っておいたshimanoのプレミアムグリスを惜しげもなく投入する。
今回、初めてハブをばらしてみて、普通のグリスとは粘度が全く違うことに驚いた。大1本300円くらいのリチウムグリスを使う気にはなれなかった。
シャフトを元通りに挿してホッとしたおっさん。
グリス増量していい感じになったような気がする。
気分の問題だろうが、自分でグリスを増量したという事実が、困難な状況に陥った時にも自信を持てるようになる。素人が必要もなくバラすと、せっかくの良好な状態が悪くなるだろうが、弄らずにはいられない。
玉押し部分のベアリング当たり面。
非常に滑らかでツルツルの状態。プレミアムグリスを薄く塗ってから取り付けた。
ブレーキローター側の玉押し部のハブスパナ取り付け部分は、微妙に位置が悪くてスパナの掛かりが悪くなっている。
こちら側はあらかじめロックナットをしっかり締めておいてから、シャフト穴に通すようにする。
玉押し部を調節したところ。これからロックナットを締め付けることになるのだが、玉押し部をハブナットで押さえつつ、ロックナットを締め付けなかったため、何度やっても締め付けすぎとなった。
当たり調整に注意が行き過ぎて、肝心のロックナットの締め付けが疎かになっていた。
フロントハブ(HB-M8000)組立て要領
shimanoディーラーマニュアルより
今回のハブの場合は、玉押し部はしっかりと固定しておいてロックナットを締め付ける必要がある。
リヤハブ(FH-M8000)の調整
フロントハブ(FH-M8000)組み立て及び分解手順
shimanoディーラーマニュアルより
必要な工具
・17mmハブスパナ
フロントハブの玉当たり調整は、何度やっても満足できなかったが、同じことの繰り返しで埒が明かないので、リヤハブの玉当たり調整を行うことにした。
基本構造はフロントに似ているが、フリーハブが付くのが大きな違いとなっている。
まずはリヤホイールを外してからブレーキローターを外したところ。
スプロケットが付いたフリーホイール側のロックナットは分解不可で、ハブナットを掛ける溝がないため、ブレーキローター側を分解する。
玉押し部にハブスパナ(17mm)を掛けてシャフトの六角穴に5mm六角レンチを挿して緩める。
玉押し部には、薄いハブスパナしか掛からないようになっている。
作業していて何気に気がついたのだが、必要工具が5mm六角レンチと17mmハブスパナだけでいいということに。
他の型式のハブだと、大きなハブスパナが2本必要だったりする。さすがは元世界一周サイクリストの店主。ロングツーリングに適したパーツの選び方を心得ている。目から鱗とはこのことではないか!などと思いながら作業を続けるおっさんであった。
ロックナットを外したところ。
フリーホイール側のシャフト穴に5mm六角レンチを挿して玉押し部を緩める。
玉押し部のベアリング当たり面。
非常に滑らかでツルツルになっている。
シャフトを抜いたところ。
実はこの時、何度調整をやっても固くなってしまうので、シャフトを抜いてみることにしたのだった。
シャフトを抜いたところ。
フリーホイール側のダブルロック部は分解できず。フリーホイール部のベアリングはバラバラになるタイプであったため、慎重に作業を進めた。
ベアリングの当たり面、グリスに劣化は全くなし。
その後、元通り?に組み立ててテスト走行に出かけたのだが、強い追い風が吹いているというのに、向かい風の中を走っているかのようで、ペダルを漕ぐのを止めると直ぐに失速してしまう。
すぐさま家に戻って再びハブをばらしてみる。
組み立てる前にデジカメの画像を見比べて、おかしなところがないかチェックした。するとロックナットに付いている防水カバーを付けたままで、締め付けていることに気がついた。
そう、ロックナットを締め付ける際に、玉押し部を押さえていなかったので、連れ回りしてキツくしまっていたのだ!何度やっても同じ結果になるため、ギブアップして自転車屋さんに助けを求めようかと考えていたところだった。
今度はしっかりと玉押し部を固定しながら、ロックナットを締め付けた。
スパナで固定しておいても、若干キツくなってしまうので、当たりを緩めにして締め付けるといい感じになった。
たかが玉当たり調整だが、手順を理解していなかったため、半日以上も費やしてしまったのだった。しかし、この何度も繰り返したことは、きっとおっさんの体に刻み込まれたことだろう。ピンチになった時は、必ずや思い出してくれるはず。
玉当たり調整をし直したら、スムーズにホイールが回って嬉しくなった。
馬鹿みたいに何度も何度も回して喜びを噛みしめるおっさんだった。
こちらはリヤホイール。
チーと言いながら軽く回るホイールにおっさんはガッツポーズ。
嬉しくて嬉しくて何度も空転させるのだった。
この日は寒いなか、遅くまで作業をやっていてヘトヘトだった。
テスト走行は翌日にしてさっさと休むことにした。
翌日、玉当たり調整のやり直し
翌朝、しっかりと休んでパワーを充電したおっさんは、再度玉当たり調整を行うことにした。
前日きちんとやっておいたが、疲れで作業が雑になったような気がしたので、念のためやり直す。
1日経って気分を新たにすれば、新たな発見もあるかもしれない。
作業前にチョコレートを食べるおっさん。
最近、甘いものを食べるようになってしまった。世間はバレンタインデーとやらに浮かれているようだが、私はそんなもん一切関係ない。自分は自分の仕事をやるまでだ。
今日もフロント側から行う。
何度も繰り返ししているうちに、タイヤの着脱だけは非常にスムーズになってきた。
新品の自転車を素人が適当に弄ると、弄り壊してしまいかねないので、異常がなければ基本弄らないようにしているのだが、オーストラリア出発を間近に控えた今はそんなことを言っている場合ではない。
ロックナットを外したところ。
よし、これから玉当たり調整を行うぞ!
硬すぎず、緩すぎず、適度な当たりに調整する。
言語化するのは非常に難しいな。
何度やっても決まらないので、仕切り直しに玉押し部を外してみる。
うむ、内部のグリスの量は問題なし。
これがロックナット。
下のプラスチックの防水カバーは簡単に外れるようになっている。
単にOリングで止まっているだけのもの。
防水カバーはロックナットを固定してから付けるようにする。
そうしないと、玉当たり部をハブスパナで固定できない。
外周面にOリングが取り付けられている。このOリングが内部に水やゴミが入るのを防いでくれる。
後日、OJC4の安っぽいハブを分解した時には全く付いておらず、グレードの違いをまざまざと見せつけられたのだった!
作業は基本に忠実に。
今回は納得行くまで何度も調整してから締め付けた。
ロックナット締め付けヨシ!
もう間違えないからな。
続いてリヤハブも納得が行くまで調整を行ってから組み立てた。
組み立てたあと、早速テスト走行に出ると、あまりの軽さに嬉しくなった。
玉当たりの調整が悪いと、とんでもないロスが出ることを体験した。
あの、常時向かい風を走っているような重たい感覚は全くなくなった。
初めての玉当たり調整の感想
まさかこんなドツボにハマるとは思いもしていなかった。
しかし、オーストラリアでやらなくて本当に良かった。あの重たいままのハブで走行を続けたら、無駄に体力を消耗して行き倒れになっていたかもしれない。
ロックナットを締め付ける際は、しっかり玉押し部を固定しながら行うようにする。何度も繰り返して発狂寸前になるまで行ったので、もう忘れることはないだろう。おっさんの肉体にしかと刻み込まれた。間違いはない。
今回のオーストラリアでは砂漠の中の未舗装路も走ることにしているので、ハブのメンテナンスが途中で必要になるかもしれない。今回、ハブの構造を覚えたので、自分でできる。あとはホコリのないキレイな作業場所が見つかるかだけの問題だ。せっかくのグリスアップの作業も、砂埃が舞うようなところでは、しっかりした作業ができない。
そういうことも考慮に入れて整備計画を練ってゆこう。
おわり