ある世捨て人の物語~誰にも知られず森で27年間暮らした男~

こんにちは。からあげです。

 

ある時、表紙の写真に強く惹きつけられて「ある世捨て人の物語」という本を読んだ。
誰にも知られずに森で27年間暮らした男」という副題にも興味を唆られた。未読の本が日に日に高さを増すなか、気分転換を兼ねて読んでみることにした。

 

世捨て人の名前はクリストファー・ナイト。二十歳の時(チェルノブイリ原発事故があった1986年)から47歳までの27年間、森に住み続けた。
その森はアメリカ合衆国北東端、メイン州の人口1010人のロームという小さな町にある。

ロームはカナダ国境に近い北緯約45.5度、日本では北海道旭川の北約80km、美深(びふか)町とだいたい同じ緯度になる。大西洋が近くて比較的穏やかな気候ではあるとはいうが、それでも真冬には最高気温が-15℃を下回る日もあるという。

そんな厳しい寒さのなかで、世捨て人のナイトはテント生活を続けていたのだ!

上の写真は単なるイメージ

シートとゴミ袋を張り合わせたタープでA型屋根を作り、その下にテントを張っていた。地面からの湿気を避けるために大量の雑誌を敷き詰めたとか。
反射する金属類は黒く塗装したり覆いを掛けたりして使用し、葉っぱが散る冬は迷彩柄のシートなどで覆って野営地が見えないようにした。
焚き火は一切せずにガスコンロで調理し、外を出歩く際は踏み跡を残さないように、岩や木の根の上を選んで歩くなど徹底していた。

そんな用心深いナイトだったが、とうとう住居侵入の現行犯で逮捕されてしまった。

彼は盗人。

狩猟採取や物乞いで生計を立てていた善良な世捨て人ではなく、食べもの、ガスボンベや電池などの生活必需品、衣類など全てのものを、付近の別荘やキャンプ場から繰り返し盗んでいた悪人だったのだ。27年間で1000回以上もの盗みを繰り返していたが、最後に高性能防犯センサーに感知され御用となった。

27年間の孤独な野営生活は称賛に値する。窃盗の常習犯であったことが本当に残念でならない。
彼に言わせるとヘンリー・デイヴィッド・ソローは偽物だとか。(笑
家族に別れを告げずに家を飛び出し、以後は音信不通。兄に連帯保証人になってもらってローンで購入した車を乗り捨てて森に入った。(もちろん残債あり。)

毎回、罪の意識に苛まれていたというが、それで罪が軽くなるという訳でもない。周囲の住民を長い間恐怖に陥れていた張本人だ。救いは身体的な暴力を一度も加えなかったこと。

非常に稀な世捨て人の処遇はなかなか決まらず、拘置所での生活が長引いたナイト。静かな森の暮らしから一転して、他人に囲まれて暮らす羽目になったナイトは独房を懇願したそうな。

 

とある用件で2週間のホテル軟禁生活を経験したことがあるが、退屈しなかったのは5日目くらいまで。初めはノートPCでストリーム動画を観たり、本を読んだりして楽しんでいたが、時間が経つにつれて精神的な苦痛が増してゆきほとほと参った。もう金を貰ってもこんな暮らしするもんかと思ったものだ。

「原野で大いなる洞察は得られましたか」という筆者の問いに

じゅうぶん睡眠をとること

と答えたナイト。確かにそうだと大きく頷いた私だった。

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からあげ隊長の冒険