【西日本ツーリング2020】有明~宇土 熊本市街目前

こんにちは。からあげです。

 

夜になると風は止んだ。それで驚いたのは波の音がしないこと。通常、海では波音が聞こえるが、入り組んだ半島に囲まれた島原湾内は、波が非常に穏やか。そのため風がないと鏡のようになる。海岸で泊まっている気が全くしない。

ここはいったいどこなんだろう。夜中テントの中でそんな気持ちになった。

今日はあいにくの雨。日の出前4時ころから降り始めた。一時は土砂降りの雨になる。ただ風が吹いていなかったため雨が吹き込むことはなく、テントはほとんど濡れなかった。

雨のため地元の人が散歩にやってくることはなし。国道の交通量も少なく非常に静かな朝。
しばらく様子をみていたが止む気配はまるでなし。じっと待機して時間を失うのはもったいない。仕方なくカッパ上下を着て出発することにした。

多少のアップダウンはあるものの、車が無料区間の有料道路に流れていくため、交通量が少なく走りやすい。海岸線に沿った曲がりくねった道をゆく。

降り続く雨。すでにカッパは浸水して体は濡れている。
体を冷やさないようにペースを維持して漕ぎ続ける。何ごとも続けることが大事なように思える。

ときどき橋が現れるようになり、狭い路肩に苦しめられる。昔の道路は自転車が走るようには設計されていない。

パチンコ店の軒下を借りて休憩する。
新台入れ替えの開店を待っている人たちがちらほらいた。
明らかに客ではない私が休んでいても、店員からは何も言われず。

とおい昔、朝っぱらからタバコをふかしながら並んでいた記憶がある。
何ごとも中途半端なことが嫌いな私は、財布の中身が空っぽになるまで打ち続けることが多かった。何やっていたんだろう?そして何をしたかったんだろう?

このとき熊本周辺のパチンコ屋はまだ通常営業していた。

遠回りの国道を走ってようやく松島手前までやって来た。
アップダウンがキツくなり消耗する。

橋の手前の駐車スペースで一息つく。

ふと目に留まったのが道路下のトンネル。なかなか良さそうなシェルターではないか。

ついつい目がいってしまう。

天草松島と呼ばれる風光明媚な区間に入る。本家の松島のように小さな島がいくつも浮かぶ。
熊本市方面へと向かう車が増えてきた。

この天草パールライン、道百選に選ばれているらしいが、自転車では恐ろしく走りづらくストレスが溜まる。道幅は普通車が余裕を持ってすれ違えるくらいはあるものの、自転車が走る余地が全くない。サイクリスト殺しの道。

橋には幅70cm程度の歩道があるものの、歩道の出入り口にはスロープはなく大きな段差があり。そのため一度自転車を降りなければ、歩道に上がることはできない。狭い道路内で止まって自転車から降りるのは危険が伴う。

自転車にサイドバッグを付けると幅は60cm。欄干に接触すると車道に落ちるおそれがあり、一本橋のような狭い歩道を走るのは非常に危険。結局いつものように車道を走ることになり、後ろに車の長い列ができることになる。

こんな道。景色を見ながらのんびり走れる訳がない。

道路沿いのドライブインや道の駅はどれもみな小綺麗で、小汚い自転車旅行者が寄って行ける雰囲気はなし。大都市や観光地は小綺麗なところばかりで生活感が感じられなくなる。まるで生活感を出すのが恥ずかしいかのように。最近、この違和感を感じることが多くなった。

雨上がりの道路をゆく。ようやく雨が上がってくれた。
カッパを脱いで濡れた体を乾かす。

フラットな区間でも、ときどきキツイ坂が現れるので気を抜けない。

国道の天門橋を渡り、宇土半島に上陸。世界遺産の三角西港に到着した。
かなり体力を消耗してしまったので、ここでゆっくり休んでいくことにする。

最近は世界遺産が増えてどこもかしこも世界遺産だらけになっている。これの何処が?と首を傾げたくなるような場所も多々ある。(決して三角西港は世界遺産の価値はないと言っているのではない。)

岸壁周辺を散策する。
昔ながらの石造りの岸壁が残されている。

こういう観光地に自転車で来て良かったと思うことは、自転車に乗ったままブラブラできること。
広大な場所だと端から端まで移動するだけも時間がかかるし、駐車場まで戻らなくても良い。
自転車旅行者は通り抜けしたい。

旧三角裁判所

レンガ積みの壁に囲まれた建物。見学料は無料。時間があったらゆっくり見学するとよいかも。

旧裁判所は三角の町を見下ろす高台にあり。

白と水色のオシャレな建物は九州海技学院の校舎として利用されている。
中に入ってみると、講習が行われている最中だった。忍び足で建物をあとにする。

宇土半島北岸、国道57号線を東に向いて走っていると、懐かしの八ちゃん堂たこ焼きを見つけた。
およそ15年前まで愛知の実家の近所に八ちゃん堂があったのだが、借地権の更新が難しかったのかそれなりに人気があったのに店じまいしてしまった。
忘れられないあの味。あのボリューム。大学に行かなくなってプー太郎をしていたころ、よくバイト帰りに買って食べた記憶がある。

今でも豊田市内にあるらしいのだが、自転車だと少し距離があるのでたこ焼きのためだけには行く気にならない。

袋もあの八ちゃん堂だった。

八ちゃん堂の本拠地は大分だったのか、と袋を見て今さら気づく。

確かにあの八ちゃん堂の味。だが、チョコレートのようにくっついていたあのボリューム満点のたこ焼きではなかった。あれはあそこの店限定だったのか、それとも材料の値上がりで減らさざるを得なくなったのかは謎のまま。

古き良き日の思い出はそっとしておいた方がよさそうだ。

宇土半島北岸を振り返る。今日は日曜日のため交通量は多め。
平日天気の良い日に走ったらさぞ爽快だろう。

次回あるかは不明だが、楽しみにしておこう。そうだった、天草松島周辺は二度と通りなくないから、次回はたぶんなし。

また大げさな。

途中、立ち寄った道の駅のトイレにあった。たしかにすり減って平らになった靴底だと、濡れたバア所では滑りやすいことがある。

こっちはしっかり注意しましたからね。転んでケガしても責任とりませんよ。という意思が見え隠れする。

潮が引いて砂の上に乗っているしまっている小型漁船。

遠浅の海に伸びる道路。なんと電柱まで設置されている。

歩いている人がいる。よし、行ってみよう。

潮が満ちてくると水没する道路。漁業のために整備されているようす。
あちこちの干潟では漁をする漁師さんの姿が見られた。ここ干満の差が激しい島原湾では潮が引くと船が海底に乗り揚がってしまい移動不能になる。そのため、漁業にはもっぱら軽トラが使用されるようす。自転車で来ている人もいた。(たぶん地元の暇人)

なんだか、北海道日高の昆布漁を思い出させる。

道路脇の電柱

基礎が一部見えている。

未舗装路に変わるもまだまだ続く。
磯の香りが濃厚に漂う道。

そしてついに行き止まり。

大事な自転車が錆びるのでほどほどにして戻ることにしようか。
クロモリなんで。

午後3時を過ぎ、ねぐら探しを始める。
昼から風が強くなってきたので、できれば風の当たらない場所で泊まりたい。
気になったところを探すも、どこも外れ。熊本市街が徐々に近づいてくる。

日没迫る夕方、熊本市街の直前でようやく見つけた神社。トイレと水場はないが、一晩過ごすのなら十分。こういうこともあろうかと、事前に道路沿いの公園で汲んで来てある。

野宿者はいつでもどこでも泊まれるように、夕方近くになったら水を多めに持っておく。

いい感じの屋根下スペースがあるが、神様と同じ場所で泊まるのは罰当たりにも程がある。
今日は風は強いが雨の心配はなし。

神様、今日一晩だけここで泊まってもよろしいでしょうか?
何?愛知県から来ただと。仕方あるまい。一晩だけ許す!
ありがとうございます。今晩お世話になります。

などと脳内で一人芝居をやる。

熊本地震の名残あり。下のコンクリの基礎がひび割れていた。

建物を風よけにしてテントを設営した。
ここなら日が沈んで暗くなれば、道行く車からは全く見えない。

遅い時間に市街地に入るのは危険。無難に手前で止まって翌朝早い時間に入る。
土地勘のない場所では特に気をつける必要がある。

走行データ
有明~天草松島~宇土のはずれ
走行距離約60km、走行時間4時間半
ねぐら 宇土市はずれの神社
 
おわり