南紀熊野古道ツーリング2018 【前編】

こんにちは。からあげです。

 

今日から数回に分けてお届けする南紀熊野古道ツーリングの記録。
北海道ツーリング前に行った短期のツーリングだった。

ツーリングとは言ってもメインは熊野古道を歩くことだった。去年PCTを歩いた成果を身をもって感じたかった。3,4日程度では確かめづらいので、適度な距離のあるトレイルを探していたところ、以前から気になっていた熊野古道が目についた。愛知県からも近くて気楽に行ける。
コースを調べてみると、由緒ある熊野詣や修験道の雰囲気が色濃く残るトレイルで、とても魅力的に思えてきた。検討した結果、高野山方面から小辺路を歩いて熊野本宮社まで行き、大嶺奥駈道を歩いて吉野山まで戻ってくるだいたい周回コースを歩いてみることにした。

 

2018年年明け早々、スポーツ自転車に乗り始めた私だが、それに先立ち自動車を処分してしまっていた。それ以来、私の日常の移動手段は自転車のみとなった。
熊野古道入り口までは約200kmで、自転車でも2日あれば走れる距離だ。

ただ、問題なのが自転車の停め場所だった。

熊野古道周辺には無料の駐車場が点在しているが、長期間自転車を置きっぱなしにできるほど安全かどうかは分からない。ボロの車なら停めっぱなしでも何事もないだろうが、高価なスポーツ自転車となるとかなり怪しく思えてくる。ロックは電動工具があれば簡単に切断することができる。プロの手に掛かれば、ロックなど単なる時間稼ぎにしかならない。

そこで安全に停められる駐輪場を探していたのだが、ネットで探しても全く出てこない。駅前にある無料の駐輪場では危険過ぎる。

都会のようなスポーツ自転車で通勤する人のための豪華設備の駐輪場なんて田舎にあるわけないが、自転車で通勤通学している人はかなりの数はいるだろうから、どこかに昔ながらの有人の駐輪場があるはず。いや、ないわけがない!
そう考えた私は、とりあえず現地に行ってから駐輪場を探すことにしたのだった。

安全な駐輪場が見つからなければ、車が入れないような人気のない山の奥に自転車を隠してコッソリ停めておくか、熊野古道は止めにしてそのまま自転車で紀伊半島を一周すればいいと思った。

 

1日目 愛知県~伊賀上野市内まで

2018年5月吉日

GWが過ぎて世間が日常通りの生活に戻ったころ、愛知県の実家を出発した。
あとに控えた北海道ツーリングとできるだけ同じ装備を使用し、不都合な点があれば北海道出発前に対応できるようにした。

ただ、テントだけは止めにして、自作タープとストックシェルターの組み合わせで試してみることにした。まだ実戦で一度も使ったことのない装備を一度試してみたかった。以前から熊野古道を歩くなら、ウルトラライト装備と心に決めていた。

天気は朝から曇で、夕方ごろから崩れてくる予報だった。どうせ一度は雨に降られるだろうから、出発するのはいつでも良かった。ただ、あまり出発を遅らせると、出てゆくのが面倒臭くなってきて、中止になることもありえた。実家に長期滞在して飽き飽きしていた私は、おっさんがダダを捏ねだす前に出発してしまうことにした。

こういう時は勢いが必要だ!

連休明けの道路は日常を取り戻していて、普段どおりの交通量だったが、大型車が多くて気を付けなければならなかった。

左折専用レーンや自転車通行禁止の陸橋に行く手を阻まれつつも、順調に自転車を走らせていた。

始めっから飛ばしてゆくと、途中で力尽きてしまう。
適度に休みながら漕いでゆく。

これは薬局で買ったパワーバーだ。1本食べるとお腹が満足するそうだ。試しに食べてみると、ん?意外にイケる!

愛知県と三重県の県境を流れているのは、木曽(きそ)川・揖斐(いび)川・長良(ながら)川の木曽三川という大きな川だ。
その川に掛かる橋はいくつかあるが、自転車も通れる橋となると、国道1号線のほか数少ない。

国道1号線以外の橋となると、約3km上流にある県道125号線の橋でかなりの遠回りになる。選択の余地なく国道1号線を走る。

車道を走りたいところだが、結構な大型車の通行があって、気楽に走らせて貰えない。歩道を走ったり、車道を走ったりしながら進んだ。

まず始めは木曽川を渡る。橋のつなぎ目に段差があって走りづらかった。
ペダルを漕ぎながらも、河川敷のチェックを怠らない。
良さそうな野宿場所を見つけると、思わず興奮してしまう。

続いて長良川と揖斐川を渡る。長良川と揖斐川は河口手前で合流して一つの流れになる。
この橋の歩道も橋のつなぎ目に段差があって走りづらかった。

三重県に入ってすぐ、桑名(くわな)市のダイソーで自転車チューブ修理用のパッチを購入する。
3,4枚の手持ちしかなく不安になった。まだこの時はPanaracerのツーリングタイヤを履いていて、パンクに十分な注意を払う必要があった。

駐車場で一緒に購入したメロンパンを食べてしばらく休憩した。

国道1号線をひた走る。四日市を抜けて交通量が減ってホッとしたところ。

それにしても雲行きが怪しい。なんとか夕方まで持ってくれればいいのだが。

熊野古道手前に立ちはだかるのは鈴鹿山脈。いくつか峠越えのルートがあるが、まずは非名阪国道と呼ばれる国道25号線を通ってみることにした。
亀山を越えて関を越えた辺りに入口がある。

まずは亀山を目指す。ゆるやかなアップダウンのある鈴鹿市内を走っているところ。

昼を過ぎたころ、ついにポツポツと雨が降り始めた。
たまらず陸橋の下に逃げ込み休憩する。

始めて経験する雨天走行に恐怖した!

縁石の上に座って休んでいると、小学生の遠足だろうか、子どもたちの集団が通り過ぎて行った。

亀山まであと7km。

国道1号線と国道25号線が重複する区間。
大型車の通行が多く気を抜けない。
亀山バイパスは自転車通行可だが、危険なバイパスは止めにして無難に市街地を走ってゆくことにした。

鉄工場のやぐらの上に取り付けられている飛行機。

遠くからでもよく目立つ。この付近のランドマークになっているに違いない。

東名阪亀山JCT手前。

ついに雨は本降りとなり、上下合羽を着て走ることになった。
どこかで休みたいが、なかなか休憩できる場所が見当たらない。

車が行き交う中、JCT入り口で走る道を失ってしまった。
歩道は途切れてしまいどこを走っていいか分からない。

一旦戻って車道に入り、東名阪に入る車に気をつけなが直進して行った。

始めて走る高速の入口でドキドキものだった。

亀山JCTを無事通過してホッとすると、一気に疲れが襲ってきた。
道路沿いのスーパーに入って、雨宿りついでに休憩する。

お腹が空いてはペダルが漕げない。安くてお腹が膨れるものを購入した。

おっさんのランチタイム。

雨に濡れて体が冷えたので、温かい飲み物が欲しくなった。ペットボトルの水を飲むと余計に体が冷えた。

スーパーを出てすぐのところにあった道の駅「関宿」に寄ってみた。
車では何度か通ったことがあるが、自転車では初めてなので寄ってじっくりチェックした。

中を覗いてみると、なんと24時間開放の休憩コーナーがあった。

ここで休んで行きたいところだが、さっきスーパーで休んだばかりなので先に進むことにした。

今日のうちにある程度距離を走っておかないと、明日熊野古道入り口の吉野山まで距離が残り大変になる。

道の駅の強烈な重力を振り切り再び走り始めて、ようやく非名阪国道の入り口までやって来た。

まだ15時を過ぎたばかりだというのに、周囲はすでに薄暗くなっていた。テールライトを点灯させながら走った。

非名阪国道に入ると一気に交通量が減り走りやすくなった。途中にいくつかある砕石場に出入りするダンプカーと時々すれ違うだけだった。

それほど急な坂道ではなかったが、雨に濡れて体が冷えて体力を消耗していたおっさんは、惨めな気分でペダルを漕ぎ続けなければならなかった。途中で野宿場所を探し始めたが、こういう時に限って見当たらない。

今回はタープなので、ペグ効きがいい場所を選ばねばならない。雨は降っているし、野宿場所は見つからないしで、いつの間にか精神修行モードへと移行していたのだった。

その後、なんとか峠を越えて下りて来たが、すでに体は消耗仕切っていて、どこでもいいから休みたかった。ようやく見つけたバス停で雨宿りしつつも、手持ちの水が水がないため先を急いだ。

そうして日没間近にやって来たのが、JR新堂駅だった。

駅前の外れに東屋を発見!

おっさんは東屋を見た瞬間、即ここで野宿することを決定した。
冷たい雨が降り続くなか、先を急いでどこにゆく?これほど雨の日の野宿に最適な場所はないだろう。駅前にはトイレもある。申し分ない場所だった。

東屋の下にストックシェルターを設営する。
今回は、自作タープとストックシェルターの組み合わせで行うことにした。
屋根の下なので、ストックシェルターのみ張ったが、雨が横から吹き込んでくるため、シェルターはかなり濡れてしまった。

しかし、中まで浸水するようなことはなかった。

冷え切った体で温かいスパゲティーと味噌汁を食べる。
次第に体が温まってきて、ようやく落ち着けることができた。

食事の後はすぐに寝床を用意して寝袋に入って眠った。
時々通り過ぎる足音が聞こえたが、寄ってくるような人間はおらず静かに過ごすことができた。

こうして初の雨天走行の一日は終わっていった。

走行データ
走行距離112km
ねぐら JR新堂駅前東屋

 

2日目 伊賀上野市~吉野口まで

翌日、朝5時に起きると、まだ小雨が降り続いていた。
雨が上がるのを期待していたが、天気の回復は遅れているようだった。
せっかく体が乾いたところなのに、再び生乾きの合羽を着て走ることになった。

通勤ラッシュが始まる前に市街地を抜けようと、早めに出発してやって来たのは伊賀上野城跡。まだ小雨が残るなか、たどり着いた。ようやく従業員が出勤し始めたころで、専用の駐輪スペースに自転車を停めて歩いていった。
駐車料金は車700円、自転車は無料。こういう時、つくづく自転車に乗ってて良かったと思う。

なかなか立派な天守閣がある。

もちろん復元されたものだが、それなりに見応えがあった。

まだ時間が早いため、天守閣の中には入れず。
残念だが、また次回の楽しみにとっておくことにしよう。

この伊賀上野城、見どころはなんと言っても石垣。
城跡からは市内を一望できる。

上から下を覗き込むと、高度感抜群だ。
今どきの公共施設にありがちな柵で囲ってなくて、自由に見学できる。
ただし、本当に危険なので、小さい子供からは目を離さない方がいい。

立派な石垣

復元された天守閣はタダの飾りに過ぎなくて、本命は昔から残る石垣のように思えてくる。
伊賀といえば忍者で有名だが、こうした高い石垣が築かれたのは、忍者の侵入を防ぐためであったのだろう。

城内には人気のありそうな忍者屋敷があった。
見学したかったが、まだ営業前だった。

ここは間違いなく外国人に人気がある。海外には多くの日本人顔負けの忍者マニアがいるという、マニアでなくてもニンジャやサムライは映画を観たりして知っていることだろう。

この日は、駐輪場を探すために、まずは早めに吉野山にたどり着いておきたい。

伊賀上野からは国道368号線で名張に出て、名張からは宇陀を経由して国道370号線で吉野山に向かう。伊賀上野市街を出るころになって、ようやく雨が上がってくれた。

朝からペダルを漕ぎまくって疲れたので、途中のスーパーに寄って早めのお昼にする。
焼きそばとコロッケのセット。

途中で自炊している時間はない。急ぐ時は買い食いをしてさっさと済ませる。

途中、道の駅「宇陀路大宇陀」の足湯に寄る。
ちょうど誰もおらず、貸し切り状態になった。

足湯に浸かるおっさん。
やっぱり足湯は熱めの方がいい。温めだと体が冷える。

ここで足だけキレイにして先に進んだ。

山をいくつも越えてようやく吉野川に出た。
前日の雨で川は増水して茶色く濁っている。

吉野川のようす

分厚い雲に覆われていてすっきりしない。
よし、駐輪場探しを始めるか!

さっそく駐輪場の捜索を開始することにする。
道行く人に手当たり次第に聞いてもいいが、あまりに効率が悪すぎる。
そこで警察署で情報収集をする。地元のことをよく知っている警察署に聞くのに一番だ。

警察署前の吉野杉で作った立派な看板の前で記念撮影する。

この後、さっそく駐輪場の場所を聞いたのだが、まず話を分かってもらうのに苦労した。自転車は車に積んできたものと勘違いをしていて、どうにも話が噛み合わない。車で来ているのなら、そもそも駐輪場は必要ない。
愛知県から自転車でやって来たこと、熊野古道を歩きたいので、2週間ほど自転車を安全に停められる駐輪場を探している、などと順に説明する必要があった。ようやく誤解が解けて話が通じると、駅前の駐輪場を2箇所教えてもらった。

話が通じれば、あとは簡単だった。本棚から住宅地図を出してきて、懇切丁寧に場所を教えてくれたのだった。

警察のおじさん、どうもありがとう!

 

まず始めに近くの近鉄吉野線の越部(こしべ)駅の駐輪場を調査してみた。
駅から歩いて20秒ほどの近くにある駐輪場だった。2階建ての民家の1階部分を駐輪場として開放していて、1日100円の料金だった。ただ、出入り口は開放されていて誰でも出入り可能で、呼び鈴を押しても管理人さんが出てこなかったので、長期間停めるには不安になってきた。

そこで2つ目の駐輪場に向かうことにした。

続いてやって来たのは、同じく近鉄吉野線の下市口駅。開放感漂う田舎の駅だった。

私が探す駐輪場は駅から徒歩2分。

駐輪場入り口

一見しただけでは駐輪場とは分かりにくい作りでポイントが高い。ここなら用のない人間は入って来ることはないだろう。

自宅の庭を改装し、屋根付きの駐輪スペースを整備して開放している。
入り口には管理人さんがいて目を光らせていて、出入りする利用者を常にチェックしている。

駐輪スペースは、単管パイプで骨組みを作ってトタン板を打ち付けて屋根にしている。
中は広々としていて停めやすい。

付近の人がここに自転車や原付を停めて、電車で学校や会社に行っているようす。
平日の昼過ぎでこの混み具合だから、一時利用者が停めてもいっぱいになることはないだろう。

こちらも料金は一日100円。とりあえず、10日分を前払いしておいた。

奥の方には立派な車庫があって、主に原付きが停められていた。
こちらは昔ながらの常連さんが利用しているようす。

パッと駐輪場を見た感じ、民家の周囲は壁で囲まれていて、部外者は立ち入り出来ない状態だった唯一出入りできるのは、通常自転車を出し入れする出入り口のみだった。

一番端に停めて壁に自転車を立て掛けた。
荷物をバラして熊野古道を歩く準備をする。
屋根があるので、雨の日でも荷物の整理には困らない。

必要なもの以外は自転車のカバンに入れておいた。
ロックは、クリプトナイトのU字ロックとABUSの丈夫なワイヤー錠と自転車のおまけで付いてきた細いワイヤー錠の計3個で施錠した。
そのままの丸見えの状態だと防犯上よくないので、自転車カバーを掛けて見えないようにする。
さらにカバーの上からロープを巻いた。

これでバッチリ!

ここは老夫婦2人で管理されている駐輪場で夜間は閉鎖。出入り口で見張ってくれていて、時々中の見回りもしてくれているため安心できる。実際に停めたのは9日間だったが、自転車のことを気にせず熊野古道歩きを楽しめた。

 

下市口駅前駐輪場

料金 1日100円
有人、屋根付き、駅から徒歩2分。一時利用可。

 

この後、近鉄に乗って高野山方面に向かうのだが、続きはまた今度。
熊野古道を歩いて戻って再び駐輪場まで来れるのだろうか?

 

走行データ
走行距離 87km
ねぐら  高野山手前

 

 

つづく

コメント

  1. NS より:

    那智山から、熊野本宮大社まで歩いて来ました。
    泊まった宿はどこも外国人ばかり、ここは外国かと錯覚してしまいそうでした。
    二泊目の宿の掲示板に貼ってあった地元新聞の記事に、宿の利用者の7割が外国人、その半数がオーストラリア人とか。
    熊野古道は、オーストラリア人に大人気のようです。
    隊長がオーストラリアで、アウトドア好きのオーストラリア人に出会ったら熊野古道の話をしてみて下さい。

    次回は「小辺路」を歩いてみたいので、続編が楽しみです。

    • karaage より:

      私が行った時も外国人ばかりで驚きました。
      高野山は古き日本の雰囲気が残っているから外国人に人気がある気がしまう。

      オーストラリア人と熊野古道の話ができるように、しっかり英語を勉強しておきます。