3年ぶりの襟裳岬

こんにちは。からあげです。

 

3年前、忘れもしないあの日。襟裳岬の付近の駐車場で、車のドアを開けて外に出ようとしたところ、強風にドアを引ったくられて一気に全開となった。その瞬間、当時乗っていたジムニーが激しく揺すれた。一瞬、何事が起きたのか分からなかったが、次第に冷静になってくると、一気にドアが全開になって車が傷んだということが分かった。

家に帰ったあと、ディーラーに持っていって調べてもらうと、フレームが歪んでいるという驚愕の事実が分かった。修理費用はおよそ8万円。それでいてフレームの修正はできない。

なんてこった!

たかが、不注意でドアを開けただけでフレームが逝ってしまうとは!その後、傷んだドアストッパーと蝶番を自分で交換して乗っていたのだが、去年の年末に勢い余ってジムニーを売却してしまった。

あの恨み忘れてなるものか!

昨晩泊まったのは、庶野(しょや)集落の奥にあるさくら公園。桜がたくさん植えられていて春になると花見客で賑わうなのだとか。今の季節は誰もやって来ないため、静かな夜を過ごすことができた。

前日、帯広で泊まった時、夜中に人が来るは、煩いバイクが走り回るはで全然寝られなかった。その分熟睡して、朝まで一度も起きることがなかった。

朝、起きるとピクニックテーブルで食事をとって荷物を整理する。

ゆっくりと準備をして6時過ぎに公園を出発する。
東屋がないので、雨天は辛いだろうが、外水道とトイレがあるので、晴れていればかなり快適に過ごすことができるだろう。

もうひとっ走りすれば、百人浜(ひゃくにんはま)のオートキャンプ場にたどり着けるのだが、トンネルの連続する黄金道路で疲れ果ててしまい行く気にはなれなかった。

昨日の天気は素晴らしく良くてテンションが上がったが、一明けた今日はいつものどんよりとした曇天が広がっていた。

雨が降らないだけマシだと思うしかない。追い風に助けられて快調に走ってゆく。

庶野周辺では拾い昆布漁が行われていて、磯のあちこちに長い竿を持った漁師さんたちが昆布をとっていた。

とった昆布をまとめてロープでくくり、ある程度とるとトラックに載せて昆布干場に持ってゆく。

磯に面した道路には、錆びてボロボロになった軽トラが停められている。軽トラ一台でできる拾い昆布漁は、もっとも金が掛からない漁かもしれない。

これが昆布干場。

砂利を敷いた広場に昆布を敷き詰めて天日干しする。たいてい家のとなりに広大な昆布干場がある。

庶野集落を抜けると、民家はなくなり殺風景な荒野が広がっている。何もなくて、これぞ北海道という風景だ。始めはテンションが上がるが、見慣れると何とも思わなくなる。人間って不思議な生き物だ。

左手奥に見えるのが百人浜(ひゃくにんはま)。渚100選に選ばれているそうな。

百人浜の展望台は早朝のため、閉鎖されていた。海岸まで歩いて砂浜の景色を楽しむ。風はわりかし弱くてのんびりと寛ぐことができた。とは言うものの、風が湿っぽくて、体がジトっとしてくる。

付近の牧場には黒毛の牛が放牧されていた。愛想がなくて全然可愛げがない。

どの牛もおっさんのことなど知らんぷりしてじっとしている。

えりも岬の集落を抜けて、ようやく襟裳岬(えりもみさき)にやって来た。風はおよそ10m。全然大したことなくてガッカリした。3年前の時以上の風が欲しかった。

遊歩道からアポイ岳方面を望む。

切り立った断崖が続く風景が素敵。

岬の断崖の上には風の館という資料館があるのだが、まだオープン前で入ることが出来なかった。

風の館から岬の先端まで遊歩道が延びていて歩いてゆくことができる。風が強くて帽子が飛ばされそうになるので注意する。

朝早いため、観光客はまばら。静かな襟裳岬を堪能することができた。

海に向かって落ち込んでいる様がいい。

先っぽから海を望む。

襟裳岬までやって来たことで、北海道の旅が終わりに近づいているという実感が湧いていた。あともう少し、苫小牧に着いて北海道をだいたい一周したことになる。

襟裳岬灯台

これといって趣のある灯台でもない。どこにでもあるような灯台だ。

岬から黄金道路方面を望む。

出っ張っている付近が黄金道路の石碑が立つところ。
一日でこんなにも走ってきた。自転車は適度な移動速度でゆっくり景色を堪能できる。バイクや車だとあっという間に通り過ぎてしまい、記憶に全然残らない。

このあと、駐車場に戻ると見覚えのあるランドナーが止まっていた。近くにいた爺さんと話していると、自転車の主が帰ってきた。そう、屈足のライダーハウスで一緒になった大学生の兄さんだ。昨日は百人浜のキャンプ場に泊まったのだそう。いろいろ話して記念撮影をして別れた。

自転車に乗るようになって、若い人と話す機会が一気に増えた。
若者と話していると、いろいろ刺激をもらって若返るような気がする。自転車を漕いで肉体が若返り、若者と話して精神が若返る。自転車ってどんだけ凄い乗り物なんだ!

襟裳岬を過ぎてなおもボーナスタイムは続く。
いい感じの追い風が吹いている。このチャンスを活かしてどこまでも漕いでいこう。

サイクルコンピューターのメーターが7,000kmを突破した。

北海道に来てから、およそ4000km走行した。意外に距離が伸びていないのは、雨が多かったためと思われる。

写真はホタテ貝で裂けたタイヤサイドの修理箇所。パンクしたのは興部手前のちょうど5,000kmを越えたあたりだった。あれから2000km、修理したまま乗っていたのだが、次第に裂け目が広がってきているように見えた。

少しでも走行の抵抗を減らすようにと、空気が多めに入れてある。ゲージがないため、空気圧は測っていない。

始め気のせいかと思っていたが、次第にはっきりと分かるようになってきた。

麻糸で縫って瞬間接着剤で固めて、内側からゴムパッチを当ててガムテを貼って修理しておいた。このまま隙間が広がって来ると、最悪チューブが飛び出て来て、走行中パンクするかもしれない。早めに手を打っておいた方がいいだろう。

ここがジムニーの事故現場だ!この駐車場に停めていた時にドアを持っていかれた!

フレームが傷まなければ、買い取り金額があと10万円はアップしていたことだろう。フレームが傷んでいるという負い目が、強気の交渉に出られなかった理由。

返せーおらの10万円!

叫んだところで、風は知らんぷりしているだけだ。心のうちに秘めておくことにした。

そう言えば、このあと様似でパンクしていることが分かったんだっけ。パンクといいドアといいえらい目に遭ったな。

アップダウンがおっさんの体力を奪ってゆく。
追い風に助けられているものの、いまいちスピードに乗れない。
天気が良くないと、元気が出ない。

頑張ったあとのご褒美。

えりも町のセコマに寄ってカップラーメンを食べる。風に吹かれて体が冷えたときには、温かいカップラーメンがピッタリだ。

もやしトッピング!

もやしを入れて栄養満点!?カップラーメンは体に悪いから、プラマイゼロな気がする。ということは食べても食べなくても一緒ってことだ。

じゃあ食べない?そんなの嫌だ!

険しい様似(さまに)付近の道路を走る。3年前は様似参道というフットパスを歩いたっけ。今年はパス。

アポイ岳山麓を通過して様似の町にやって来た。

今日はここから内陸部に入って楽古岳(らっこだけ)方面に向かう。楽古岳の登山口には、薪ストーブ付きの山荘があって、自由に泊まることができる。アプローチの林道がシンドイが、薪ストーブに当たれることを思うと多少の辛さは我慢できる。

スーパーで買い物をした。

2泊できるように食料を買い足した。これだけあれば、あとはなんとかなる。

様似からは道道223号線に入り、楽古岳登山口を目指す。

次第に雲行きが怪しくなってきたぞ。急げ!

牧場の風景

日高地方は競走馬の放牧がさかん。あちこちに馬の姿が見られる。

おっさんのことは無視して草を食んでいる。
こちらを全く見向きもしない。

食事タイムに悪かったね。

途中、道間違いをやらかして遠回りして、ようやく入り口にやってきた。すでに雨に降られて体は濡れてしまっている。

途中、休む場所がなくて仕方がなく走り続けた。

楽古岳入口の標識

入口とは登山口、つまり楽古山荘があるところではなく、林道の入口のこと。この標識のいう入口とは、ここから5.2kmで、さらにそこから6kmも入って行かねばならない。

紛らわしい標識を出すのは止めてくれないか!

国道から橋を渡って直ぐに未舗装の道路となる。しかし、よく整備されていて走りやすかった。

雨は降り続いていて、すでに全身ずぶ濡れ。
ここ最近、よくずぶ濡れになっている気がする。

雨に濡れただけで風邪を引いていては自転車は漕げない。カッパを着てもどうせ汗で濡れるため、寒くなるまではカッパは着ない。そう、カッパは雨天時の防寒用のために着るだけ。

林道を走ること、数時間。ようやく楽古山荘が見えてきた。

ようやくこの雨から開放される!

ヨーロッパ風を思わせるおしゃれな作りの山荘。

水場、内トイレ、薪ストーブ付きという豪華設備ながら、無料で使用できる。

3年前にたまたま来た時、地元の山岳会の方に会って「是非泊まって行きなさい!」と言われて泊まったのだが、凄く快適に眠れて疲れが取れたのだった!

こんにちは!と中に入るものの、返事はない。
中はカラリと乾燥していて気持ちいい。(前日泊まった人がストーブを焚いたためと思われる。)

そう誰もまだ来ていない。このまま一人で独占かと思いきや、あとから二人組のお年寄りが来た。残念。

荷物を中に入れると、さっそく巻きストーブの準備を始める。

1Fの小屋中央に鎮座している薪ストーブ。
ホンマ製ではなく、他社の鉄板製ストーブ。

初めて見た薪ストーブにドキドキしたっけ。そう、まだ3年前は小屋に薪ストーブを導入していなかった。

北海道から帰ったあと、ロフトの壁を塞いで、薪ストーブを設置する気になったのは、この薪ストーブを使って暖かさを知ったから。

天板が吹きこぼれたもので汚れていたため、火はさみでゴシゴシ削りつつ、水洗いをする。ワイヤーたわしがあれば、キレイにできるのだが。

軒下にはたくさんの薪が用意されている。小屋の中にもいくつかある。

これは非常に有り難い!薪づくりの大変さを分かっているので、余計にそう感じる。

新聞紙と薪を入れて準備OK!

もう手慣れたものだ。普段から薪ストーブを使っているので、自然と体が動く。

中に薪を入れて点火!

じわじわっと暖かさがやってくる。頼むぞ!湿気を追い払って暖かくしておくれ!!

晩御飯は、ストーブで調理した。時間は掛かったが、飯がめちゃくちゃ美味い。薪ストーブで炊いたご飯の味を思い出した。これだ、これだ!!

 

食事をしながら、横で話している爺さん二人組の話を聞く。
山の話から孫、年金の話まで。二人共、高額な国保を払っているのに、病院に行くのは歯の健康診断くらいだと嘆いていた。

その話を聞いて、パチンコ屋に入り浸りの糞ジジババに爺さんたちの爪の垢を煎じて飲ませてやりたくなった。二言目には金がない、腰が痛いだ。

食後のあとは自転車の整備を行う。

そう、最近になって傷んできたパンク修理箇所を修理し直すのだ。楽古山荘に泊まるこの今が絶好の機会だ。これを逃すと、次いつになるのか分からない。

外の軒下で前輪を外した。

そして暖かい玄関で作業を行う。
ヘッドランプの明かりだけでも十分できる。

傷んでいる写真は先ほどのものに加えてこれを追加する。
トレッド面近くの裂け目を広げて見ると、奥の方に何やら見える。これが厚さ5mmの耐パンク防止帯と呼ばれるものに違いない!いやあ、先ほどはチューブが見えていると思ったぞ。

この青い耐パンク防止帯がホタテ貝の鋭い破片を防いでくれたのか!さすがマラソンタイヤだ。こいつでなければ、修理不能になっていたはずだ。私の選択は間違いではなかったのだ!

タイヤを外して裏側を撮影した。

ゴムパッチを当ててからガムテを貼ってある。ガムテを剥がしたところ、いちおうはパッチはくっついていた。傷みがこれ以上酷くならない効果は多少あるかもしれない。

今回は以前縫ったところより、よりトレッド面に近いところまで縫う。耐パンク防止帯のところは固くて針を通す時に折りたたみナイフの柄を当てて押し、反対側に突き出たらペンチで挟んで引張出した。

針は帆布用の丈夫なもの、糸は麻糸を使用した。縫ってから麻糸に瞬間接着剤を縫って擦れに強くなるようにした。

とりあえずこれでようすをみる。

修理箇所のようす その1

修理箇所 その2

接地面ギリギリまで縫った。だいたい1cm近い余裕がある。
これなら麻糸が切れることはないだろう。

修理完了!

圏外でブログ更新できなかったので、時間にゆとりを持って作業することができた。(その分、翌日にしわ寄せがゆく。)

明日は楽古岳登山だ!さっさと寝よう。

 

おわり

コメント

  1. NS より:

    週刊AERAで寝太郎さんの記事を読みました。
    隊長と寝太郎さんの違いは、隊長には冒険家としての夢や計画があり、
    それを実現するための小屋(=秘密基地)、最近はその必要性も薄れてきたように思いますが・・・
    寝太郎さんには、小屋暮らしが目的である「完全な孤独」を得るための手段だったことでしょうか?
    又、台風が近づいて来てます。
    気を付けて、三年ぶりの大間のマグロを楽しみに頑張って下さい。

    • karaage より:

      はい、物置代わりとして小屋を建てました。これは当初から言っていたことです。
      小屋を建てることによって、消費一辺倒だった行動を見直すことが出来ました。

      はい、今凄い風が吹いています。さっさと大間まで行ってゆっくりしたいです。